新潟県五泉市の近藤酒造さんのお酒を何本か取り寄せて飲み比べをしました。
最後の3本目はこれです。
菅名岳の事故で経営的にも打撃を受けた近藤酒造にとって、巻き返しのきっかけと期待されているのが、蔵元の近藤伸一さんの息子の恵介さんが2024年4月に蔵に戻ってきたことです。
なにしろ、恵介さんはすごい経歴をお持ちなのです。
1988年に生まれた恵介さんは京大の理学部卒、総合研究大学院大学に移り、その後、JAXAで研究に従事したスーパーエンジニアです。
恵介さんは研究に没頭して、蔵に帰る気持ちはなかったようですが、父上から「考えてくれ」と言われて、迷った末に蔵を継ぐことを決意。
修行先として八海醸造に入社し、製造に2年、企画に3年勤務して酒造業界のことを学んだうえで、帰蔵してきました。
帰ってきて蔵の設備の老朽化具合に絶句したようですが、「蔵の生き残りの道は小造りでいろいろな酒質の酒を造っていくしかない。それが国内販売だけでなく、輸出にもいい結果が出る」と考えて、あの手この手を打っているところです。
まだ、30代後半です。頑張ってほしいです。
さて、最後の3本目は蔵の一番古い銘柄である「酔星」の生酒です。
こちらも3月の「にいがた酒の陣」で来場者に配られた60%精米の醸造アルコール添加の普通酒、生酒です。
上立ち香はトロトロの中にチクチクとした刺激が混じった香りが。
口に含むと中程度よりもひと回り大きな旨味の塊が、平滑になった表面に厚めにどっぷりととろみ層を乗せて、のっしのっしとした雰囲気で忍び入ってきます。
受け止めて保持すると、自律的に膨らみ、拡散して、粘っこい粒々を次々と射掛けてきます。
粒から現出してくるのは甘味8割、旨味2割。
甘味は水飴っぽい粘り気の強いタイプ、旨味も無数のコクが混濁した印象で、両者は重々しい雰囲気を放ちながらも、エネルギッシュにジグザグに駆け回ります。
流れてくる含み香は生酒ならではの脂身たっぷり香りでデコレート。
後から酸味と渋味が少量現れて、かすかにメリハリを施し、終盤になると辛さが突き上げるように現れて、飲み下しいた後の余韻はねっとり辛いものでした。
近藤酒造の今後を見つめていきたいと思います。
お酒の情報(25年142銘柄目)
銘柄名「酔星(すいせい)しぼりたて生酒 2024BY」
酒蔵「近藤酒造(新潟県五泉市)」
分類「普通酒」「生酒」
原料米「不明」
酵母「不明」
精米歩合「60%」
アルコール度数「19度」
日本酒度「不明」
酸度「不明」
情報公開度(瓶表示)「△」
標準小売価格(税込み)「不明」
評価「★★★★(7.4点)」



