自宅の晩酌に富山市の富美菊酒造さんのお酒をまとめて取り寄せて、飲み比べをしました。
1本目はこれです。
2012年から完全四季醸造に切り替えて、一年中フレッシュなお酒を出荷してブランド価値を高めてきた羽根屋のお話は、空太郎がSAKEStreetに記事を書きましたので、是非、お読み下さい。
ここでは、そこに書き切れなかったお話を紹介します。
1966年に富美菊酒造のご子息として生まれた羽根敬喜さんは大学卒業後、1991年春、修行目的で協和発酵工業に入社します。
協和発酵工業は現在は日本酒など造っていませんが、当時は門司工場(福岡県)と土浦工場(茨城県)で日本酒を造っていたのだそうです。
「どうせ、自動化機械で大造りの安い酒を造っていたのだろう」と勝手に想像しがちですが、実は大吟醸も造っていて、技術力をアピールするためにごく一部とはいえ、小仕込みの酒造りもしていたそうで、酒造りの基本は学べたようです。
その証拠というのもなんですが、協和発酵工業で修業した蔵元には黒龍酒造の水野直人氏、来福酒造の藤村俊文氏、冨田酒造の冨田泰伸氏など、なかなかの有名人がいらっしゃるのです。
ただ、羽根さんはあまり熱心に修業しなかったそうで、3年後の1994年の6月には退社して、蔵に戻っています。
さて、1本目にいただくのは、現在、蔵の看板商品になっている60%精米の純米吟醸、生酒です。
口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に油膜を張って、ツルツルの感触を振りまきながら、軽やかなテンポで忍び入ってきます。
受け止めて保持すると、自律的に流れるように膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス球様の粒々を速射してきます。
甘味は上白糖系のさらりとしたタイプ、旨味はシンプル無垢で肌理の細かな印象で、両者は仲良くテンポを合わせながら、ふっくらとした柔らかな舞いを披露します。
後から酸味が適量、渋味が少量現れて、含み香と共に明快なアクセントを施すのです。
甘旨味は心地良さそうに終盤まで小粋な舞いを続け、最後は反転縮退して昇華して行きました。
それでは、羽根屋のお酒、2本目をいただくことにします。
銘柄名「羽根屋(はねや)煌火(きらび)純米吟醸 生酒 2023BY」
酒蔵「富美菊酒造(富山市)」
分類「純米吟醸酒」「生酒」「原酒」
原料米「五百万石」
使用酵母「不明」
精米歩合「60%」
アルコール度数「16度」
日本酒度「不明」
酸度「不明」
情報公開度(瓶表示)「△」
標準小売価格(税込)「1800ml=3500円」
評価「★★★★★★(7.7点)」