労働法制が複雑すぎて周知できない
労働者派遣法の改正案が審議中で、民主党は実績を残すためにも、参院選挙前にぜひこの法案を成立させたいところであろう。日雇い派遣の禁止など、表向きは派遣労働者の保護強化をうたっているが、実際は抜け穴だらけで、派遣労働者の実態はこの法案によっても何もよくならないということは、すでにマスコミなどで取り上げられているとおりである。
私は労働者派遣そのものを禁止すべきという立場だが、百歩譲って派遣労働を認めるとしても、期間の定めのない明文の労働契約を結ぶ「常用型派遣」だけに限って認めるべきだし、派遣労働が認められる専門業務も、厳格に(高度な専門業務だけに)絞るべきだと考えている。今回出されている改正案はそのあたりがゆるゆるで、きっと派遣業界は胸をなでおろしているところであろう。国会審議中の今でも遅くはない、派遣労働者保護のために大幅な法案修正を望む。
もちろんこのような政策の急転換は実際の派遣労働者が不利益を被ることもあるだろうから、派遣元で契約の更新を繰り返しているようなら期間の定めのない契約と同様に扱うことや(常用派遣への転換)、同一の派遣先で長年就労している場合は直接雇用を義務づけるなど、経過措置を図るべきだろう。これ以上派遣労働者が増えてからでは取り返しのつかないことになる。今回の改正で法律名は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」と「保護」という文言が入ったが、名前だけでなく実質的に「保護」する内容でないと法改正の意味がない。民主党議員の多くはとりあえず法案を成立させればよいと思っていて、実際の中身についてはほとんど勉強していないのではないか。
ところで今回の派遣法改正法の原文を見てみると、日雇い派遣・登録型派遣・製造業派遣の「原則」禁止のため、新しい規定がいろいろ盛り込まれている。派遣労働者の均衡待遇配慮を定める30条の2のように、まったく新しい規定もいくつか追加されている。しかしこのように原則の例外を細かく規定しても、周知徹底されなかったり誤解される結果、例外が原則になるという逆転現象が生じることはよくあることである。また、新しい規定も設けられているものの、その多くは「配慮しなければならない」「努力しなければならない」と、いわゆる努力規定であり、これらはたいていの場合、経営者に無視されるのが普通である。効果の薄い規定をだらだら書き連ねても、役人の言葉遊びということになってしまう。
日本の法律は年々増え続け、新法が続々出るほか、既存の法律も改正のたびに分量が増加、かつ複雑化している。今回の改正派遣法もその例の一つである。しかし、労働法制は、使用者・被用者ともわかりやすいものであるべきだ。労働法制の基本となる労働基準法すら、経営者や労働者に浸透しているとはいいがたい。その上に労働契約法・最低賃金法・育児介護休業法・雇用保険法・労働者災害補償保険法・労働者派遣法などがあり、それらに基づいて施行令や施行規則、厚生労働省の告示・通達やガイドラインが形成されている。これらの多数かつ複雑な労働法制は、よほどの専門家でないと理解しにくいであろう。もちろん、労働法制が多数・複雑でも、それらが実効性をきっちりもっているなら我慢できよう。ところが今回の派遣法改正のように、抜け穴を作るために複雑な規定にしてしまっては、実効性がないどころか使用者・被用者に浸透もしないことになってしまう。
派遣法ばかりではない。今年の4月から施行されている改正労働基準法も同じである。60時間を超える残業代の割増義務も、直接労働時間規制をするのをためらった妥協の産物であるし、中小企業は割増義務を免れるという例外がある。また、有給休暇の時間単位取得解禁にしても、本来の有給休暇の趣旨から外れており、有給休暇の取得率アップの実績を厚生労働省がほしいためだけの改正なのではないか。これらの労基法改正は、会社の経理・総務の時間管理の手間を増やすだけの結果に終わっているのが実情である。とにかく、規定がどんどん複雑になってきていてけしからん状態なのである。育児介護休業法を形式的にパラダイスにしても意味が乏しいことは、いつかのブログで書いたとおりである。
労働基準法は、106条で「法令等の周知義務」を定めている。
(法令等の周知義務)
第106条 使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則(中略)を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付すること(中略)によつて、労働者に周知させなければならない。
育児介護休業法や、派遣法にも、これと同様の周知義務の規定が定められている。しかし、肝心のその法律の規定が複雑怪奇では、結局周知する側もされる側も理解不足に陥ってしまう。労働法制にかかわる人々は、この周知義務が効果を発揮するよう、できる限りシンプルな法制にすることを心がけるべきであろう。
そうするとやはり、登録派遣全面禁止、派遣業務は具体的な専門職に限定するのが筋であるし、ひいては労働者保護法制を免れることになる派遣労働そのものを禁止すべきということになるのではないか。
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泡沫政党消えるべし
上記いずれの新政党も、新自由主義的政治、小さな政府を目指している点で、旧来の自民党と変わりがないのであるから、国民はうっかりだまされてはいけない。旧来の自民党より、むしろいわゆる小泉・竹中路線をより突き進める傾向をもっているから、なおさらたちが悪い。このような福祉政策軽視の政党の勢力が拡大しないことを強く望む。どのみちいずれ政権与党に擦り寄ることを考えているのだろう。
だいたい、このような新政党が、「改革」を名乗ることがおこがましい。国民をだましているも同然だ。現在の日本は資本主義国家で、なかでも充分、アメリカ型の低福祉国家なのであるから、現在の傾向をより強めるのが上記新政党の目的のはずである。したがってこれらの政党は「保守勢力」なのである。「改革」は、日本を福祉国家に転じさせることを目指す政党が用いるべきキーワードであるはずだ。なんでもかんでも「改革」を旗印にすればよいというものではない。新自由主義的政治を目指す政党は、「改革」「創」「新」といった言葉を使う資格がない。これらの泡沫政党は、なるべく早く民主的に淘汰されてほしいものだ。
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協同労働法など不要
しかしよくよく冷静になって考えてみれば、非営利で事業をしたいなら公益法人やNPO法制がすでにあり、営利事業ならば、設立が容易になった会社制度があるのであり、それ以外に何が必要なのか、という話である。それどころか、今でもNPOでみられることだが、新たな法人制度を作ることにより、暴力団などブラック組織がこの制度を悪用するおそれもある。労働者から出資金を巻き上げてさらに低賃金で働かせるような組織が出ないとも限らない。ブラック組織でなくとも、地方自治体などのアウトソーシングの安上がりな受け皿として、協同組合が悪用される恐れもある。それに、協同組合の創立者は、それなりの志とリーダーシップをもって事業を立ち上げるかも知れないが、年月を経て創業者がいなくなったとき、あるいは内部で紛争が起きたときなど、ガバナンスがきっちり行われるか疑わしい。はたして現行制度以上に、新たな団体を制度化する意味があるのだろうか。もちろん話題になり一種のブームが起きるかもしれないが、それ以上の効果はなく、「あってもなくても同じ」なのではないか。
協同労働者の構成員が労働者にあたるか、つまり労働法制が適用されるかが問題となるが、協同労働の法制化により、これらが整理されるという。労働法制の脱法行為を防ぐため、労働法規が全面的に適用されるべきだが、そうすると通常の雇用関係とどう違うのかということになる。というわけで結局、協同労働法の意義がよくわからないのである。
国会議員の人気取りが目的なのか知らないが、現状の数々の労働問題を正面から議論することなく、「協同労働」のような妙な概念を持ち出していじくりまわすのは無意味だと私は思う。その証拠に、協同労働法制定を目指す超党派の国会議員は、自民党から共産党まで揃っており、現状の労働問題についての見解はバラバラではないか。こんな国会議員の間で実質的に意義のある立法ができるのか。「余計なことしなくていいよ、国会議員はもっとほかにやることあるでしょ」が私の本音である。
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