自宅の晩酌に、宮城県大崎市の寒梅酒造さんが醸しているお酒をまとめて購入して、順番にいただくことにしました。
2本目はこれです。
戦後の農地解放で、大地主だった岩崎家の農地の大半は小作人のものになってしまいましたが、それでも三町五反(約3.5㌶)の田んぼが残ったそうです。
そして、昭和30年に酒造りを再開するわけですが、戦後の高度成長期は食用米の需要が旺盛だったこともあり、農家はなかなか酒米の栽培に力を入れてくれません。
岩崎隆聡会長の父上はこのため、「自分たちで酒米を作ってみたい」と秋田県の農家から美山錦の種籾をもらい、美山錦の栽培に着手したのです。
稲作はもっぱら、会長の父上がやっていたのですが、1993年に父上が急逝。
隆聡会長は何も知らず、途方に暮れます。
このため、とにかく闇雲に田植えだけして、肥料も入れず世話もしなかったのだそうです。
でも、その結果、稲の受粉の時期が早まりました。
折しも、その年は大干ばつが起こり、他の農家の美山錦は壊滅的な打撃を受けましたが、岩崎さんは種籾の確保ができて事なきを得ました。
このため、隆聡会長は自力での米作りの重要性を痛感。
以後はせっせと稲作に取り組み、いまでは、自社田で美山錦のほか、ひより、愛国、山田錦などを作っています。
蔵で使う米はそれ以外も全量が契約栽培になっています。
さて、2本目のお酒です。
実は空太郎は今回、蔵にお邪魔して、隆聡会長から直接いろいろなお話を聞くとともに、蔵で販売されているお酒を買いました。
蔵の看板商品の「宮寒梅」は特約店限定流通品なので、蔵では売っていません。
その代わりに、蔵だけで販売するお酒としてこの「寒梅酒造」がありました。
ちなみに、「宮寒梅」とは違う仕込みを立てて、造っているそうです。
55%精米の純米吟醸です。
上立ち香は抑制の利いた芳しい香りが鼻腔を撫で回します。
玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に適度に打ち粉を振って、サラサラな感触をアピールしながら、軽快なテンポで滑り込んできます。
受け止めて保持すると、自律的にテンポよく膨らみ、拡散して、適度な大きさの清澄なガラス玉様の粒々を連射してきます。
粒から滲み出てくるのは甘味8割、旨味2割。
甘味は99.9%純度の透明感に優れたタイプ、旨味は適度なシンプル無垢で肌理の細かな印象で、両者は伸びやかに半ば浮き上がるようにして踊ります。
流れてくる含み香も遠慮がちながらも芳醇な香りでデコレート。
後から酸味と渋味が僅少現れて、くっきりとしたピントを施します。
味わいは終盤までマイルドでナチュラルな世界を描き切るのでした。
仕込みは違っても、酒質は宮寒梅と同じ仕上りでした。
それでは寒梅酒造のお酒、3本目をいただくことにします。
お酒の情報(24年241銘柄目)
銘柄名「寒梅酒造(かんばいしゅぞう)純米吟醸 2023BY」
酒蔵「寒梅酒造(宮城県大崎市)」
分類「純米吟醸酒」
原料米「不明」
酵母「不明」
精米歩合「55%」
アルコール度数「16度」
日本酒度「不明」
酸度「不明」
情報公開度(瓶表示)「△」
標準小売価格(税込み)「720ml=1760円」
評価「★★★★★★(7.8点)」