自宅の晩酌に福島県天栄村の松崎酒造さんのお酒をまとめて取り寄せて、飲み比べをしました。
一本目はこれです。
「廣戸川(ひろとがわ)特別純米」。
松崎酒造は2022年5月(2021BY)の全国新酒鑑評会で出品したお酒が金賞を獲得し、これで10回連続金賞の栄誉を獲得しました。
蔵元息子の松崎佑行さんが杜氏に就任した1年目からずーーっと金賞という輝かしい成績です。
その彼の酒造りの軌跡については、空太郎がSAKEStreetに記事を書きましたので、是非、お読み下さい。
ここではそこに書き切れなかったことを紹介します。
蔵に戻って後を継ぐ決意をした松崎さんは、父上の勧めもあって、福島県清酒アカデミー職業能力開発校に入りました。
17期生だそうですが、同期には曙酒造(会津坂下町)の鈴木孝市さん(現社長)、大和川酒造店(喜多方市)の佐藤哲野さん(現杜氏)の二人の同世代がおり、さらに、アカデミーには隣町の大木代吉本店(矢吹町)の大木雄太さん(現社長)と一緒の車で通ったそうです。
彼らとは勉強するだけでなく、酒を飲みながらの情報交換も盛んに行いました。
松崎さんは「彼らは僕よりも日本酒の世界に詳しくて、とっても助かりました」と振り返っています。
でも、一方で同世代ゆえのライバル心も強く、「誰が先に大きな賞を取るか」を意識していたそうです。
すると全国新酒鑑評会の金賞獲得では佐藤さんが2010BYの造りで獲得し、翌2011BYに松崎さんが、さらに翌2012BYで鈴木さんが金賞を初めて獲得したのでした。
この結果を悔しがったのは鈴木さんで、「いつかリベンジする」と心に決めて研鑽し、福島県の鑑評会で各部門のナンバーワンとなる県知事賞に狙いを定め、2016年春の鑑評会で県知事賞をいち早く獲得したのでした。
ちなみに松崎さんの初県知事賞は3年後でした。
でも、こうして若手の酒造りの技術がぐんぐんと向上していったのだと思います。
さて、1本目ですが、松崎酒造の定番で、もっとも売れている55%精米の特別純米、火入れです。
上立ち香は控えめなイソアミル系の優しい香りが微かに。
玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に打ち粉を振って、サラサラな感触を振りまきながら、まっしぐらに滑り込んできます。
受け止めて保持すると、自律的にリズミカルに膨らみ、拡散しながら適度な大きさのガラス球様の粒々を連射してきます。
粒から滲み出てくるのは甘味7割、旨味3割。
甘味は上白糖系にプラスアルファの幅を持ったタイプ、旨味はシンプル無垢な印象で、両者は序盤に甘味をやや強調しながら、仲良く並んでワルツを舞います。
流れてくる含み香もイソアミルの抑制の効いた香りで薄化粧を付与。
後から酸味と渋味が少量現れて薄氷の輪郭を施します。
甘旨味は終盤まで足並みを乱すことなく舞い続け、最後は反転縮退して昇華して行きました。
どんな食事にも合う、良質な仕上がりでした。
それでは、松崎酒造のお酒、2本目をいただくことにします。
お酒の情報(23年71銘柄目)
銘柄名「廣戸川(ひろとがわ)特別純米 2022BY」
酒蔵「松崎酒造(福島県天栄村)」
分類「特別純米酒」
原料米「夢の香」
使用酵母「不明」
精米歩合「55%」
アルコール度数「16度」
日本酒度「不明」
酸度「不明」
情報公開度(瓶表示)「△」
標準小売価格(税込)「1800ml=2970円」
評価「★★★★★(98点)」