酔い人「空太郎」の日本酒探検

酔い人「空太郎」の日本酒探検

意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

自宅の晩酌に福島県天栄村の松崎酒造さんのお酒をまとめて取り寄せて、飲み比べをしました。

一本目はこれです。

廣戸川(ひろとがわ)特別純米」。

 

松崎酒造は2022年5月(2021BY)の全国新酒鑑評会で出品したお酒が金賞を獲得し、これで10回連続金賞の栄誉を獲得しました。

蔵元息子の松崎佑行さんが杜氏に就任した1年目からずーーっと金賞という輝かしい成績です。

その彼の酒造りの軌跡については、空太郎がSAKEStreetに記事を書きましたので、是非、お読み下さい。

 

ここではそこに書き切れなかったことを紹介します。

 

蔵に戻って後を継ぐ決意をした松崎さんは、父上の勧めもあって、福島県清酒アカデミー職業能力開発校に入りました。

17期生だそうですが、同期には曙酒造(会津坂下町)の鈴木孝市さん(現社長)、大和川酒造店(喜多方市)の佐藤哲野さん(現杜氏)の二人の同世代がおり、さらに、アカデミーには隣町の大木代吉本店(矢吹町)の大木雄太さん(現社長)と一緒の車で通ったそうです。

彼らとは勉強するだけでなく、酒を飲みながらの情報交換も盛んに行いました。

松崎さんは「彼らは僕よりも日本酒の世界に詳しくて、とっても助かりました」と振り返っています。

でも、一方で同世代ゆえのライバル心も強く、「誰が先に大きな賞を取るか」を意識していたそうです。

 

すると全国新酒鑑評会の金賞獲得では佐藤さんが2010BYの造りで獲得し、翌2011BYに松崎さんが、さらに翌2012BYで鈴木さんが金賞を初めて獲得したのでした。

この結果を悔しがったのは鈴木さんで、「いつかリベンジする」と心に決めて研鑽し、福島県の鑑評会で各部門のナンバーワンとなる県知事賞に狙いを定め、2016年春の鑑評会で県知事賞をいち早く獲得したのでした。

 

ちなみに松崎さんの初県知事賞は3年後でした。

でも、こうして若手の酒造りの技術がぐんぐんと向上していったのだと思います。

 

さて、1本目ですが、松崎酒造の定番で、もっとも売れている55%精米の特別純米、火入れです。

上立ち香は控えめなイソアミル系の優しい香りが微かに。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に打ち粉を振って、サラサラな感触を振りまきながら、まっしぐらに滑り込んできます。

 

受け止めて保持すると、自律的にリズミカルに膨らみ、拡散しながら適度な大きさのガラス球様の粒々を連射してきます。

粒から滲み出てくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味は上白糖系にプラスアルファの幅を持ったタイプ、旨味はシンプル無垢な印象で、両者は序盤に甘味をやや強調しながら、仲良く並んでワルツを舞います。

 

流れてくる含み香もイソアミルの抑制の効いた香りで薄化粧を付与。

後から酸味と渋味が少量現れて薄氷の輪郭を施します。

甘旨味は終盤まで足並みを乱すことなく舞い続け、最後は反転縮退して昇華して行きました。

どんな食事にも合う、良質な仕上がりでした。

それでは、松崎酒造のお酒、2本目をいただくことにします。

 

お酒の情報(23年71銘柄目)

銘柄名「廣戸川(ひろとがわ)特別純米 2022BY」

酒蔵「松崎酒造(福島県天栄村)」

分類「特別純米酒」

原料米「夢の香」

使用酵母「不明」

精米歩合「55%」

アルコール度数「16度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「1800ml=2970円」

評価「★★★★★(98点)」

自宅の晩酌にお酒を選びました。これです。

萩乃露(はぎのつゆ)里山 純米 四段仕込」。

滋賀県高島市の福井弥平商店さんが醸しているお酒です。

 

このお酒は高島市内にある棚田で育てられたコシヒカリを使ったお酒で、裏貼りで蔵元が語っていますので、ご紹介します。

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近江高島「畑(はた)の棚田」は先人が築いた大切な日本の原風景。

しかし、美しい景観とは裏腹に耕作環境は厳しく、荒廃が進んでいます。

「里山」を通じて棚田保全に取り組み20年。獣害が酷く酒米は栽培できず、食用米による醸造は困難を窮めましたが、試行錯誤で乗り越え今に至ります。

 

また、今回は棚田米を無駄なく活かすため、極力精米しない精米歩合80%での酒造りに挑戦。

更に20年間培った技術を駆使し、四種のバラエティ豊かなお酒を特別に醸造しました。

「四段仕込 純米酒」は香り高く軽快な味わいの純米原酒。

棚田の穏やかな風土の様なやわらかさをお楽しみください。

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畑の棚田は高島市畑地区の標高300~400mの丘陵地に広さ15.4㌶に359枚の棚田が広がる比較的規模の大きな棚田です。

滋賀県では唯一、日本の棚田100選に選ばれています。

滋賀県の酒蔵として守っていこうという姿勢は素晴らしいです。

無理に酒米を作ってもらわずに、コシヒカリで酒造りをしています。

棚田の貴重な米ということであまり削らない80%精米の純米酒にチャレンジしています。

上立ち香は抑えめなイソアミル系の香りが仄かに。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に薄らととろみ層を乗せて、軽快なスピードで滑り込んできます。

 

受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散しながら適度な大きさのガラス球様の粒々を速射してきます。

粒から滲出してくるのは甘味8割、旨味2割。

甘味はザラメ糖系のやや奥行きを感じるタイプ、旨味はシンプル無垢な印象で、両者は仲良く並んで軽快なワルツを舞います。

 

流れてくる含み香もバナナ由来のほっそりとした香りで薄化粧を施します。

後から酸味と渋味が少量現れて、効果的なメリハリを付与。

甘旨味は垢抜けた舞いを続け、終盤に蜜を思わせる甘味をぷくりと膨らませたと思うと、反転縮退してそのまま渦を巻いて、喉の奥へと吸い込まれて行きました。

飯米&80%精米とは思えない流麗な仕上がりでした。

 

お酒の情報(23年70銘柄目)

銘柄名「萩乃露(はぎのつゆ)里山 純米 四段仕込 2022BY」

酒蔵「福井弥平商店(滋賀県高島市)」

分類「純米酒」「四段仕込み酒」

原料米「棚田産コシヒカリ」

使用酵母「不明」

精米歩合「80%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「500ml=1485円」

評価「★★★★★(97点)」

コロナも終息に向かい、少しは多い人数で楽しくやってもいいのかな、と本当に久し振りにお酒を新聞紙で巻いて、ブラインドでいろいろなお酒を飲み比べる会を開きました。

 

参加者は6人(男子2人、女子4人)でお酒の好みもいろいろというメンバーが「2022BYの新酒」を持ち寄って評価する「目隠し新酒飲み比べ会」を都内の友人宅で開きました。

スペックは精米歩合50~59%の純米(純米吟醸)の生酒。かすみやうすにごりは無しで、空太郎が3本持参して、全部で8本で飲み比べ、各自が評点するという趣向で実施しました。

 

評点を集計後、新聞紙を剥いで、銘柄を確認しました。カウントダウン形式で参ります。

 

第八位はこれです。

「宗玄(そうげん)純米 八反錦」(石川県・宗玄酒造)

47.4点でした。甘味がやや濃く、香りが気持ちアンバランスで、空太郎は8.9点でした。

 

第七位はこれです。

「森嶋(もりしま)純米吟醸 山田錦」(茨城県・森島酒造)

48.9点でした。甘味は抑えめ、締まりが今ひとつであるものの、後半のキレはまずまずで、空太郎は8.7点でした。

 

第六位はこれです。

「奈良萬(ならまん)純米 中垂れ」(福島県・夢心酒造)

49.0点でした。ガス感が心地良いもののやや平板で、香りは酢酸エチル優勢で、空太郎は9.2点でした。

 

第五位はこれです。

「一白水成(いっぱくすいせい)純米吟醸 袋吊り」(秋田県・福禄寿酒造)

49.2点でした。甘味が切ってあり、旨口酒の典型で、こうした飲み比べでは不利でした。

空太郎は8.8点でした。

 

第四位はこれです。

「上喜元(じょうきげん)純米吟醸 山恵錦」(山形・酒田酒造)

50.7点でした。

甘さは最小で旨味の地味。渋味がやや強すぎる印象で、空太郎は今夜の最下位8.5点をつけました。

 

第三位はこれです。

「春霞(はるかすみ)純米」(秋田県・栗林酒造店)

51.5点でした。甘旨味と酸渋のバランスが素晴らしく、空太郎は9.1点でした。

 

準優勝はこれです。

「而今(じこん)純米吟醸 千本錦」(三重県・木屋正酒造)

53.0点でした。個性的で魅惑的な甘味と芳しい香りが美しい舞いを見せました。

空太郎は本日一番の9.4点をつけました。

 

もうおわかりですね。

優勝したのはこれです。

「天美(てんび)純米吟醸」(山口・長州酒造)

53.9点でした。甘旨味と酸渋のバランスが完璧で、空太郎はこの日2番目の9.3点をつけました。

 

おさらいです。

天美   53.9

而今   53.0

春霞   51.5

上喜元  50.7

一白水成 49.2

奈良萬  49.0

森嶋   48.9

宗玄   47.4

いま人気の「而今」と「天美」は空太郎が持ち込み、敢えてブラインドで多くのメンバーがどのような評価をつけるのかを楽しみにしていたのですが、やっぱり、この二つが上位を占めてしまい、両銘柄は名前で売れているのではなく、味で売れていることが判明しました。恐れ入りました。

コロナも終息に向かい、少しは多い人数で楽しくやってもいいのかな、と本当に久し振りにお酒を新聞紙で巻いて、ブラインドでいろいろなお酒を飲み比べる会を開きました。

参加者は6人(男子2人、女子4人)でお酒の好みもいろいろというメンバーが「2022BYの新酒」を持ち寄って評価する「目隠し新酒飲み比べ会」を都内の友人宅で開きました。

 

スペックは精米歩合50~59%の純米(純米吟醸)の生酒。

かすみやうすにごりは無しで、空太郎が3本持参して、全部で8本で飲み比べ、各自が評点するという趣向で実施しました。

評点を集計後、新聞紙を剥いで、銘柄を確認したわけですが、ここでは、まずは、どんな銘柄が登場したのかをあいうえお順にご紹介します。

「一白水成(いっぱくすいせい)純米吟醸 袋吊り」(秋田県・福禄寿酒造)

 

「而今(じこん)純米吟醸 千本錦」(三重県・木屋正酒造)

 

「上喜元(じょうきげん)純米吟醸 山恵錦」(山形・酒田酒造)

 

「宗玄(そうげん)純米 八反錦」(石川県・宗玄酒造)

 

「天美(てんび)純米吟醸」(山口・長州酒造)

 

「奈良萬(ならまん)純米 中垂れ」(福島県・夢心酒造)

 

「春霞(はるかすみ)純米」(秋田県・栗林酒造店)

 

「森嶋(もりしま)純米吟醸 山田錦」(茨城県・森島酒造)

もちろん、いずれ劣らぬ美酒でしたので、6人の集計で順位をつけるために、10点満点で小数点第一位までつけるようにメンバーに指示して、最初の40分、全員で黙々と評価をつけました。

その結果は明日、ご報告します(思わせぶりですみません)。

自宅の晩酌にお酒を選びました。これです。

田酒(でんしゅ)特別純米 山田錦」。

青森市の西田酒造店さんが醸しているお酒です。

 

近年、先進的な地酒蔵は社員(蔵人)の福利厚生の充実に力を入れているところが増えています。

仕事の合間の休憩室を充実させたり、人数がそれなりに多い酒蔵ではカフェテリアなどを設けるケースもあります。

 

西田酒造店もそうした福利厚生に力をいれており、雪国ならではでもありますが、蔵の中にトレーニングルームがあり、結構な数のトレーニングマシンが並べられているのには驚きます。

さらに、健康増進の狙いから、社内にマラソン部があって、毎年4月に開かれる「あおもり桜マラソン」に複数人が参加しているそうです。

酒造りも体力がいりますが、なんとも体育会系な酒蔵ですね。

 

さて、いただくお酒は、山田錦55%精米の特別純米、火入れ酒です。

上立ち香は抑えめなイソアミル系の柔らかな香りが。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に打ち粉を振って、サラサラな感触を振りまきながら、軽快なテンポで滑り込んできます。

 

受け止めて保持すると、自律的にテンポよく膨らみ、拡散しながら適度な大きさのガラス球様の粒々を連射してきます。

粒から滲み出てくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味は上白糖系のさらりとした細身のタイプ、旨味はシンプル無垢で控えめな雰囲気を漂わせており、両者は足並みを揃えて、爽やかなハーモニーを奏でます。

 

流れてくる含み香はほっそりとした甘い香りで薄化粧を付与。

後から良質な酸味が渋味を従えて現れて、甘旨味の舞いに効果的なデコレーションを施します。

味わいは澄み切った青空の下、甘旨味と酸味の競演が終盤まで続き、最後に飲み下した後の余韻はすっきり華やかなものでした。

最近の田酒は往年のかがやきを取り戻しつつある気がします。

 

お酒の情報(23年69銘柄目)

銘柄名「田酒(でんしゅ)特別純米 山田錦 2022BY」

酒蔵「西田酒造店(青森市)」

分類「特別純米酒」

原料米「山田錦」

使用酵母「不明」

精米歩合「55%」

アルコール度数「16度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「1800ml=3740円」

評価「★★★★★(98点)」

自宅の晩酌にお酒を選びました。これです。

東一(あづまいち)純米 山田錦」。

佐賀県嬉野市の五町田酒造さんが醸しているお酒です。

 

五町田酒造は創業100周年を機に「東一」のラベルのリニューアルに踏み切りました。

20年前にはすでに人気地酒だった「東一」は、味もラベルも変えずに東一ファンをがっちりとつかまえてきましたが、近年の多くの酒蔵の活発な動きの前では「不動」は「進化しない」というイメージにもなるのでは、と空太郎はその戦略に首を傾げておりました。

よって、今回のリニューアルは「やっと」という感じです。

ラベルについては「東一」の文字の下にある3本の横ラインは、蔵の信念である「人」「米」「造り」が一体となることで良酒を醸すことを表現。

さらに「東一」の左に配置されている5本の縦ラインは「甘味、酸味、辛味、苦味、渋味」の五味のバランスを追求した酒であることを意味しているのだそうです。

 

山田錦64%精米の純米酒、火入れです。

上立ち香はシックな酒エキスの香りが仄かに。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に薄らととろみ層を乗せて、静々とした雰囲気で忍び入ってきます。

 

受け止めて舌の上で転がすと、促されるままに素直に膨らみ、拡散しながら適度な大きさのウエットな粒々を次々と射掛けてきます。

粒から現出してくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味はザラメ糖系のやや奥行きの深いタイプ、旨味は複数のコクが織り上がった印象で、両者は大人びた雰囲気でおっとりとした舞いを披露します。

 

流れてくる含み香は地味な酒エキスの香りで薄化粧を付与。

後から酸味と渋味が極少量現れて、隠し味役に留まります。

甘旨味は刺激が少なく、どんよりと垂れ込めた曇り空の下、終盤までノロノロと徘徊し、飲み下した後の要因もぼんやりとしたものでした。

不動の東一でした。

 

お酒の情報(23年68銘柄目)

銘柄名「東一(あづまいち)純米 山田錦 2022BY」

酒蔵「五町田酒造(佐賀県嬉野市)」

分類「純米酒」

原料米「山田錦」

使用酵母「不明」

精米歩合「64%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「1800ml=2750円」

評価「★★★★(96点)」

 

自宅の晩酌にお酒を選びました。

これです。

寫楽(しゃらく)純米 無濾過生酒」。

福島県会津若松市の宮泉銘醸さんが醸しているお酒です。

 

宮泉銘醸は社長の宮森義弘さんと、3歳下の弟、宮森大和専務が蔵を引っ張る“兄弟蔵”ですが、当初からそうなる予定ではありませんでした。

義弘社長が蔵に戻ってきた2003年頃、大和さんは兄と同じSEをしていたのですが、ちょっとした縁で衆議院議員の秘書になったのです。

その衆議院議員は自民党時代に厚生大臣や通産大臣などを歴任した大物、渡部恒三氏でした。

秘書として駆け回る経験は「それはそれで面白かった」と大和専務は話していますが、2010年過ぎて義弘社長から「蔵の仕事を手伝ってほしい」と言われて、迷っているところ、ちょうど2012年に渡部氏が政界を引退することに。

結局、円満に秘書から蔵へと移ることになったのです。

 

さて、お酒です。冬場のみに出荷している無濾過生酒です。

上立ち香はフレッシュな麹バナに微かにセメダインの香りが混じって流れてきます。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に打ち粉を振って、サラサラな感触をアピールしながら、軽快なテンポで滑り込んできます。

 

受け止めて保持すると、自律的に膨らみ、拡散しながら適度な大きさのガラス球様の粒々を連射してきます。

粒から滲み出てくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味は上白糖系の乾いたタイプ、旨味はやや肌理の粗い印象で、両者は足並みを揃えて初々しく、荒削りな踊りを披露します。

 

流れてくる含み香はイソアミルと酢酸エチルの香りがミックスされて、薄化粧を付与。

後から酸味が微量、渋味が少量現れて、薄氷の輪郭を形成。

甘旨味は終盤まで疲れを見せずに舞い、最後は反転縮退して昇華して行きました。

いつも安定の「寫楽」の味わいでした。

 

お酒の情報(23年67銘柄目)

銘柄名「寫楽(しゃらく)純米 無濾過生酒 2022BY」

酒蔵「宮泉銘醸(福島県会津若松市)」

分類「純米酒」「無濾過酒」「生酒」

原料米「不明」

使用酵母「不明」

精米歩合「60%」

アルコール度数「16度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「1800ml=3280円」

評価「★★★★★(97点)」

 

自宅の晩酌にお酒を選びました。これです。

花邑(はなむら)純米吟醸 生酒 美郷錦」。

秋田県湯沢市の両関酒造さんが醸しているお酒です。

 

両関酒造は「両関」のブランド名でそこそこ名の売れた秋田では準大手の存在でした。

しかし、メインが問屋流通の普通酒や本醸造で、近年の日本酒の追い風に乗れていませんでした。

このため、特約店限定流通の新しいお酒を出すことになり、そのターゲットを「十四代」を好きな飲み手に絞り、十四代を醸す高木酒造(山形県村山市)の造りのメンバーに懇切丁寧な技術指導を受けたのだそうです。

デビューしたのがこの「花邑」で、周囲は「十四代のDNAを引き継ぐ酒」と思い切り持ち上げています。

しかし、具体的に誰が指導したのか(多分、蔵元の高木顕統氏ではないでしょう)、蔵元の高木さんのOKがあったのか、あるいは高木酒造にいた蔵人が辞めて指導に来たのか、などわからないことだらけです。

 

さて、いただくのは秋田県産の美郷錦、50%精米の純米吟醸、生酒です。

上立ち香は典型的なカプロン酸エチルの甘い香りがたっぷりと。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に適度にとろみ層を乗せて、優雅な雰囲気で忍び入ってきます。

 

受け止めて保持すると、促されるままに流麗な流れで膨らみ、拡散しながら適度な大きさのガラス球様の粒々を速射してきます。

粒から滲出してくるのは甘味9割、旨味1割。

甘味は上質ですっきりとしたタイプ、旨味は平板無垢で、甘味に主役を委ねます。流れてくる含み香もゴージャスな甘い香りで派手めにデコレート。

 

後から酸味や渋味は一切現れず、甘味は終盤まで独壇場で薄い砂糖水の世界を描き続けるのでした。

飲み下した後の余韻も甘い香りでした。

確かに十四代に似ていますが、甘さの質では十四代には及ばないなと感じました。

 

お酒の情報(23年66銘柄目)

銘柄名「花邑(はなむら)純米吟醸 生酒 美郷錦 2022BY」

酒蔵「両関酒造(秋田県湯沢市)」

分類「純米吟醸」「生酒」

原料米「美郷錦」

使用酵母「不明」

精米歩合「50%」

アルコール度数「16度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「1800ml=3800円」

評価「★★★★★(97点)」

神田に新規オープンした「発酵和バル ちどりあし」さんにお邪魔しました。

こちらのお店は封開けした日本酒の酸化の進行を抑制するために、100mlの小瓶に移し替えて冷蔵庫に保存するという手間のかかる作業をしているのが特徴です。

こうすれば、回転の速い人気銘柄だけでなく、店主が推す、また有名ではないお酒も扱うことができるというわけで、実際、訪れた日は空太郎でさえ、めったにいただかないお酒を飲ませて頂きました。

そのいくつかをご紹介します。

 

最後の5本目はこれです。

龍神丸(りゅうじんまる)純米吟醸 生原酒

和歌山県有田川町の高垣酒造さんが醸しているお酒です。

 

高垣酒造の「龍神丸」は漫画「もやしもん」で2005年に紹介されて、一気に注目を浴び、さらに2007年にフジテレビで漫画が放映されたことで、爆発的な人気を博しました。

以後はまったく入手が困難な酒に駆け上がり、高垣酒造の前途は洋々たるものだと空太郎は思っていました。

ところが、人気を一気に集めた酒を造っていた蔵元の高垣淳一さんが2010年8月に急逝してしまったのです。

後を継ぐ幹部もおらず、前途は非常に厳しかったのですが、奥様の高垣任世さんがバトンを受け継ぐ決意をします。

しかし、まったく酒造りを知らず、周囲のアドバイスだけで酒造りに挑んだので、本人も納得できないレベルの酒しかできず、3年間は一升瓶100本ほど(って1石です!)の造りでした。

4造り目を前にベテランが1人アドバイザーとなって、ようやく、酒のレベルも上がって、2013BYから龍神丸は復活しています。

 

さて、いただくお酒は山田錦50%精米の純米大吟醸、生原酒です。

上立ち香はどろりとした厚めの甘い香りが鼻腔を撫でます。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に適度にとろみ層を乗せて、ゆったりとしたムードで忍び入ってきます。

 

受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散しながら適度な大きさのウエットな粒々を連射してきます。

粒から滲み出てくるのは甘味8割、旨味2割。

甘味はやや濃い目の砂糖水のよう、旨味は複数のコクが織り上がった印象で、両者は仲良く調子を合わせて、やや濃い目のハーモニーを奏でます。

 

流れてくる含み香も煮詰まった砂糖由来の甘い香りでデコレート。

甘旨味は濃い目ながらも、透明感に優れた癖のない舞いを続け、終盤になると渋味が現れると、それをきっかけに全体が反転縮退して喉の奥へと吸い込まれて行きました。

品揃えも豊かで、100mlの瓶も一見の価値があるので、是非、「ちどりあし」さんには一度は行ってみるとよろしいかと思います。

 

お酒の情報(23年65銘柄目)

銘柄名「龍神丸(りゅうじんまる)純米吟醸 生原酒 2021BY」

酒蔵「高垣酒造(和歌山県有田川町)」

分類「純米吟醸」「生酒」「原酒」

原料米「山田錦」

使用酵母「不明」

精米歩合「50%」

アルコール度数「18度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「1800ml=4290円」

評価「★★★★★(97点)」