酔い人「空太郎」の日本酒探検

酔い人「空太郎」の日本酒探検

意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

自宅の晩酌に、三重県名張市の福持酒造場さんが醸しているお酒を3本取り寄せて飲み比べることにしました。

1本目はこれです。

「天下錦(てんかにしき)特別純米 火入れ」。

 

福持酒造場は蔵元の福持博文さんに後継ぎがおらず、蔵の存続が危ぶまれたのですが、福持さんの甥の羽根清治郎さんが説得に応じて、東京の会社勤めを辞めて、2015BYから後継者として蔵に入りました。

戻ってきた時には蔵の設備は老朽化し、蔵人の高齢化も深刻で、そんななか羽根さんはコツコツと設備を整え、酒造りを学ぶことで2,3年前から天下錦の評判は良くなってきています。

酒造りの勉強は東広島市の酒類総合研究所で基礎を学び、その次には三重を代表する「作」を醸す清水清三郎商店で修業をさせてもらっています。

 

酒質を向上させるには何が必要かをたたき込まれて貴重な体験だったようですが、先方から「人手が足りなくて困っている。このままこちらで働いて、天下錦のお酒もここで造れば」と半ば冗談で言われたのだそうです。

しかし、羽根さんは、

「蔵がぼろくて、設備も貧弱だとしても名張で造らなければ意味が無い。なんとしてでも造りを続けなければ」

とむしろ奮起したのです。

それが2017BYでした。

ところが、その直後に次なる苦難が待ち構えていたのです。続きは明日。

 

さて、1本目は三重県産山田錦を使った60%精米の特別純米酒、瓶火入れです。

上立ち香はセメダイン系の酢酸エチルの香りが仄かに。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面にとろみ層を適度に乗せて、粛々とした態度で滑り込んできます。

 

受け止めて保持すると、促されるままにキビキビとした雰囲気で膨らみ、拡散しながら、適度な大きさのガラス球様の粒々を連射してきます。

粒から滲出してくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味はザラメ糖系のやや太めのタイプ、旨味はやや肌理の粗い凹凸のあるタイプで、両者は足並みを揃えて、野性的に踊ります。

 

流れてくる含み香は、フローラルな香りに酢酸エチルがわずかにミックスした香りになってデコレート。

後から酸味と渋味は少量現れるものの、甘旨味のワイルドな雰囲気に遠目に囃すのみ。

終盤まで甘旨味は疲れを見せずに駆け回り、飲み下した後の余韻もパワフルな印象でした。

それでは、天下錦のお酒、2本目に参ります。

 

お酒の情報(21年317銘柄目)

銘柄名「天下錦(てんかにしき)特別純米 火入れ 2020BY」

酒蔵「福持酒造場(三重県名張市)」

分類「特別純米酒」

原料米「三重県産山田錦」

使用酵母「三重県酵母」

精米歩合「60%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「720ml=1517円」

評価「★★★★★(95点)」

自宅の晩酌に兵庫県姫路市のヤエガキ酒造さんのお酒を3本取り寄せて、いただくことにしました。

最後の3本目はこれです。

八重垣(やえがき)特別純米 山田錦」。

 

ヤエガキ酒造は米国産の清酒を輸入するというユニークな試みをする一方、日本酒の市場に顕著な動きが見られる高額商品帯の分野にも進出しています。

 

2019年にリリースした「長谷川栄雅(はせがわえいが)」がそれです。

特A地区の山田錦を使い、高精白の米で、麹造りは蓋麹にこだわり、搾りは袋吊りのみで造った大吟醸です。

 

ヤエガキ酒造の創業者の長谷川栄雅の名前を採用し、「栄雅」をハイエンドとして30%精米の純米大吟醸が33000円(四合)、50%精米の特別純米が27500円。

それより1ランク下を「長谷川」として、35%精米が16500円、50%精米が11000円、60%精米が5500円です。なかなか強気な価格設定です。

さらに八重垣酒造は六本木に「長谷川栄雅」専門の店舗をオープン。

コロナ禍で中断していますが、5種のお酒と有力シェフによるつまみをペアリングで楽しむ「日本酒体験」サービスも用意しています。

所要40分で5500円です。

 

茶室を思わせる素敵な空間での体験は、おそらく東京五輪の外国人を目当てに準備したものと思われます。

コロナで吹っ飛んでしまいましたが、いずれ訪日観光客が復活すれば有力なスポットになるような気がします。今後の動向に注目です。

 

さて、最後の3本目は国内の蔵で醸した山田錦65%精米の特別純米酒、火入れです。

上立ち香はチクチクとした落ち着きのないアルコールの浮遊した香りが鼻腔を刺激します。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面にとろみ層を厚めに乗せて、のっそりとした雰囲気を放ちながら忍び入ってきます。

 

受け止めて舌の上で転がすと、促されるままにゆったりと膨らみ、拡散しながら、適度な大きさの粘っこい粒々を次々と射掛けてきます。

粒から現出してくるのは甘味6割、旨味4割。

甘味はトロトロの餡のよう、旨味はいろいろな味わいたっぷりの粘っこいタイプで、両者はあちこちにくっつきながら緩慢に回遊します。

 

流れてくる含み香は火冷め臭混じりののっそりとした香り。

後から酸味と渋味は一切現れず、甘旨味は終盤まで放任状態で活力を上げること無く徘徊し、最後に飲み下した後には雑味の余韻が長く伸びるのでした。

高額でないお酒にも配慮をお願いしたいです。

 

お酒の情報(21年316銘柄目)

銘柄名「八重垣(やえがき)特別純米 山田錦 2020BY」

酒蔵「ヤエガキ酒造(兵庫県姫路市)」

分類「特別純米酒」

原料米「山田錦」

使用酵母「不明」

精米歩合「65%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「720ml=1587円」

評価「★★(92点)」

自宅の晩酌に兵庫県姫路市のヤエガキ酒造さんのお酒を3本取り寄せて、いただくことにしました。

2本目はこれです。

ROGA(ロガ)65 純米」。

 

1999年からカリフォルニア・ロサンゼルスで現地生産を始めたヤエガキ酒造ですが、当初、使った米はカルローズ米という米国のお米でした。

山田錦が米国では作られていなかったからです。

 

米国では米といっても陸稲が大半だったためですが、そこは日本酒を造る会社ですから、「なんとか米国で山田錦を作れないか」とヤエガキ酒造は考えます。

そして、山田錦の故郷である兵庫県の山間部と似た気候の場所を探し、カリフォルニア州中部のサクラメントに適地を見出し、農家と共同で試行錯誤を重ねて、山田錦を収穫するに至っています。

実は近年は米国では各地で山田錦の栽培にチャレンジする動きがあり、アーカンソー州でも大規模な栽培に成功しています。

獺祭蔵は近々米東海岸で大きな清酒蔵を建設する予定でいますが、当初はカルローズ米を使うようですが、いずれ、こうした山田錦を仕入れると思われます。

そうなると、日本で造る山田錦のお酒とレベルの変わらない美酒ができるかもしれません。

 

さて、2本目は1本目と精米違いの“純米酒”です。

上立ち香は酒エキスの香りが適度に漂ってきます。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に産毛をびっしりと乗せて、それを周囲にこすりつけながら、淡々とした態度で転がり込んできます。

 

受け止めて舌の上で転がすと、促されるままに素直に膨らみ、拡散しながら、適度な大きさの硬い石のような粒々を次々と射掛けてきます。

粒から現出してくるのは甘味5割、旨味5割。

甘味は上白糖系の儚いタイプ、旨味はトゲだらけの神経質なコクを放ち、甘味を従えて、いらつくように踊るのです。

 

流れてくる含み香は火冷め臭混じりの酒エキスの香り。

後から酸味と渋味が結構な量現れて、甘旨味を攻め立てるのです。

旨味はそれに抵抗するものの、終盤に向けて酸渋の力が勝り、最後は全体が辛口一色になって、喉の奥へと吸い込まれていきました。

1本目よりはまだマシでしたが、やはり、米国から輸入して日本で話題を呼ぶためには、一回火入れで、リーファーで日本まで運んできて欲しいです。

それでは、ヤエガキ酒造のお酒、3本目に参ります。

 

お酒の情報(21年315銘柄目)

銘柄名「ROGA(ロガ)65 純米 2020BY」

酒蔵「ヤエガキ酒造(兵庫県姫路市)の米カリフォルニア蔵」

分類「純米酒」

原料米「カリフォルニア産山田錦」

使用酵母「不明」

精米歩合「65%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「720ml=1680円」

評価「★★★(93点)」

 

自宅の晩酌に兵庫県姫路市のヤエガキ酒造さんのお酒を3本取り寄せて、いただくことにしました。

1本目はこれです。

ROGA(ロガ)50 純米」。

 

このお酒はヤエガキ酒造が1999年に米カリフォルニアに建てた清酒蔵で造っているお酒です。

近年、海外で造られる日本酒が増え、一部は日本にも輸入販売されています。

ヤエガキ酒造は長年、米国向けだけで販売してきましたが、こうした状況もにらんで、今年(2021)夏場から輸入販売を始めています。

 

裏貼りの説明書きを紹介します。

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創業1666年の「八重垣」蔵元で培った日本の伝承の技と、YaegakiCorporationofUSAが持つアメリカ地酒蔵としてのパイオニア精神が調和したお酒です。

カリフォルニア産Yamadanishikiを全量使用し、カリフォルニアの大いなる恵みを丁寧に醸しました。

********

1本目は50%精米の純米大吟醸規格のお酒になります。

多分、タンク貯蔵2回火入れです。

上立ち香はアルコールのチクチクとした香りが鼻腔を刺激します。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面にとろみ層を適度に乗せて、のろのろとしたスピードで忍び入ってきます。

 

受け止めて舌の上で転がすと、促されるままに素直に膨らみ、拡散しながら、適度な大きさの粘り気を帯びた粒々を次々と射掛けてきます。

粒から現出してくるのは甘味6割、旨味4割。

甘味はザラメ糖系の純度の低いタイプ、旨味は中庸で朴訥な印象で、両者は緩慢なスピードで徘徊を始めます。

 

流れてくる含み香は火冷め臭たっぷりのぼやけた香りで甘旨味の足下に絡みつくのです。

後から来るのは渋味のみが極少で、やや尻重の甘旨味を刺激するには至らず、終盤まで味わいはのっそりとなまくらな世界を描くのでした。

吟の香りはせず、いわゆる市場に出回る普通酒的な印象でした。

それでは、輸入したお酒、もう1本いただくことにします。

 

お酒の情報(21年314銘柄目)

銘柄名「ROGA(ロガ)50 純米 2020BY」

酒蔵「ヤエガキ酒造(兵庫県姫路市)の米カリフォルニア蔵」

分類「純米酒」

原料米「カリフォルニア産山田錦」

使用酵母「不明」

精米歩合「50%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「720ml=1950円」

評価「★★★(92点)」

自宅の晩酌に、井村屋が新規参入して初めて造った日本酒を2本取り寄せて、飲み比べてみました。

2本目はこれです。

福和蔵(ふくわぐら)純米吟醸 生酒」。

 

井村屋は福井酒造場を買収する段階で、三重県多気町に新しい蔵を作るつもりでいたので、初期投資にお金がかかることは承知していました。

そのうえで、四季醸造をできるように、建物全体が空調できる施設にしています。

さすが大手食品会社です。

 

ちなみに、井村屋グループの浅田会長は、長野県の伊那食品工業が米澤酒造を買収した先例を参考にしたようです。

ただし、買収した福井酒造場は地元向けの普通酒主体で、特定名称酒は余り造っておらず、全国新酒鑑評会も2003年に金賞を取って以来、鳴かず飛ばずで、新しい設備を整えても酒質面で問題はないだろうかと空太郎は以前、心配していました。

 

ところがその後、井村屋は名酒「作」を醸す清水清三郎商店に酒造りの指導を受けたのです。

清水清三郎商店の蔵元は求められれば教える、という基本的立場におり、まして地元のつながりがあるだけに、みっちりと酒造りを指導したようです。

三重県全体の底上げにもなりますしね。心強かったことと思います。

 

さて、2本目は三重県産神の穂60%精米の純米吟醸です。1本目と同じ60%精米ですが、こちらは酵母に吟醸用のものを使っているのだと思います。

上立ち香は初々しい生酒の香りに1本目よりも芳しい香りが上乗せされて漂ってきます。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に油膜を張って、ツルツルな感触を強調しながら、転がり込んできます。

 

受け止めて保持すると、自律的にテンポよく膨らみ、拡散しながら、適度な大きさのガラス玉様の粒々を連射してきます。

粒から滲み出てくるのは甘味8割、旨味2割。

甘味は巨峰を思わせるタイプ、旨味はシンプル無垢で肌理が細かく、両者は生き生きとした態度でフレンドリーな舞いを展開します。

 

流れてくる含み香は芳醇で透明感溢れる香りでデコレート。

後から酸味と渋味が極少量現れて、薄氷の輪郭を施すのです。

甘旨味の終盤までヴィヴィッドに踊り、最後は反転縮退して昇華して行きました。

このお酒は是非、全国区を目指して欲しいです。

 

お酒の情報(21年313銘柄目)

銘柄名「福和蔵(ふくわぐら)純米 生酒 2020BY」

酒蔵「井村屋(三重県津市)」

分類「純米吟醸酒」「生酒」

原料米「三重県産神の穂」

使用酵母「不明」

精米歩合「60%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「720ml=2420円」

評価「★★★★★(96点)」

 

自宅の晩酌にお酒を選びました。これです。

福和蔵(ふくわぐら)純米 生酒」。

 

三重県津市の井村屋さんが醸しているお酒です。

このお酒は井村屋が酒蔵を買収し、自社の酒造部門に納め、三重県多気町に作った福和蔵で今年(2021)夏から醸し始めているものです。

 

井村屋が買収したのは三重県伊賀市にあった福井酒造場です。

1900年創業の福井酒造場は高度成長期後も細々と酒造りを続けてきましたが、5代目の福井寿仁さんは設備の老朽化と後継者不在の状況に酒造りをやめることも検討していました。

 

その噂が井村屋グループの浅田会長の耳に入り、三重の酒蔵の存続に尽くすことができ、しかも、多気町に計画していた複合リゾート施設に出す店の目玉にもなるとの判断から、福井蔵元と交渉を重ね、2019年11月に福井酒造場を買収して子会社にしました。

その後、井村屋に吸収し、多気町への移転を準備。

新しい蔵の酒造りには福井蔵元も従業員の1人として加わっています。

新しい銘柄となる「福和蔵」は福井酒造場の「福」と、井村屋創業者、井村和蔵の「和蔵」から取っています。

 

いただくお酒は三重県産五百万石60%精米の純米酒、生酒です。

上立ち香は生まれたばかりの初々しい生酒の香りがたっぷりと。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に粉雪を乗せて、優しく粉を転がすようにして、忍び入ってきます。

 

受け止めて保持すると、促される前から自主的に軽快なテンポで膨らみ、拡散しながら、適度な大きさのガラス玉様の粒々を速射してきます。

粒から滲出してくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味は上白糖系のスリムで乾いたタイプ、旨味はシンプル無垢で素朴なコクを放っており、両者は初めから全力で麗らかな春を表現しながら踊ります。

 

流れてくる含み香は潤いたっぷりのジューシーな甘い香りでデコレート。

後から酸味と渋味が極少量現れて、わずかにメリハリをつけるのです。

甘旨味の舞いは疲れを見せることなく続き、終盤になると回れ右して縮退に入り、最後は加速度を付けて昇華して行きました。

新しい蔵の1造り目の酒としては申し分ない出来でした。

それでは福和蔵のお酒、もう1本いただくことにします。

 

お酒の情報(21年312銘柄目)

銘柄名「福和蔵(ふくわぐら)純米 生酒 2020BY」

酒蔵「井村屋(三重県津市)」

分類「純米酒」「生酒」

原料米「三重県産五百万石」

使用酵母「不明」

精米歩合「60%」

アルコール度数「16度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「720ml=2200円」

評価「★★★★★(96点)」

 

山形県鶴岡市の奥羽自慢のお酒をまとめて取り寄せて、飲み比べることにしました。

最後の6本目はこれです。

吾有事(わがうじ)純米吟醸 無濾過生原酒」。

 

奥羽自慢は2017BYから体制を変えて、「吾有事」を立ち上げ、若手を抜擢して新進気鋭の蔵のイメージ作りに力を入れてきましたが、オーナーの佐藤淳平さんの方針で、事業の多角化にも力を入れています。

 

2018年からはシードルも発売。さらに、今季(2021年10月)からはワイン醸造も始めています。

専用の蔵を建て、1年目から結構な種類のブドウによるワイン造りに挑戦中です。

さらに、2年後にはウイスキーなどの蒸留酒にも進出する方針で、佐藤さんは「奥羽自慢にはちっちゃいサントリーを目指してもらいます」と話しています。

 

先日、蔵にお邪魔すると、玄関を入ってすぐの所に真新しい事務所が完成していました。

杜氏をしている阿部龍弥さんは楯の川からの出向でしたが、このほど、奥羽自慢に転籍し、そのうえで、役員に抜擢されるそうです。

名実共に蔵の顔になるわけですね。益々のご活躍を願っています。

 

さて、最後のお酒は火入れではなく、無濾過生原酒です。

55%精米の純米吟醸酒になります。

上立ち香はフレッシュな麹バナに太めの甘い香りが鼻腔を撫でます。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面にたっぷりのとろみ層を乗せて、その表面を波立たせながら、まっしぐらに滑り込んできます。

 

受け止めて保持すると、自律的に元気よく膨らみ、拡散しながら、適度な大きさのウエットな粒々を連射してきます。

粒から現出してくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味は濃くて太いとろりとしたタイプ、旨味は脂身たっぷりのコクが重層化している印象で、両者は端から競うようにして艶を放ちながら踊り回るのです。

 

流れてくる含み香も鮮度の高い太めの甘い香りで派手めにデコレート。

後から酸味と渋味が少量現れて、薄氷の輪郭をつけるものの、甘旨味は動じることなく、賑やかに舞い続け、飲み下した後の余韻は火入れよりは太く、カラフルなものでした。

6本すべてが安心できる美味さでした。

兄貴分の蔵に今後も肉薄していくことと思います。

 

お酒の情報(21年311銘柄目)

銘柄名「吾有事(わがうじ)純米吟醸 無濾過生原酒 2020BY」

酒蔵「奥羽自慢(山形県鶴岡市)」

分類「純米吟醸酒」「無濾過酒」「生酒」「原酒」

原料米「不明」

使用酵母「不明」

精米歩合「55%」

アルコール度数「16度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「720ml=1600円」

評価「★★★★★(96点)」

 

山形県鶴岡市の奥羽自慢のお酒をまとめて取り寄せて、飲み比べることにしました。

5本目はこれです。

吾有事(わがうじ)山の頂 ひやおろし 純米大吟醸」。

 

2017BYから攻勢をかけた奥羽自慢は、年々、醸造量が増えて、今季は500石を予定しています。

順調に増えているのは、国内が特約店向けの「吾有事」ですが、あと、香港向けの輸出も順調です。

 

実は奥羽自慢には現在、取引先である香港の会社が資本参加しています。

これは、日本酒の需要が急増している香港で事業を拡大しようとしている取引先が、一定数量の日本酒を確実に確保したいとの思惑から出資したもので、配当などには期待しない代わりに、香港向けのお酒のデザインなどを先方が決めて発注ができるようになっているのです。

現在は500石のうちの10%程度が輸出ですが、「今後も確実に伸びていくはずです」と佐藤さんは手ごたえを感じているようです。

 

さて、5本目は50%精米の純米大吟醸ですが、ひやおろし(一回火入れ)です。

上立ち香は爽やかなイソアミルの香りが仄かに。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面にベビーパウダーをはたいて、サラサラな感触をアピールしながら忍び入ってきます。

 

受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散しながら、適度な大きさのガラス球様の粒々を連射してきます。

粒から滲出してくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味は上白糖系の乾いたタイプ、旨味はシンプルでややとげとげ感を残した印象で、両者は足並みを揃えて、端正な舞いを披露します。

 

流れてくる含み香もイソアミルのか細い香りで薄化粧を施します。

後から酸味と渋味が少量現れて、薄氷の輪郭を付与。

甘旨味はペースを崩すことなく、穏やかに踊り続け、最後は反転縮退して、そのままの勢いで喉の奥へと吸い込まれていきました。

それでは、奥羽自慢のお酒、最後の6本目をいただくことにします。

 

お酒の情報(21年310銘柄目)

銘柄名「吾有事(わがうじ)山の頂 ひやおろし 純米大吟醸 2020BY」

酒蔵「奥羽自慢(山形県鶴岡市)」

分類「純米大吟醸酒」

原料米「不明」

使用酵母「不明」

精米歩合「50%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「720ml=1700円」

評価「★★★★★(97点)」

 

山形県鶴岡市の奥羽自慢のお酒をまとめて取り寄せて、飲み比べることにしました。

4本目はこれです。

吾有事(わがうじ)雲の上 純米大吟醸」。

 

2017BYから新体制で酒造りに入った奥羽自慢は4造りが終わっていますが、この間、着実にいろいろな設備が入ってきました。

洗米は2014BYからウッドソンですが、放冷機も入り、麹室も手を入れています。

サーマルタンクは楯の川酒造からのお古で。

ヤブタも購入し、これを今年(2021)4月に冷蔵庫の中に収容しています。

さらに瓶詰めラインも楯の川から移ってきて、効率を上げる計画です。

火入れについてはまだ、量が少ないことから、すべて瓶火入れで対応しています。

 

こうした設備強化と、阿部さんたちの奮闘で、お酒の質も向上し、吾有事の知名度も少しずつ高まってきており、蔵としての経営は軌道に乗り出しています。

ご同慶の至りです。

 

さて、4本目は50%精米の純米大吟醸酒、通年出している定番酒です。

上立ち香は明快なイソアミルの柔らかな香りが微かに。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、よく磨き込んで平滑になった表面に打ち粉を振って、サラサラな感触をアピールしながら、軽快なテンポで転がり込んできます。

 

受け止めて保持すると、自律的に膨らみ、拡散しながら、適度な大きさの清澄な粒々を速射してきます。

粒から滲み出てくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味は上白糖系のさらりとしたタイプ、旨味はフレッシュ無垢で滑らかな感触で、両者は足並みを揃えて、伸びやかに流麗なハーモニーを奏でます。

 

流れてくる含み香はイソアミルのか細い香りで薄化粧を付与。

後から酸味と渋味が少量現れて、味わいにくっきりとしたメリハリを付けるのです。

甘旨味はマイペースを崩さずに踊り続け、終盤になると甘味がぷっくりとした艶を放ち、その後、反転縮退して昇華して行きました。

それでは、奥羽自慢のお酒、5本目をいただくことにします。

 

お酒の情報(21年309銘柄目)

銘柄名「吾有事(わがうじ)雲の上 純米大吟醸 2020BY」

酒蔵「奥羽自慢(山形県鶴岡市)」

分類「純米大吟醸酒」

原料米「不明」

使用酵母「不明」

精米歩合「50%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「720ml=1700円」

評価「★★★★★(98点)」

 

山形県鶴岡市の奥羽自慢のお酒をまとめて取り寄せて、飲み比べることにしました。

3本目はこれです。

吾有事(わがうじ)尖鋭辛口 純米大吟醸」。

 

2013BYに佐藤仁左衛門酒造場の事業譲渡を受けたものの、低迷が続いていたことから、オーナーとなった佐藤淳平さんは2017BYを前に抜本的な建て直しを決断しました。

 

まずは人心一新を目指し、それまでの蔵人のうち、リーダーだった白幡秀樹氏だけを残し、あとの4人は全員、楯の川酒造の蔵人を送り込むことに。

そして、その中で佐藤さんが一番信頼を置いていた阿部龍弥さんを杜氏に大抜擢したのです。

その時、白幡さんは53歳、阿部さんは26歳でした。

佐藤さんは、「酒造りのベテランは、積み重なった経験ゆえに、これまでの造りを大きく変えることはできないのでは。むしろ、いいところはどんどん採用し、問題点はすみやかに排除する性格の阿部をトップに据えた方が、短期間で結果が出るのでは」

と考えたのだそうです。

 

同時に阿部さんの同世代の蔵人が首都圏営業の担当になり、若さを前面に出した酒造りが始まったのでした。

さて、3本目は50%精米の純米大吟醸酒、通年だしている辛口酒です。

上立ち香は抑制の利いた薄甘い香りが仄かに。

玩味すると中程度の大きさの均整の取れた旨味の塊が、平滑になった表面に打ち粉を振って、サラサラな感触を振りまきながら、軽快なテンポで忍び入ってきます。

 

受け止めて保持すると、自律的に膨らみ、拡散しながら、適度な大きさのクリスタル様の粒々を連射してきます。

粒から滲出してくるのは甘味6割、旨味4割。

甘味は上白糖系の乾いたタイプ、旨味は粗めの生地にチクチクとした小さなトゲを纏った印象で、両者は端から淡々と水墨画のような世界を描きます。

 

流れてくる含み香はイソアミルのか細い香りでデコレート。

後から渋味が僅少量、酸味がやや多めに現れて、甘旨味をきっちりと締め付けるのです。

甘旨味は表面を毛羽立たせながら、気持ち摩擦熱を発しながら踊り、終盤になると自主的に反転縮退して、喉の奥へと駆け去っていきました。

それでは、奥羽自慢のお酒、4本目をいただくことにします。

 

お酒の情報(21年308銘柄目)

銘柄名「吾有事(わがうじ)尖鋭辛口 純米大吟醸 2020BY」

酒蔵「奥羽自慢(山形県鶴岡市)」

分類「純米大吟醸酒」

原料米「不明」

使用酵母「不明」

精米歩合「50%」

アルコール度数「16度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「720ml=1550円」

評価「★★★★★(97点)」