自宅の晩酌にお酒を選びました。
これです。
長野県松本市の大信州酒造さんが醸しているお酒です。
大信州酒造の歴史において、圧倒的な存在感を見せているのが、2008年に91歳で引退するまでの75年間、杜氏を務めた下原多津栄さんです。
蔵人たちだけでなく、長野県の酒造関係者の多くに影響を与えた方で、その下原さんが口癖のように言っていた言葉が「愛感謝」でした。
美味しい酒を造るには自然環境から水、微生物、そして、造ったお酒を販売する店、飲み手、すべてに対して感謝の気持ちを持ち、酒造りの根幹を担う微生物や米に対しては深い愛情を持って接するべきだという信念からの言葉だったそうです。
蔵は下原さん引退後もその精神を引き継ぎ、忘れないために、蔵のそこかしこに「愛感謝」と書いた札を貼り付けています。
これは毎年蔵人総出で書いて貼り直しています。
しかも、その札の想いを微生物に直接伝えるために、仕込みタンクの外や麹室の入口の扉の札は文字が反転しているのです。
その徹底した姿勢には脱帽します。
このお酒のラベルも裏側には愛感謝の文字がお酒が読めるように描かれています。
上立ち香は適度にマイルドで柔らかな香りが。
玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に薄らととろみ層を乗せて、ゆったりとワルツを舞いながら忍び入ってきます。
受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を連射してきます。
粒から滲出してくるのは甘味7割、旨味3割。
甘味は上白糖系とザラメ糖系をミックスしたタイプ、旨味はシンプルで適度に湿り気を帯びた印象で、両者は足並みを揃えて、潤いたっぷりの舞いを展開します。
流れてくる含み香もスレンダーな酢酸イソアミルの香りで薄化粧を付与。
後から酸味と渋味はごく少量現れて、薄氷の輪郭を施します。
味わいは終盤までヘルシーな色香を放ちながら、麗らかな春の日のような世界を描き切るのでした。
いつもの美味しい大信州の味わいでした。
お酒の情報(24年166銘柄目)
銘柄名「大信州(だいしんしゅう)愛感謝 2023BY」
酒蔵「大信州酒造(長野県松本市)」
分類「純米吟醸酒」
原料米「不明」
酵母「自社酵母」
精米歩合「不明」
アルコール度数「16度」
日本酒度「不明」
酸度「不明」
情報公開度(瓶表示)「×」
標準小売価格(税込み)「720ml=1980円」
評価「★★★★★★(7.7点)」