ツィッター(Twitter)
本記事に興味をもって下さった方に、クリック1回お願いします
(ブログ人気投票)
有期雇用保護法制を早く!
不十分とはいえ、労働者派遣法の改正が済んだら、次は有期雇用法制の整備に着手すべきであろう。格差社会の象徴として派遣労働がクローズアップされることが多いが、実は派遣労働者より有期の直接雇用労働者のほうが圧倒的に数が多く、低賃金・雇用不安定な状況に置かれているのであるから、こちらの対策をするほうが救われる労働者は多いのである。派遣規制をしても、派遣労働者が劣悪条件の有期雇用に流れるだけでは意味がない。厚生労働省は3月、「有期労働契約研究会中間取りまとめ」を公表した。有期雇用の問題の多くはここで出尽くしたであろうから、告示やガイドラインなどの生ぬるい対処ではなく、法改正によって、有期雇用の条件・期間制限・更新制限・均等待遇などの法制化を進めるべきである。
ひとつ具体的な注文をしておこう。数年前の労働契約法制定のときには、有期雇用の規制を導入しようという話があったにもかかわらず、経済界の圧力で立ち消えになったと聞く。その結果、有期雇用関係の規定として、いわば妥協の産物として、意味不明の軟弱な規定が入れられた。それは17条2項である。
第17条2項 使用者は、期間の定めのある労働契約について、その労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。
これは何を意図している規定であろうか。立法者の意図は私は知らないが、善意で解釈すれば、「首を切りやすい有期雇用を乱用するのではなく、長期雇用を前提としているなら有期雇用ではなく期間の定めのない契約(正社員)にしなさい」というメッセージと受け取ることができる。しかし法律の文言だけを見れば、単になるべく業務に合わせて長期の契約にしなさいと定めているだけである。労働基準法では有期雇用期間の制限を3年としているため、3年の範囲内でなるべく長期の契約にせよと解釈することになる。「配慮しなければならない」だけだから、これまでどおり3ヶ月や半年などの短期契約を見直さなくてもよいということである。おそらくこの17条2項が導入されたからといって、契約期間を実際に見直した例は、世の中にほとんどなかったであろう。これまた労働法制をややこしくするだけの無用な条文である。思惑の入り乱れる労働社会でソフトパワーなど機能しないのだ。
無用どころか、この17条2項が有期雇用労働者の首を絞めることにもなりかねない。有期雇用労働者については、判例上いわゆる「雇い止め法理」が形成されており、更新を繰り返しているような状況においては、突然期間満了になったからといって合理的理由なく雇い主が更新拒絶をすることは、権利の濫用であり無効だとされる。そこでは権利濫用かどうかの基準として、更新回数も考慮される。ところが例えば、3年同じ会社で働いてきた有期雇用者が2人いたとして、1人は3ヶ月の雇用契約の更新を複数回繰り返して3年になる者で、もう1人は労働契約法17条2項の趣旨に沿い、3年の雇用契約を結んで一度も更新していない者である場合、判例法理によればもしかすると、前者が保護されて後者が保護されないという結果になる恐れがあるのである。このような見方は極端かもしれないが、労働契約法17条2項は意味がないばかりか、このような余計な心配を生む規定でもあるのである。いわば雇い止め法理排除規定といってもよい。
このような意味のない有害規定も含め、抜本的に有期雇用法制が見直されることを強く望む。
本記事に興味をもって下さった方に、クリック1回お願いします
(ブログ人気投票)
派遣から請負へ逆戻り
いわゆる偽装請負が問題となった裁判で注目を集めたのが、「パナソニックプラズマディスプレイ偽装請負事件」であり、最高裁は原告勝訴だった高裁判決を覆して、偽装請負は派遣労働であるという理論構成のもとに、派遣先と労働者の雇用関係を認めなかった。最高裁判決は法理論としては正しいのかもしれないが、労働者の法的保護の必要性という観点からはとても納得できないものであり、日本中でまかり通っている偽装請負にお墨付きを与えた悪名高い判決として語り継がれることであろう。労働者受入れ企業は、実態は直接雇用なのに雇用の法規制を免れるために請負形式にしているにすぎない。また、労働者としても直接雇用が希望なのに、やむを得ず請負形式を呑んでいるにすぎない。にもかかわらず、当事者の意思をその表層だけとらえて雇用契約ではないと断定するのはあまりにも冷酷である。当事者の真の意図を汲み取らなければ、ずるがしこく派遣や請負の偽装を整える企業ほど、直接雇用の責任を免れてお得ということになってしまう。
ところで今国会に提出されている派遣法改正案では、新たに「みなし雇用」という制度が導入されている。
第40条の6 労働者派遣の役務の提供を受ける者(中略)が次の各号のいずれかに該当する行為を行つた場合には、その時点において、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者から当該労働者派遣に係る派遣労働者に対し、その時点における当該派遣労働者に係る労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなす。(中略)
4 この法律又は次節の規定により適用される法律の規定の適用を免れる目的で、請負その他労働者派遣以外の名目で契約を締結し、第26条第1項各号に掲げる事項を定めずに労働者派遣の役務の提供を受けること。
これはつまり簡単に言えば、偽装請負のようなことをしていたら、派遣先と労働者の雇用関係を強行的に成立させてしまうぞということであり、偽装請負のペナルティとして歓迎すべき制度である。ただ、違法行為であることを派遣先が知らなかった場合は免責されるという怪しい例外規定がくっついているのだが…。とにかく、このような制度の導入により、上記プラズマディスプレイ事件のような事案では、派遣先と労働者の雇用契約が認められることになろう(そうでないとおかしい)。上記最高裁判決でも、立法論に一言踏み込んでいれば、悪名高い判決の烙印を押されずに済んだであろうに、と思うのは無理な注文であろうか。
かつて製造業派遣の解禁により、製造業では偽装請負から派遣に順次シフトしたと聞いているが、上記のような派遣法制の規制強化により、再び企業は派遣から請負方式を選択するようになるだろう。実際、アウトソーシング業界では、リスクの高い派遣から業務請負に移行するようセールス攻勢をかけているようだ。請負形式に戻るといっても、これだけ偽装請負が問題視されてしまったからには、派遣先(発注企業)の直接指揮・命令にならないよう、巧妙に体裁を取り繕うようになるだろう。アウトソーシング会社の営業社員が、発注企業と労働者の間に立つよう形式的に整えれば、脱法行為の出来上がりというわけである。派遣業者は請負業も兼ねていることが多いので、派遣規制が厳しくなっても困らない。
どのような契約形態をとったとしても、「必要なときに必要な数だけ集められ、不要になったらポイ捨てできる、安上がりな労働力」をほしい企業と、そのニーズにこたえるアウトソーシング企業(人身売買企業)の構図は変わらない。サラ金規制でサラ金業者を窮地に追い詰めたように、派遣のみならず業務請負も厳しく規制して、このような悪質な人身売買企業がはびこることをくいとめなければならないだろう。役所の指導やガイドラインでは効果が薄い。法改正で直接規制をすべきである。どこかを規制してもどこで脱法行為がはびこるだけだと言う者がいるが、それは規制に反対する者の言い分である。労働法制の秩序が崩れ、アウトソーシング会社がはびこるような社会は健全といえない。大きな目で見れば国民の勤労意欲の減退にもつながりかねない。知恵を絞って人身売買企業を撲滅したいものだ。
あの手この手で直接雇用を免れようとすることに直接歯止めをかける必要があることはもちろんだが、どうしてアウトソーシングが安上がりになるのかという原因を考えることも重要である。アウトソーシング企業は登録派遣社員を含め、多くの非正規社員を契約更新を繰り返して雇用している。ここにメスを入れなければならない。派遣業の規制、業務請負の規制はもちろんのこと、有期雇用規制そのものに手をつけなければならないだろう。つまりアウトソーシングが安上がりにならないようにしなければならないというわけである。また、そのためには、すぐに実現は無理としても、同一労働同一賃金の方向へ社会全体をシフトしていくことが必要であろう。人件費を安上がりにして短期的利益を上げようとするような企業に未来はないのだ。
(追記)
派遣法改正案では、いわゆる専ら派遣の規制も盛り込まれている。派遣元と派遣先に経営上密接な関係がある場合は、当該派遣先への派遣を一定割合に制限するというものである。ある企業が人件費を安く上げるため、子会社として派遣会社を作り、そこで集めた労働者を自社へ派遣させるという典型例を抑止しようとするものであるが、私はこのような改正でも生ぬるいと思う。どのくらいの範囲の派遣会社がこの改正案で影響を受けるかは、厚生労働省のさじ加減ひとつである。大手企業が作っている派遣会社の大半の経営が困難になるほどの規制でないと意味がない。例えば業務偽装派遣で有名になったドコモスタッフは、「ドコモ100%出資の派遣会社だから安心」「派遣先はドコモグループ中心だから安心」などと謳い、まさに専ら派遣を売り文句にしているような悪質な業者である。直接雇用逃れをしていることは誰の目にも明らかなのであるから、このような専ら派遣業者に対しては厳しい制限をつけるべきであるし、派遣業許可取消しも検討すべきであろう。まあ、繰り返し述べているように、そもそも派遣という雇用形態を認めていることに根本原因があり、これを廃止すべきなのであるが。
「みなし雇用」が法制化され、プラズマディスプレイ事件のような事案で、派遣先と労働者の雇用契約が認められることになっても、雇用契約の内容は大半、派遣登録していたときと同じ、有期雇用契約である。決して正社員になれるわけではない。するといわゆる「雇い止め法理」が働かない限り、有期雇用の契約期限が到来したら、使用者は労働者を雇い止めできることになる(つまり実質クビ)。これはまさにプラズマディスプレイ事件の経過と同じであり、違法派遣が告発されて、そのペナルティとしてみなし雇用が義務づけられても、告発した憎き労働者は、例えば3ヶ月間だけ直接雇用した後クビにすればよい。このように派遣法の今回の改正案は、現状を何ら改めることはないということである。その意味では現状追認のよくできた法案だ。今後プラズマディスプレイ事件のような事案では、違法派遣期間と、みなし雇用期間の双方の期間を合算して雇い止め法理の適用を検討しなければ、現実を見たことにはならないであろう。いや、やはりそもそも、法律そのものがおかしいのであって、派遣を規制するのであれば同時に有期雇用も規制しなければ意味がないし、もっと「そもそも論」をいえば、解雇規制を免れる意味しかない派遣労働そのものを禁止しなければならないのである。
本記事に興味をもって下さった方に、クリック1回お願いします
(ブログ人気投票)