2010年11月3日。この日はいつもの徘徊でなく、はっきりとこの物件を目指してやってきた。
予告篇でも書いたけど、この物件、レポートがほぼ見つけられない。紹介するにはデリケートな部分が(多々)あるんだけども…。
よって…
単刀直入にいこうと(笑)。
いきなりドーーン!!
堂々たる、煉瓦ポータルの隧道!
堂々たる、煉瓦ポータルの隧道!
これこそが近江鉄道の誇る至宝。知る人ぞ知る清水山隧道であります。写真は日野側ポータル。
レポートが少ない理由、もうおわかりだろうか?それは現役の鉄道トンネルだから。
レポートが少ない理由、もうおわかりだろうか?それは現役の鉄道トンネルだから。
場所はコチラ。
当路線で最長の駅間距離(4.9km)となる日野~水口松尾間のほぼ中間に位置する、延長147mの隧道だ。
でー。以下しばらく女々しい説明を(笑)。
現役鉄道トンネル。道路隧道や鉄道廃トンネルとは比べようもなく、非常に気を遣うジャンルだ。線路内に立ち入ることはもちろん、万が一運行に支障をきたすようなトラブルを起こせば・・・まぁ、詳しく述べるまでもない。
そんなリスクは犯せない・・・がゆえに、鉄道敷地外から眺めるしかないんである。通常は。
だがこの清水山隧道、あいにく敷地外から気軽に鑑賞できるようなロケーションにない。前後ともに掘割に阻まれ、鑑賞スポットは皆無。なのに土木学会のリストには、「煉瓦トンネル(煉瓦+石ポータル)」という魅惑のコメント(笑)。学会選の近代土木遺産Cランクとなっている。
見たかった、どうしても。・・・どうする?どうすんの?
わたくしとて聖人君子ではないので、利己的欲求を満たすため、決しておおっぴらには言えない行為に及ぶこともございます(笑)。とはいえ、そのことと人様に決してご迷惑をかけないように、ということとは、決して矛盾しないと思っておりましてね(笑)。
というわけでこの探索、詳細は伏せるが、ふたつだけ言っておく。
まずひとつ目。隧道の両側とも、多大な苦労を厭わなければ、線路を歩かずとも隧道に接近することは可能だ(夏場は無理かも)。ただ最後の最後、正面から撮影しようと思えば結局は線路内に立ち入ることになるのは必然。完全に自己責任での行動となる。
そしてふたつ目。ローカル路線である近江鉄道だからこそ決行した、ということ。ひっきりなしに列車の行き交う路線や人目の多い場所などでは、あるゆる意味で自殺行為だ。ダメ、ゼッタイ(笑)。
とはいえ、この時も細心の注意を払って決行した。
具体的には、近江鉄道の時刻表を持参、まずは付近の踏切でしばし待機し、遅延などなく所定のダイヤで運行されていることを確認した。ダイヤが乱れてなければ、列車がやってくるタイミングを予測するのは難しくない。また、今では貨物輸送もないので、時刻表に載らない運行の可能性は極少と思われた。まあ要は、時刻表を確認の上で、列車の間隙をぬって攻略した、ということ。
さー、十分に言い訳したぜ(爆)!改めて隧道鑑賞!
三つの切石で要石が構成されていることが最大の特徴だろうか。そして迫石は盾状迫石!
まさに「煉瓦+石ポータル」!煉瓦はイギリス積み。
立派なピラスターも備えている。が…
翼壁は?
布積みの切石だった。
そして…洞内!
うひょ~素晴らしい!
切石積みの側壁、そしてこれ全て煉瓦アーチ!いや~こういうのが間近で拝みたかったのよ(感涙)。
えも言われぬ風合いでございます…。
この隧道を含む区間が開業したのは1900(明治33)年の暮れのこと。時代的にはまさに煉瓦隧道隆盛期、この仕上がりにも大いに納得だ。なのでこの近江鉄道、煉瓦橋台を持つ開渠や暗渠はいくつかある(コレとか)。
のだが、なぜか残念ながら煉瓦アーチの橋梁や架道橋がないのよね~。まだ全線調査はしてないけど。
日野側ポータルを堪能したわたくし。当然ながら、水口松尾側も見てみたい~!え?歩いて抜けたワケないでしょ!それはやらない、絶対に。
撤収中に、(予定通り)貴生川行きの列車を1本やり過ごした。もちろん来るタイミングはわかっていたので、茂みに隠れて運転士に見つからないようにした(笑)。
コレはやり過ごしたあと、隧道へ進入する列車をズームしたもの。鉄道模型みたいっすな!
でー。
当然詳細は伏せるが、えっちらおっちらと。こっちのほうがキツかったな(笑)。
清水山隧道、水口松尾側ポータル。
日野側とまったく同じ。違いは見受けられない。両側とも翼壁が隠れ気味なのでなんかポータルが浮いて見えるが、やはり素晴らしい隧道だ。イ●バ物置的な倉庫がいささか興醒めだが(笑)。
県内にある佐和山隧道、横山隧道、賤ヶ嶽隧道といったメジャーな道路煉瓦隧道や、東海道本線・草津線など国鉄・関西鉄道由来の煉瓦物件などに対して、この清水山隧道の知名度・認知度は非常に低い。
もちろん前半でイヤというほど書いた(笑)事情によるものだが、それではあまりにもったいないと考え、今回勇気を出して(爆)記事にいたしました!
以上、完結。