栃木「澤姫 吟醸」透き通ったナチュラルな甘旨味が軽やかに鮮明なハーモニーを奏でる | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

自宅の晩酌に、栃木県宇都宮市の井上清吉商店さんが醸しているお酒をまとめて購入し、飲み比べをしました。

1本目はこれです。

 

 

澤姫(さわひめ)吟醸」。

 

井上清吉商店は国際的な酒コンクールであるIWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)の日本酒部門で2010年と2022年の2回、ナンバーワンとなる「チャンピオン・サケ」に選ばれています。

チャンピオンになるのは至難の技なのに、2度も栄冠に輝いているのは山形県の出羽桜酒造と井上清吉商店の2蔵のみです。

そんな井上清吉商店の酒造りについては、空太郎がSAKE Streetに記事を書きましたので、そちらを是非、お読み下さい。

ここでは記事にできなかったことを追加で紹介します。

 

井上清吉商店の最大のこだわりは「麹&酵母優先主義」です。

蔵元の井上裕史さんは次の様に話しています。

 

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酒造りとは微生物との究極の共同作業です。

麹も酵母も美味しい酒を造るために積極的に協力してくれるわけではありません。

だから、彼らの都合を優先し、それに人間が合わせていかなければならない。

麹室に引き込んでから出麹までは基本は48時間ですが、毎回麹の様子を見て、ベストなタイミングで出します。

だから、出麹が翌々日の夕方になることはザラです。

次の麹造りがあるからと機械的に出麹は決してしません。

醪もあと2,3日待てば最高の状態になるのに、後がつかえているから搾るといったことが一番大嫌いです。

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「そりゃあ、設備に余裕があればうちもそうするよ」とか「蔵人の数が多ければ対応できるけど」と言った声が聞こえてきそうですが、ま、トレードオフの問題ですね。

ただ、ひたすら理想を追い求める井上清吉商店の姿勢は、それはそれで見事だと思います。

 

さて、1本目にいただくのは、2022年にIWCでチャンピオン・サケとなったお酒と同じスペックのアル添吟醸酒です。

 

 

上立ち香は酢酸イソアミルの紳士的な香りが。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に油膜を張って、ツルツルの感触をアピールしながら、まっしぐらに転がり込んできます。

受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を速射してきます。

粒から滲み出てくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味は上白糖系のさらりとしたタイプ、旨味は無垢で艶やかな印象で、両者は羽毛のように半ば浮き上がりながら、透き通ったナチュラルな舞いを披露します。

流れてくる含み香は採れたてのフルーツバスケットから漂う薫りでデコレート。

後から酸味と渋味はほとんど現れず、終盤まで甘旨味の鮮明なハーモニーが続き、最後にチラリと辛さが加わりながら終盤を迎えるのでした。

 

それでは、井上清吉商店さんのお酒、2本目をいただくことにします。

 

お酒の情報(24年124銘柄目)

銘柄名「澤姫(さわひめ)吟醸 2023BY」

酒蔵「井上清吉商店(栃木県宇都宮市)」

分類「アル添吟醸酒」

原料米「地元産ひとごこち」

使用酵母「栃木酵母T-ND」

精米歩合「50%」

アルコール度数「16度」

日本酒度「+4.5」

酸度「1.2」

情報公開度(瓶表示)「◎」

標準小売価格(税込)「720ml=2200円」

評価「★★★★★★(7.7点)」