長野の銘酒「水尾」を醸している田中屋酒造店さんのお酒をまとめて取り寄せて、飲み比べをしました。
1本目はこれです。
田中屋酒造店が特定名称酒の「水尾」をデビューさせたのは1992年です。
それまでは「養老」という銘柄で普通酒主体でやってきたのですが、1990年に蔵に帰ってきた田中隆太現社長が特定名称酒に軸足を移して生き残ろうと、県の先生に相談しました。
すると、「こんな水で仕込んでいても未来永劫、いい酒にはならない。新しい井戸を掘りなさい」と言われてしまいます。
蔵は飯山市の市街地にあり、井戸を掘ってもいい水がでるとは限らなかったので、「それならこの地域の湧き水などから望ましい仕込み水を見付けて、運べばいい」と考えます。
そして、おいしいコーヒーやお茶を飲むために水を汲みに行っている人たちの噂を聞きながら、6~7カ所を候補に上げました。
その中から選んだのが野沢温泉村の水尾山(1044㍍)の北面の虫生というところの湧き水でした。
軟水のお茶を入れても美味しい水だったそうで、これを採用すると共に、山の名前をお酒の銘柄にしたのでした。
そして、現在では500㍑のタンク3本で一回に1.5㌧汲んでは蔵に運んでいます。
それを年間150回繰り返しています。
大変な作業です。
ちなみに長野県の指導者として新たに就任した先生が数年前に「いい酒を造るにはいい水が欠かせない。県内の酒蔵の仕込み水を集めてくれ」との指示が飛び、50蔵の水が集まったそうですが、その中から「これが理想の水」と選ばれた3蔵の水のうちの1つが水尾の仕込み水だったそうです。
田中屋酒造店の運命を分けた30年前の決断でした。
さて、1本目にいただくのは、お隣の木島平村産の金紋錦、59%精米の特別純米、火入れです。
口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に打ち粉を振って、さらさらな感触をアピールしながら、軽快なテンポでまっしぐらに駆け込んできます。
受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を速射してきます。
甘味は上白糖系のドライなタイプ、旨味はシンプル無垢でやや粗めの印象で、旨味が主導で引き締まった世界を描きます。
後から酸味が微量、渋味が適量現れ、さらに味わいを引き締めていきます。
甘旨味は淡々と無駄なく踊り、最後は反転縮退して一気に昇華して行きました。
水尾の定番酒でした。
それでは、田中屋酒造店のお酒、2本目をいただくことにします。
銘柄名「水尾(みずお)特別純米 金紋錦 2023BY」
酒蔵「田中屋酒造店(長野県飯山市)」
分類「特別純米酒」
原料米「地元産金紋錦」
使用酵母「協会7号酵母」
精米歩合「59%」
アルコール度数「15度」
日本酒度「不明」
酸度「不明」
情報公開度(瓶表示)「△」
標準小売価格(税込)「720ml=1550円」
評価「★★★★★(7.5点)」