長野「十六代九郎右衛門 山廃純米生原酒 美山錦」透明感に優れたマジカルでミルキーの世界が続く | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
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長野県木祖村で美酒を醸す湯川酒造店さんのお酒をまとめて取り寄せて飲み比べをしました。

6本目はこれです。

 

 

十六代九郎右衛門(じゅうろくだいくろうえもん)山廃純米生原酒 美山錦」。

 

今回取り寄せた湯川酒造店の「十六代九郎右衛門」は、すべて生酛酒母か山廃酒母で速醸酒母がありません。

2010年ごろから湯川慎一さんはそろりと山廃&生酛に手を出してきたのですが、ここ数年、急ピッチで山廃&生酛に傾斜しています。

結果として「十六代九郎右衛門」はほとんどが山廃&生酛に、片や「木曽路」は速醸を堅持しています。

 

しかも、山廃&生酛も年々工夫を重ねて、いい意味で省力化しています。湯川慎一さんは次の様に話しています。

 

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生酛を始めた時はこだわりがあって、埋飯(いけめし)をきっちりやりました。

朝9時に蒸した米をしっかり埋飯すると、仕込み(酛立て)が夜の9時過ぎになります。

そうすると翌朝4時ぐらいに手酛→酛摺りということになってしまいます。

するとさすがにやっている方は大変で、ちょっと過酷すぎ。

そこで埋飯を十分すべき米とそうでない米を分けたり、埋飯の時間圧縮などをあれこれ模索して、2,3年前から深夜の作業がないようにしました。

衛生度が上がってきたことも要因です。

これで朝7時から17時の間にすべての作業が収まるようになって、蔵人に優しい山廃&生酛になりました。

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さて、6本目は生酛酒母ではなく、山廃酒母。美山錦65%精米の純米、生原酒です。

 

 

上立ち香はヨーグルトニュアンスの初々しい香りが漂ってきます。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面にうっすらととろみ層を乗せて、軽快なテンポで滑り込んできます。

受け止めて保持すると、自律的にふんわりとしながら、膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス球様の粒々を連射してきます。

粒から滲み出てくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味は上白糖系の澄み切ったタイプ、旨味はシンプル無垢の印象で、両者は足並みを揃えて爽快でヴィヴィッドな舞いを披露します。

流れてくる含み香は乳酸ニュアンスのヨーグルトの香りで飾り付けを施します。

後から酸味が適量、渋味が少量現れて、乳酸主体の酸味が甘旨味とミックスして華やかなミルキーの世界へと誘うのです。

終盤まで爽快なハーモニーが流れ、最後は全体が反転縮退して昇華して行きました。

 

それでは、湯川酒造店さんのお酒、7本目をいただくことにします。

 

お酒の情報(24年57銘柄目)

銘柄名「十六代九郎右衛門(じゅうろくだいくろうえもん)

山廃純米生原酒 美山錦 2022BY」

酒蔵「湯川酒造店(長野県木祖村)」

分類「純米酒」「生酒」「原酒」「山廃酒」

原料米「美山錦」

使用酵母「不明」

精米歩合「65%」

アルコール度数「13度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「720ml=1630円」

評価「★★★★★★(7.8点)」