自宅の晩酌に、栃木県宇都宮市の井上清吉商店さんが醸しているお酒をまとめて購入し、飲み比べをしました。
3本目はこれです。
井上清吉商店は国際的な酒コンクールであるIWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)の日本酒部門で2010年と2022年の2回、ナンバーワンとなる「チャンピオン・サケ」に選ばれています。
チャンピオンになるのは至難の技なのに、2度も栄冠に輝いているのは山形県の出羽桜酒造さんと井上清吉商店の2蔵のみです。
そんな井上清吉商店さんの酒造りについては、空太郎がSAKE Streetに記事を書きましたので、そちらを是非、お読み下さい。
ここでは記事にできなかったことを追加で紹介します。
2004BYから使う酒米を全量栃木県産米に切り替えた時は、井上裕史さんも父上の抵抗にあいましたが、それを押しきり、2006BYには晴れて、ひとごこちで全国新酒鑑評会の金賞を獲得。
すると、周囲の見る目が変わり、さらに2010年にIWCでひとごこちの大吟醸がチャンピオン・サケを獲得して、その変化は決定的になりました。井上さんは次の様に話しています。
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それ以前は栃木の多くの酒蔵は、栃木県産の酒造好適米を蔵のミドルグレードの酒に使い、ハイグレードな酒には引き続き、兵庫の山田錦などを使っていました。
でも、それだと、栃木県の農家のモチベーションが上がりません。
それがうちがチャンピオン・サケを取ってからは、多くの酒蔵がひとごこちなどの好適米を大吟醸などの高級酒にも使うようになって、農家や農業振興をしている自治体などが酒に関心を持つようになったのです。
かつては賞を取って喜ぶのは酒蔵でしたが、近年は農家や自治体も同じように喜んでくれるようになりました。
その結果、栃木県内では新しい酒造好適米の開発しようという機運が盛り上がり、「夢ささら」誕生にもつながりました。とってもいい流れになっていると感じています。
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さて、3本目にいただくのは、ひとごこち50%精米の純米吟醸、生原酒です。
玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に厚めにとろみ層を乗せて、ゆっさゆっさと揺れながら転がり込んできます。
受け止めて保持すると、促されるままに膨らみ、拡散して、適度な大きさの気持ち粘っこい粒々を次々と射掛けてきます。
甘味はザラメ糖系をさらに濃くしたタイプ、旨味はたっぷりの脂身のような印象で、両者はプルプルと震えながら、妖艶な踊りを披露します。
それでは、井上清吉商店さんのお酒、最後の4本目をいただくことにします。
銘柄名「澤姫(さわひめ)純米吟醸 生原酒 2023BY」
酒蔵「井上清吉商店(栃木県宇都宮市)」
分類「純米吟醸酒」「生酒」「原酒」
原料米「ひとごこち」
使用酵母「栃木酵母T-S&T-F」
精米歩合「50%」
アルコール度数「17度」
日本酒度「+5.5」
酸度「1.3」
情報公開度(瓶表示)「◎」
標準小売価格(税込)「720ml=1750円」
評価「★★★★(7.4点)」