宮城「雪の松島 海 山田錦 純米原酒」甘い蜜がプクリと膨らみ、熟した葡萄の世界を描く | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

自宅の晩酌に宮城県大和町の大和蔵酒造さんが醸しているお酒をまとめて取り寄せて、飲み比べをしました。

2本目はこれです。

 

 

雪の松島(ゆきのまつしま)海(KAI)山田錦 純米原酒」。

 

大和蔵酒造は昨年(2023年)、3年ぶりに開かれた市販酒の鑑評会「SAKE COMPETITION」の純米酒部門で「雪の松島 海-KAI-純米原酒 ひとめぼれ」がナンバーワンを獲得しました。

しかも、杜氏の関谷海志さんが若手(40歳以下)のナンバーワン造り手としての表彰(若手奨励賞)を受けたことは、空太郎がSAKE Streetさんに記事を書いたので、そちらをお読みください。

 

ここでは、そこに書き切れなかったことを紹介します。

 

 

山形県の大勘酒造店を1993年に買収して子会社としたやまやは、当初は従来の態勢のまま酒造りを続けさせていました。

それが、記事にも書いたように、宮城県の工業団地に物流センターを新設しようとしたやまやに対して、「製造が主眼の団地だから、物流だけではダメ」との指摘があり、それならば老朽化していた大勘酒造店をこちらに移そうということになったわけです。

1996年に社名も大和蔵酒造となり、物流センターの一角に真新しい酒蔵が誕生しました。

 

 

こうした経緯から建物も設備もすべてやまやが負担して投資をしたので、大和蔵酒造は土地も設備もやまやから賃借りするスタイルになっています。

このため、設備資金の調達といったことには悩まされずに、淡々と美味しい酒造りに取り組めばよい日々でした。

しかし、逆に言えば、新しい設備を入れたくても、親会社の了解がなければ何もできない立場です。

子会社の悲哀です。

実際、1996年にはすべての酒造設備が当時の最新鋭だったわけですが、30年近く経って、時代に合わない事態に陥っています。

そんな中でも山内信雄社長は、親会社を説得して適宜、設備の入れ替えや新設をしてきました。

最新鋭の火入れ設備である「パストライザー&クーラー」もその一つで、これを導入した結果、SAKE COMPETITIONの純米酒部門で1位になれたと言っても過言ではないようです。

 

さて、2本目にいただくのは、山田錦60%精米の純米原酒、火入れです。

 

 

上立ち香は芳醇系の優しい甘い香りで1本目と同じです。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に打ち粉を振って、サラサラな感触を振りまきながら、軽やかなテンポで滑り込んできます。

 

受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を速射してきます。

粒から滲出してくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味はザラメ糖系で湿潤なタイプ、旨味はシンプル無垢で滑らかな印象で、両者は足並みを揃えて、艶を放ちながら仲良く舞うのです。

 

流れてくる含み香は濃い目の蜜の香りでデコレート。

後から酸味と渋味が適量現れて、しっかりとしたメリハリを付けます。

甘旨味はマイペースを維持して舞っていたのが、後半に入ると態度を変えて、そこかしこでプクリと表面が膨らんで、濃い蜜の粒を放出してくるのです。

味わいは徐々に熟した葡萄の世界へと変質し、そのまま、派手さを増しながら、最後は反転縮退して昇華して行きました。

 

 

個人的には1本目のひとめぼれよりも、こちらの方が魅惑的でした。

それでは、大和蔵酒造さんのお酒、3本目をいただくことにします。

 

お酒の情報(24年190銘柄目)

銘柄名「雪の松島(ゆきのまつしま)海(KAI)山田錦 純米原酒 2023BY」

酒蔵「大和蔵酒造(宮城県大和町)」

分類「純米酒」「原酒」

原料米「山田錦」

酵母「不明」

精米歩合「60%」

アルコール度数「16度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込み)「720ml=1980円」

評価「★★★★★★(7.7点)」