歴史用語の基礎(第15回:「公爵」と「侯爵」。侯は「そうろう」ではありません。) | Prof_Hiroyukiの語学・検定・歴史談義

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第14回:「親王」と「諸王」http://ameblo.jp/prof-hiroyuki/entry-10696486147.html 以来1か月ぶりの「歴史用語の基礎」です。


さて、表題の「公爵」と「侯爵」はいわゆる爵位

公・侯・伯・子・男爵の5階級が有り、中国においては夏王朝(殷王朝の前)にまで遡ると言われています。

日本の華族制度は、諸外国の制度に準じて明治17年(1884年)7月7日に制定されました。そして、終戦後の昭和22年(1947年)5月3日の日本国憲法制定まで存続する訳ですが、今回はその詳細については述べません。


問題は「公爵」と「侯爵」の読みが共に「こうしゃく」という事です。

中国では両者は読み分けられる一方で、日本語では発音が単純なので区別が出来ない・・・それにも関らず中国でも名称を踏襲したのでこの様な事態になったのですが、制定されてしまったものは仕方が有りません。


様々な証言を纏めますと、

当時は「公爵」を「きみ(の)こうしゃく」「おおやけ(の)こうしゃく」、

「侯爵」を「そうろう(の)(こう)しゃく」などと言って区別していたそうです。


不思議なのは「侯爵」の「」は「そうろう()」とは別の文字だという事です。

よく見て頂ければ「そうろう」の方が一画多いはず

候(そうろう)という文字は人偏(イ)に「侯」という造りになっているのです。

人偏2つでは「イイ」と見栄えが悪いので一画に省略されているという訳ですね。


この様に両字体が似ている事も混乱の原因かもしれませんが、「侯爵」「諸侯」の「侯」には正式な訓読みが無い事も理由かと。そのために致し方なく「そうろう」に対して露骨には異議が出されなかったものとも推察されます。


なお、「爵」の字は昭和29年の当用漢字補正案では削除文字に入っていました。それにも関らず今でも削除されずに常用漢字として残っています。どうやら3日前の新常用漢字告示における「増字」に見られます様に、当用漢字制定時の「漢字を制限しよう」という風潮は廃れていく傾向に有る様ですね。ワードプロセッサなどの発達も背景に有り、個人的には悪くはないと考えていますが。

※当用漢字・常用漢字につきましては、「常用漢字と当用漢字」http://ameblo.jp/prof-hiroyuki/entry-10511308457.html や「常用漢字表改定」http://ameblo.jp/prof-hiroyuki/entry-10723038747.html も御参照になれます。