佐賀「東鶴MOVIN‘ 純米吟醸生酒」チャーミングな甘旨味が酸渋と競い合い、彩り豊かな世界を描く | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
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自宅の晩酌にお酒を選びました。

これです。

 

 

東鶴(あづまつる)MOVIN‘ 純米吟醸生酒」。

1本前と同じ、佐賀県多久市の東鶴酒造さんが醸しているお酒です。

 

東鶴酒造は2019年8月の九州北部の豪雨で蔵の脇を流れる別府川が氾濫し、蔵は床上浸水の被害を受けました。

麹室にも水が入り、せっかく堀ったばかりの井戸もやられてしまいました。

 

その後、応急処置をして酒造りは続行してきましたが、最近、井戸を再度掘り直しました。

これまでの井戸が深さ10㍍だったのが、今回は100㍍まで掘り下げて、軟質で良質な水を獲得できたそうです。

さらに、麹室も一新。

銘柄の見直しやラベルの変更なども、こうした造りの体制の充実も背景にあるようです。

 

 

このお酒のサイド名の「MOVIN‘(ムービン)」には、「蔵として前向きに動くこと」と「躍動感あふれる味わい」の2つの意味を込めているそうです。

 

50%精米の純米吟醸生酒です。

 

 

上立ち香は芳醇なカプロン酸エチルの優雅な香りが鼻腔をくすぐります。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に微細な気泡を包含したとろみ層を乗せて、まっしぐらに転がり込んできます。

受け止めて保持すると、気泡の微かな破裂を背後に聞きながら、テンポ良く膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を速射してきます。

粒から滲出してくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味は上白糖系のさらりとしたタイプ、旨味はシンプルで滑らかな印象で、両者は仲良くタイミングを合わせて、軽く跳びはねるようにして踊るのです。

流れてくる含み香も華やかな甘い香りでデコレート。

後から酸味が適量、渋味が少量現れて甘旨味を粛々と囃すのです。

甘旨味は終盤まで和やかに舞い、最後は反転縮退して、喉の奥へと吸い込まれて行きました。

 

これもまた、1本目と同様、上出来でした。

 

お酒の情報(24年87銘柄目)

銘柄名「東鶴(あづまつる)MOVIN‘ 純米吟醸生酒 2023BY」

酒蔵「東鶴酒造(佐賀県多久市)」

分類「純米吟醸酒」「生酒」

原料米「雄山錦」

使用酵母「不明」

精米歩合「50%」

アルコール度数「16度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「1800ml=3520円」

評価「★★★★★(7.7点)」