茨城「稲里 山 純米」よく肥えた甘旨味がずかずかと駆け回り、酸渋に辛さが加わり、騒然となる | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

茨城県笠間市の磯蔵酒造さんが醸しているお酒をまとめて取り寄せて、飲み比べをしました。

 

2本目はこれです。

 

 

稲里(いなさと) 山 純米」。

 

機会に恵まれて、磯蔵酒造の蔵元である磯貴太さんの酒造りへの思いについてじっくりと伺うことができましたので、ここでその一部をご紹介したいと思います。

 

磯蔵酒造はフルーティな酒は絶対に造らないという基本方針を堅持しているのですが、それについて、磯蔵元はつぎのように話しています。

 

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いま、首都圏で売れるためにはフルーティが重要かも知れませんが、そもそもフルーティとは果実の褒め言葉ですよね。

ある時、知り合ったフランス人が、

「日本酒をフルーティと言うのは変だ。米で造ったお酒なんだから、米の味わいが一番重要だ」

と言われて、我が意を得たりと喜んだことを思い出します。

 

ゆえに米の味と香りのする酒を目指すことを再確認し、昔からの伝統的な酵母を使っています。

カプロン酸エチルをたくさん造る酵母は絶対使わずに、酢酸イソアミルの穏やかな香りを出す酵母を大切にしています。

フルーティに対抗するためのキャッチフレーズとして「米の味と香りのする酒」では古くさいし、インパクトが弱い。

そこで、僕が考え出した造語が「ライシー」でした。

2000年の初頭からこのライシーを使い始め、他の蔵も追随して流行るのではないかと思ったところが、20年経過してもライシーを使っているのはうちだけです。

残念です。

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フルーティーの対抗概念が辛口では違うなと空太郎は日ごろから感じているので、このライシーはいい言葉だと思いました。

磯蔵酒造のように、アンチ・フルーティーの蔵は結集してライシーという言葉を広げて欲しいと思ったのですが、いかがでしょうか?

 

さて、2本目は地元産ひたち錦、65%精米の純米酒です。

 

 

上立ち香は水飴を思わせるとろりとした甘い香りが。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に薄らととろみ層を乗せて、穏やかな雰囲気で忍び入ってきます。

 

受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散して、適度な大きさのウエットな粒々を速射してきます。

粒から滲み出てくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味は水飴系の中庸なタイプ、旨味は多彩で無限のコクが重層化した印象で、両者は足並みを揃えてよく肥えたでっぷりとした踊りを披露します。

 

流れてくる含み香は太い酒エキスの香り。

後から酸味と渋味が適量現れて、太めの甘味を引き締めるのです。

終盤に入ると辛さも加勢し、すべてが入り乱れて騒然となり、飲み下した後の余韻も長く伸びるのでした。

 

 

米の旨味たっぷりのヘビー級の世界でした。

それでは磯蔵酒造さんのお酒、3本目をいただくことにします。

 

お酒の情報(24年157銘柄目)

銘柄名「稲里(いなさと)山 純米 2023BY」

酒蔵「磯蔵酒造(茨城県笠間市)」

分類「純米酒」

原料米「ひたち錦」

酵母「不明」

精米歩合「65%」

アルコール度数「16度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込み)「1800ml=2860円」

評価「★★★★(7.4点)」