自宅の晩酌に宮城県大和町の大和蔵酒造さんが醸しているお酒をまとめて取り寄せて、飲み比べをしました。
最後の4本目はこれです。
「雪の松島(ゆきのまつしま)純米吟醸 吟のいろは 無濾過生原酒」。
大和蔵酒造は昨年(2023年)、3年ぶりに開かれた市販酒の鑑評会「SAKE COMPETITION」の純米酒部門で「雪の松島 海-KAI-純米原酒 ひとめぼれ」がナンバーワンを獲得しました。
しかも、杜氏の関谷海志さんが若手(40歳以下)のナンバーワン造り手としての表彰(若手奨励賞)を受けたことは、空太郎がSAKE Streetさんに記事を書いたので、そちらをお読みください。
ここでは、そこに書き切れなかったことを紹介します。
大和蔵酒造の造った酒の7割が親会社に流れています。
残りが他の酒販店です。
やまやは多店舗化していますが、店舗売りが主体なので、個人客相手で圧倒的に4合瓶の売り上げです。
一升瓶の取り扱いは少なく、結果として酒販店との取引は、その向こうにいる居酒屋需要なので一升瓶がメイン。
これで、棲み分けをしているわけです。
問題は今回の「海」の取り扱いです。
コンペで1位になったことで知名度が上がり、「海」を取り扱いたいという酒販店の申し入れはこの1年多かったわけですが、やまやで売っている「海」を他の酒販店にも提供するのは親会社もいい顔をしません。
かといって、子会社とはいえ、会社としては売り上げを伸ばしたい。
こうしたジレンマに山内社長は悩まされているようです。
当初、「海」は四合瓶のみで発売していますが、居酒屋向けに一升瓶を出すのも手かな、と山内さんはつぶやいていましたが、いまのところ実現していないようです。
さて、最後のお酒は、従来からあるブランドの純米吟醸酒です。
宮城県産吟のいろは50%精米の無濾過生原酒です。
上立ち香は生酒特有の麹バナの香りがしっかりと。
玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に薄らととろみ層を乗せて、元気良く滑り込んできます。
受け止めて保持すると、促されるままにヘルシーなムードで膨らみ、拡散して、適度な大きさのやや湿り気を帯びた粒々を速射してきます。
粒から滲出してくるのは甘味8割、旨味2割。
甘味はサシの入った濃醇なタイプ、旨味はシンプルでとろりとした粘っこい印象で、両者は仲良く、色香を放ちながら踊り合います。
流れてくる含み香も濃い目のトロのような香りでデコレート。
後から酸味はなし、渋味がわずかに現れて、薄氷の輪郭を形成。
味わいは終盤まで変化を起こさずにおっとりとした中濃の世界を描き切るのでした。
今回のコンペ1位をきっかけに、いい意味での蔵の転換に繋げて欲しいと思います。
お酒の情報(24年192銘柄目)
銘柄名「雪の松島(ゆきのまつしま)純米吟醸 吟のいろは
無濾過生原酒 2023BY」
酒蔵「大和蔵酒造(宮城県大和町)」
分類「純米吟醸酒」「無濾過酒」「生酒」「原酒」
原料米「吟のいろは」
酵母「不明」
精米歩合「50%」
アルコール度数「16度」
日本酒度「不明」
酸度「不明」
情報公開度(瓶表示)「△」
標準小売価格(税込み)「720ml=2100円」
評価「★★★★★(7.6点)」