新潟県五泉市の近藤酒造さんのお酒を何本か取り寄せて飲み比べをしました。
2本目はこれです。
地元の五泉市を中心にそこそこの存在感で商売をしていた近藤酒造の名前が新潟県内に広くいきわたるきっかけになったのがこの「菅名岳」の登場でした。
五泉市の市内でもおいしい水が湧くものの、市内から遠望できる標高909mの菅名岳の中腹には胴腹清水(どっぱらしみず)と言う湧き水があり、それが流れていく麓には連日水を汲みに来る人が多かったのです。
そこで蔵元は「この湧き水を仕込み水につかって酒を造りたい」と考え、県内の酒販店に提案すると賛成の声があがり、1992年から1月の一番寒い時期に有志が清水まで歩いて水を汲みにいくイベントが始まりました。
これが参加者に受けて、男性は20キロ、女性は10キロの水をタンクに詰めて、運ぶにも関わらず、多い年には400人もの参加者があったようです。
この企画に参加する酒販店が「越後泉山会」を作るまでになり、出来上がったお酒は確実に売れて、近藤酒造にとっては大切なブランドになりました。
ところが、ここに悲劇が起きました。
2023年1月の水汲みの際、私用があって、他のメンバーより先に下山をした酒販店主1人が雪崩に巻き込まれてしまいます。
皆と一緒であれば、すぐに掘り出して救うこともできたかもしれませんが、単独行動であったために、発見が遅れて亡くなられてしまったのです。
このため、水汲みイベントは中止になり、さらに翌年には遺族が近藤酒造を相手取って提訴するまでに至っています。
近藤酒造は蔵人関係者だけで水を汲んで「菅名岳」の酒を造り続けていますが、イメージダウンは大きく、蔵の経営に打撃になっています。
いただくお酒は3月の「にいがた酒の陣」で来場者に配られた60%精米の醸造アルコール添加の普通酒、生原酒です。
上立ち香はトロトロの中に棘が混じった香り。玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に厚めにとろみ層を乗せて、のっそりとした雰囲気で忍び入ってきます。
受け止めて保持すると、促されるままに膨らみ、拡散して、ざらつき感のある粘っこい粒々を速射してきます。
粒から現出してくるのは甘味8割、旨味2割。
甘味は水飴っぽい粘り気のはっきりとしたタイプ、旨味も凹凸が目立ってチクチクとしたコクが重なり合った印象で、両者はねっとり、こってりとした世界に摩擦熱を秘めながら踊ります。
流れてくる含み香は生酒ならではの脂身たっぷり香りでデコレート。
後から酸味が僅少、渋味が適量現れてメリハリを施します。
甘旨味は最後までややギクシャクとした舞いを披露するのでした。
それでは、近藤酒造のお酒、最後の3本目をいただくことにします。
お酒の情報(25年141銘柄目)
銘柄名「菅名岳(すがなだけ)生原酒 2024BY」
酒蔵「近藤酒造(新潟県五泉市)」
分類「普通酒」「生酒」「原酒」
原料米「不明」
酵母「不明」
精米歩合「60%」
アルコール度数「18度」
日本酒度「不明」
酸度「不明」
情報公開度(瓶表示)「△」
標準小売価格(税込み)「不明」
評価「★★★★(7.4点)」




