埼玉「直実 純米吟醸 しぼりたて」ハイグレードな甘旨味が良酸とともにカラフルな世界を描く | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

船橋の銘酒居酒屋「ナイン」さんにお邪魔しました。1人でお邪魔をし、気になるお酒をいただくことにしました。

2本目はこれです。

 

 

直実(なおざね)純米吟醸 しぼりたて」。

埼玉県熊谷市の権田酒造さんが醸しているお酒です。

 

埼玉県酒造組合の酒イベントに長年参加してきましたが、参加している蔵の半分ぐらいは変革の兆しがないまま、旧態依然たる酒を造っているなあと感じていました。

残念ながら、権田酒造さんもその一つでしたが、ようやく、動きが出てきました。

 

蔵元の息子二人が相次いで帰ってきたのです。

長男の権田直仁さんと、二才下の権田拓弥さんです。

直仁さんは32歳。

農大を卒業後、スーパーで働いていましたが、父上の清志さんが2015年の統一地方選で熊谷市の市議会議員に当選。

そちらの仕事が忙しくなり、直仁さんに帰って来るようにと伝え、2018年に帰って来ています。

弟の拓弥さんは農大の短大を出た後、大学院に行き、問屋で修業後、2021年に帰蔵。

いまは専務の直仁さんが製造責任者、常務の拓弥さんが事務責任者の傍ら、酒造りも手伝う体制です。

 

 

2021byから杜氏になった直仁さんは越後流だった酒造りを修正しながら、全国新酒鑑評会などにも出品するようになっています。

そして、2022BYのお酒で入賞を果たし、今季(2023BY)はついに金賞を獲得しています。

蔵の歴史で初めてのことになりました。

今後が楽しみです。

 

さて、いただくお酒は埼玉県が開発した酒造好適米、彩のかがやき60%精米の純米酒です。

 

 

上立ち香は芳醇なカプロン酸エチルの甘い香りが鼻腔をくすぐります。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に油膜を張って、スベスベの感触を振りまきながら、軽快なテンポで滑り込んできます。

受け止めて保持すると、促されるままに軽やかに膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の澄み切った粒々を速射してきます。

粒から滲出してくるのは甘味8割、旨味2割。

甘味は高純度のクリスタル様のタイプ、旨味は適度に奥行きを感じさせる印象で、両者は足並みを揃えて、エレガントでふくよかな舞いを披露します。

流れてくる含み香は芳醇な甘い香りでデコレート。

後からリンゴ酸系の酸味が少量、渋味もわずかに現れて、甘旨味の舞いに明快な輪郭を施します。

終盤まで伸びやかで心地良い世界を描き切るのでした。

 

文句なしに美味いです。権田酒造の今後に注目です。

 

お酒の情報(24年147銘柄目)

銘柄名「直実(なおざね)純米吟醸 しぼりたて 2023BY」

酒蔵「権田酒造(埼玉県熊谷市)」

分類「純米吟醸酒」

原料米「彩のかがやき」

使用酵母「不明」

精米歩合「60%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「720ml=不明」

評価「★★★★★★(7.7点)」