酔い人「空太郎」の日本酒探検

酔い人「空太郎」の日本酒探検

意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

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自宅に福島県本宮市の大天狗酒造さんのお酒をまとめて購入し、飲み比べをしました。

2本目はこれです。

 

 

大天狗(だいてんぐ)純米吟醸」。

 

20年ぶりに自醸を再開しようとしたものの、主要な酒造設備はあらかた売り払ってしまっており、新たな設備投資が相当必要になることがわかりました。

しかし、伊藤滋敏さんは最小限の投資で済ませたく、福島県ハイテクプラザの指導員と相談をします。

 

 

そして、麹造りのための室は作らず、コンパクトな温蔵庫に加湿器と除湿機を置いて麹造りに挑んでいます。

種切りもここでやり、盛りや仲仕事、仕舞い仕事も温蔵庫の中でやり、出麹までは48時間と平均的な麹造りをしているようです。

端から乾燥麹を外部から購入してもいいのに、それは酒蔵のプライドが許さなかったのでしょう。

ただし、酵素力価が足らない時は酵素剤を追加しているものと想像します。

 

さて、2本目は1本目と同じ60%精米の純米吟醸酒、一回火入れです。

 

 

上立ち香は吟醸香ではなく、旨味主導の酒エキスの香りが。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が平滑になった表面に打ち粉を振って、サラサラな感触を振りまきながら、軽快なテンポで滑り込んできます。

受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を連射してきます。

 

粒から滲出してくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味は上白糖系のライトなタイプ、旨味はシンプル無垢で滑らかな印象で、両者は足並みを揃えて、洗練された折り目正しいハーモニーを奏でます。

 

流れてくる含み香は上立ち香同様、酒エキスの香りで薄化粧を付与。

後から酸味と渋味が僅少現れて、効果的なアクセントに貢献します。

味わいは終盤までオーソドックスな薄甘い世界が続くのでした。

 

 

それでは、大天狗酒造のお酒、3本目をいただくことにします。

 

お酒の情報(25年102銘柄目)

銘柄名「大天狗(だいてんぐ)純米吟醸 2024BY」

酒蔵「大天狗酒造(福島県本宮市)」

分類「純米吟醸酒」

原料米「不明」

酵母「不明」

精米歩合「60%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込み)「720ml=1870円」

評価「★★★★★(7.5点)」

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自宅に福島県本宮市の大天狗酒造さんのお酒をまとめて購入し、飲み比べをしました。

1本目はこれです。

 

 

大天狗(だいてんぐ)特別純米 無濾過生酒」。

 

大天狗酒造は1872年創業。

市内を流れる阿武隈川の水運に恵まれた本宮で、倉庫業で稼いだ伊藤家が酒造業に乗り出したのです。

倉庫の一部を酒蔵に改装した段階で、撤去が遅れて残っていた行李から天狗のお面が出てきたことから、銘柄を「大天狗」としています。

 

戦後も醸造規模は大きくせずに地元向けで酒造りをしてきましたが、他の蔵との競争に敗れ、1990年前後に酒造りを止め、桶買いにシフトしました。

その後、2000年に四代目社長に就任した現蔵元の伊藤滋敏氏は酒造りの再開を模索。

しかし、休蔵を機会に多くの設備を売却したため、手間取り、醸造再開は2012年でした。

 

 

さらに、2014年に会社員と結婚していた伊藤蔵元の長女、小針沙織さんが酒造りをするため蔵入りし、修業を積んだ後、2018BYから杜氏になっています。

 

こうした経緯から、大天狗酒造の酒造りには驚き満載です。

実際に蔵見学をしたので、その辺の話は明日。

 

1本目のお酒は60%精米の特別純米酒、無濾過生酒です。

 

 

上立ち香は芳しく甘い香りが仄かに。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が平滑になった表面に打ち粉を振って、サラサラな感触をアピールしながら、軽快なスピードで転がり込んできます。

受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を速射してきます。

 

粒から滲み出てくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味はザラメ糖系の奥行きのあるタイプ、旨味はシンプル無垢で気持ちつるっとしたテクスチャーで、両者は足並みを揃えて、なよなよとした雰囲気で踊ります。

 

流れてくる含み香は芳醇でジューシーな香りでデコレート。

後から酸味と渋味は僅少現れて、薄氷の輪郭を付与します。

甘旨味は含み香に励まされ、心地良さそうに終盤まで健気な舞いを続けるのでした。

 

 

それでは、大天狗酒造のお酒、2本目をいただくことにします。

 

お酒の情報(25年101銘柄目)

銘柄名「大天狗(だいてんぐ)特別純米 無濾過生酒 2024BY」

酒蔵「大天狗酒造(福島県本宮市)」

分類「特別純米酒」「無濾過酒」「生酒」

原料米「不明」

酵母「不明」

精米歩合「60%」

アルコール度数「16度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込み)「720ml=2000円」

評価「★★★★★(7.55点)」

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船橋の銘酒居酒屋「ナイン」さんにお邪魔しました。

2時間飲み放題でいろいろな美酒をいただきましたが、気になったお酒をいくつかご紹介します。

最後の4本目はこれです。

 

 

飛囀(ひてん)鵠(HAKUCHO)TypeA」。

秋田県にかほ市の飛良泉本舗さんが醸しているお酒です。

 

NHKの日曜の朝8時から「小さな旅」という番組があります。

毎回、NHKのアナウンサーが国内の町を訪ね歩く番組で、2月16日付が「霊峰に守られて~秋田県 鳥海山麓」というテーマで、秋田県にかほ市が舞台でした。

その中で、登場したのが飛良泉本舗の蔵元後継者の齋藤雅昭さんでした。

ニュース番組で紹介される際はせいぜい1,2分が相場ですが、25分間の7~8分が齋藤さんや蔵人達の働く姿で、酒造りに真摯に取り組む彼らの姿がばっちりと紹介されていました。

「秋田に飛良泉あり」という宣伝になったことかと思います。

 

 

さて、いただくお酒は、後継ぎの齋藤さんが自由に酒造りに挑戦するシリーズ「飛囀」の1つです。

裏貼りにはどういう挑戦だったのかの説明書きがあるので、ご紹介します。

*************

No.77酵母(リンゴ酸)、山廃酛(乳酸)、白麹(クエン酸)のトリプルアシッドを組み合わせた酸に特化した日本酒です。

口に入れた瞬間のリンゴ酸のアタック、中盤の複合的な酸味、最後にクエン酸のほろ苦さが余韻として残ります。

*************

 

 

日本酒度がマイナス16に対して、酸度が4.0という数値がそのユニークさを物語っています。

 

秋田酒こまちの山廃純米吟醸酒、一回火入れです。

 

 

上立ち香は複雑系の甘酸の香りがしっかりと。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が平滑になった表面に薄らととろみ層を乗せて、活力一杯に駆け込んできます。

受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を連射してきます。

 

粒から滲出してくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味は上白糖系の乾いたタイプ、旨味はシンプル無垢ながら若々しく、両者は端からパワフルな舞いを披露します。

 

そこにすかさず現れるのが大量の酸味。

多彩なタイプの酸味の複合体はエネルギッシュに甘旨味に体当たりします。

しかし、甘旨味もこれに対抗し、両者は溶け込まずにせめぎ合いを繰り返します。

このため、流れてくる含み香もまだら模様の複雑な香り。

甘旨味と酸味による賑やかな競演は終盤まで続き、最後に飲み下した後の余韻も喧噪の後のようでした。

 

 

首都圏で受けるタイプの素敵な仕上がりでした。

 

お酒の情報(25年100銘柄目)

銘柄名「飛囀(ひてん)鵠(HAKUCHO)TypeA 2024BY」

酒蔵「飛良泉本舗(秋田県にかほ市)」

分類「純米吟醸酒」「山廃酒」「原酒」

原料米「秋田酒こまち」

酵母「協会77号」

精米歩合「麹米=50%、掛米=60%」

アルコール度数「14度」

日本酒度「-16」

酸度「4.0」

情報公開度(瓶表示)「◎」

標準小売価格(税込み)「1800ml=3850円」

評価「★★★★★★(7.75点)」

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船橋の銘酒居酒屋「ナイン」さんにお邪魔しました。

2時間飲み放題でいろいろな美酒をいただきましたが、気になったお酒をいくつかご紹介します。

3本目はこれです。

 

 

天穏(てんのん)涼殿(すずみどの)純米吟醸」。

島根県出雲市の板倉酒造さんが醸しているお酒です。

 

天穏酒造は2015BYから小島達也さんが杜氏に就いて、酒造りを牽引しています。

小島さんは酒造りに確固たるコンセプトを持っており、酒質的には吟醸だけれども、アミノ酸の多い味わいを目指しています。

そのために、麹造りが独自です。

あるサイトでのインタビューに小島さんは次の様に話しています。

 

 

*****************

ほとんどの酒蔵は二日間(約48時間)で麹を造りますが、私たちは三日間(72時間)かけて突き破精の麹をつくります。

二日で麹は出来ますが、ちょっときれいで清らかすぎる。

その先の力が余り得られないので、きれいさと力強さを両立するために、通常の二日麹よりも一日長く育成させて、しかも突き破精にして強い味わいを引き出しています。

 

突き破精三日麹でお酒を仕込むと、米の表面ではなく、米の内側が溶けるので、非常にゆっくりと醪が発酵します。

お米がじんわり溶けることで、長時間の発酵を促して、調和のとれた液体に仕上げることができます。

長い時間をかけることは、やはりそれだけ手をかけたり、見守ったり、祈る時間が増えますから、清らかなお酒を授かることが出来るのではないでしょうか。

きれいにゆっくり、長い発酵を心がけて造っています。

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72時間麹をやる蔵(杜氏)は全国に数少ないですが、ほかにもあります。

そこでも、やはり、アミノ酸が重視されているようです。

 

さて、いただくのは、地元産五百万石、60%精米の純米吟醸酒です。

 

 

上立ち香はやや太めの酒エキスの香りがしっかりと。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が平滑になった表面に薄らととろみ層を乗せて、ゆったりとした雰囲気で忍び入ってきます。

受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散して、適度な大きさのウエットな粒々を速射してきます。

 

粒から滲み出てくるのは甘味6割、旨味4割。

甘味はザラメ糖系の幅も奥行きも感じるタイプ、旨味は複数のコクが織り上がった印象で、両者は仲良く、こってりとした世界を描きます。

 

流れてくる含み香は濃い酒エキスの香りに薬っぽいクセのある香りがミックスしてデコレート。

後から酸味と渋味が少量現れて、明快なメリハリを付与。

甘旨味はペースを崩さず、淡々とした舞いを続け、最後は反転縮退して昇華して行きました。

 

 

余韻は意外に短く、すっきりしていました。

 

お酒の情報(25年99銘柄目)

銘柄名「天穏(てんのん)涼殿(すずみどの)純米吟醸 2023BY」

酒蔵「板倉酒造(島根県出雲市)」

分類「純米吟醸酒」

原料米「五百万石」

酵母「不明」

精米歩合「60%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込み)「720ml=1650円」

評価「★★★★★(7.5点)」

テーマ:

船橋の銘酒居酒屋「ナイン」さんにお邪魔しました。

2時間飲み放題でいろいろな美酒をいただきましたが、気になったお酒をいくつかご紹介します。

2本目はこれです。

 

 

宝剣(ほうけん)超辛口 純米吟醸」。

広島県呉市の宝剣酒造さんが醸しているお酒です。

 

宝剣酒造については、常に蔵元杜氏の土井鉄也(愛称=ドイテツ)さんの若い頃から現在までの苦労話が語られます。

空太郎もかつて、取材をして、その側面からSAKETIMESに記事を書きましたが、実は、宝剣酒造が今あるのは、土井さんの奥様の真紀さんの内助の功が大きいと思っています。

土井さんは若い頃は不良で、親の言う事も聞かないので、早々に勘当されていました。

そんな土井さんが18歳の時に出会った真紀さんにベタ惚れし、結婚を決意しますが、まだ未成年だったので、親の同意書が必要でした。

このため、父上のところに何度も足を運んで頭を下げ、ようやく、結婚にこぎつけました。

 

 

土井さんは結婚後、蔵に戻って、酒造りに携わるものの、苦難が何回もやってきます。

それを乗り越えたのも、真紀さんの励ましが大きかったようです。

土井さんの真紀さんに対する信頼は厚く、2019年にSAKECOMPETITION2019の純米酒部門でナンバーワンの栄冠に輝いた時も東京の発表会場に向かう前日には真紀さんに次の様に話していたそうです。

 

 

「去年より絶対いい。香りがおとなしめで、綺麗。ほかのお酒と比較すると甘さがあと少しなので5,6位かもしれない」

と自信を見せると思えば、「ワシには何もない。どれだけ頑張っても何もない。努力は報われない世の中なのかもしれない」。

 

そんな土井さんの話を真紀さんは笑って聞いて、東京へ送ったそうです。

 

土井さんのよき相談相手だったのですね。

 

さて、いただくお酒は八反錦、55%精米の純米吟醸、一回火入れです。

 

 

上立ち香は細身の鍛えられた馨しい香りが微かに。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊がよく踏み固められて平滑になった表面に打ち粉を振って、サラサラな感触をアピールしながら、まっしぐらに駆け込んできます。

受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を連射してきます。

 

粒から滲み出てくるのは甘味6割、旨味4割。

甘味は上白糖系の儚いタイプで次の瞬間には昇華、シンプルで鍛えられたマッスル系の旨味は単独で弾みながら駆け回ります。

 

流れてくる含み香も吟醸にしてはとっても淡い香りで薄化粧を付与。

後から酸味と渋味が少量現れて、最小限のアクセントを施します。

旨味は終盤まで、モノトーンの世界を精緻に描き続けるのでした。

 

 

まさに、甘さを抑えた旨口酒でした。

 

お酒の情報(25年98銘柄目)

銘柄名「宝剣(ほうけん)超辛口 純米吟醸 2024BY」

酒蔵「宝剣酒造(広島県呉市)」

分類「純米吟醸酒」

原料米「八反錦」

酵母「不明」

精米歩合「55%」

アルコール度数「16度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込み)「720ml=1980円」

評価「★★★★★(7.6点)」

テーマ:

船橋の銘酒居酒屋「ナイン」さんにお邪魔しました。

2時間飲み放題でいろいろな美酒をいただきましたが、気になったお酒をいくつかご紹介します。

1本目はこれです。

 

 

敷嶋(しきしま)特別純米 無濾過生原酒 8号酵母」。

愛知県半田市の伊東(株)さんが醸しているお酒です。

 

21年ぶりに創業の地、半田市で酒造りを復活させた伊東(株)の蔵元の伊東優さんは、酒造りに自ら取り組む一方で、地域おこしのために駆け回っています。

自分たちの蔵で使っていなかった古い建物を改装して、売店やレストランなども作ってきていますが、さらには昨年(2024)秋には、最寄りのJR亀崎駅の駅舎の空きスペースを利用して、立ち飲みイベント「亀崎駅おとなり酒場」を約1ヶ月間実施しました。

「敷嶋」のお酒が飲めるだけでなく、つまみも提供されて、角打ちとして大いに盛り上がったようです。

 

 

このため、アンコールの声が高まり、今年(2025)2月に再び開催。

しかも、今回は隣駅の半田駅でも同じ角打ちを準備し、半田駅では「敷嶋」だけでなく、中埜酒造と盛田金しゃち酒造のお酒も提供することとし、伊東(株)のひとりよがりではなく、半田市全体の盛り上がりに貢献しようとしています。

偉いです。

伊東さんの今後の動きにも目が離せません。

 

さて、いただくお酒は協会酵母の中でもレア物の8号酵母を使った特別純米、無濾過生原酒です。

 

 

上立ち香はフルーティーというよりは濃い目の酒エキスの香りが。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が平滑になった表面に厚めにとろみ層を乗せて、ゆったりとした雰囲気で忍び入ってきます。

受け止めて保持すると、催促を受けてのろのろと膨らみ、拡散して、適度な大きさの粘っこい粒々を速射してきます。

 

粒から現出してくるのは甘味8割、旨味2割。

甘味は水飴系のどろりとしたタイプ、旨味も無数のコクが複層化した印象で、両者は一緒にゆっくりと這い回るように徘徊します。

 

流れてくる含み香は上立ち香同様、濃霧のような酒エキスの香り。

後から酸味が多めに渋味が少量現れるものの、甘旨味のヘビーさになんとかメリハリをつけるに留まります。

味わいは終盤までどんよりとした曇天の世界でした。

 

 

8号酵母のお酒は最近、いろいろな酒蔵が挑戦していますが、敷嶋のお酒はまだ使いこなせていないステージだと感じました。

 

お酒の情報(25年97銘柄目)

銘柄名「敷嶋(しきしま)特別純米 無濾過生原酒 8号酵母 2024BY」

酒蔵「伊東(愛知県半田市)」

分類「特別純米酒」「無濾過酒」「生酒」「原酒」

原料米「山田錦」

酵母「協会8号酵母」

精米歩合「60%」

アルコール度数「18度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込み)「1800ml=3740円」

評価「★★★★★(7.5点)」

テーマ:

自宅の晩酌にお酒を選びました。

これです。

 

 

キタノニシキ 純米生酒 プロトタイプ」。

北海道栗山町の小林酒造さんが醸しているお酒です。

 

このお酒はその名の通り、小林酒造が新天地を切り開くために挑戦した新しいタイプのお酒です。

 

北海道の日本酒業界はこの10年激動期に突入しています。

それまでは、10余りの蔵がぬくぬくと北海道の市場で仲良く共存し(失礼!)、波風を立てないように配慮してきました。

それが、2016年に上川大雪酒造が登場、続いて、岐阜の三千櫻酒造が移転、さらに、道南の七飯町に新しい箱館醸造が誕生。

そして上川大雪酒造が帯広と函館に新しい蔵を建てるといった具合に新規参入が相次ぎました。

 

 

しかも、彼らはことごとく、首都圏などで受けているレベルの酒質をひっさげて、北海道の市場に乗り込んできたのです。

道民は大喜びでしたが、既存の酒蔵は当初は指をくわえてみている状態でした。

しかし、このままではじり貧から抜け出られないと生き残りをかけた動きが活発になっています。

すでに、二世古酒造と福司酒造が反転攻勢に出ていますし、碓氷勝三郎商店も近く、動き出しそうです。

小林酒造も負けては居られないと、今回の片仮名銘柄を出してきたというわけです。

お手並み拝見です。

 

70%精米の純米生酒です。

 

 

上立ち香は生酒特有の酢酸エチルのチクチクとした香りが。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が平滑になった表面に打ち粉を振って、サラサラな感触を強調しながら、軽快なテンポで駆け込んできます。

受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を連射してきます。

 

粒から滲出してくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味はザラメ糖系のさっぱりとしたタイプ、旨味は凹凸の目立つ複数のコクが重なり合った印象で、両者は足並みを揃えて、エネルギッシュにグルグルと旋回しながら踊ります。

 

流れてくる含み香は一種風変わりな果実系の甘い香りに、セメダイン由来の酢酸エチルの香りが混じってデコレート。

後から酸味と渋味が結構な量現れて、味わいに明快なメリハリを施します。

渋味は終盤になると強まり、レーズンのニュアンスを加え、そのまま、活力を維持しながら渦を巻いて、喉の奥へと吸い込まれていきました。

 

 

プロトタイプらしく、やや改善の余地あり、でした。

 

お酒の情報(25年96銘柄目)

銘柄名「キタノニシキ 純米生酒 プロトタイプ 2024BY」

酒蔵「小林酒造(北海道栗山町)」

分類「純米酒」「生酒」

原料米「不明」

酵母「不明」

精米歩合「70%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込み)「1800ml=2970円」

評価「★★★★★(7.5点)」

テーマ:

自宅の晩酌にお酒を選びました。

これです。

 

 

来福(らいふく)純米生酒 さくらの花酵母」。

茨城県筑西市の来福酒造さんが醸しているお酒です。

 

来福酒造の杜氏は実質生え抜きの佐藤正明さんが長年務め、蔵元の藤村俊文さんと二人三脚で来福の知名度を高めてきました。

その佐藤さんも定年を迎え、2023BYをもって、来福を退職しました。

後任は長年、副杜氏を勤めてきた加納良祐さんが就任しました。

加納さんは40歳になったばかりですが、十数年のキャリアがあり、来福酒造は今後も安定して美味しい酒を造ってくれるものと期待しています。

 

 

ちなみに、佐藤さんは2024年春の退任間もないころは、しばらく休むようなことを話していましたが、2024年秋には石川県の鹿野酒造で働くことが決まりました。

杜氏は木谷太津男さんがいらっしゃるので、蔵人の一人の扱いでしょうが、酒造りに携わった職人は、結局は体が動く限りは酒造りに関わりたくなるようです。

新天地でのご活躍を願っています。

 

さて、いただくお酒は、さくらの花酵母を使った59%精米の純米酒、生酒です。

 

 

上立ち香は初々しくフレッシュな果実の香りが。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が平滑になった表面に打ち粉を振って、サラサラな感触をアピールしながら、軽快なスピードで滑り込んできます。

受け止めて保持すると、自律的にヘルシーな雰囲気で膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を速射してきます。

 

粒から滲み出てくるのは甘味8割、旨味2割。

甘味はザラメ糖系の奥行きを感じるタイプ、旨味はシンプル無垢で木綿豆腐のテクスチャーを放ちながら、甘旨味と絶妙なバランスで踊ります。

 

流れてくる含み香は適度にゴージャスで適度にキュートな甘い香りでデコレート。

後から酸味と渋味が適量現れて、クエン酸主体の酸味は甘旨味に彩りを添え、渋味は全体をキュッと引き締めて、活力のある甘旨味の舞いが終盤まで続くのでした。

 

 

生ヒネも一切無く、素晴しい仕上がりでした。

来福は安心して飲める美酒です。

 

お酒の情報(25年95銘柄目)

銘柄名「来福(らいふく)純米生酒 さくらの花酵母 2024BY」

酒蔵「来福酒造(茨城県筑西市)」

分類「純米酒」「生酒」

原料米「不明」

酵母「さくらの花酵母」

精米歩合「59%」

アルコール度数「17度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込み)「1800ml=3080円」

評価「★★★★★★(7.8点!)」

テーマ:

岐阜県高山市の平田酒造場さんのお酒をまとめて取り寄せて、飲み比べをしました。

最後の3本目はこれです。

 

 

飛騨の華(ひだのはな)超辛口 純米吟醸」。

 

事業承継した平田酒造を高山の平凡な蔵から変身を図るため、新しい杜氏を招き入れた上島さんの総仕上げは老朽化した蔵からの決別でした。

古い蔵をリノベする方法もありましたが、幸いにも道路を挟んだ向かい側におあつらえの物件があったため、こちらを改造して新しい蔵にすることにしました。

 

このタイミングで小仕込みで付加価値の高い酒だけに集約するための設備を購入。

仕込みタンクは600㍑から1500㍑まで。

総米で言うと150㌔から最大500㌔と、大きな蔵なら大吟醸酒を造るサイズに絞っています。

 

 

まだ、蔵の中を公開された発信がありませんが、4月からは酒蔵見学も有料で始めたので、今後、どのような設備になっているかは追々わかることと思います。

いずれにしろ、高山の酒蔵は観光客も多く、造りよりも販売に気持ちが傾斜している酒蔵が大半な中にあって、平田酒造場の今後が楽しみです。

 

さて、最後の3本目は60%精米の純米吟醸は、1,2本目と同じですが、超辛口表記になっています。

 

 

上立ち香はチクチクとした刺激が主体の酒エキスの香りが。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が平滑になった表面に棘混じりの粉を敷き詰めて、まっしぐらに転がり込んできます。

受け止めて保持すると、促されるままにキビキビとした態度で膨らみ、拡散して、適度な大きさの硬めのゴロゴロとした粒々を連射してきます。

 

粒から現出してくるのは甘味4割、旨味6割。

甘味は上白糖系の儚いタイプで現れた次の瞬間に消滅、旨味は凹凸の目立つモノトーンでシンプルな印象で、単独で淡々とハードボイルドな世界を描きます。

 

流れてくる含み香はか細くて硬い酒エキスの香りが微かに。

後から酸味は少量、渋味はそれよりも多めに現れて、淡い世界に拍車をかけるのです。

味わいは完璧な水墨画の世界が終盤まで続き、最後は反転縮退して昇華して行きました。

 

 

甘さを排除した旨口酒でした。

平田酒造場のお酒は今後に注目です。

 

お酒の情報(25年94銘柄目)

銘柄名「飛騨の華(ひだのはな)超辛口 純米吟醸 2024BY」

酒蔵「平田酒造場(岐阜県高山市)」

分類「純米吟醸酒」

原料米「不明」

酵母「不明」

精米歩合「60%」

アルコール度数「18度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込み)「720ml=1870円」

評価「★★★★★(7.5点)」

テーマ:

岐阜県高山市の平田酒造場さんのお酒をまとめて取り寄せて、飲み比べをしました。

2本目はこれです。

 

 

飛騨の華(ひだのはな)純米吟醸」。

 

2019年に事業承継をした三重県伊勢市の上島憲氏は、経営の建て直しの肝は優れた杜氏を招き入れることだとみて、杜氏探しに力をいれます。

そして、スカウトにこぎつけたのが津田篤志さんでした。

津田さんは1976年生まれ。

和歌山市出身で、23歳から日本酒の世界に入ります。

最初は「紀土」を醸す平和酒造で働き、その次は「南方」を醸す世界一統で杜氏となっています。

 

 

酒造りは南部杜氏として研修も受けて資格も取得。

もうすぐ50歳になるという時期に平田酒造場に移ってきた理由は不明ですが、おそらく上島さんが平田酒造場の改革とリブランディングをする計画を説明し、それを聞いた津田さんが新天地での新たな勝負に興味を示したからだと思います。

 

さて、2本目も1本目と同じ60%精米の純米吟醸ですが、一回火入れです。

 

 

上立ち香は酒エキスの香りに微かに火冷めの香りがミックスして漂ってきます。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が平滑になった表面に薄らととろみ層を乗せて、ゆらゆらと揺れながら、おっとりとした雰囲気で忍び入ってきます。

受け止めて保持すると、促されるままにゆっくりと膨らみ、拡散して、適度な大きさの硬めの粒々を速射してきます。

 

粒から滲出してくるのは甘味6割、旨味4割。

甘味は上白糖系の乾いたタイプ、旨味はシンプル無垢ながら、無数の凹凸が残る印象で、両者はややギクシャクした印象で踊ります。

 

流れてくる含み香はトロリとした酒エキスの香りが、やや粘っこく絡みつくのです。

後から酸味は皆無、渋味が少量現れて微かにアクセントを施すものの、甘旨味は重めの香りに引っ張られてバランスを少しずつ崩し、最後は足並みを乱しながら、喉の奥へと駆け去っていきました。

 

 

バランスにやや難ありでした。

それでは、平田酒造場のお酒、3本目をいただくことにします。

 

お酒の情報(25年93銘柄目)

銘柄名「飛騨の華(ひだのはな)純米吟醸 2024BY」

酒蔵「平田酒造場(岐阜県高山市)」

分類「純米吟醸酒」

原料米「不明」

酵母「不明」

精米歩合「60%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込み)「720ml=2200円」

評価「★★★★(7.45点)」