京都「十石 純米吟醸 祝」気持ち太めの甘旨味がシニカルな世界を描く | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

自宅の晩酌にお酒を選びました。

これです。

 

 

「十石(じっこく)純米吟醸 祝」。

京都市伏見区の松山酒造さんが醸しているお酒です。

 

松山酒造は1923年三重県名張市で創業。

1958年に月桂冠グループの傘下に入り、翌年に醸造場所を京都市伏見区に移し、1967年に現在の場所に移転。

1990年頃までは丹波杜氏たちがやってきて冬場の酒造りをし、以後は月桂冠のシニア社員と若手が中心となって酒を造り、ほとんどを月桂冠に桶売り(未納税移出)をしてきました。

 

 

一時は5000石を造っていましたが、近年は年々醸造量を減らし、設備の老朽化などもあって、2020BY(醸造年度)を最後に酒造りを休止しました。

その後、2021BYは休蔵し、今後を検討し、特定名称酒を小仕込み(総米600㌔)で造る地酒蔵として再生することを決めています。

京都産の米、京都のもやし(菱六もやし)、京都市産業技術研究所が開発した京都酵母を使い、オール京都の地酒を売り文句に、2023年3月から造りを再開しています。

10カ年計画で最終石数を600石に据えています。

 

今夜いただくのは、京都産祝を使った60%精米の純米吟醸、一回火入れ、2シーズン目のお酒になります。

 

 

上立ち香はイソアミルの微かな香りが。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に打ち粉を振って、サラサラな感触をアピールしながら、まっしぐらに駆け込んできます。

受け止めて保持すると、自律的に淡々と膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス球様の粒々を連射してきます。

粒から滲出してくるのは甘味8割、旨味2割。

甘味は2Bの鉛筆を思わせる中太のタイプ、旨味はシンプル痩身で、気持ち表面がうねっている印象。

両者は足並みを揃えて、ニヒルでシニカルな雰囲気を醸しながら、踊ります。

流れてくる含み香もイソアミルのすっきりとした香りで薄化粧を付与。

後から酸味はほんの少し、渋味が少量現れて、シニカルの世界へとさらに加速していきます。

個性的な世界が終盤まで描かれ、最後に飲み下した後の余韻も一風変わったものでした。

 

 

松山酒造のお酒は今後もウオッチしたいと思います。

 

お酒の情報(24年63銘柄目)

銘柄名「十石(じっこく)純米吟醸 祝 2023BY」

酒蔵「松山酒造(京都市伏見区)」

分類「純米吟醸酒」

原料米「祝」

使用酵母「京都酵母」

精米歩合「60%」

アルコール度数「16度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「720ml=1815円」

評価「★★★★★(7.6点)」