労働契約法の修正箇所の検討2
【原案】(労働契約の原則)第三条
1 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。
2 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。
3 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。
【修正案】第三条中第三項を第五項とし、第二項を第四項とし、第一項の次に次の二項を加える。
2 労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
3 労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
【私のコメント】この点については、先に紹介した連合の「談話」では触れられていないが、「均等(均衡)待遇」や「ワーク・ライフ・バランス」の重視は以前から連合も主張していたことであり、それに沿う修正であろう。フルタイムパートを含む全ての就業形態の均衡待遇原則がここに初めて盛り込まれた意味は大きい。ただ…労働基準法3条は「均等待遇」という言葉を使っているのに対し、パート労働法と労働契約法は「均衡」とされている。使用者に甘い、姑息なやり方だ。ところでこの修正の文言、法律の条文の立て方としてあまり美しくない。修正前は、1 当事者対等の原則、2 信義誠実原則、3 濫用禁止原則、ときれいに並べられていたが、修正後、1項から3項まで、末尾に「締結し、又は変更すべきものとする。」と出てくることになり、重複する。かといって、全ての要件を連結し、「労働契約は、労働者及び使用者が、対等の立場における合意に基づき、就業の実態に応じて均衡を考慮し、仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。」とするのも分かりにくいか…。やはり、基本中の基本原則を示すという意味で、各項独立させて分かりやすくすることに意味があるのかもしれない。
ところで、「就業の実態に応じて」というのは、派遣労働や有期雇用労働などさまざまな働き方の実態に応じて、という意味であろう。この条項で初めて、フルタイムパート労働者について「均衡待遇」が明文化されたのである。しかし、この件に関し、先に紹介した民主党案の労働契約法はより明確であった。というのも、民主党案の3条4項は「労働契約を締結し、及び変更する場合においては、労働者の就業形態にかかわらず、就業の実態に応じ、均等な待遇の確保が図られるべきものとする。」とし、さらに39条で、「(差別的取扱いの禁止)使用者は、有期労働契約を締結している労働者又は短時間労働者(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成五年法律第七十六号)第二条に規定する短時間労働者をいう。)の賃金その他の労働条件について、合理的な理由がある場合でなければ、通常の労働者と差別的取扱いをしてはならない。」としていたからである。マスコミ報道にもあったが、「均等」は「均衡」という語に変えられた。「均等」だとまったく同条件にしなければならないという意味合いが強く、財界の意向を汲みたい与党としては抵抗があったのであろう。そこでパート労働法と同じ「均衡」とされ、なんとなく緩く、「まあまあめちゃくちゃ不平等でなければええよ」という感じになったのである。また、「差別的取扱いの禁止」の規定も修正案に盛り込まれなかった。先行して成立したパート労働法の改正に、不十分ながら同様の規定が盛り込まれていることと比較すると、不均衡といわざるを得ない。
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1 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。
2 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。
3 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。
【修正案】第三条中第三項を第五項とし、第二項を第四項とし、第一項の次に次の二項を加える。
2 労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
3 労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
【私のコメント】この点については、先に紹介した連合の「談話」では触れられていないが、「均等(均衡)待遇」や「ワーク・ライフ・バランス」の重視は以前から連合も主張していたことであり、それに沿う修正であろう。フルタイムパートを含む全ての就業形態の均衡待遇原則がここに初めて盛り込まれた意味は大きい。ただ…労働基準法3条は「均等待遇」という言葉を使っているのに対し、パート労働法と労働契約法は「均衡」とされている。使用者に甘い、姑息なやり方だ。ところでこの修正の文言、法律の条文の立て方としてあまり美しくない。修正前は、1 当事者対等の原則、2 信義誠実原則、3 濫用禁止原則、ときれいに並べられていたが、修正後、1項から3項まで、末尾に「締結し、又は変更すべきものとする。」と出てくることになり、重複する。かといって、全ての要件を連結し、「労働契約は、労働者及び使用者が、対等の立場における合意に基づき、就業の実態に応じて均衡を考慮し、仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。」とするのも分かりにくいか…。やはり、基本中の基本原則を示すという意味で、各項独立させて分かりやすくすることに意味があるのかもしれない。
ところで、「就業の実態に応じて」というのは、派遣労働や有期雇用労働などさまざまな働き方の実態に応じて、という意味であろう。この条項で初めて、フルタイムパート労働者について「均衡待遇」が明文化されたのである。しかし、この件に関し、先に紹介した民主党案の労働契約法はより明確であった。というのも、民主党案の3条4項は「労働契約を締結し、及び変更する場合においては、労働者の就業形態にかかわらず、就業の実態に応じ、均等な待遇の確保が図られるべきものとする。」とし、さらに39条で、「(差別的取扱いの禁止)使用者は、有期労働契約を締結している労働者又は短時間労働者(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成五年法律第七十六号)第二条に規定する短時間労働者をいう。)の賃金その他の労働条件について、合理的な理由がある場合でなければ、通常の労働者と差別的取扱いをしてはならない。」としていたからである。マスコミ報道にもあったが、「均等」は「均衡」という語に変えられた。「均等」だとまったく同条件にしなければならないという意味合いが強く、財界の意向を汲みたい与党としては抵抗があったのであろう。そこでパート労働法と同じ「均衡」とされ、なんとなく緩く、「まあまあめちゃくちゃ不平等でなければええよ」という感じになったのである。また、「差別的取扱いの禁止」の規定も修正案に盛り込まれなかった。先行して成立したパート労働法の改正に、不十分ながら同様の規定が盛り込まれていることと比較すると、不均衡といわざるを得ない。
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労働契約法の修正箇所の検討1
先に書いたとおり、労働契約法は与野党合意で修正が施されて成立したのだが、修正案について、それを読む限りでは、ひとつひとつの修正にどのような意味があるのか、私にとって読み取ることは難しかった。ところが、日本労働弁護団による「労働契約法案及び労働基準法改正法案に対する見解」、あるいは連合事務局長談話「『労働契約法案』及び『労働基準法の一部を改正する法律案』の閣議決定にあたっての談話」を読んで、ああそういうことだったのか、と納得した。とりわけ、今回の修正は、連合の出した談話の主張にほぼ沿うものだったようだ。これで民主党が与党と修正合意した事情もよく分かる。条数ごとにみていくと…
【原案】(目的)第一条 この法律は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則及び労働契約と就業規則との関係等を定めることにより、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする。
【連合の見解】第一条(目的)では、「労働契約と就業規則との関係等を定める」となっているが、労働政策審議会労働条件分科会による法案要綱では、労働契約と就業規則との関係を定めたものとしていない。
【修正案】第一条中「及び労働契約と就業規則との関係等」を「その他労働契約に関する基本的事項」に改める。
【私のコメント】「労働契約」は使用者と労働者が対等の立場で合意に基づいて締結するもの、これに対し、「就業規則」は使用者が一方的に定めるもの…したがって、労働契約と就業規則を並べて規定するのは法原則からみてけしからん、ということだろうか? この文言の修正だけではあまり実際的な効果はないような気もするが…。あくまで「関係」といっているだけなので。「関係」という意味では、労働契約法案12条は「(就業規則違反の労働契約)就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。」としており、これはすでに労働基準法93条に昔からあった規定を労働契約法に移してきたものである。連合も当然この規定には噛み付いていない。これも広い意味では「労働契約と就業規則」の関係を定めているといえるから、この「関係」という言葉について必要以上に敏感になる必要もないのではないかという気もするのだが…?
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【原案】(目的)第一条 この法律は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則及び労働契約と就業規則との関係等を定めることにより、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする。
【連合の見解】第一条(目的)では、「労働契約と就業規則との関係等を定める」となっているが、労働政策審議会労働条件分科会による法案要綱では、労働契約と就業規則との関係を定めたものとしていない。
【修正案】第一条中「及び労働契約と就業規則との関係等」を「その他労働契約に関する基本的事項」に改める。
【私のコメント】「労働契約」は使用者と労働者が対等の立場で合意に基づいて締結するもの、これに対し、「就業規則」は使用者が一方的に定めるもの…したがって、労働契約と就業規則を並べて規定するのは法原則からみてけしからん、ということだろうか? この文言の修正だけではあまり実際的な効果はないような気もするが…。あくまで「関係」といっているだけなので。「関係」という意味では、労働契約法案12条は「(就業規則違反の労働契約)就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。」としており、これはすでに労働基準法93条に昔からあった規定を労働契約法に移してきたものである。連合も当然この規定には噛み付いていない。これも広い意味では「労働契約と就業規則」の関係を定めているといえるから、この「関係」という言葉について必要以上に敏感になる必要もないのではないかという気もするのだが…?
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労働契約法の施行
今年の3月から「労働契約法」が施行されているのだが、これについてマスコミが大きく取り上げたということはなく、またこの法律が施行されて何か労働環境がよくなったという話も聞いたことがなく、やっぱりほとんど無意味な法律だったのだなと空しい気持ちでいる。結局のところ労働契約法は判例法理を不十分な点も残しつつ明文化したという意味しかなく、それでもないよりまし、といったところであろうか。労働者に有利なように使えるところは使い、不備なところは判例法理を援用するのが労働契約法の正しい見方かな、と思う。
実は労働契約法は、内閣が提出した法案にいろいろ修正を施されて成立した法律である。民主党の意向で法案の修正があったのである。民主党は当時、野党案としての労働契約法を別に提出していたが、これは与野党の修正合意に伴い、撤回された。内閣提出の労働契約法は形式的には、これまで積み上げられてきた「就業規則の不利益変更の要件」や解雇権濫用禁止といった判例法理を明文化するという意味があるものの、就業規則を不利益に変更することが容易になる危険性があることが指摘されていた。また、厚生労働省の素案の段階で、非正規社員の正社員化を促す規定が削除されてしまったことは、前も指摘したとおりである。この点、民主党が提出していた労働契約法案のほうは、就業規則の変更については内閣提出ものより厳格であり、とりわけ非正規社員(有期雇用労働者)に関して、締結事由、差別的取扱いの禁止、解雇の制限、雇い止めの制限などを細かく規定し、非正規社員保護の観点から評価すべき内容になっていた。ところが、与野党合意に至った労働契約法の修正案は、当初の民主党案の精神が完全に失われてしまったのであった。どうしてこんな修正案で合意に至ったのか、まったく理解しかねるものであった。内閣提出の労働契約法案19箇条に対し、民主党案は45箇条という「気合」の入ったものであったのに、修正案は内閣提出法案へのたった8箇所に関するわずかな修正で、ページ数にして1ページ半というお粗末なものである。しかも修正箇所の中で実質的に意味のある部分はさらにわずかである。結局、民主党も本気ではなかったのだろう。次回からこの労働契約法の修正箇所について少し詳しくみていくことにしたい。
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実は労働契約法は、内閣が提出した法案にいろいろ修正を施されて成立した法律である。民主党の意向で法案の修正があったのである。民主党は当時、野党案としての労働契約法を別に提出していたが、これは与野党の修正合意に伴い、撤回された。内閣提出の労働契約法は形式的には、これまで積み上げられてきた「就業規則の不利益変更の要件」や解雇権濫用禁止といった判例法理を明文化するという意味があるものの、就業規則を不利益に変更することが容易になる危険性があることが指摘されていた。また、厚生労働省の素案の段階で、非正規社員の正社員化を促す規定が削除されてしまったことは、前も指摘したとおりである。この点、民主党が提出していた労働契約法案のほうは、就業規則の変更については内閣提出ものより厳格であり、とりわけ非正規社員(有期雇用労働者)に関して、締結事由、差別的取扱いの禁止、解雇の制限、雇い止めの制限などを細かく規定し、非正規社員保護の観点から評価すべき内容になっていた。ところが、与野党合意に至った労働契約法の修正案は、当初の民主党案の精神が完全に失われてしまったのであった。どうしてこんな修正案で合意に至ったのか、まったく理解しかねるものであった。内閣提出の労働契約法案19箇条に対し、民主党案は45箇条という「気合」の入ったものであったのに、修正案は内閣提出法案へのたった8箇所に関するわずかな修正で、ページ数にして1ページ半というお粗末なものである。しかも修正箇所の中で実質的に意味のある部分はさらにわずかである。結局、民主党も本気ではなかったのだろう。次回からこの労働契約法の修正箇所について少し詳しくみていくことにしたい。
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