酔い人「空太郎」の日本酒探検

酔い人「空太郎」の日本酒探検

意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

自宅の晩酌にお酒を選びました。これです。

 

 

都美人(みやこびじん)ラファール 山廃純米 無濾過原酒」。

兵庫県南あわじ市の都美人酒造さんが醸しているお酒です。

 

都美人酒造は2007BYから杜氏をしていた山内邦弘さんが兵庫県姫路市の下村酒造店(奥播磨蔵)の杜氏に移籍したため、2023BYから能登杜氏として有名な家修さんを杜氏に招いています。

家さんは1954年生まれ。

石川県出身で、1994BYから黒龍酒造(福井県)の杜氏になり、以後、2002~2003byは安本酒造(福井、白岳仙)、2004~2013BYは喜多酒造(滋賀、喜楽長)、2014~2019BYは小堀酒造店(石川、萬歳楽)、2020BYは宗玄酒造(石川)、2021~2022BYは高橋助作酒造店(長野)と渡り歩いています。

まさにひっぱりだこの腕っこき杜氏です。

 

 

そして、1年目の都美人酒造で造った「都美人 太陽 山廃純米吟醸」がIWC(インターナショナルワインチャレンジ)2024において、すべてのナンバーワンとなる「チャンピオンサケ」を獲得したのです。

おめでとうございます。

すごいです。

 

今夜いただくのも、そのお酒とは類似の山廃純米、無濾過火入れ原酒です。

 

 

上立ち香は複雑系の五味が渦巻く香りが。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に硬めの打ち粉を振って、ザラザラな感触をアピールしながら転がり込んできます。

 

受け止めて保持すると、自律的に粛々と膨らみ、拡散して、適度な大きさの硬めの粒々を速射してきます。

粒から滲出してくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味は上白糖系の乾いたタイプ、旨味はシンプルスリムな印象で、両者は足並みを揃えて、よく磨きのかかったスレンダーなダンスを披露します。

 

流れてくる含み香も複雑系の甘酸っぱい香り。

後から酸味が相当な量、渋味も結構な量、現れて、まずはクエン酸系の酸味が甘旨味に鋭角的に絡み、続いて渋味が太めの縄となって全体を締め付けるのです。

味わいは複雑多岐に広がるものの、軽快さを維持し、終盤には洗練度を上げながら、喉の奥へと駆け去っていきました。

 

 

能登杜氏のお酒にありがちなガツン系の山廃ではない美酒でした。

今後、都美人がどう変わっていくのか、楽しみです。

 

お酒の情報(24年188銘柄目)

銘柄名「都美人(みやこびじん)ラファール 山廃純米 無濾過原酒 2023BY」

酒蔵「都美人酒造(兵庫県南あわじ市)」

分類「純米酒」「無濾過酒」「原酒」「山廃酒」

原料米「山田錦」

酵母「協会701号」

精米歩合「70%」

アルコール度数「14度」

日本酒度「-0.5」

酸度「1.9」

情報公開度(瓶表示)「◎」

標準小売価格(税込み)「720ml=1815円」

評価「★★★★★(7.5点)」

 

自宅の晩酌にお酒を選びました。

これです。

 

 

楽器正宗(がっきまさむね)純米吟醸 雄町」。

福島県矢吹町の大木代吉本店さんが醸しているお酒です。

 

大木代吉本店は今年6月に開かれた市販の日本酒の品評会「SAKE COMPETITION」において、出品した「楽器正宗 愛山 中取り」が純米吟醸部門(総数350点)において、ナンバーワンに輝きました。

おめでとうございます。

それだけでも驚きですが、加えて、純米酒部門(総数261点)に出品した「楽器正宗 純醸」が3位となり、蔵元杜氏の大木雄太さんは2度もステージに上って、脚光をを浴びていました。

 

 

「SAKE COMPETITION」において大木代吉本店さんの出品酒がベスト10に入ったのは2019年の純米酒5位が初めて。

そして、コロナ禍で休みが続いた久し振りの2023年大会で純米酒3位となっていたので、いずれ、この日が来るかも知れないと空太郎も予想はしていました。

 

さて、このコンペで一位を取ると、翌日以降、注文が殺到するのが常で、空太郎も愛山のお酒は買えませんでした。

 

いただくのは全体の77%に備前雄町を使い、残る23%に他の酒米を使った60%精米の純米吟醸、火入れです。

 

 

上立ち香は爽快なほっそりとした甘い香りが微かに。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に打ち粉を振って、サラサラな感触を振りまきながら、軽快なテンポで滑り込んできます。

 

受け止めて保持すると、自律的に淡々としたペースで膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を連射してきます。

粒から滲み出てくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味は上白糖系のドライなタイプ、旨味はシンプル無垢で滑らかな印象で、両者は足並を揃えて、無駄に広がらず、脇を引き締めて、キビキビとしたハーモニーを奏でます。

 

流れてくる含み香もライトでスレンダーな香りで薄化粧を付与。

後から酸味と渋味が少量現れて、しっかりとメリハリを付けるのです。

味わいは終盤まで活力を落とさず、バランスのいい舞いが終幕まで続くのでした。

 

 

楽器正宗のお酒は一度、たくさんのスペックを取り寄せて、飲み比べがしたいです。

 

お酒の情報(24年187銘柄目)

銘柄名「楽器正宗(がっきまさむね)純米吟醸 雄町 2023BY」

酒蔵「大木代吉本店(福島県矢吹町)」

分類「純米吟醸酒」

原料米「備前雄町77%、残り不明」

酵母「不明」

精米歩合「60%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込み)「720ml=1845円」

評価「★★★★★(7.7点)」

自宅の晩酌にお酒を選びました。これです。

 

 

ツチダ 99 ミドリ」。

群馬県川場村の土田酒造さんが醸しているお酒です。

 

ほとんどすべての酒が“実験醸造”的な土田酒造のお酒ですが、これも、裏貼りで語っているので、そのままご紹介します。

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原料に占める麹の割合が99%(通常の日本酒は麹割合が約20%)の本シリーズ。

定番99の、麹の力が生み出す濃厚で複雑な味わいは残しつつ、後味を軽やかに仕上げました。

汗ばむ季節には、ロックでよりさっぱりとした味わいにして飲むのもオススメです。

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ご存知の方も多いかと思いますが、日本酒は米と米麹と水で造らなければ「日本酒」と名乗ることができません。

麹の割合を100%にしても酒はできますが、「日本酒」と名乗るために、土田酒造は1%(総米1㌧であれば10㌔)の蒸した米を掛米として投入している酒です。

ちなみに、南部美人はずっと昔から全量麹のお酒を造っています。

また、日本酒の免許を持っていない秋田の「稲とアガベ」が全量麹の「その他醸造酒」を造っています。

 

早速頂くことにします。

 

 

上立ち香から濃霧のような甘い香りがたっぷりと。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面にぶ厚くとろみ層を乗せて、表面を波立たせながら、ゆったりと忍び入ってきます。

 

受け止めて保持すると、とろみ層が一気に崩れて、無数の粘っこい粒々となって四散してきます。

粒から現出してくるのは甘味9割、旨味1割。

甘味は流動性は確保しているものの濃醇な水飴そのもの。旨味も多彩なコクを放ちながら、甘味に寄り添います。

 

流れてくる含み香は蜜の香りに若干の糠臭さも感じます。

後から酸味が大量に、渋味は少量現れるのですが、たっぷりのリンゴ酸主体の酸味が甘旨味を強く刺激して、活性度を引き上げます。

濃厚にも関わらず、軽快なダンスの世界を描きます。

ところが、後半に入るとリンゴ酸の力が衰え、全体に疲労感が広がり、そのままさらに濃厚な幕が下りてきて、味わいは一気にくどくなるのです。

飲み下した後の余韻もべたっと長く残るのでした。

 

 

いわゆる飲み疲れする仕上りでした。

実験としては面白いですが、この手のお酒はポピュラーにはならないなと感じました。

 

お酒の情報(24年186銘柄目)

銘柄名「ツチダ 99 ミドリ 2023BY」

酒蔵「土田酒造(群馬県川場村)」

分類「純米酒」「多麹酒」

原料米「不明」

酵母「協会901」

精米歩合「70%」

アルコール度数「13度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込み)「720ml=2365円」

評価「★★★★★(7.5点)」

自宅の晩酌に高知県香美市のアリサワさんが醸しているお酒をまとめて取り寄せて、飲み比べをしました。

最後の5本目はこれです。

 

 

鏡野(かがみの)純米 無濾過生原酒」。

 

アリサワさんは今年(2024)5月の全国新酒鑑評会で金賞を獲得し、ついに11回連続記録を達成しました。

おめでとうございます。

 

蔵元の有澤浩輔さんが造る美酒については、空太郎がSAKE Streetに記事を書きましたので、是非、そちらをお読み下さい。こちらには書き切れなかったお話をご紹介します。

 

2000年に入って、出品酒が高い評価を受け、その造りをそのまま反映した「文佳人」を特定名称酒として販売していったのですが、当初はなかなか売れ行きが伸びず、悩ましい日々でした。

有澤浩輔さんは次の様に話しています。

 

************

せっせと私が営業回りをしてもなかなか売れないんです。

特に関西地区が深刻で。

それが2006年に綾と結婚して、しばらくしてから彼女に営業回りをしてもらうようになると売れるようになったんです。

関西でも注文が入るようになりました。

なぜだか理由がわからない。

酒質はまったく変わっていないのに。

妻のおかげもあるでしょうが、時代のニーズがうちのお酒に重なってきたからかもしれない。

でも、そうだとすれば、いずれニーズがうちの酒質と違うところへ移っていったら、売れなくなるということですよね。

心配です。

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確かに、お酒のイベントに奥様の綾さんを見かけるようになってから、文佳人の人気は上がってきた気がします。

それについて、実は綾さんは空太郎に、

「旦那はお酒のイベントに立っても、自分の酒を褒めないんです。美味しいですよ、とさえ言わないんです。そりゃあ、理想が高くて、完全に納得がいかない酒もあるでしょうが、売っている方が、自信を持って美味しいです、と言わなければお客様は買わないですよね」

とこっそり話してくれました。

 

結局、夫が造りに専念し、販売は妻がするという役割分担で成功したということでしょう。

こうした夫婦分業で成功した地酒蔵は結構あるので、よろしいコンビだと思います。

 

さて、最後の5本目はアケボノというお米の55%精米の純米酒、無濾過生原酒です。

 

 

上立ち香はトロトロの甘いゼリーのような香りが。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に厚めのとろみ層を乗せて、ゆらゆらと揺れながら忍び入ってきます。

 

受け止めて保持すると、促されるままにキビキビと膨らみ、拡散して、適度な大きさのウエットな粒々を速射してきます。

粒から現出してくるのは甘味8割、旨味2割。

甘味はザラメ糖系の奥行きのあるタイプ、旨味は複数の軟らかなコクが重なり合った印象で、両者は相互に絡み合いながら、妖艶な大トロの世界を描くのです。

 

流れてくる含み香も妖しい甘い香りでデコレート。

後から酸味と渋味は極少現れて、薄めながらも絶妙のメリハリを付与。

味わいは終盤までやや原色に近い世界が賑やかに描かれるのでした。

飲み下した後の余韻はやや長めでウエットでした。

 

 

アリサワさんのお酒はいずれも、納得のいく味わいでした。

 

お酒の情報(24年185銘柄目)

銘柄名「鏡野(かがみの)純米 無濾過生原酒 2023BY」

酒蔵「アリサワ(高知県香美市)」

分類「純米酒」「無濾過酒」「生酒」「原酒」

原料米「アケボノ」

酵母「不明」

精米歩合「55%」

アルコール度数「17.5度」

日本酒度「+4」

酸度「1.6」

情報公開度(瓶表示)「○」

標準小売価格(税込み)「720ml=1595円」

評価「★★★★★(7.6点)」

 

自宅の晩酌に高知県香美市のアリサワさんが醸しているお酒をまとめて取り寄せて、飲み比べをしました。

4本目はこれです。

 

 

文佳人(ぶんかじん)純米吟醸 土佐麗」。

 

アリサワさんは今年(2024)5月の全国新酒鑑評会で金賞を獲得し、ついに11回連続記録を達成しました。

おめでとうございます。

 

蔵元の有澤浩輔さんが造る美酒については、空太郎がSAKE Streetに記事を書きましたので、是非、そちらをお読み下さい。こちらには書き切れなかったお話をご紹介します。

 

 

現在、アリサワは蔵元の有澤浩輔さん&綾さん夫妻による2オペで酒造りをしています。

そのお二人の出会いは11回連続を重ねてきた全国新酒鑑評会の出品酒抜きには語れません。

綾さんは若い頃から日本酒が好きでよく飲んでいたそうですが、当初はアリサワのお酒の存在は知らなかったそうです。

 

そんな2001年のある日、綾さんと同じように日本酒が好きな友達が、高知市内の日本酒バー「ぼくさん」に連れて行ってくれました。

その時、飲んだのがアリサワの出品酒だったのです。

「すごい美味しい。なんなんですかこのお酒は」と感嘆の声を上げた綾さん。

その様子を覚えていた友人が後日、「この間のお酒、あれを造った人と飲むけど、一緒に来る?」と声を掛けてくれ、それに応じてついていって、浩輔さんと初対面。

結婚したのは5年後、浩輔さんの7歳下の綾さんが29歳の時だったそうです。

 

さて、3本目のお酒は高知県の酒造好適米、土佐麗を使った50%精米の純米吟醸酒、火入れです。

 

 

裏ラベルの説明を紹介します。

土佐麗=柔らかな香りとふわっと軽やかな味わいが、うららかな春の訪れにぴったりの優しいお酒です。

高知県の新たな酒造好適米ブランド品種「土佐麗」。

高精白しても砕けにくく、酒造適正の優れる早生酒造好適米品種として育成されました。

「高知と分かりやすい、また、優しさと麗しさを持つお米、女性の間で日本酒の人気が高まる中、愛着を持てる名前にしたい」との想いから名付けられました。

 

 

上立ち香は砂糖水のような甘い香りが。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に打ち粉を振ってサラサラな感触を振りまきながら、軽快に滑り込んできます。

 

受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を連射してきます。

粒から滲出してくるのは甘味6割、旨味4割。

甘味は上白糖系の乾いたタイプ、旨味はシンプルで淡泊な印象で、両者はゆったりとしたテンポで静かに踊ります。

 

流れてくる含み香は地味めな酒エキスの香り。

後から酸味は少量、渋味は多めに現れて、渋味主導で甘旨味に強めに絡みつくのです。

味わいはやや乾いた草原のような世界を描き、終盤に向けて急ピッチに縮退していきました。

 

 

それではアリサワさんのお酒、最後の5本目をいただくことにします。

 

お酒の情報(24年184銘柄目)

銘柄名「文佳人(ぶんかじん)純米吟醸 土佐麗 2023BY」

酒蔵「アリサワ(高知県香美市)」

分類「純米吟醸酒」

原料米「土佐麗」

酵母「不明」

精米歩合「50%」

アルコール度数「16.5度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込み)「720ml=1760円」

評価「★★★★★(7.6点)」

自宅の晩酌に高知県香美市のアリサワさんが醸しているお酒をまとめて取り寄せて、飲み比べをしました。

3本目はこれです。

 

 

文佳人(ぶんかじん)純米吟醸 雄町」。

 

アリサワさんは今年(2024)5月の全国新酒鑑評会で金賞を獲得し、ついに11回連続記録を達成しました。

おめでとうございます。

 

蔵元の有澤浩輔さんが造る美酒については、空太郎がSAKE Streetに記事を書きましたので、是非、そちらをお読み下さい。こちらには書き切れなかったお話をご紹介します。

 

 

今回は「文佳人」という銘柄についてです。

これは2代目蔵元(現在の有澤さんの曾祖父)が明治時代末期に生み出した銘柄です。

曾祖父は和歌が好きだったそうですが、江戸時代初期の土佐藩の家老だった野中兼山の4女の野中婉の才色兼備を褒め称え、文の分野の美人という意味を込めて「文佳人」という造語をお酒の銘柄にしたのだそうです。

 

戦後も「文佳人」は蔵の看板商品である1級酒や2級酒に使われていましたが、高度成長期末期に灘や伏見の大手の攻勢に苦しみ、蔵はさらなる低価格路線(普通酒、紙パック酒)へと舵を切ったのです。

普通酒には「四万十旅情」、紙パック酒には「土佐日記」を使い、「文佳人」は実質的に姿を一旦消したのです。

「文佳人イコール安酒」というイメージが定着しなかったおかげで、2000年頃から出品酒が評価されるのに合わせて、特定名称酒「文佳人」が再登場して、酒質の向上ととともに、現在のブランドになってきたのでした。

 

 

さて、3本目のお酒は雄町を使った50%精米の純米吟醸酒、火入れです。

 

裏ラベルの説明を紹介します。

雄町=とろみある濃醇で豊かな甘味、やや熟した果実香、まろやかでリッチな味わいが特徴のお酒です。

 

 

上立ち香は明快な熟したバナナの甘い香りが感じられました。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に微細な気泡を僅かに纏って、まっしぐらに滑り込んできます。

 

受け止めて保持すると、かすかな気泡のプチプチ感を見せながら、膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を連射してきます。

粒から滲出してくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味はザラメ糖系の潤いたっぷりのタイプ、旨味はシンプル無垢でやや粗削りな印象で、両者は足並みを揃えて、華やかな舞いを披露します。

 

流れてくる含み香も熟したバナナの甘い香りでデコレート。

後から酸味は少量、渋味はそれよりやや多めに現れて、くっきりとしたメリハリを付与。

終盤まで透明感のある世界が続き、最後は反転縮退して昇華して行きました。

 

 

余韻は短く、すかっと切れ味抜群でした。

それではアリサワさんのお酒、4本目をいただくことにします。

 

お酒の情報(24年183銘柄目)

銘柄名「文佳人(ぶんかじん)純米吟醸 雄町 2023BY」

酒蔵「アリサワ(高知県香美市)」

分類「純米吟醸酒」

原料米「雄町」

酵母「不明」

精米歩合「50%」

アルコール度数「17度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込み)「720ml=1925円」

評価「★★★★★★(7.7点)」

自宅の晩酌に高知県香美市のアリサワさんが醸しているお酒をまとめて取り寄せて、飲み比べをしました。

2本目はこれです。

 

 

文佳人(ぶんかじん)純米吟醸 吟の夢」。

 

アリサワさんは今年(2024)5月の全国新酒鑑評会で金賞を獲得し、ついに11回連続記録を達成しました。

おめでとうございます。

 

蔵元の有澤浩輔さんが造る美酒については、空太郎がSAKE Streetに記事を書きましたので、是非、そちらをお読み下さい。

こちらには書き切れなかったお話をご紹介します。

 

 

有澤さんは全国新酒鑑評会への出品酒について、「無理に金賞を狙うのではなく、入賞をはずさない手堅い酒造り」に徹した結果だと話していますが、市販酒造りも同じようなスタンスでいるそうです。

次の様に話しています。

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私は消極的、コンサバの人間で、徐々に少しずつやる、がモットーです。

近年、流行りだしたハイグルコ麹菌についても、皆が飛びついても追随せず、2,3歩遅れて少しずつ使いました。

高温障害で米が非常に硬いと、県の先生は麹の力だけでは溶けきれないから酵素剤を追加で使うように奨励されるのですが、その時も言われた量の5分の1に抑えたりしてあくまでも慎重に対処します。

やり過ぎは避けられますが、進歩のスピードはかなり遅いです。

でも、それが私のスタイルです。

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それもまた酒屋萬流ということですね。

 

 

さて、2本目のお酒は吟の夢を使った50%精米の純米吟醸酒、火入れです。

 

裏ラベルの説明を紹介します。

吟の夢=華やかな吟醸香、かすかな苦味がアクセントになった、透明感のあるスリムな味わいが特徴のお酒です。

 

 

上立ち香は酢酸イソアミルの柔らかな香りが鼻腔を撫でます。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に微細な気泡を僅かに纏って、まっしぐらに転がり込んできます。

 

受け止めて保持すると、かすかな気泡のプチプチ感をアピールしながら、膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を速射してきます。

粒から滲み出てくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味はザラメ糖系の潤いを感じるタイプ、旨味はシンプル無垢な印象で、両者は足並みを流麗な舞いを展開します。

 

流れてくる含み香は新鮮なブドウの汁を思わせる芳しい香りでデコレート。

後から酸味と渋味は必要最低限現れて、効果的なアクセントを付けるのです。

味わいは終盤まで透明感に優れた世界が続くのでした。

 

 

それではアリサワさんのお酒、3本目をいただくことにします。

 

お酒の情報(24年182銘柄目)

銘柄名「文佳人(ぶんかじん)純米吟醸 吟の夢 2023BY」

酒蔵「アリサワ(高知県香美市)」

分類「純米吟醸酒」

原料米「吟の夢」

酵母「不明」

精米歩合「50%」

アルコール度数「17度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込み)「720ml=1815円」

評価「★★★★★★(7.7点)」

自宅の晩酌に高知県香美市のアリサワさんが醸しているお酒をまとめて取り寄せて、飲み比べをしました。

1本目はこれです。

 

 

文佳人(ぶんかじん)リズール 純米吟醸」。

 

アリサワさんは今年(2024)5月の全国新酒鑑評会で金賞を獲得し、ついに11回連続記録を達成しました。

おめでとうございます。

 

蔵元の有澤浩輔さんが造る美酒については、空太郎がSAKE Streetに記事を書きましたので、是非、そちらをお読み下さい。こちらには書き切れなかったお話をご紹介します。

 

有澤さんが目指すのは出品酒だけでなく、市販酒においても、「すっきりと綺麗な酒」です。

このために、有澤さんは麹の味幅があるごつい酒を避けたいがために、あえて、若めで力の弱い麹を造っています。

すると、造りに気をつけなければならないことが出てくるそうです。

有澤さんは次の様に話しています。

 

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弱めの麹でも醪でちゃんと溶けてくれるようにするために、蒸した米(掛米)はすみやかに仕込みタンクに投入したいのです。

米は蒸し上がった直後が一番消化性がいいので、時間をかけて冷ます自然放冷は向いていません。

すみやかに放冷機で冷まして投入するのは、そういう理由があるからです。

あと、目指す酒質を実現するには醪で追い水が必要になります。

醪が溶けないと追い水ができなくて、結果として水が詰まってごつかったり、濃かったりしてしまう。

弱い麹でも醪が順調に溶けるように管理することが必要になるのです。

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さて、1本目のお酒は文佳人の中でも看板商品である50%精米の純米吟醸酒、火入れです。

 

 

上立ち香は酢酸イソアミルに酢酸エチルの香りがわずかにミックスして、フレッシュさを強調しています。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に打ち粉を振ってサラサラな感触をアピールしながら、まっしぐらに転がり込んできます。

 

受け止めて保持すると、自律的に軽やかに膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を連射してきます。

粒から滲出してくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味は上白糖系のさらりとしたタイプ、旨味はシンプル素朴で滑らかな肌触りで、両者は足並みを揃えてすべすべのテクスチャーを描くのです。

 

流れてくる含み香はフレッシュなメロンの香りに、わずかに酢酸エチルの香りがミックスしてデコレート。

後から酸味と渋味は必要最低限現れて、絶妙なメリハリを付与します。

味わいは終盤まで透き通った青空を思わせるクリスタルな世界が描かれ続けるのでした。

 

 

それではアリサワさんのお酒、2本目をいただくことにします。

 

お酒の情報(24年181銘柄目)

銘柄名「文佳人(ぶんかじん)リズール 純米吟醸 2023BY」

酒蔵「アリサワ(高知県香美市)」

分類「純米吟醸酒」

原料米「不明」

酵母「不明」

精米歩合「50%」

アルコール度数「16.5度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「×」

標準小売価格(税込み)「1800ml=3410円」

評価「★★★★★(7.6点)」

自宅の晩酌にお酒を選びました、これです。

 

 

根知男山(ねちおとこやま)DOMAINE WATANABE BLENDED(ドメーヌ・ワタナベ・ブレンデッド)」。

新潟県糸魚川市の渡辺酒造店さんが醸しているお酒です。

 

今年3月に新潟の朱鷺メッセで開かれた「にいがた酒の陣」に足を運んだ際、渡辺酒造店の渡辺吉樹蔵元に会って、お話を伺うことができました。

渡辺さんは以前に比べると穏やかで、

「長い間ひたすら全力で駆けてきましたが、自社栽培米比率も95%を超え、ゴールが見えてきました。後継にも目処がつき、少しほっとしています」

と話していました。

 

 

渡辺さんの長男の晋太郎さんが東京農大を卒業後、2015年に蔵に戻ってきました。

さらに、2018年には結婚もされ、7代目の息子へとバトンを渡す日が近づいてきたようです。

ご同慶の至りです。

 

さて、今回のお酒は数種類の原酒をブレンドして仕上げた“純米酒”です。

 

 

上立ち香はおっとりとした酒エキスの香りが。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に薄らととろみ層を乗せて、ゆったりとしたテンポで忍び入ってきます。

 

受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散して、適度な大きさのウエットな粒々を速射してきます。

粒から滲み出てくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味はザラメ糖系のやや太めのタイプ、旨味はシンプル素朴なコクが織り上がった印象で、両者は足並みを揃えて、円熟味を感じさせる舞いを披露します。

 

流れてくる含み香は穏当な酒エキスの香りでデコレート。

後から酸味と渋味は一切現れず、甘旨味は終盤までマイペースを崩すことなく、静かに踊りきるのでした。

 

 

蔵元の趣旨通りに万人受けする仕上りでした。

 

お酒の情報(24年180銘柄目)

銘柄名「根知男山(ねちおとこやま)

DOMAINE WATANABE BLENDED(ドメーヌ・ワタナベ・ブレンデッド)2022BY」

酒蔵「渡辺酒造店(新潟県糸魚川市)」

分類「純米酒」「ブレンド酒」

原料米「不明」

酵母「不明」

精米歩合「不明」

アルコール度数「15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「×」

標準小売価格(税込み)「720ml=2904円」

評価「★★★★★(7.5点)」

自宅の晩酌にお酒を選びました、これです。

 

 

鳳陽(ほうよう)純米吟醸 夏の原酒」。

宮城県富谷市の内ヶ崎酒造店さんが醸しているお酒です。

 

内ヶ崎酒造店は宮城県では最古の酒蔵です。

創業は江戸時代になって間もない1661年で、現在の蔵元社長の内ヶ崎啓さんで16代目です。

歴史が古いだけあって、内ヶ崎家としての家業の意識は強く、啓さんは中学時代には酒蔵を継ぐ覚悟を父上から求められたのだそう。

そして、酒造りを科学的に学びたいと、東北大学の農学部に入りました。

優秀です。

ちなみに、啓さんの父上も祖父も東北大学です。すごいですね。

 

 

啓さんは2011年に大学卒業後、2造りを山形・出羽桜酒造で修業し、2013byを前に帰蔵。

前任の杜氏の下で5造り修業をし、2018BYから杜氏になっています。

まだ、35歳で、これからもいろいろな新しい動きが出てくると期待しています。

 

さて、今夜頂くのは、50%精米の純米吟醸酒、火入れです。

 

 

上立ち香はスレンダーな薄甘い香りがわずかに。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が平滑になった表面に薄らととろみ層を乗せて、ゆったりとしたテンポで忍び入ってきます。

 

受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を連射してきます。

粒から滲出してくるのは甘味8割、旨味2割。

甘味は砂糖水のような流麗なタイプ、旨味はシンプル素朴な印象で、両者は足並みを揃えて、ふわふわとした真綿のような舞いを見せるのです。

 

流れてくる含み香はフレッシュな青リンゴ様の香りでデコレート。

後から酸味が結構な量、渋味が少量現れて、リンゴ酸とクエン酸がミックスした酸味が甘旨味に覆い被さって、接触部分から溶け込んで、一気に甘酸っぱい世界へと変質を促します。

最後には梅酒の世界へと接近し、そのまま、異色のハーモニーが続くのでした。

 

 

夏向けの甘酸っぱい世界でした。

 

お酒の情報(24年179銘柄目)

銘柄名「鳳陽(ほうよう)純米吟醸 夏の原酒 2023BY」

酒蔵「内ヶ崎酒造店(宮城県富谷市)」

分類「純米吟醸酒」

原料米「不明」

酵母「不明」

精米歩合「50%」

アルコール度数「14度」

日本酒度「-16」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込み)「720ml=1500円」

評価「★★★★★(7.6点)」