◎休日の官庁街に集まる人たち
3月24日土曜日,休日と冷たい雨が重なり,閑散とする霞ヶ関の官庁街。
昼を過ぎたころから,地下鉄霞ヶ関駅に通じる階段から人がひょこりひょこりと顔を見せるようになる。多くの人は階段を登り切ったところで立ち止まり,空を見上げる。残念そうな顔をする人。雨など意に介さないかのように表情を変えない人。緊張気味な顔をしている人。彼らは傘を広げると,日比谷公園に吸い込まれていく。
◎日比谷野音で行われた脱原発集会
午後1時,雨の降る中,公園内にある日比谷野外音楽堂で,「さよなら原発1000万人アクション」と銘打った集会が開催された。
大江健三郎,坂本龍一,瀬戸内寂聴さんら各界の重鎮が呼びかけ人の集会。
参加者は主催者発表で6000人。実数は4000人くらい。会場外にも500人くらい。様々な団体が「脱原発」や「TPP反対」,「改憲阻止」などを訴えて集会参加者にビラを配る。
オープニングでは,山本コウタローさんが,「岬めぐり」などの歌を披露。山本さんは,チェルノブイリ事故の後,「脱原発」を掲げて参院選に出馬(1989年)したという。集会では,辛淑玉さん(賛同人)が「原発は人を殺すもの。その原発を貧しくて声を上げられないところに持っていく。原発を作れば学校に行けるし,食べられると。福島に原発を置くことは沖縄に基地を作ることと同じ。心根に差別がある。放射能汚染問題で,今,福島で結婚差別が起き始めている。原爆被害者2世,3世に対する差別と同じだ」などと指摘した。
澤地久枝さん(呼びかけ人)は,「『原発がなくなったら江戸時代に戻る』という人がいる。こういった声が出るのは,マスメディアの責任。新聞は書かないかもしれないが,今日,冷たい雨の中,これだけの人が集まったのはすごいことだ」と発言。
◎「核安全保障サミット」で日本が果たすべき役割は?
3月26,27日にソウルで行われる第2回核安全保障サミットに野田総理が出席する。朝日新聞は25日,「核テロ防止 原発事故も教訓に」と題する社説を掲載し,「(原発)事故もテロも『想定外』としないで万全の策を練ること」を「福島からの大きな教訓」として示すよう,野田総理に注文を付けた。朝日の社説と照応するように,野田総理は27日の演説において,福島第一原発事故の教訓の一つとして,「想定外を想定する」ことの重要性を訴えるという。
◎偶然の一致なのか?
朝日の社説内容とサミットにおける野田総理の演説の一致は,偶然なのか?
23日の集会で,澤地さんは,原発報道における大手マスコミの不可解さを指摘している。
そもそも,「想定外を想定すること」など,本当に可能なのか。福島第一原発で事故対応にあたった吉田昌郎所長は,政府事故調のヒアリングで「地獄を見た」と語ったという。この言葉は重い。それに比べて,野田総理が演説で述べる「想定外を想定する」という言葉は机上のものだからか,不思議なほどに軽く感じる。机上の話ゆえに,私たち人間が何でもコントロールできるという奢りがあるようにしか思えない。
◎署名集めの期限は5月31日
「さよなら原発1000万人アクション」実行委員会事務局は,「1000万人が動けばかえられる」を合い言葉に,エネルギー政策の転換と既存の原子力発電所の段階的廃止を求める1000万人の署名を集めて,日本政府と衆参両議長に提出する方針にしている。集会では集まった署名数が550万筆と報告があった。
あと450万筆。署名は,同アクションのホームページからも可能だ。