長野「和饗 特別純米原酒」太めで脂身たっぷりの甘旨味が肥えた踊りを披露する | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

旧聞に属するお話になりますが、長野県の日本酒とワインが一堂に会する「信州のIPPON」というイベントに行きました。

このイベントの特徴は、出品されたお酒がずらりと並び、参加者が自分でお猪口にお酒を注いで、利くことができることでした。

そうなれば、興味のあるお酒をじっくりと飲んで(たくさんではありません)、ゆっくりと評価できるので、日本酒探検をしたい空太郎にとってはおあつらえ向きの企画でした。

その時飲んだお酒を10本ほど紹介したいと思います。

 

1本目はこれです。

和饗(わきょう)特別純米原酒」。

長野県塩尻市の和饗酒造(旧笑亀酒造)さんが醸しているお酒です。

 

笑亀酒造の蔵元が妻に対する殺人の疑いで2022年暮れに逮捕されました。

実はその少し前に経営権は創業家から共和化工グループの和饗エコファームに移っていたことは前回(2023年1月)のブログで書きました。

その後、和饗エコファームはすみやかに社名を和饗酒造に変え、笑亀酒造が販売していた銘柄のお酒も夏場には終売しています。

同時にそれまでの蔵の杜氏だった森川貴之さんを説得して留任を了承してもらい、新たな蔵人と共に、2023BYの造りに乗り出しています。

笑亀酒造にはなかったウエブサイトもでき、オンラインショッピングも始めるなど、新たな動きが広がっています。

今季、どんなお酒が出来てくるのか楽しみです。

 

さて、お酒は美山錦59%精米の特別純米、火入れ原酒です。

上立ち香は原色系のケバケバしい酒エキスの香りが鼻腔を撫で回します。

口に含むと中程度よりもひとまわり大きな旨味の塊が、表面にぶ厚くとろみ層を乗せて、激しく波立たせながら、転がり込んできます。

 

受け止めて保持すると、とろみ層が一気に崩れて無数のウエットな粒々となって、口の中一杯に飛散してきます。

粒から現出してくるのは甘味8割、旨味2割。

甘味は水飴がさらに煮詰まってドロドロになったタイプ、旨味も無数のコクがミルフィーユ状になっており、両者は端から原色系のカラフルな花々が咲き乱れる熱帯雨林の世界を描くのです。

 

流れてくる含み香も野太い甘味とコクの香りでデコレート。

後から酸味と渋味が少量現れるのですが、ド迫力の甘旨味にひるんで遠目で眺めるのみ。甘旨味は終盤まで賑やかなカーニバルの世界を描き切るのでした。

森川杜氏の得意とするお酒でした。

今季、あの唯一無二の「貴魂」も是非、造ってください。

 

お酒の情報(24年6銘柄目)

銘柄名「和饗(わきょう)特別純米原酒 2023BY」

酒蔵「和饗酒造(長野県塩尻市)」

分類「特別純米酒」「原酒」

原料米「美山錦」

使用酵母「不明」

精米歩合「59%」

アルコール度数「17度」

日本酒度「+5」

酸度「1.7」

情報公開度(瓶表示)「○」

標準小売価格(税込)「1800ml=3080円」

評価「★★★★(6.5点)」