長野「ソガペールエフィス イリヤソントン」干しぶどう系の濃厚な甘旨味が酢酸エチルと絡み合う | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

本当に久し振りに長野県小布施町のワインメーカー、小布施ワイナリーが醸している日本酒をまとめて取り寄せて、飲み比べをしました。

3本目はこれです。

 

 

ソガペールエフィス イリヤソントン」。

 

小布施ワイナリーの蔵元の曽我彰彦さんは果てしなく能書をたれるのがお好きの方で、裏貼りに書かれている文字数は年々増えて、それに比例して字が小さくなり、健常者でも虫メガネがないと読めない事態に陥っています。

 

写真でも読めないと思いますので、個別に分析しながらご紹介します。

 

共通能書は総合前文、蔵の酒の特徴の次にこうあります。

 

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微生物混交発酵は自然発酵の醍醐味の一つ。

これは自然酵母天然発酵への前哨戦。

吟醸香マニア不向き。

理由無くして70%精米にあらず。

2023年の農薬不使用田の収穫量は一般美山錦量の約二分の一。

削らずとも低タンパクの米ゆえ滋味豊かなsake。

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米をより精米する目的は一般的には米の外側に多く分布するタンパク質を除去するためだと言われています。

でも、タンパク質が多いのは肥料をしっかりと与えているからで、農薬不使用の場合、肥料もゼロかあるいは極端に減らすため、出来上がった米は当然、タンパク質の含有量が少なく、結果として余り削らない“黒い米”でも味が多くならないと考える造り手も結構いらっしゃるのです。

 

 

そして、3本目のお酒のコメントは以下のようでした。

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イリヤ ソントン 生酛

明けぬ夜は無し、上がらぬ雨は無し。

今から凡そ100年前、人類は疫禍、戦禍の中を乗り越え生き続けてきました。

奇しくも100年前、日本酒製造技術も激動の時代真っ只中でありました。

様々な思いが交錯する「100年前」という名のsake。

100年前には既に発見されていた1号酵母と2号酵母の混交発酵。

もちろん(100年前の主流な仕込み法であった)生酛で仕込みます。

男酒と女酒のナンセンスなアッサンブラージュはまさに官能的。

現代を生きる我々はsake「IL YA CENT ANS」から何を感じ、何を後生に残しうるのでしょうか。

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そういうわけで、3本目は協会1号と2号の混交発酵です。

これは美山錦、59%精米の純米生酒です。

 

 

上立ち香は酒エキスよりもセメダインチックの酢酸エチルの香りが。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面にややざらついた細かな粒子を乗せて、まっしぐらに滑り込んできます。

受け止めて保持すると、自立的に粛々とした態度で膨らみ、拡散して、適度な大きさのウエットな粒々を速射してきます。

粒から滲出してくるのは甘味8割、旨味2割。

甘味はザラメ糖系の粘りのあるタイプ、旨味は個性的なコクがミルフィーユのように重層化した印象で、両者は妖しい艶を放ちながら、よく肥えた舞いを披露します。

流れてくる含み香は干しぶどうを思わせる香りが主体でデコレート。

後から酸味と渋味は少量現れて、薄氷の輪郭を施し、終盤になると僅かに鋭角的な辛さが現れて、濃醇の世界を引き締めながら終幕を迎えるのでした。

 

それでは、小布施ワイナリーの今季の日本酒、4本目をいただくことにします。

 

お酒の情報(24年153銘柄目)

銘柄名「ソガペールエフィス イリヤソントン 生酒 2023BY」

酒蔵「小布施ワイナリー(長野県小布施町)」

分類「純米酒」「無濾過酒」「生酒」「原酒」

原料米「美山錦」

使用酵母「協会1&2号酵母」

精米歩合「59%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「750ml=1700円」

評価「★★★★(7.4点)」