岩手「百磐 純米 おりがらみ生原酒」初々しく伸びやかな甘旨味がマイルドで精緻な舞いを見せる | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

岩手県を旅してきました。食事をいただく時には必ず岩手の地酒を楽しみました。

帰りの盛岡駅でも駅ビルに入っている居酒屋「うんめのす」さんで、新幹線の発車待ちを利用して、いろいろいただきました。

1杯目にいただいたのはこれです。

 

 

百磐(ひゃくばん)純米 おりがらみ生原酒」。

岩手県一関市の磐乃井酒造さんが醸しているお酒です。

 

磐乃井酒造は異色の酒蔵です。

個人が家業として興したのではなく、地域の酒蔵として一関市花泉町(現在の地)に地元有志175人の出資で1917年に誕生した“普通の企業”です。

そして、現在に至るまでその形態は変わっておらず、その時々の優秀な人材が社長を受けてきました。

 

そんな蔵の今の杜氏は佐藤竜矢さんです。

佐藤さんは大学を卒業後、都内の会社で営業職として頑張っていましたが、一関市の実家の父上が亡くなったのを契機に帰郷。

そして、ハローワークで仕事を探した時に見つけたのが磐乃井酒造の営業職だったそうです。

 

 

2013年に入社しました。

営業は慣れた仕事だったのですが、売り込み先の酒販店や居酒屋に足を運んだ時に、酒質を問われても細かく説明出来ないことに限界を感じ、社長に「営業だけでなく、酒造りも手伝いたい」と頼み込み、それを許されます。

やってみると酒造りが面白くなって熱中し、4年後の2017年には営業担当兼杜氏になりました。

現在は専務として経営も見ているそうです。

まだ、30代後半と若く、磐乃井酒造の今後が楽しみです。

 

さて、いただくのは岩手県産ぎんおとめの65%精米、純米酒のおりがらみ生原酒です。

 

 

上立ち香はフレッシュな麹バナ混じりの薄甘い香りが。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に薄らととろみ層を乗せて、元気よく、駆け込んできます。

受け止めて保持すると、自立的に軽快なテンポで膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を速射してきます。

粒から滲出してくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味は上白糖系のドライなタイプ、旨味はシンプル無垢でやや粗めの印象で、両者は足並みを揃えてエネルギッシュに健康的な舞いを披露します。

流れてくる含み香は澱混じりのピチピチとした香り。

後から酸味と渋味が適量現れて、活力溢れる甘旨味をコントロールするように締め付けるのです。

味わいは終盤までマイルドで精緻な世界を描き切るのでした。

 

それでは、「うんめのす」でのお酒、2杯目をいただくことにします。

 

お酒の情報(24年116銘柄目)

銘柄名「百磐(ひゃくばん)純米 おりがらみ生原酒 2023BY」

酒蔵「磐乃井酒造(岩手県一関市)」

分類「純米酒」「生酒」「原酒」「おりがらみ酒」

原料米「ぎんおとめ」

使用酵母「ゆうこの想い」

精米歩合「65%」

アルコール度数「16度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「○」

標準小売価格(税込)「1800ml=2970円」

評価「★★★★★(7.6点)」