宮城「雪の松島 海 ひとめぼれ 純米原酒」気持ち粗削りな甘旨味が酸味に囃されて切れ味良く踊る | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

自宅の晩酌に宮城県大和町の大和蔵酒造さんが醸しているお酒をまとめて取り寄せて、飲み比べをしました。

1本目はこれです。

 

 

雪の松島(ゆきのまつしま)海(KAI)ひとめぼれ 純米原酒」。

 

大和蔵酒造は昨年(2023年)、3年ぶりに開かれた市販酒の鑑評会「SAKE COMPETITION」の純米酒部門で「雪の松島 海-KAI-純米原酒 ひとめぼれ」がナンバーワンを獲得しました。

しかも、杜氏の関谷海志さんが若手(40歳以下)のナンバーワン造り手としての表彰(若手奨励賞)を受けたことは、空太郎がSAKE Streetさんに記事を書いたので、そちらをお読みください。

 

ここでは、そこに書き切れなかったことを紹介します。

 

 

大和蔵酒造の山内信雄社長は、大和蔵酒造の親会社である酒類販売店チェーン最大手のやまや(仙台市)から2002年に社長として送り込まれてきています。

山内社長はやまやの創業者である山内寧子氏の五男として生まれ、当時は家業の域を出なかったやまやに入社。

営業と店舗開発に駆け回り、最後は常務を勤めていました。

 

50代半ばになって、子会社の社長をして、いずれ勇退というコースだったようですが、

「気づいたら77歳でした。親会社から次の社長選びを待っている格好です」

と山内さんは話しています。

けれども、日本酒蔵の経営が面白いようで、毎日、お気に入りの2シーターの車で仙台近くの自宅と蔵を往復する日々のようです。

 

さて、1本目にいただくのは、昨年1位に輝いたお酒、そのものになります。

ひとめぼれ60%精米の純米原酒、火入れです。

 

 

上立ち香は芳醇系の優しい甘い香りが。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に打ち粉を振って、サラサラな感触を振りまきながら、軽やかなテンポで滑り込んできます。

 

受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を連射してきます。

粒から滲み出てくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味は上白糖系のドライなタイプ、旨味はシンプル無垢で気持ち粗削りな印象で、両者は足並みを揃えて、流麗に爽快な世界を描くのです。

 

流れてくる含み香も良質な甘い香りでデコレート。

後から酸味と渋味が適量現れ、上質なクエン酸系の酸味は甘旨味にくっきりとアクセントを付与。

追随する渋味は甘旨味の舞いを引き締めるようにしてガードします。

終盤になると酢酸エチルの香りが顔をわずかに覗かせ、それをきっかけに縮退に転じ、飲み下した後の余韻は細く、短いものでした。

 

 

それでは、大和蔵酒造さんのお酒、2本目をいただくことにします。

 

お酒の情報(24年189銘柄目)

銘柄名「雪の松島(ゆきのまつしま)海(KAI)ひとめぼれ 純米原酒 2023BY」

酒蔵「大和蔵酒造(宮城県大和町)」

分類「純米酒」「原酒」

原料米「ひとめぼれ」

酵母「不明」

精米歩合「60%」

アルコール度数「16度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込み)「720ml=1760円」

評価「★★★★★(7.6点)」