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ラーガとは?

 

ラーガはスケールから派生するものなので、まずはスケールとは何かを理解しましょう。

 

1 オクターブには 12 の音があります。スケール(つまり音階)はこれら 12音の中から特定の音を選択することによって作成される「音楽のテーマ」ともいえるものです。 1 オクターブの 12音を12の異なる「色」と例えましょう。では、この12色のうち数色だけを選んで絵を描いたらどうなるでしょうか。バイオレット、ブルー、グリーン、イエロー、オレンジを選択したとします。この配色で無限の美しい絵が描けます。それでも、これらの絵はすべて何等かの識別できる性質を共有し、他の配色に基づく絵とは違います。音楽のスケールも同じように機能しています。

 

どこの音楽でも、スケールの概念は共通しています。古代ギリシャの音楽は、スケールに似通った概念で、「モード」というものがありました。現代西洋音楽には、長音階、短音階、ペンタトニック・スケール、ジャズ・スケール、ブルーズ・スケール等があります。日本の伝統音楽も音階に基づいています。ビデオは、キーボードを使用し、インド古典音楽の10親音階(「thaat」と言う)を紹介したものです。

 

 

スケールを使った作曲は、該当音階の音だけを使い、それらをさまざまに組み合わせて旋律を作るものです。デモを見るには「ここ」をクリックしてください(該当部分は0:34分からです)。

 

ラーガはスケールとどう違うのか?

 

スケールは、選択された一連の音からなります。選択された音だけを使う限り、自由自在に組み合わせることが出来ます。ラーガはもう少し具体的に定義されます。スケールの枠組みの中でも、上り音階と下り音階(aarohとavroh)が別々に定義されます。これにより、各スケールから多くのラーガが得られます。ビデオは、KafiスケールとAsavariスケールから派生するいくつかのラーガを見せたものです。(インド音楽における音名とソルファ音節の説明は「この表」を見てください。)

 

「CC」を押せば日本語字幕が見られます。

 

 

 

ラーガの上り音階と下り音階の構造によって、その旋律が流れるための自然な経路が開きます。これにより、各ラーガの旋律には独特の流れ(「チャラン」と呼ばれるもの)が発生します。BhimpalasiとBageshreeは両方ともKafi音階のラーガであり、全体では全く同じ一連の音が使われています。しかし、上り音階と下り音階の違いにより、BhimpalasiとBageshreeの流れ(つまりチャラン)、ひいては、その旋律が大きく異なります。ビデオはその違いをデモしたものです。

 

 

上で見たように、ラーガのチャランはその上り音階と下り音階の構造によって決まる部分が大きいが、各ラーガの独自性や旋律の特徴に寄与する要素は他にもあります。

 

全ての音を共有しているにもかかわらず、BhimpalasiとBageshreeの旋律がかなり違うのは、その由来が違うからです。ラーガの多くは、インド各地の地元音楽に由来していますが、例えば遠く離れた二つの地域で偶然同じ一連の音が使われることがあるかもしれませんが、各地それぞれ音の組み合わせ方等が違いますので、全く別々のラーガが出来上がっても当然だと思います。

 

一方、同じ由来を持つラーガなら、基本的に似ている部分が大きいです。例えば、BhimpalasiとDhaniは、Dhanashreeという古いラーガが途中から別々の方向に進化していった結果出来上がった二つのラーガです。このためBhimpalasiとDhaniは基本的にはすごく似ています。が、時間の経過とともに別々の影響を受け、現在ではそれぞれ明確な独自性を持つものになっています。ビデオは、「似ているが、異なる」この2つのラーガを比較しながら、ラーガの独自性に寄与する重要な要素を説明・デモしたものです。

 

 

お知らせの後記事が続きます

東京・新宿周辺で初級・中級レベルの北インド(ヒンドゥスターニー)古典音楽の声楽教室を開始したく考えております。ご興味がある方は是非その旨下にコメントを残すか sadhana@raag-hindustani.com 宛てにメールいただければご返信いたします。

 

ラーガの分類

 

インド古典音楽には何百ものラーガがあり、それらを構造や、親音階、ラーガ族、季節感、雰囲気等に基づき色んな風に分類できます。ラーガに与えられる季節感や雰囲気は主観的ですが、構造や、親音階、そして、ラーガ族に基づく分類は、ラーガをさまざまな観点からよりよく理解するのに役立ちます。

 

構造 (jaati) に基づく分類

ラーガは、上り音階と下り音階の音の数に基づいて分類されます。例えば、audav-audav(5音5音)、shadav-shadav(6音6音)、 audav-shadav(5音6音)等。また、多くのラーガは、上りと下りで音符の数こそが同じでも、音符自体が違うこともあります。上記の両方を考慮した上で、対称的なラーガと非対称的なラーガに区別出来ます。さらに、ラーガの構造に関しては、くねったラーガ(vakra raag)、混合ラーガ(mishra raag)、複合ラーガ(jod raag)等もあります。

 

親音階(thaat)に基づく分類

ラーガは10親音階の下に分類することも出来ます。たとえば、♭3と♭7を使用するラーガはKafi thaatに分類され、♭2と♭6を使用するラーガはBhairav thaatに分類される、など。

 

ラーガ族(raagang)に基づく分類

ラーガ族とは、同じ由来を持つ、旋律の流れ(チャラン)が似通っているラーガの群れです。30ぐらいのラーガ族が認められていて、ほとんどのラーガがその下に分類できます。

 

難しいラーガ

ラーガの中では、割と簡単なものも、割と難しいものもありますが、難しいラーガの特徴は何でしょうか?難しいラーガは、例えば音程が難しかったり(隣同士の音の間の距離が短すぎたり、長すぎたり)、旋律の流れが複雑だったり、微分音が使われていたり、別のラーガとあまりにも似ていて独自性を保つのが難しかったりします。

 

ラーガの分類について実演奏にもリンクしながら、ブログで詳しく紹介します。

 

以上、「第3章 ラーガとは?(一歩ずつデモ+説明)」でした。

以下、このシリーズの他のブログ(未投稿のものも含めて)です。

 

第1章インド古典音楽の概要

第2章 インド古典音楽におけるオクターブの12音

第3章 ラーガとは?(一歩ずつデモ+説明)

   第3(a)章インド古典音楽~ラーガの構造別分類

第4章 インド古典音楽におけるリズム(ターラ)の考え方

第5章 インド古典音楽における装飾

第6章 インド古典音楽の楽譜の読み方

第7章 インド古典音楽~練習用簡単なラーガ曲

第8章 インド古典音楽における即興演奏の仕方

第9章 ラーガ演奏の構成

第10章 インド古典音楽を学ぶためのヒントとリソース

 

その他:

3000~3500年昔の神秘的な古代音楽

500年前に作曲された曲
日本の「音階」とインドの「ラーガ」:似ているものを探してみました!