富山「羽根屋 プリズム 純米吟醸 生酒」ふっくらとした甘旨味が含み香と共に潤いたっぷりに踊る | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

自宅の晩酌に富山市の富美菊酒造さんのお酒をまとめて取り寄せて、飲み比べをしました。

2本目はこれです。

 

 

羽根屋(はねや)プリズム 純米吟醸 生酒」。

 

2012年から完全四季醸造に切り替えて、一年中フレッシュなお酒を出荷してブランド価値を高めてきた羽根屋のお話は、空太郎がSAKEStreetに記事を書きましたので、是非、お読み下さい。

ここでは、そこに書き切れなかったお話を紹介します。

 

1994年6月に蔵に戻った時、蔵の生産石数は3600石もありましたが、90%が普通酒で、かつ80数%がパック酒だったのだそうです。

1990年代に入って、大手が富山の市場にも参入してきて、パック酒は劣勢になって、赤字続きでした。

しかし、借入金を返済するためのお金がいるので、赤字が膨らむにも関わらず、パック酒から撤退ができなかったのです。

 

 

そこで羽根さんは、100石ぐらいしかなかった特定名称酒をいかに増やしていくかが生き残りの道だと考え、それまでの銘柄「富美菊」以外の特約店銘柄「羽根屋」を2002年に投入したというわけです。

以後、羽根ご夫妻は都内で開かれるお酒のイベントにせっせと出てきて、「羽根屋」の宣伝に注力し、2007年頃には特定名称酒は300石まで増える一方、パック酒はほとんどなくなって、体質転換が進んでいったのです。

 

さて、2本目にいただくのは、現在、蔵のもう1つの看板商品になっている60%精米の純米吟醸、生酒ですが、こちらは直汲みです。

 

 

上立ち香はフレンドリーな甘い香りが優しく漂ってきます。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に油膜を張って、ツルツルの感触をアピールしながら、軽やかなテンポで滑り込んできます。

受け止めて保持すると、自律的にフワフワと半ば浮き上がるようにして膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス球様の粒々を連射してきます。

粒から滲出してくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味は上白糖系のさらりとしたタイプ、旨味はシンプル無垢で肌理の細かな印象で、両者は足並みを揃えて、潤いたっぷりなハーモニーを奏でるのです。

流れてくる含み香はフレッシュジューシーな香りでデコレート。

後から酸味が適量、渋味が少量現れて、明快なメリハリを付与。

甘旨味は心地良さそうに終盤まで小粋な舞いを続け、最後は反転縮退して昇華して行きました。

 

1本目の煌火ととても似ていました。

それでは、羽根屋のお酒、3本目をいただくことにします。

 

お酒の情報(24年78銘柄目)

銘柄名「羽根屋(はねや)プリズム 純米吟醸 生酒 2023BY」

酒蔵「富美菊酒造(富山市)」

分類「純米吟醸酒」「生酒」「原酒」「直汲酒」

原料米「五百万石」

使用酵母「不明」

精米歩合「60%」

アルコール度数「16度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「1800ml=3980円」

評価「★★★★★★(7.7点)」