秋田「山本 バタフライパープル 純米吟醸」やや多めの酸味がジューシーな世界をより高みへと誘う | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

自宅の晩酌に秋田県八峰町の山本酒造店さんが醸しているお酒をまとめて取り寄せて、飲み比べることにしました。

5本目はこれです。

山本(やまもと)バタフライパープル 純米吟醸」。

 

山本酒造店はこの2月、蔵の敷地内に新たに醸造所併設のカフェ「LABO and CAFE YAMAMOTO(ラボ・アンド・カフェ・ヤマモト)」をオープンしました。

その趣旨については空太郎が「SAKEStreet」に記事を書きましたので、そちらをお読み下さい。

 

今回の取材で年の暮れに現地にお邪魔したので、本蔵の内部もじっくりと見学させてもらいました。

蔵にお邪魔したのは12年ぶりでしたので、ほとんどすべてが新しくなっていて、先進地酒蔵の面目躍如でした。

なかでも特筆すべきなのが、ずらりと並んだ仕込みタンクが特注品だったことです。山本友文社長は次のように話して下さいました。

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最近の酒蔵は醪の温度管理を完璧にするために、サーマルタンクを導入するケースが多いですが、サーマルタンクはタンクの壁が均等に冷やされるので、醪に対流が起きません。

そうなれば櫂入れが必要ですが、それをなんとかできないかと考え、底面積をV字型にし、さらに底面積に比べて背の高いタンクとして、タンクの真ん中から少し上の部分を重点的に冷やします。

そうすると見事に自然対流が起きて、櫂入れ不要となります。

しかも、サーマルタンクのように蓋をせず、いつでもすぐに醪の様子が確認できるようにして、醪の管理をすばやくできるようにしています。

その代わり、仕込み室には空気清浄機を入れて、雑菌の少ない環境を整えています。

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なにもかもにこだわりを持つ山本友文さんらしい仕込み部屋でした。

 

さて、5本目も裏貼りでいろいろ語っているのでご紹介します。

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亀の尾は1893年(明治26年)に山形県の稲作農家で農法の研究に熱心だった阿部亀治さんが、冷害にもかかわらず稲穂を実らせている3本の稲を近隣の田んぼで見付け、それを譲り受けて3年掛けて抜穂選種し収量を増やした品種です。

コシヒカリやササニシキの祖先である亀の尾は食味がとても良いので、現在、弊社敷地内に建設中のクラフト日本酒醸造所Labo&Cafe Yamamotoでは土鍋で炊いた亀の尾のおにぎりを提供する予定です。

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亀の尾55%精米の純米吟醸、火入れです。

上立ち香は麗しい楚々とした薄甘い香りが。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に打ち粉を振って、サラサラな感触をアピールしながら、軽快なテンポで忍び入ってきます。

 

受け止めて保持すると、促される前に軽快に膨らみ、拡散しながら適度な大きさのガラス球様の粒々を速射してきます。

粒から滲出してくるのは甘味6割、旨味4割。

甘味は上白糖系のさらりとしたタイプ、旨味もシンプル素朴でつるりとした印象で、両者は均衡を保ちながら伸びやかに踊ります。

 

流れてくる含み香はマスカット系の痩身な香りで薄化粧を付与。

後から酸味が適量、渋味が少量現れて、クエン酸主体の酸味がリードして味わいに明快なアクセントを付けるのです。

酸味は終盤まで甘旨味に寄りそって、ジューシーな世界を高みへと導き、最後は反転縮退して昇華して行きました。

亀の尾の良さが十分に引き出されておりました。

それでは山本酒造店のお酒、最後の6本目をいただくことにします。

 

お酒の情報(23年58銘柄目)

銘柄名「山本(やまもと)バタフライパープル 純米吟醸 2022BY」

酒蔵「山本酒造店(秋田県八峰町)」

分類「純米吟醸酒」

原料米「亀の尾」

使用酵母「不明

精米歩合「55%」

アルコール度数「16度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「1800ml=3580円」

評価「★★★★★(98点)」