酔い人「空太郎」の日本酒探検

酔い人「空太郎」の日本酒探検

意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

 自宅の晩酌にお酒を選びました。

 これです。

 「わかさ 純米」。

 福井県小浜市の小浜酒造さんが醸しているお酒です。

 小浜酒造は2016年11月に設立し、17年4月に酒造免許を取得した新しい会社です。

 実は小浜市で唯一の酒蔵であったわかさ冨士が、経営不振を理由に平成27BYを最後に造りをやめて、酒造業から撤退を決めました。

 それを聞いたわかさ冨士の旧経営者の子孫である吉岡洋一さんが、「小浜から造り酒屋が消滅するのは忍びない」と有志と共に、受け皿会社である小浜酒造を設立したというわけです。

 小浜酒造はわかさ冨士から酒蔵の醸造設備や在庫のお酒などを譲り受けて、2017年春から営業を始めました。

 そして、2017BYから醸造を始めるにあたって、能登杜氏の重鎮で滋賀県の増本藤兵衛酒造場などで杜氏をして、引退していた坂頭宝一さんを拝み倒して、現場への復帰を実現させています。

 ただし、坂頭さんは89歳と高齢なので、すみやかに次の杜氏を探さなければならない局面です。

 さて、今夜いただくのは、65%精米の純米酒、火入れです。

 いただきます。

 上立ち香は酒エキスの香りがのっそりと漂ってきます。

 玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑な表面にとろみ層を厚めに乗せて、ゆっくりとした速度で忍び入ってきます。

 受け止めて保持すると、のろのろとしたテンポで膨らみ、拡散しながら、ほど良い大きさのウエットで粘り気のある粒粒を次々と射掛けてきます。

 粒から現出してくるのは甘味6割、旨味4割。

 甘味は濃醇で水飴っぽいタイプ、旨味も複数のコクが多層化した印象で、両者はややけだるそうにしながら、徘徊を始めるのです。

 流れてくる含み香は濃醇で粘っこい甘い香りで、視界を遮るように甘旨味に被さるのです。

 後から酸味も渋味も現れず、最後にわずかな辛さが全体を刺激し、飲み下した後の余韻も太く伸びるのでした。

 前の酒蔵の固定ファンを意識した酒造りをしたのだと思われますが、大都市圏の市場を意識するのであれば、課題は多いです。

 

お酒の情報(19年190銘柄目)

銘柄名「わかさ 純米 2018BY」

酒蔵「小浜酒造(福井県小浜市)」

分類「純米酒」

原料米「不明」

使用酵母「不明」

精米歩合「65%」

アルコール度数「16度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税抜)「720ml=1600円」

評価「★★★★(4.0点)」

 

 自宅の晩酌にお酒を選びました。

 これです。

 「セコイア(Sequoia)コースタル(Coastal)純米吟醸」。

 米カリフォルニア州のセコイア(Sequoia)サケ(Sake)ブルワリー(Brewery)さんが醸しているお酒です。

 セコイア・サケ・ブルワリーは2014年にジェイク・マイリック&亀井紀子夫妻と、友人のウォレン・ファール氏の3人によって設立した酒蔵です。

 こちらの特徴はすべてのお酒を火入れせず、生酒で販売していることです。

 これは生酒が、冷蔵で出荷・運搬し、店頭でも冷蔵管理しなければならないだけに、他の日本酒蔵との競合が少ないと考えているからです。

 マイリック&亀井夫妻は2001年から10年間、仕事の関係で日本に住んでおり、その間、マイリックさんは生酒の魅力にはまったそうです。

 そして、「火入れよりも生酒の方が絶対に旨い。それに和食以外にも合わせやすい。グルメで高所得者が多いサンフランシスコ地区で造るのなら生酒に限る」と確信したそうです。

 当初は米国では合法の自家醸造から始め、2年間試行錯誤したうえで、本格的に醸造を開始しました。

 麹菌と酵母は日本から輸入していますが、米は地元産のカルローズ米を使用して、地産池消を目指しています。

 精米歩合は55%以下で、全量純米吟醸酒です。

 完全空調の設備で1年を通して造っています。

 そして、今年のSAKECOMPETITIONの海外出品部門で、この「セコイア・コースタル」がナンバーワンに輝いたのでした。

 早速、いただくことにします。

 上立ち香は生酒特有の麹バナの香りが。

 口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に適度な油膜を張って、ツルツルの感触を振り撒きながら、まっしぐらに転がり込んできます。

 受け止めて舌の上で転がすと、促されるままにリズミカルにぐいぐいと膨らみ、拡散しながら、適度な大きさのウエットな粒粒を連射してきます。

 粒から滲み出てくるのは甘味7割、旨味3割。

 甘味は上白糖系のサラリとしたタイプ、旨味は素朴でシンプルな印象で、両者は足並みを揃えて、初々しく踊ります。

 流れてくる含み香はバナナ系の控え目な優しい香りで薄化粧を付与。

 後からくるのは渋味が少量で、味わいにメリハリをつけるのです。

 終盤まで全体の活性度は落ちず、最後は反転縮小して、そのまま昇華していきました。

 欠点のない美しい純米吟醸酒でした。

 こうして確実に世界各地に美味しい日本酒が増えているようです。

 

お酒の情報(19年189銘柄目)

銘柄名「セコイア(Sequoia)コースタル(Coastal)純米吟醸 2018BY」

酒蔵「セコイア・サケ・ブルワリー(米カリフォルニア州サンフランシスコ)」

分類「純米吟醸酒」「生酒」

原料米「地元産カルローズ米」

使用酵母「不明」

精米歩合「不明」

アルコール度数「14~15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税抜)「750ml=26ドル」

評価「★★★★(4.4点)」

 

 自宅の晩酌にお酒を選びました。

 これです。

 「八海山(はっかいさん)純米吟醸 雪室貯蔵三年」。

 新潟県南魚沼市の八海醸造さんが醸しているお酒です。

 八海醸造は豪雪地の地の利を生かそうと、2013年に雪室を建設し、毎年約千トンの雪を蓄えています。

 室の中は摂氏3度で安定し、しかも高湿という環境にあることから、日本酒の貯蔵に適しているのではとすぐに実施。

 専用タンクに純米吟醸酒を入れ、3年貯蔵しました。

 イメージした通りのまろやかな味わいになったことから、2016年から新製品としてリリースしています。

 近年はダム湖の湖底とか海中などいろいろな貯蔵酒が登場していますが、雪室は洞窟とともに定番といえそうです。

 麹米に山田錦、掛米にゆきの精と五百万石を使った、50%精米の純米吟醸です。

 いただきます。

 上立ち香はトロリとした酒エキスの香りが。

 玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に適度なとろみ層を乗せて、ゆったりとしたペースで転がり込んできます。

 受け止めて保持すると、スローペースを維持しながら膨らみ、拡散して、適度な大きさのウエットな粒粒を次々と射掛けてきます。

 粒から現出してくるのは甘味7割、旨味3割。

 甘味は黒砂糖を思わせる奥行きのある印象、旨味も複層したタイプで、両者は穏やかな態度で足並みを揃えてスローな舞いを展開します。

 流れてくる含み香は熟成香はなく、まろやかな甘い香り。

 後から酸味は現れず、ごくごく少量の渋味が隠し味に。

 甘旨味はあくまでもまろやかな雰囲気を極めようと舞い、終盤になってもあまり縮退せず、飲み下した後も、優しい余韻が長く伸びるのでした。

 低温貯蔵酒ならではの味わいでした。

 

お酒の情報(19年188銘柄目)

銘柄名「八海山(はっかいさん)純米吟醸 雪室貯蔵三年 2016BY」

酒蔵「八海醸造(新潟県南魚沼市)」

分類「純米吟醸酒」

原料米「麹米=山田錦、掛米=ゆきの精&五百万石」

使用酵母「不明」

精米歩合「50%」

アルコール度数「17度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税抜)「720ml=3100円」

評価「★★★★(4.4点)」

 自宅の晩酌にお酒を選びました。

 これです。

 「百黙(ひゃくもく)Alt.3(オルトスリー)」。

 神戸市の菊正宗酒造さんが醸しているお酒です。

 獺祭蔵の快進撃に刺激を受けて、菊正宗酒造が2016年春にデビューさせた「百黙」は、スタート時は山田錦39%精米の純米大吟醸のみで、兵庫県内限定販売でしたが、非常に反響が大きく、順調な滑り出しとなりました。

 これに自信を得た菊正宗酒造は第二弾として、2018年春に新製品を二つ投入しました。

 一つは59%精米でより手ごろな価格(一升3800円:税抜き)の純米吟醸を、そして、もう一つは“第三の選択=オルタナティブ”として、山田錦純米酒を社内のブレンダーによってまとめあげた「Alt.3」として投入しました。

 そして、菊正宗酒造はライバルも多く激戦の国内市場で勝負するよりは、海外市場の方が参入にうまみがあると判断し、輸出攻勢をかけることにしました。

 2018年9月にはフランスで大規模なお披露目会を開催し、続いて今春からは米国市場を狙って、ニューヨークの有名レストランで発表会を開きました。

 現地の人達に鮮度のいい酒を届けるため、リーファー(冷蔵コンテナ)での輸送と、それを受け取った酒販店は冷蔵庫で保管することを約束させているそうです。

 そこは大手ゆえの力を感じさせます。

 海外の日本酒市場は伸び盛りですので、是非、頑張っていただきたいと思います。

 それでは、早速いただくことにします。

 上立ち香は芳しい甘い香りが仄かに。

 口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に粉雪を乗せて、サラサラな感触をアピールしながら滑り込んできます。

 受け止めて舌の上で転がすと、促されるままに旋回しながら膨らみ、拡散して、適度な大きさのクリスタル様の透明感に優れた粒粒を速射してきます。

 粒から滲出してくるのは甘味8割、旨味2割。

 甘味は上白糖系のサラリとしたタイプ、旨味はシンプルで細身の印象で、両者はドライな雰囲気を醸し出しながら、流麗に舞うのです。

 流れてくる含み香はカプロン酸エチルの芳醇な香りが適度にデコレート。

 後から酸味と渋味は少量現れて、甘旨味に従いながら、味わいに薄氷の輪郭を施します。

 終盤まで甘旨味と含み香、酸渋のハーモニーが続き、飲み下した後の余韻は甘い世界でした。

 59%精米の純米吟醸よりもこちらの方が高いのですが、意見の分かれるところかもしれません。

 

お酒の情報(19年187銘柄目)

銘柄名「百黙(ひゃくもく)Alt.3(オルトスリー) 2018BY」

酒蔵「菊正宗酒造(神戸市東灘区)」

分類「純米酒」「原酒」

原料米「兵庫県産山田錦」

使用酵母「不明」

精米歩合「不明」

アルコール度数「15~16度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税抜)「720ml=2500円」

評価「★★★★(4.4点)」

 

 長野県が最近、開発した酒造好適米の山恵錦(さんけいにしき、信交酒545号)を使う酒蔵が増えています。

 まだ、酒米としての評価が固まるところまでは行っていませんが、「話題性もあるので使ってみよう」との動きも盛んです。

 上田市でも市内の5軒の酒蔵が上田市内で収穫された山恵錦で酒を造って、一斉発売して飲み比べてみようという試みが実現したことはSAKETIMESに書きました。

 空太郎も後日、5本をまとめて取り寄せて飲み比べることにしたのです。

 最後の5本目はこれです。

 「信州亀齢(しんしゅうきれい)純米吟醸 無濾過生原酒」。

 上田市の岡崎酒造さんが醸しているお酒です。

 蔵元杜氏の岡崎謙一さんは次のように話していました。

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 苦労の多い酒米でした。

 まず、蒸した米を麹室に引き込んだ段階で、サバケの悪さに驚きました。

 麹が非常に造りにくいのです。

 それと、溶けやすさでは硬い美山錦と軟らかいひとごこちの中間と言われていたのですが、実際にはひとごこちよりも溶けて、早い段階から糖化が進み、慌てて追い水を打つなどの対応をさせられました。

 醪管理に苦労しましたが、搾ってみると、意外にもすっきりと柔らかい味わいになりました。

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 奥様で杜氏の岡崎美都里さんのコメントが振るっているので、ご紹介します。

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 子供に例えると、最初から最後までしっかり見ててあげないといけない子ですね。

 そういう意味では手のかかる酒米です。

 出荷する頃には立派にしゃんとしているんですが。

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 55%精米の純米吟醸、無濾過生原酒です。

 いただきます。

 上立ち香は控え目ながらも華やかな香りが仄かに漂ってきます。

 玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に微細な気泡を包含したとろみ層を乗せて、まっしぐらに転がり込んできます。

 受け止めて保持すると、自律的に軽快なリズムで膨らみ、拡散しながら、適度な大きさのクリスタル様の粒粒を速射してきます。

 粒から滲み出てくるのは甘味8割、旨味2割。

 甘味は上白糖系のサラリとしたタイプ、旨味はシンプルでスレンダーな印象で、両者は足並みを揃えて健康的な踊りを披露します。

 流れてくる含み香はフルーツの盛り合わせを思わせる多種な香りが味わいにデコレート。

 後から純度の高い良質な酸味が現れて、メリハリを明快に施します。

 一部が突出することなく、五味がバランスよく最後まで活性を落とさず舞い、終盤には麗らかに縮退して、そのまま喉の奥へと駆け去っていきました。

 上田の5蔵の山恵錦酒の競演。

 空太郎の好みの順は信州亀齢→互→つきよしの→和田龍登水→明峰喜久盛、でした。

 

お酒の情報(19年186銘柄目)

銘柄名「信州亀齢(しんしゅうきれい)純米吟醸 無濾過生原酒 2018BY」

酒蔵「岡崎酒造(長野県上田市)」

分類「純米吟醸酒」「無濾過酒」「生酒」「原酒」

原料米「上田産山恵錦」

使用酵母「不明」

精米歩合「55%」

アルコール度数「16度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税抜)「720ml=1480円」

評価「★★★★★(4.5点)」

 

 長野県が最近、開発した酒造好適米の山恵錦(さんけいにしき、信交酒545号)を使う酒蔵が増えています。

 まだ、酒米としての評価が固まるところまでは行っていませんが、「話題性もあるので使ってみよう」との動きも盛んです。

 上田市でも市内の5軒の酒蔵が上田市内で収穫された山恵錦で酒を造って、一斉発売して飲み比べてみようという試みが実現したことはSAKETIMESに書きました。

 空太郎も後日、5本をまとめて取り寄せて飲み比べることにしたのです。

 4本目はこれです。

 「和田龍登水(わだりゅうとすい)純米生酒」。

 上田市の和田龍酒造さんが醸しているお酒です。

 蔵元杜氏の和田澄夫さんは次のように話していました。

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 私自身は何事も石橋を叩いて渡る性格なので、こういう競演企画がなければ山恵錦を使うことはなかったと思います。

 チャンスをもらって有難く思いました。

 先行して造った蔵からいろいろな情報をいただきましたが、私は他の酒米と同じように基本に忠実な麹造りと醪管理をしました。

 酵母もいつもの協会14号酵母でしたが、搾ったお酒は14号らしい香りと、綺麗な酸味が乗った透明感のある味わいに仕上がりました。

 思っていた以上の出来でした。

 山田錦、美山錦、ひとごこちに続く第四の定番酒にしたいと思っています。

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 55%精米の純米、無濾過生原酒です。

 いただきます。

 上立ち香はフレッシュな麹バナの香りが少々。

 口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面にとろみ層を乗せて、まっしぐらに滑り込んできます。

 受け止めて舌の上で転がすと、自律的にテンポよく膨らみ、拡散しながら、適度な大きさのガラス球様の粒粒を速射してきます。

 粒から滲出してくるのは甘味7割、旨味3割。

 甘味はザラメ糖系の中庸な印象、旨味はシンプルでスレンダーなタイプで、両者は足並みを揃えて、スリムな舞いを展開します。

 流れてくる含み香は控え目ながらもエモーショナルな甘い香りが薄化粧を付与。

 後から酸味と渋味はほとんど現れず、甘旨味のやや温和な緩い踊りが終盤まで続くのでした。

 余韻もやや締りのないものでした。

 それでは、上田の山恵錦酒、最後の5本目に参ります。

 

お酒の情報(19年185銘柄目)

銘柄名「和田龍登水(わだりゅうとすい)純米生酒 2018BY」

酒蔵「和田龍酒造(長野県上田市)」

分類「純米酒」「生酒」

原料米「上田産山恵錦」

使用酵母「協会14号」

精米歩合「55%」

アルコール度数「16度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税抜)「720ml=1480円」

評価「★★★★★(4.1点)」

 

 長野県が最近、開発した酒造好適米の山恵錦(さんけいにしき、信交酒545号)を使う酒蔵が増えています。

 まだ、酒米としての評価が固まるところまでは行っていませんが、「話題性もあるので使ってみよう」との動きも盛んです。

 上田市でも市内の5軒の酒蔵が上田市内で収穫された山恵錦で酒を造って、一斉発売して飲み比べてみようという試みが実現したことはSAKETIMESに書きました。

 空太郎も後日、5本をまとめて取り寄せて飲み比べることにしたのです。

 3本目はこれです。

 「つきよしの 純米吟醸」。

 上田市の若林醸造さんが醸しているお酒です。

 蔵元杜氏の若林真実さん次のように話していました。

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 前の年に山恵錦を使った他の酒蔵からの情報で、味がすっきりしすぎると聞き、搾りたてで出す自信がなくなり、それなら早めに造って搾り、ある程度の期間、寝かせてから発売したいと思いました。

 このため、12月中に搾るつもりで造りに挑みました。

 いざ、始めてみると、米は軟らかくてすごく溶ける。

 慌てました。

 香りもすごく出て、いったいどんな酒になるか不安が募りました。

 そうして、いざ搾ってみると、香りは完熟バナナそのもの。

 味は淡白すぎて、すぐに新酒として出荷するには耐えませんでした。

 ある意味、予定通りで年末に瓶詰めして冷蔵庫に入れ、3ヶ月余り経過して飲んでみると、味も乗ってきていて、香りもナッツレーズンを思わせる落ち着いたものになってバランスが取れていました。

 ただ、難しい米であることが確認できたので、来季はどうするかは未定です。

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 55%精米の純米吟醸、一回火入れです。

 いただきます。

 上立ち香は仄かにマスカット系の香りが。

 玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面にとろみ層を乗せて、まっしぐらに忍び入ってきます。

 受け止めて保持すると、自律的にテンポよく膨らみ、拡散しながら、適度な大きさのガラス球様の粒粒を連射してきます。

 粒から滲み出てくるのは甘味8割、旨味2割。

 甘味は中濃ソースのような濃さ、旨味はシンプルで素直な印象で、甘味を前面に押し立てて、ヘルシーな舞いを展開します。

 流れてくる含み香はライチとマスカットとセメダインがミックスされた香りで、甘旨味を囃します。

 後から来るのは微量の渋味で、薄氷の輪郭を付与。

 甘旨味はゆったりどっしりとした舞いを続行し、終盤まで不動の姿勢で踊り続けるのでした。

 飲み下した後のキレはあと一歩でした。

 それでは、上田の山恵錦酒、4本目に参ります。

 

お酒の情報(19年184銘柄目)

銘柄名「つきよしの 純米吟醸 2018BY」

酒蔵「若林醸造(長野県上田市)」

分類「純米吟醸酒」

原料米「上田産山恵錦」

使用酵母「協会9号」

精米歩合「55%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税抜)「720ml=1575円」

評価「★★★★(4.2点)」

 

 長野県が最近、開発した酒造好適米の山恵錦(さんけいにしき、信交酒545号)を使う酒蔵が増えています。

 まだ、酒米としての評価が固まるところまでは行っていませんが、「話題性もあるので使ってみよう」との動きも盛んです。

 上田市でも市内の5軒の酒蔵が上田市内で収穫された山恵錦で酒を造って、一斉発売して飲み比べてみようという試みが実現したことはSAKETIMESに書きました。

 空太郎も後日、5本をまとめて取り寄せて飲み比べることにしたのです。

 2本目はこれです。

 「互(ご)純米吟醸 隠し球 直汲み」。

 上田市の沓掛酒造さんが醸しているお酒です。

 蔵元杜氏の沓掛浩之さんは次のように話していました。

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 山恵錦はまったくの初めての経験でした。

 初体験なんだから、あえて酵母もこれまで使ったことのない初物にしようと、協会6号を選びました。

 米の名前に「山の恵み」とあるので、酒質も山の恵みである山菜に合うようにと設計して臨みました。

 やってみると麹はややべとつく感じでサバケが心配しましたが、なんとかなりました。

 結局はやや苦味のある山菜にもマリアージュするような酸味と旨味を乗せることができたと思っています。

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 55%精米の純米吟醸を、搾った口から直に汲んで詰めた生酒になります。

 いただきます。

 上立ち香はほんわりとした優しい甘い香りがほんのりと。

 口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面にとろみ層を少量乗せて、軽快なテンポで滑り込んできます。

 受け止めて保持すると、促されるままに膨らみ、拡散しながら、適度な大きさの透明感に優れた粒粒を速射してきます。

 粒から滲出してくるのは甘味7割、旨味3割。

 甘味はザラメ糖の押し味のしっかりしているタイプ、旨味はシンプルでドライな印象で、両者はバランスよく腕を組んでグルグルと回るのです。

 流れてくる含み香は控え目ななかにもきらりとした甘い香りで薄化粧を付与。

 後から来るのはリンゴ酸とクエン酸が等量混じった酸味で、これが素早く甘旨味に帯状に巻きつくのです。

 そうして、接触部分からどんどんと溶け込んで味わいをジューシーな甘酸っぱい世界へと転じるのです。

 唾液腺を刺激するような舞いは終盤まで続き、飲み下した後の余韻も爽快なものでした。

 それでは、上田の山恵錦酒、3本目に参ります。

 

お酒の情報(19年183銘柄目)

銘柄名「互(ご)純米吟醸 隠し球 直汲み 2018BY」

酒蔵「沓掛酒造(長野県上田市)」

分類「純米吟醸酒」「生酒」「直汲み酒」

原料米「上田産山恵錦」

使用酵母「協会6号」

精米歩合「55%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「-3」

酸度「1.9」

情報公開度(瓶表示)「◎」

標準小売価格(税抜)「720ml=1465円」

評価「★★★★★(4.4点)」

 長野県が最近、開発した酒造好適米の山恵錦(さんけいにしき、信交酒545号)を使う酒蔵が増えています。

 まだ、酒米としての評価が固まるところまでは行っていませんが、「話題性もあるので使ってみよう」との動きも盛んです。

 上田市でも市内の5軒の酒蔵が上田市内で収穫された山恵錦で酒を造って、一斉発売して飲み比べてみようという試みが実現したことはSAKETIMESに書きました

 空太郎も後日、5本をまとめて取り寄せて飲み比べることにしたのです。

 1本目はこれです。

 「明峰喜久盛(めいほうきくざかり)純米」。

 上田市の信州銘醸さんが醸しているお酒です。

 蔵元の滝澤恭次さんは次のように話していました。

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 山恵錦は、長野県が開発中だった数年前に依頼を受けて造ってみたことがありました。

 その時は米を磨いて純米吟醸酒を造ったのですが、思いのほか個性のない酒になってしまったのです。

 そこで、今回はもっと味を出したかったので、70%精米の純米酒で商品化しました。

 搾ってみて、他の米の純米酒に比べて新酒にしては丸みがあるなあという印象です。

 これが半年以上寝かせてひやおろしの時期になったらどうなるかが楽しみです。

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 一回火入れのお酒となります。

 いただきます。

 上立ち香は微かにセメダインの香りが。

 玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に適度なとろみ層を乗せて、ゆったりとしたテンポで転がり込んできます。

 受け止めて舌の上で転がすと、促されるままに膨らみ、拡散しながら、適度な大きさのややウエットな粒粒を連射してきます。

 粒から現出してくるのは甘味7割、旨味3割。

 甘味は粘り気を帯びた中庸なイメージ、旨味はサシの入った肥満気味のタイプで、両者は端からやや濃厚な踊りを展開します。

 流れてくる含み香はマスカットを思わせる爽快な香りで穏やかに囃します。

 後から酸味と渋味は現れず、終盤まで甘旨味のやや単調でのっそりとした踊りが続き、最後はチリチリとした辛さが現れて、熱を帯びながら全体を取り纏めて縮退し、余韻を最小限のものにして消えて行きました。

 それでは、上田の山恵錦酒、2本目に参ります。

 

お酒の情報(19年182銘柄目)

銘柄名「明峰喜久盛(めいほうきくざかり)純米 2018BY」

酒蔵「信州銘醸(長野県上田市)」

分類「純米酒」

原料米「上田産山恵錦」

使用酵母「不明」

精米歩合「70%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税抜)「720ml=1115円」

評価「★★★★★(4.2点)」

 秋田県横手市の備前酒造本店から事業譲渡を受けて、今年4月に登場した大納川さんのお酒を2本取り寄せていただきました。

 「天花 純米吟醸 無濾過生原酒 山田錦仕込み」に続いて、2本目にいただいたのはこれです。

 「天花(てんか)純米吟醸 無濾過生原酒 秋田酒こまち仕込み」。

 さて、阿櫻酒造と銀盤酒造の立て直しに腕を振るった田中文悟氏が手掛ける3軒目の酒蔵再生事業となる大納川ですが、今回は強力な助っ人を確保しています。

 それが元横綱の貴乃花である花田光司さんで、大納川のお披露目式が開かれた際、応援団長として会見に参加したのでした。

 しかも、いきなり、「國酒 貴乃花」という純米大吟醸酒の発売も発表されたのです。お酒は35%精米が720mlで1万2千円(税別)、45%精米が8千円というハイエンド商品なのです。

 驚きです。

 今後も「貴乃花」の名前がついたお酒をどんどん投入していく計画のようで、次の造りは前年比2倍の600石を狙っています。

 頑張ってください。

 さて、2本目は、1本目と米違い、秋田酒こまち50%精米の、無濾過生原酒です。

 いただきます。

 上立ち香は芳醇で甘い香りが仄かに。

 口に含むと中程度の大きさの均整の取れた旨味の塊が、平滑になった表面に薄っすらととろみ層を乗せて、ゆらゆらと揺れながら、忍び入ってきます。

 受け止めて保持すると、促されるままにワルツを踊るように膨らみ、拡散しながら、適度な大きさのガラス球様の粒粒を連射してきます。

 粒から滲出してくるのは甘味7割、旨味3割。

 甘味は1本目よりも粘り気の濃いタイプ、旨味は2,3種類のコクが濃い目にミックスされた印象で、両者は足並みを揃えて、気持ち大胆に踊り始めます。

 流れてくる含み香はカプロン酸エチル系の芳醇な香りで、派手めに飾り付けを付与。

 後から来る酸味と渋味は僅少で、隠し味役に徹し、甘旨味は単独で伸び伸びと旋回し、終盤になると自主的に反転、縮小して喉の奥へと吸い込まれていきました。

 2本ともまずまずの純米吟醸酒でした。

 大納川の今後を注目します。

 

お酒の情報(19年181銘柄目)

銘柄名「天花(てんか)純米吟醸 無濾過生原酒 秋田酒こまち仕込み 2018BY」

酒蔵「大納川(秋田県横手市)」

分類「純米吟醸酒」「無濾過酒」「生酒」「原酒」

原料米「秋田酒こまち」

使用酵母「不明」

精米歩合「50%」

アルコール度数「17度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税抜)「1800ml=3400円」

評価「★★★★(4.3点)」