自宅の晩酌に秋田県八峰町の山本酒造店さんが醸しているお酒をまとめて取り寄せて、飲み比べることにしました。
最後の6本目はこれです。
今回の「LABO and CAFE YAMAMOTO(ラボ・アンド・カフェ・ヤマモト)」の醸造場にはミニサイズの秋田杉製木桶が4本導入されましたが、山本酒造店にはすでに2600㍑の通常サイズの木桶が2本あります。
1本は植林された秋田杉。対するもう1本は天然の秋田杉です。
天然の秋田杉は現在、伐採禁止ですが、使われている秋田杉は樹齢200年以上で、1975年に伐採され、丸太のまま置いてあったのを10年前に板にして、さらに乾燥させたうえで木桶にしたものだそうです。
「だから貴重品です。そこでこちらの木桶で醸したお酒には特別な名前をつけることにして、天然の秋田杉のことを地元では天杉と呼ぶので、それをそのまま付けました」と山本友文社長は話しています。
裏ラベルで語られてもいるので、ご紹介します。
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この商品は昭和50年頃に秋田県米代川流域で伐採された樹齢200年を超える天杉(天然の秋田杉)で製作した木桶で仕込みました。
天杉は年輪の幅が狭く、収縮が少ないため、耐久性に優れています。
そして、何よりも色鮮やかな美しい木目に特徴があります。
その美しさを伝えたくて木桶の表面を撮影し、そのままラベルの背景に使用しました。
その後、天杉は伐採が禁止されたため、入手不可能と思っていましたが、大館市の沓澤製材所さんのご厚意により、大切に保管していた天杉を特別に分けていただきました。
お酒の説明は一切しません。ラベルの美しい木目を見ながら、悠久の時の流れに思いをはせていただければと思います。
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70%精米の山廃純米酒です。
上立ち香は薄甘い香りにわずかに酸味の香りがミックスして漂ってきます。
玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に打ち粉を振って、サラサラとした感触を振りまきながら、軽快なテンポで滑り込んできます。
受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散しながら適度な大きさのガラス球様の粒々を連射してきます。
粒から滲み出てくるのは甘味6割、旨味4割。
甘味は上白糖系の乾いたタイプ、旨味もシンプルでやや朴訥とした印象で、両者は足並みを揃えて穏やかに柔らかな世界を描きます。
流れてくる含み香は酒エキスにかすかな杉の香りが混じってやってきます。
後から酸味と渋味が少量現れて、穏やかに囃すのです。
甘旨味は心地良さそうにキレよく踊り、終盤になると反転縮退して喉の奥へと吸い込まれていきました。
コンテンポラリー山廃の美酒でした。
山廃でも山本の味の世界でした。
お酒の情報(23年59銘柄目)
銘柄名「山本(やまもと)天杉(てんすぎ)山廃純米 2022BY」
酒蔵「山本酒造店(秋田県八峰町)」
分類「純米酒」「山廃酒」
原料米「不明」
使用酵母「不明」
精米歩合「70%」
アルコール度数「15度」
日本酒度「不明」
酸度「不明」
情報公開度(瓶表示)「△」
標準小売価格(税込)「1800ml=3000円」
評価「★★★★★(98点)」