長野の銘酒「水尾」を醸している田中屋酒造店さんのお酒をまとめて取り寄せて、飲み比べをしました。
2本目はこれです。
さて、水尾山の麓の湧き水を使う事になり、1992BYの年は試しに取水池の水と蔵の井戸の水とでそれぞれ同じ純米酒を造ったのだそうです。
すると発酵の状態がまったく違っていて、
「醪の泡の立ってくるスピードが井戸水は速く、水尾の水は非常に遅かったのです。井戸水は硬水で、水尾水は軟水だったので当然の結果だったかもしれませんが、出来上がったお酒もはるかに水尾水の酒が美味しかったのです。以後、水尾の水だけて醸しています」
と田中隆太蔵元。
ちなみにその取水地は個人の私有地の敷地内で湧いていて、その地区の6軒が水道組合を作って分けていました。
当初、田中屋酒造店は余った水を分けてもらっていましたが、使う量が徐々に増えたことから、別の取水場を作ることを了解してもらったのだそうです。
年間にわずかな謝礼金のみを支払っていますが、代わりにその地区の取水場のすべての清掃を田中屋酒造店が担っています。
田中屋酒造店から取水地まで15㌔あって、所要時間は片道30分です。
当初は水量が少ないこともあり、500㍑を汲むのに1時間もかかり、一回の取水量が1500㍑なので、往復の時間を含めると4時間の大仕事でした。
新しい取水地に移ってからは、500㍑を汲むのに10分弱となり、全部で1時間半の仕事に効率化できています。
さて、2本目にいただくのは、お隣の木島平村産の金紋錦、49%精米の純米吟醸、火入れです。
玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に打ち粉を振って、さらさらな感触をアピールしながら、軽快なテンポで滑り込んできます。
受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を連射してきます。
甘味は上白糖系のさらりとしたタイプ、旨味はシンプル無垢でかつ滑らかな印象で、両者は足並みを揃えて、引っかかりのない円みのあるハーモニーを奏でます。
後から酸味と渋味が少量現れて、くっきりとしたメリハリを施します。
甘旨味は終盤までナチュラルな世界を描き、最後は反転縮退して消えていきました。
純米酒よりも渋味が抑えめでエレガントでした。
それでは、田中屋酒造店のお酒、3本目をいただくことにします。
銘柄名「水尾(みずお)純米吟醸 金紋錦 2023BY」
酒蔵「田中屋酒造店(長野県飯山市)」
分類「純米吟醸酒」
原料米「地元産金紋錦」
使用酵母「不明」
精米歩合「49%」
アルコール度数「15度」
日本酒度「不明」
酸度「不明」
情報公開度(瓶表示)「△」
標準小売価格(税込)「720ml=1800円」
評価「★★★★★★(7.6点)」