酔い人「空太郎」の日本酒探検

酔い人「空太郎」の日本酒探検

意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

近年、飲み放題設定のある銘酒居酒屋で飲める日本酒のレベルが急ピッチで上昇しています。

どのぐらい飲み放題ができるお酒の質が上がっているかを、いろいろな店を巡り、散発的にご報告していきます。

 

第75弾は小伝馬町の「カミヤ酒場」さんです。

 

 

カミヤ酒場の飲み放題は自分でお酒を冷蔵ケースまで行って選ぶスタイルですが、瓶は自分の席まで持ってきて、ラベルを見ながら飲むことができます。

お酒は約80種類の日本酒が2時間飲み放題で料理7品ついて5600円と割安です。

プレミアムとか3時間とかのコースもありますが、今回は5600円を選択しました。

 

1本目にいただいたのはこれです。

 

 

「川中島 幻舞(かわなかじま げんぶ)特別純米 生酒」。

長野市の酒千蔵野さんが醸しているお酒です。

 

とろりとした甘味が主役で、酸味などのアクセントはわずかで、飲み下した後の余韻は気持ち伸びました。

7.6点。

 

2本目にいただいたのはこれです。

 

 

「酒々井の夜明け(しすいのよあけ)純米大吟醸」。

千葉県酒々井町の飯沼本家さんが醸しているお酒です。

 

気泡の軽快な破裂をBGMにして、甘旨味と酸渋がバランスよく、エネルギッシュに踊りきりました。

美味でした。

7.75点。

 

3本目にいただいたのはこれです。

 

 

「光栄菊(こうえいきく)甕月(みかつき)」。

佐賀県小城市の光栄菊酒造さんが醸しているお酒です。

 

個性的な甘味が誘惑するように踊り、洗練されたメロンの香りが彩る素敵な仕上がりでした。

7.75点。

 

4本目にいただいたのはこれです。

 

 

「宗玄(そうげん)純米 石川門」。

石川県珠洲市の宗玄酒造さんが醸しているお酒です。

 

ざらついた感触の旨味が主役を張り、香りは無く、酸もゼロ、渋味がわずかで、やや単調な舞いのまま終幕を迎えました。

7.5点。

 

5本目にいただいたのはこれです。

 

 

「吉田蔵U(よしだくら・ユー)百万石乃白」。

石川県白山市の吉田酒造店さんが醸しているお酒です。

 

軽快で透明感に優れた甘旨味が酸渋を従えて、すっきりした白ワイン似の世界を奏でました。

7.7点。

 

6本目にいただいたのはこれです。

 

 

「寫楽(しゃらく)純米吟醸 剣愛山」。

福島県会津若松市の宮泉銘醸さんが醸しているお酒です。

 

いつもの寫楽よりも個性的で太目の甘味が艶っぽく踊り、酸渋が効果的なメリハリを付与していました。

らしくないけど、美味しかった。

7.7点。

 

7本目にいただいたのはこれです。

 

「十勝(とかち)純米」。

北海道帯広市の上川大雪酒造碧雲蔵さんが醸しているお酒です。

 

痩身の甘旨味がややぼんやりと薄曇りの世界を描き、火冷め入りのネガティブな香りが気になりました。

十勝にしては期待以下の仕上がりでした。

7.45点。

 

8本目にいただいたのはこれです。

 

 

「栄光冨士(えいこうふじ)黒狐 純米大吟醸 無濾過生原酒」。

山形県鶴岡市の冨士酒造さんが醸しているお酒です。

 

気泡の破裂をBGMに艶っぽい甘旨味と酸渋がバランスよく踊りますが、終盤になると全体が疲れを見せ、甘さがダレるのが気になりました。

7.6点。

 

9本目にいただいたのはこれです。

 

 

「鬼童(おにわらべ)純米大吟醸 無濾過生原酒」。

奈良県吉野町の北村酒造さんが醸しているお酒です。

 

ヘビーな甘味に奇妙に歪んだ含み香が絡み、酸渋がないので、最後までぼんやりと徘徊するのみでした。

残念な酒でした。

7.45点。

 

最後の10本目にいただいたのはこれです。

 

 

「武勇(ぶゆう)純米吟醸」。

茨城県結城市の武勇さんが醸しているお酒です。

 

酸渋は少ないものの、スタンダードな甘旨味が粛々と踊り、最後はすっきり切れていきました。

7.6点。

 

セルフですから、欲しいお酒をガンガンといただきました。

文句なしの酒につける7.7点超えの酒が続々と登場する素晴らしい品揃えでした。

その中にも、普段あまり見かけない地酒もあって、敢えて冒険してがっかりするというのも、ご愛敬で楽しかった。

料理もおいしく、飲み放題時間も厳格ではなく、心地よく店を後にすることができました。

これで5600円は非常にお値打ちです。

姉妹店の「バルカミヤ」と同じ、最高得点の4.9点(★★★★★)をつけさせていただきました。

再訪ありのお店です。

 

総合評価が4.8点以上の秀逸飲み放題居酒屋は以下の通りです。

常笑(中野)、かぐら(神田)、フィッシュ・オン・ディッシュ・ロリー(板橋)、ししくら(池尻大橋)、炭火焼鳥煙(門前仲町)、サケラボトーキョー(十条)、八福寿家(恵比寿)、カミヤ酒場(小伝馬町)、鳥酎はなれ(飯田橋)、ナイン(船橋)、バルカミヤ(小伝馬町)、のすけ(明大前)、GASHUE(仲御徒町)、居酒屋純ちゃん(荒木町)、つくしのこ(池尻大橋)、日がさ雨がさ(四谷三丁目)、MrHappy(神保町)、オールザットジャズ(荒木町)、まき野(高田馬場)

自宅の晩酌にお酒を選びました。

これです。

 

 

NOGOMI(のごみ)ARATA(あらた)純米大吟醸」。

佐賀県鹿島市の馬場酒造場さんが醸しているお酒です。

 

このお酒は、地元鹿島市に面する有明海の干潟から選抜した酵母を使った大変ユニークなお酒です。

お話の主役は馬場酒造場の後継者で6代目蔵元予定の馬場嵩一朗さんです。

馬場さんは佐賀大学の農学部で微生物の勉強をし、卒論は「お酒づくりに使える酵母」でした。

 

大学院に進み、有明海の干潟に棲む酵母を探し当てました。

ただし、そのまま清酒造りには使えそうになかったため、酵母の育種改良を重ね、6000の酵母のなかから、酸味を適度に出す酵母の選抜を完了。

2022年4月に蔵に戻った馬場さんは、その年の造り(2022BY)で早速、酒造りに挑んでいます。

 

 

空太郎はその情報を知って、すぐに入手しようとしましたが、超小仕込みの少量生産でなかなか手に入れることが出来ませんでした。

今回、ようやく買うことができたというわけです。

 

山田錦50%精米の純米大吟醸、火入れです。

 

 

上立ち香は芳醇な香りが遠慮がちに。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に油膜を張って、ツルツルの感触を振りまきながら、軽快なテンポで忍び入ってきます。

受け止めて保持すると、促されるままに流麗に膨らみ、拡散して、適度な大きさの透き通ったガラス玉様の粒々を連射してきます。

 

粒から滲み出てくるのは甘味8割、旨味2割。

甘味はザラメ糖系の奥行きのあるタイプ、旨味はシンプル無垢ながら複雑性も感じさせる印象で、両者は足並みを揃えて無駄の無いやや平板なワルツを踊ります。

 

流れてくる含み香はいろいろなタイプの香りがミックスされた不思議な香りでデコレート。

後から酸味が適量、渋味が少量現れて、クエン酸にわずかにリンゴ酸が混じった酸味が味わいのアクセント役を担います。

活力は中ぐらいで、終盤までペースを乱さずに踊り、最後はゆっくり反転縮退して、喉の奥へと吸い込まれていきました。

 

 

有明海酵母が造った香りは判定の難しいものでした。

いずれ、もう一度、いただきたいと思います。

 

お酒の情報(25年316銘柄目)

銘柄名「NOGOMI(のごみ)ARATA(あらた)純米大吟醸 2024BY」

酒蔵「馬場酒造場(佐賀県鹿島市)」

分類「純米大吟醸酒」

原料米「山田錦」

酵母「有明海酵母」

精米歩合「50%」

アルコール度数「14度」

日本酒度「―8」

酸度「2.3」

情報公開度(瓶表示)「〇」

標準小売価格(税込み720ml=2200円」

評価「★★★★★(7.55点)」

 

自宅の晩酌にお酒を選びました。

これです。

 

 

七田(しちだ)純米 ひやおろし 七割五分磨き」。

佐賀県小城市の天山酒造さんが醸しているお酒です。

 

天山酒造は今年(2025)10月に佐賀市内のホテルで大々的な創業150周年記念祝賀会を催しました。

天山酒造は1875(明治8)年に、製粉・製麺業を営んでいた七田家が、近くにあった酒蔵が廃業するため、それを引き継ぐ形で創業した酒蔵です。

150周年というと他業種から見れば長寿の会社に見られますが、日本酒蔵であれば明治時代の創業は後発です。

佐賀には300年以上の歴史を誇る酒蔵もあり、「たかが150周年ぐらいで大々的にパーティーをやるとは」と思っている酒蔵もあるのではないかと思います。

 

 

ただ、天山酒造は現在の蔵元社長である6代目の七田謙介さんが蔵を率いるようになって以来、地酒蔵としての存在感をどんどん高め、いまや生産石数が3000石近い、九州を代表する地酒蔵にまで地位を確立しているので、大々的にパーティーを開くのも、蔵の存在を改めて強烈にアピールするのが目的だったのだと思います。

 

さて、いただくお酒は、天山酒造の七田の看板商品になった75%精米の純米酒シリーズです。

使っている酒米はいろいろですが、今回は愛山です。

 

 

上立ち香はシャープで取れたてのフルーツの香り。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に打ち粉を振って、サラサラな感触をアピールしながら、まっしぐらに転がり込んできます。

受け止めて保持すると、促されるままに鷹揚なムードで膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を速射してきます。

 

粒から滲出してくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味は上白糖系の乾いたタイプ、旨味はシンプル無垢でまろやかなテクスチャー。

両者は足並みを揃えて柔らかなワルツを踊ります。

 

流れてくる含み香はブドウとメロンの初々しい香りでデコレート。

後から酸味が適量、渋味が少量現れて、明快でくっきりとしたアクセントを付与します。

スレンダーで円やかな世界が最後まで続き、飲み下した後の余韻はスパッと切れの良いものでした。

 

 

安心の「七田」でした。

 

お酒の情報(25年315銘柄目)

銘柄名「七田(しちだ)純米 ひやおろし 七割五分磨き 2024BY」

酒蔵「天山酒造(佐賀県小城市)」

分類「純米酒」「ひやおろし酒」

原料米「愛山」

酵母「不明」

精米歩合「75%」

アルコール度数「17度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込み720ml=1625円」

評価「★★★★★(7.6点)」

 

自宅の晩酌にお酒を選びました。

これです。

 

 

一擲(いってき)十割麹酒」。

新潟県柏崎市の阿部酒造が醸し、同じ柏崎市の弥栄醸造さんが販売しているお酒です。

 

実はこのお酒は「清酒(日本酒)」ではなく、「その他醸造酒(クラフトサケ)」です。

 

 

話は弥栄醸造の誕生の経緯にさかのぼります。社長の坂本一浩さんは大学卒業後、菊正宗酒造に入社。

営業回りをしているうちに、日本中にたくさんの美味しい日本酒があることを知り、こうした酒を売る立場になりたくなり、「未来日本酒店」に転職します。

店長などを務めていましたが、だんだんとそんな美酒を自分で造りたくなっていきます。

 

 

そんな折、阿部酒造が販売していた96%麹、4%米(掛米)の日本酒を飲む機会がありました。

阿部酒造は日本酒を名乗るためにあえて、麹を96%使用にしていましたが、それが思いのほか美味しく、「麹100%でも美味しい酒になるはず。麹100%なら、清酒免許ではなく、その他醸造酒で造れるのだから、自分でもすぐにできるはず」と、2020年に阿部酒造に趣旨を説明して、修行を申し入れて受け入れられました。

そして、今年(2025年春)に柏崎市石曽根という集落に古い建物を借りて、醸造所を開いたというわけです。

ただし、今夜いただくのは、先行して2024年12月に阿部酒造の設備で造ったお酒になります。

 

一回火入れです。

 

 

上立ち香はとろりとした甘い香りが鼻腔を刷毛で撫でるように。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に薄っすらととろみ層を乗せて、ゆったりとしたムードで忍び入ってきます。

受け止めて保持すると、自律的に余裕綽々で膨らみ、拡散して、適度な大きさのウエットな粒々を連射してきます。

 

粒から滲み出てくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味はザラメ糖系の押し幅のあるタイプ、旨味は5~6種類のコクが織り上がっているもののスリムで、両者はきびきびとした態度で踊り始めます。

 

流れてくる含み香はとろみの濃い甘酒のよう。

後から酸味が大量に、渋味も結構な量現れて、クエン酸主体の酸味が甘旨味に一気に溶け込んでシャープな甘酸っぱい世界に。

さらに、渋味は終盤になると存在感を増しながら全体をぎゅっと取りまとめて小さくし、飲み下した後の余韻は意外に短いものでした。

 

 

清酒蔵が造る多麹のお酒は濃醇過ぎたり、甘過ぎたりするものが多いのですが、これはそこまで重くなく、飲みやすかったです。

クラフトサケの新境地を開く逸品です。

 

お酒の情報(25年314銘柄目)

銘柄名「一擲(いってき)十割麹酒 2024BY」

酒蔵「弥栄醸造(新潟県柏崎市)」*実際の醸造は阿部酒造(柏崎市)

分類「その他醸造酒」

原料米「不明」

酵母「不明」

精米歩合「不明」

アルコール度数「13度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込み500ml=2500円」

評価「★★★★★(7.6点)」

自宅の晩酌に滋賀県湖南市の北島酒造が醸したお酒を3本いただきました。

 

3本目はこれです。

 

 

心と手(ことて)酸基醴酛(さんきあまざけもと)玄米酒 生酒」。

 

このお酒は2本目の酒母仕込みのお酒を商品化した後、派生商品として追加で投入されています。

 

1本目は麹米と掛米ともに65%精米でした。

こちらは麹米は65%精米で同じですが、掛米は精米していない玄米のまま蒸して、投入しています。

さらに、1本目は火入れでしたが、こちらは生酒です。

ちなみに、1本目も火入れする前に柄杓一杯生の醪を掬って別にし、火入れ後に再投入しています。

こうすることでごく一部が生のままで、わずかにガス感が出るような工夫をしています。

 

 

見た目でもこれはどぶろくと言っていいですが、2ミリの網で“漉して”いるので、堂々の日本酒表示です。

アルコール度数は7度です。

 

 

上立ち香はどろりとした糠と酸味がミックスした香りです。

玩味するとドロドロの濁ったどぶろく様の液体が口の中一杯に広がります。

蒸した米粒がしっかりと残っていて、まさにお粥の世界。

 

甘味と旨味は等量で、甘味は2本目よりは濃厚、旨味は無数のコクが重層化しており、こちらも活力は髙く、口の中をぐるぐると巡ります。

そこに酸味が相当量現れるのですが、これが2本目よりもいろいろなタイプの酸味が混じっていて、甘旨味全体に覆いかぶさります。

 

味わいは甘酸っぱいのですが、その多彩さが1本目を上回り、最後に飲み下した後の余韻は1本目よりは長く、口の中に玄米の粒が残る印象でした。

 

 

アルコール度数も低く、これは米のジュースでした。

唯一無二のお酒です。

 

お酒の情報(25年313銘柄目)

銘柄名「心と手(ことて)酸基醴酛(さんきあまざけもと)

玄米酒 生酒 2024BY」

酒蔵「北島酒造(滋賀県湖南市)」

分類「生酒」「にごり酒」

原料米「無農薬栽培の旭」

酵母「不明」

精米歩合「麹米=65%、掛米=玄米」

アルコール度数「7度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込み720ml=2200円」

評価「★★★★★(7.55点)」

 

自宅の晩酌に滋賀県湖南市の北島酒造が醸したお酒を3本いただきました。

 

2本目はこれです。

 

 

北島(きたじま)酸基醴酛(さんきあまざけもと) 乳酸発酵にごり」。

 

このお酒はなんと、造った酒母をそのまま搾って商品にした異色のお酒です。

 

酸基醴酛とは、酒母の造り方の一つで、まずは麹が造った酵素を高温環境下で糖化を一気に進めます。

次に乳酸菌を投入して発酵、酸化を促します。

ある程度の酸環境になったら、酵母を添加して酒母を造る手法です。

人工乳酸を添加するのではないので、速醸系ではなく、生きた乳酸菌を使うという意味では山廃・生酛系の一種と言えます。

 

 

通常、酒母は酵母を培養するのが目的で、完成した酒母は甘くて酸っぱい味わいで、空太郎も飲んだことがありますが、ほとんどの杜氏は「酸っぱすぎるし、これは飲むためのものではありません」と話しています。

それを、北島酒造の齋田杜氏は2ミリの目の網を通過せて“漉し”、純米酒として4年前に商品化しているのです。

 

65%精米の純米、一回火入れですが、数値はアルコール度数が11度、日本酒度がマイナス46、酸度が驚きの6.4です。

 

 

上立ち香はどろりとしたイーストの香りが。

口に含むとトロトロの濁ったどぶろく様の液体が口の中一杯に広がります。

甘味と旨味は等量で、甘味は上白糖系のさらりとしたタイプ、旨味は無数のコクが重層化しており、それが意外にも元気よく、口の中を駆け回ります。

 

そこに大量の酸味が追随してきて、甘旨味全体に覆いかぶさります。

鋭角的でパワフルな酸味は加勢する渋味と力を合わせて、全体の活性度をさらに上げて、賑やかにスピーディーな舞いを続け、最後に飲み下した後の余韻も超にごりとは思えないスパっと切れたものでした。

 

 

唯一無二の味わいと言えるでしょう。

それでは、北島酒造の酸基醴酛のお酒、もう1本をいただくことにします。

 

お酒の情報(25年312銘柄目)

銘柄名「北島(きたじま)酸基醴酛(さんきあまざけもと) 

乳酸発酵にごり 2024BY」

酒蔵「北島酒造(滋賀県湖南市)」

分類「純米酒」「生詰酒」「にごり酒」

原料米「不明」

酵母「不明」

精米歩合「65%」

アルコール度数「11度」

日本酒度「―46」

酸度「6.4」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込み720ml=1628円」

評価「★★★★★(7.6点)」

 

自宅の晩酌に新潟県新潟市の越後伝衛門さんが醸しているお酒を2本、飲み比べました。

 

2本目はこれです。

 

 

越後伝衛門(えちごでんえもん)パサージュ SANS SUN(さんさん)無濾過生原酒」。

 

蔵元杜氏の加藤晃葵さんが、それぞれ仕込み1本、造りたいように試験的に造っているのが「パサージュ(PASSAGE)」シリーズです。

 

このお酒の趣旨や概要について、蔵元から情報をいただきましたので、そのまま紹介します。

 

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葵酒造(長岡)さんのご紹介で山形県より「出羽燦々」を使うことが叶いました。

出羽燦々はスッキリとした印象のお酒が多く、軟質米なのになぜ? と疑問を抱いていた酒米でした。

実際には思ったほど溶けず、でもたしかに高嶺錦のようなスッキリ感のある手触りでした。

醪日数も30~38日程度の枠で造っております。

が、おそらく今までの味わいとややテイストが異なっているのがはっきりと分かると思います。

 

 

Sansは仏語で「~なしに」、Sunは「太陽」で、直訳すると「太陽なしで」。

暑い日が続き新潟はずっと雨が降っていないので、またお米が心配ですが、そんなお日様に少しのわがままと言いますかお願いを込めました。

「燦々」には一般に太陽がギラギラと照り付ける様子で使われますが、「土砂降り雨」にも使われることもあり、おもしろい言葉だなと改めて思いました。

雨燦々(King gnu)の歌詞と、セカイ系ラノベ『イリヤ~』の世界観が似ていて、しかもどっちも夏っぽくて繋がったのでそれぞれチョイス。

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スペック非表示ですが、いつもの50%精米の無濾過生原酒です。

 

 

上立ち香はやや薬っぽい香りが前面に。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に打ち粉を振って、サラサラな感触をアピールしながら、軽快なテンポで転がり込んできます。

受け止めて保持すると、自律的にグングンと膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を速射してきます。

 

粒から滲出してくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味は上白糖系のドライで遠慮がちなタイプ、旨味はシンプル無垢ながら潜在的なパワーを秘めた印象で、甘味は旨味の背後に回り、マッスルな旨味が鋭角的に駆け回ります。

 

流れてくる含み香は子供の頃、発熱時に飲まされたシロップの香り。

後から酸味と渋味が結構な量現れて、クエン酸主体の酸味が旨味とせめぎ合いながら、情熱溢れる世界を描きます。

渋味も加わり、終盤になると全体が乾いて、思い切りドライな世界へと変質し、一気に昇華していきました。

 

 

すっきり系に仕上がっていました。越後伝衛門の試験醸造酒はどれも面白いです。

 

お酒の情報(25年311銘柄目)

銘柄名「越後伝衛門(えちごでんえもん)パサージュ SANS SUN(さんさん)

無濾過生原酒 2024BY」

酒蔵「越後伝衛門(新潟市)」

分類「生酒」「“純米酒”」

原料米「出羽燦々」

酵母「不明」

精米歩合「不明(50%)」

アルコール度数「14.5度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込み720ml=2500円」

評価「★★★★★★(7.7点)」

 

自宅の晩酌に新潟県新潟市の越後伝衛門さんが醸しているお酒を2本、飲み比べました。

 

1本目はこれです。

 

 

越後伝衛門(えちごでんえもん)パサージュ DEN‘EN(でんえん)生酒」。

 

蔵元杜氏の加藤晃葵さんが、それぞれ仕込み1本、造りたいように試験的に造っているのが「パサージュ(PASSAGE)」シリーズです。

 

このお酒の趣旨や概要について、蔵元から情報をいただきましたので、そのまま紹介します。

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お米は山形県の「出羽の里」を使用しました。

出羽燦々と吟吹雪を掛け合わせた酒米です。出羽燦々や雪女神に比べ知名度は低い気もしますが、伝衛門おなじみの吟吹雪を親に持つとあって、特徴あるお酒が造れると思い採用しました。

今回は島根酵母を単独使用してみました。

この酵母は優秀で、やはりチオール系の香りがとても出る印象ですが醗酵力もあり協会1801などと違って醪末期3.5℃くらいでも湧きます。

単独使用な分、今回はマンゴーやライチなどの香りが分かりやすく出ているかと思います。

R7BYからは全量島根酵母ベースにしようと思い、単体での香りの特徴や醗酵性能などを知るために試験醸造しました。

 

 

ネーミングは出羽の里が名前からの広がりや連想がしにくく、苦労しました。

今回は島根酵母から連想して「幽玄」「深淵さ」「緑のあたたかみ」をテーマに連想していきました。

「デンエン」は「田園」つまり自然への畏敬の念やあたたかみ、日本の原風景としての意味合いと、(造語ですが)「伝縁」つまりご縁が伝わっていく広がりや神秘性の意味合いも込めています。

特に島根とは深いご縁に恵まれ、自分のなかでの酒造理論や表現の幅を広げてくれる契機となりました。

出雲の深淵さを、このお酒を通して表現できていれば嬉しいのですが、まだまだ努力が必要な気がしています。

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スペック非表示ですが、50%精米の無濾過生原酒です。

 

 

上立ち香は甘酸っぱい香りにイーストの香りが加わって。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に油膜を張って、ツルツルの感触を振りまきながら、軽快なテンポで滑り込んできす。

受け止めて保持すると、自律的に生き生きとした雰囲気で膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を連射してきます。

 

粒から滲み出てくるのは甘味8割、旨味2割。

甘味はザラメ糖系の幅のあるタイプ、旨味はシンプル無垢でかつ弾力性を感じる印象で、両者は足並みを揃えて、大きく弾みながら踊ります。

 

流れてくる含み香は立ち香同様、甘酸っぱい香りにイーストの香りが混じってデコレート。

後から酸味と渋味が結構な量、現れて、クエン酸主体の酸味が甘旨味と拮抗しながら、起伏のある味わいの世界を描くのです。

終盤まで活力のある舞いが続き、最後に飲み下した後の余韻は魅惑的な甘さでした。

 

 

チャーミングな仕上がりでした。

それでは、越後伝衛門の試験醸造酒、もう1本をいただくことにします。

 

お酒の情報(25年310銘柄目)

銘柄名「越後伝衛門(えちごでんえもん)パサージュ DEN‘EN(でんえん)

生酒 2024BY」

酒蔵「越後伝衛門(新潟市)」

分類「生酒」「“純米酒”」

原料米「出羽の里」

酵母「島根酵母」

精米歩合「不明(50%)」

アルコール度数「14.5度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込み720ml=2500円」

評価「★★★★★★(7.65点)」

 

自宅の晩酌にお酒を選びました。

これです。

 

 

北島(きたじま)純米吟醸 辛口完全発酵」。

滋賀県湖南市の北島酒造さんが醸しているお酒です。

 

北島酒造の杜氏は10年前から齋田泰之さんですが、なかなか独特の経歴の持ち主です。

新潟県出身で、大学卒業後、静岡県の青島酒造に入ります。南部流の杜氏の下で、酒造りの初歩を学びます。

次に移ったのが、新潟県の塩川酒造です。

杜氏は地元の新潟杜氏でした。

6造りいた後、次に鳥取県の山根酒造場へ。

出雲流の杜氏の下で、麹屋を4造り経験し、北島酒造に移って杜氏になっています。

 

 

このため、いろいろな流派のいいとこどりをしており、「私はどこの流派にも属さない混合流ですね」と齋田さんは話しています。

 

いただくお酒は完全発酵させて、グルコースのほとんど残っていないお酒を目指しています。

このため、日本酒度はプラス10,酸度は1.8です。

 

 

上立ち香は凛々しい酒エキスの香りが。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、よく踏み固められた表面に油膜を張って、厳然とした雰囲気で駆け込んできます。

受け止めて保持すると、促されるままに膨らみ、拡散して、適度な硬めの粒々を速射してきます。

 

粒から滲み出てくるのは甘味5割、旨味5割。

甘味は上白糖系の儚いタイプで次の瞬間に消え去り、シンプル無垢な旨味の独演会が始まります。

 

流れてくる含み香も地味な酒エキスの香りに若干の火冷め臭が。

後から酸味と渋味が微かに現れるものの、パワフルな旨味に押されて、遠くから囃すのみ。

味わいは最初から最後まで無駄の無いシンプルで淡い世界でした。

 

 

いささか物足りないというか、酔うためのお酒でした。

それでは北島酒造のお酒、もう1本いただくことにします。

 

お酒の情報(25年309銘柄目)

銘柄名「北島(きたじま)純米吟醸 辛口完全発酵 2024BY」

酒蔵「北島酒造(滋賀県湖南市)」

分類「純米吟醸酒」

原料米「不明」

酵母「不明」

精米歩合「55%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「+10」

酸度「1.8」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込み720ml=1351円」

評価「★★★★(7.45点)」

 

近年、飲み放題設定のある銘酒居酒屋で飲める日本酒のレベルが急ピッチで上昇しています。

どのぐらい飲み放題ができるお酒の質が上がっているかを、いろいろな店を巡り、散発的にご報告していきます。

 

第74弾は新宿三丁目の「かいのみ」さんです。

 

 

かいのみの飲み放題は自分でお酒を冷蔵ケースまで行って選ぶスタイルです。

そして、日本酒を選んだら、冷蔵ケースの対面にあるテーブルで徳利などにお酒を入れて、席に運びます。

お酒の瓶を席まで運べないので、写真を撮るのがいささか手間なのが難点です。

このスタイルで、料理お任せ、2時間飲み放題(25分前ラストオーダー)で6600円です。

 

1本目にいただいたのはこれです。

 

 

「三芳菊(みよしきく)ワイルドサイド 袋吊り雫酒 無濾過生原酒」。

徳島県三好市の三芳菊酒造さんが醸しているお酒です。

 

典型的なリンゴ酸たっぷりの超甘酸っぱいお酒で、三芳菊の面目躍如の味わいですが、甘すぎるし、香りが強すぎて、飲み進むのがつらかった。7.3点。

 

2本目にいただいたのはこれです。

 

 

「初亀(はつかめ)本醸造」。

静岡県藤枝市の初亀醸造さんが醸しているお酒です。

 

過熟気味の甘旨味に火冷め臭が絡んで、どんよりとしていました。7.2点。

 

3本目にいただいたのはこれです。

 

 

「紀土(きっど)純米吟醸 しぼりたて生酒」。

和歌山県海南市の平和酒造さんが醸しているお酒です。

 

初々しい甘旨味が可憐に健やかな舞いを見せました。安心の逸品でした。7.55点。

 

4本目にいただいたのはこれです。

 

 

「桂月(けいげつ)特別純米 超辛口」。

高知県土佐町の土佐酒造さんが醸しているお酒です。

 

香りは無く、スレンダーで筋肉質の旨味がきびきびと駆け回りました。優秀なお酒でした。7.6点。

 

5本目にいただいたのはこれです。

 

 

「虎千代(とらちよ)純米大吟醸」。

新潟県阿賀野市の越つかの酒造さんが醸しているお酒です。

 

凡庸な甘旨味に火冷め臭が絡んで、濃霧の世界を徘徊するがごときでした。7.4点。

 

6本目にいただいたのはこれです。

 

「東鶴(あづまつる)実のり 純米 生酛つくり」。

佐賀県多久市の東鶴酒造さんが醸しているお酒です。

 

ガツン系の生酛ではなく、スマートでかつ、ユニークな酸が甘旨味と素敵なハーモニーを奏でていました。7.55点。

 

7本目にいただいたのはこれです。

 

「ばくれん 超辛口吟醸」。

山形県鶴岡市の亀の井酒造さんが醸しているお酒です。

 

スレンダーな旨味が主役を張り、芳しい香りが囃す、いつものばくれんでした。7.55点。

 

8本目にいただいたのはこれです。

 

 

「白露垂珠(はくろすいしゅ)ひやおろし 純米 無濾過原酒」。

山形県鶴岡市の竹の露さんが醸しているお酒です。

 

ごくごくオーソドックスな甘旨味が淡々と穏やかな春を描きました。7.5点。

 

9本目にいただいたのはこれです。

 

 

「越後で候(えちごでそうろう)しぼりたて 生原酒」。

新潟県魚沼市の八海醸造さんが醸しているお酒です。

 

鋭角的な棘のある旨味が口の中で暴れまくりました。アル添で19度のよくある冬の生酒でした。7.5点。

 

10本目にいただいたのはこれです。

 

 

「富士大観(ふじたいかん)純米生酒 辛口初しぼり」。

茨城県日立市の森島酒造さんが醸しているお酒です。

 

旨味主導で舞いが始まり、好ましい含み香が適度に飾るバランスのよい仕上がりでした。7.6点。

 

 

このあとも、「ふかもり 純米吟醸」、「弥栄鶴 山廃純米」、「御慶事 特別純米」、「神鷹 辛口純米」、「盛典 特別純米」をいただきましたが、感想をメモしませんでした。

 

セルフですから、欲しいお酒をガンガンといただきましたが、ラインナップにいま人気の酒が少ないと感じました。

逆に言えば、レアもの的な日本酒も結構あって、中級者向けともいえるかもしれません。

特筆すべきはお任せで出てくる貝料理がおいしく、結構な数が出てきて、その点では大満足でした。

ただ、お酒を1本づつ、皆で語り合いながら品評したい空太郎的には席に瓶を置けないのが残念で、最終的には4.7点(★★★★★)をつけさせていただきました。

ごちそうさまでした。

 

総合評価が4.8点以上の秀逸飲み放題居酒屋は以下の通りです。

常笑(中野)、かぐら(神田)、フィッシュ・オン・ディッシュ・ロリー(板橋)、ししくら(池尻大橋)、炭火焼鳥煙(門前仲町)、サケラボトーキョー(十条)、八福寿家(恵比寿)、鳥酎はなれ(飯田橋)、ナイン(船橋)、バルカミヤ(小伝馬町)、のすけ(明大前)、GASHUE(仲御徒町)、居酒屋純ちゃん(荒木町)、つくしのこ(池尻大橋)、日がさ雨がさ(四谷三丁目)、MrHappy(神保町)、オールザットジャズ(荒木町)、まき野(高田馬場)