栃木「澤姫 生酛純米 生原酒」超濃厚な甘旨味が極彩色の熱帯の夜を描く | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

自宅の晩酌に、栃木県宇都宮市の井上清吉商店さんが醸しているお酒をまとめて購入し、飲み比べをしました。

最後の4本目はこれです。

 

 

澤姫(さわひめ)生酛純米 生原酒」。

 

井上清吉商店は国際的な酒コンクールであるIWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)の日本酒部門で2010年と2022年の2回、ナンバーワンとなる「チャンピオン・サケ」に選ばれています。

チャンピオンになるのは至難の技なのに、2度も栄冠に輝いているのは山形県の出羽桜酒造さんと井上清吉商店の2蔵のみです。

そんな井上清吉商店さんの酒造りについては、空太郎がSAKE Streetに記事を書きましたので、そちらを是非、お読み下さい。

 

ここでは記事にできなかったことを追加で紹介します。

 

酒造りの細部にもこだわりを見せる井上清吉商店の井上裕史さんは、山廃&生酛酒母についても一家言お持ちです。

次の様に話しています。

 

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うちは2003BYに初めて山廃と生酛のお酒を造りました。

翌年以降はしばらく生酛だけに絞りましたが、2009BYからは再び、両方を手掛けて、今に至っています。

というのも、どちらも天然の乳酸菌を呼び込んで造るにも関わらず、まったくできる酒質が異なるので、面白いからどちらもやっていこうと決めたのです。

 

2つをやると、必ず生酛よりも山廃の方がごつい味になるんです。

生酛は低温による酛摺りをすることで、内部の空気(酸素)が減って、嫌気的な環境が整い、雑菌が侵入しにくい条件になっているのだと考えます。

だから、山廃は濃厚旨口になるのに対して、生酛は相対的に淡麗で旨口に仕上がるのだと思っています。

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今夜いただくのはそんな生酛酒母で、60%精米の純米酒、1年余り熟成してあります。

 

 

上立ち香はぶ厚い酒エキスの香りがどっぷりと。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面にぶ厚くとろみ層を乗せて、表面を大きく波立たせながら転がり込んできます。

受け止めて保持すると、表面のとろみ層が崩れて、無数の粘っこい粒々となって口の中いっぱいに四散してきます。

粒から現出してくるのは甘味8割、旨味2割。

甘味はザラメ糖系をさらに濃くしたタイプ、旨味はたっぷりの脂身のような印象で、両者はプルプルと震えながら、多彩で妖しい踊りを披露します。

流れてくる含み香もトロトロの酒エキスの香り。

甘旨味が濃いためか、後から酸味と渋味が認識できず、乳酸も現れず、そのまま終盤までひたすら極彩色の熱帯の夜が演じ続けられ、最後に飲み下した後の余韻も太くて長いものでした。

 

山廃はもっと濃いのかも知れませんが、これは生で1年熟成をかけていることもあり、ド迫力の存在感でした。

 

お酒の情報(24年127銘柄目)

銘柄名「澤姫(さわひめ)生酛純米 生原酒 2022BY」

酒蔵「井上清吉商店(栃木県宇都宮市)」

分類「純米酒」「生酒」「原酒」「生酛酒」「熟成酒」

原料米「とちぎ酒14」

使用酵母「栃木酵母T-ND」

精米歩合「60%」

アルコール度数「18度」

日本酒度「±0」

酸度「1.8」

情報公開度(瓶表示)「◎」

標準小売価格(税込)「720ml=1600円」

評価「★★★★(7.4点)」