新潟に用事ででかけました。知人と一杯やることになり、選んだお店が「越後一会 十郎」でした。
ここは新潟の地酒がきっちりそろっていることを自慢にしているお店で、以前来たことがあったので、再訪したわけです。
しかし、メニューをみると、スペック表示がなく、銘柄名だけが羅列されており、いささかためらいながら、お酒を頼んでいきました。
最後の6本目はこれです。
「緑川(みどりかわ)純米吟醸」。
新潟県魚沼市の緑川酒造さんが醸しているお酒です。
コロナ禍は、長年、特約店ルートだけに頼っていた酒蔵に大きな打撃を与えました。
飲食店の営業自粛が求められたため、料飲店依存の高い特約店は一升瓶が完全にストップしました。
変わり身の早かった酒販店は取り扱いを一升瓶から四合瓶に一気にシフトして、根強かった個人需要でしのぎましたが、そうはいかない酒販店も多く、販売ルートがそれ以外にない酒蔵は窮地に立たされました。
このため、多くの酒蔵がそれ以外の販路として、自力のEC(オンライン販売)に手を染めたのです。
ところが、緑川酒造はこうした危機に直面しても、特約店依存を墨守し、自社はオンライン販売どころか、いまもホームページさえありません。
しかも、特約店にはオンライン販売をしないでほしいと強く求めて、特約店は「緑川は店頭販売のみです」としています。
そこまでくるとその意固地さに脱帽です。
ラベルのデザインも不変で、なにもかも変わらないことを売りにしているようです。
55%精米の純米吟醸、火入れです。
玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に油膜を張って、ツルツルな感触を前面に出して、軽快なテンポで転がり込んできます。
受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散しながら、適度な大きさのガラス球様の粒々を連射してきます。
甘味は上白糖系のするりとしたタイプ、旨味はシンプルでかつ痩せぎすで、両者は足並みを揃えて、あくまでも細く、淡いハーモニーを奏でます。
後から酸味と渋味は一切現れず、終盤まで甘旨味の儚くも淡い世界が描かれ続けるのでした。
まさに、新潟淡麗の代表的な味わいでした。
銘柄名「緑川(みどりかわ)純米吟醸 2022BY」
酒蔵「緑川酒造(新潟県魚沼市)」
分類「純米吟醸酒」
原料米「不明」
使用酵母「不明」
精米歩合「55%」
アルコール度数「15.5度」
日本酒度「不明」
酸度「不明」
情報公開度(瓶表示)「△」
標準小売価格(税込)「1800ml=5170円」
評価「★★★★(7.4点)」