自宅の晩酌に宮城県大和町の大和蔵酒造さんが醸しているお酒をまとめて取り寄せて、飲み比べをしました。
3本目はこれです。
大和蔵酒造は昨年(2023年)、3年ぶりに開かれた市販酒の鑑評会「SAKE COMPETITION」の純米酒部門で「雪の松島 海-KAI-純米原酒 ひとめぼれ」がナンバーワンを獲得しました。
しかも、杜氏の関谷海志さんが若手(40歳以下)のナンバーワン造り手としての表彰(若手奨励賞)を受けたことは、空太郎がSAKE Streetさんに記事を書いたので、そちらをお読みください。
ここでは、そこに書き切れなかったことを紹介します。
1996年に新しい設備を入れてスタートした大和蔵酒造ですが、その当時は総米3㌧の大仕込みで造ることを念頭に置いていたので、近年の小仕込みには適さない設備が残っています。
でも、それを杜氏の関谷さんは「工夫次第で対応するのも楽しいし、腕の見せ所です」と話しています。
それに、設備に制約されない部分で造りを工夫することはいくらでもできるわけです。
関谷さんは醪管理における追い水について、ずっと修正をかけてきたそうです。
次の様に話しています。
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醪の中のアルコール度数が高くなってくると、酵母の死滅が増えてきて、結果として酵母の自己消化によるオフフレーバーが気になるようになります。
このため、以前は搾る段階で17~18度だったのを、16度台で搾るように修正をかけました。
これを果たすには醪の途中で適宜追い水をしていくことが必要になるのですが、周囲からアルコール度数が8度を超えた後に追い水をすると脂肪酸臭が出るぞ、と言われて、その前にたくさん追い水をしていたのです。
ところが、8度以上になって追い水をしても、変な匂いはでてこないことがわかってきて、いまでは搾るタイミングまで適宜、追い水をしています。
結果として、オフフレーバーは減り、品質が向上したことを実感しています。
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追い水のやり方は結局、いろいろあるようで、これもまた、酒屋萬流ということだと思います。
さて、3本目は追い水をして、アルコール度数12度で搾った純米原酒です。
上立ち香は薄めの酒エキスの香りが。
口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に油膜を張って、スベスベの感触をアピールしながら、軽快に転がり込んできます。
受け止めて保持すると、促されるままに静々と膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を連射してきます。
粒から滲み出てくるのは甘味7割、旨味3割。
甘味は蜜の味なのに淡い印象、旨味はシンプル無垢のスレンダーなタイプで、両者は足並みを揃えて、静かに沈思黙考するように踊ります。
流れてくる含み香も細めの酒エキスの香り。
後から酸味と渋味は微量、現れて、静かに囃すのみ。
甘旨味はペースを崩さず、舞い続けるものの、終盤になると両者のバランスが崩れて、そのまま全体が縮退して、喉の奥へと吸い込まれて行きました。
空気のように軽い味わいを狙っているのでしょうが、大体、その方向性で仕上がっていると感じました。
お酒の情報(24年191銘柄目)
銘柄名「雪の松島(ゆきのまつしま)海(KAI)Air(エア)
純米原酒 2023BY」
酒蔵「大和蔵酒造(宮城県大和町)」
分類「純米酒」「原酒」
原料米「不明」
酵母「不明」
精米歩合「60%」
アルコール度数「12度」
日本酒度「不明」
酸度「不明」
情報公開度(瓶表示)「△」
標準小売価格(税込み)「720ml=1980円」
評価「★★★★★(7.5点)」