長野の銘酒「水尾」を醸している田中屋酒造店さんのお酒をまとめて取り寄せて、飲み比べをしました。
3本目はこれです。
田中屋酒造店は昨年(2023)12月から、有料の酒蔵体験ツアーという企画を始めました。
3種類のメニューが用意されていますが、そのうちの2つに実際に参加してきました。
最初に参加したのは蔵見学と酒米の田んぼを見ながらのテイスティングを柱とする「バックグラウンドツアー」でした。
1月の下旬の平日の午後で、定員は7人でしたが、強い寒波が入ってきた直後ということもあり、参加者は空太郎だけで、案内人を担当した蔵元の田中隆太氏を独り占めできるという僥倖にあずかりました。
最初の40分間は蔵の2階のレクチャールームで蔵の紹介ビデオを15分見てから、蔵のパンフレットをもとに、田中社長が説明しました。
強調したのは酒の仕込み水と使っている酒米の点でした。
それから1時間は蔵見学。
原料処理を見た後、隣の仕込み部屋へ。空調を利かせることができる部屋には仕込みタンクが並び、ヤブタも鎮座していました。
その2階が酒母室で、奥に松尾様の神棚があり、蔵元と一緒に二礼二拍手一礼をします。
酒母と醪の様子(状貌)を観察した後、試飲をさせてくれました。
さらに、180mlの瓶にお酒を自分で詰める直汲み体験をさせてくれました。
これは後で酒米の田んぼに行った先で吞むためのものでした。
次に火入れ装置、瓶詰ライン、貯蔵庫を見て回ります。
最後に麹室は扉を開けてもらいましたが、中には入れてもらえませんでした。
さて、それから蔵の用意された車で木島平村の金紋錦が栽培されている田んぼに向かいます。
蔵人が運転する車に田中蔵元と空太郎が乗車。
いろいろな道具を乗せたもう一台を別の蔵人が運転してついてきました。
田んぼまでは10分足らず。
この時期だから見わたす限りの広大な雪原。
行く手に木島平スキー場のゲレンデが結構な迫力で望めます。
雪原の端に金紋錦の集荷場が見えました。
田んぼの脇のあぜ道に、蔵人2人が折りたたみの机を出し、酒瓶のコンテナを逆さまにして椅子代わりとします。
さらには、折りたたみの簡易テントを組み立てようとしましたが、この日は晴れでしたが、風が強く煽られるので、テントはすぐに撤収でした。
その後、用意されたお酒を蔵の用意したおつまみ(瓜の酒粕漬けとうなぎの骨せんべい)とともにいただきました。
目の前の田んぼで育てられた金紋錦の特別純米新酒生(2023BY)と金紋錦の純米大吟醸(2022BY)を飲んだ後は、蔵見学時に詰めたしぼりたての金紋錦特別純米を熱燗でいただきました。
この日の気温は2~3度で極端に寒くはなく、かつ、太陽の西日が暖かかったのですが、小1時間いたので、熱燗は食道に染み入るようで心地良かったです。
蔵元の話は長野を代表する酒造好適米の金紋錦にまつわる面白いもので、飯山の気候風土を体感しながら、この地でできた米で仕込んだ酒を飲むというのは貴重な体験でした。
これで、料金は15000円。
高いとみるか安いと見るかは、人それぞれでしょう。
空太郎は非常に貴重な体験で、十分元がとれるツアーと感じました。
さて、3本目は醸造アルコール添加の辛口吟醸酒、生詰とあるのは、このお酒は一回火入れの瓶貯蔵であることを示しています。
口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に油膜を張って、ツルツルの感触を振りまきながら、軽快なテンポで滑り込んできます。
受け止めて保持すると、自律的に流麗に膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を速射してきます。
甘味は上白糖系のドライなタイプ、旨味はシンプル無垢で肌理の細かな印象で、両者は足並みを揃えて、シルキータッチの凜々しい舞いを披露します。
流れてくる含み香もイソアミルの上品な香りで薄化粧を施します。
後から来るのは渋味がほんの少しで、味わいのピントをはっきりとさせるのです。
甘旨味は終盤まで流麗さを失わないまま踊り、最後は縮小に転じ、そのまま加速度を上げて、喉の奥へと吸い込まれていきました。
それでは、田中屋酒造店のお酒、4本目をいただくことにします。
銘柄名「水尾(みずお)辛口吟醸 生詰 山恵錦 2023BY」
酒蔵「田中屋酒造店(長野県飯山市)」
分類「吟醸酒」「生詰酒」
原料米「地元産山恵錦」
使用酵母「不明」
精米歩合「59%」
アルコール度数「15度」
日本酒度「不明」
酸度「不明」
情報公開度(瓶表示)「△」
標準小売価格(税込)「720ml=1200円」
評価「★★★★★★(7.6点)」