IT企業のPR -60ページ目

導入事例をピッチする方法

日経BP社系に代表される雑誌は、お客様の事例をよく求めます。製品やサービスがどのような経緯で導入され、どのような効果をもたらしたのかというストーリーが読者に有益な情報であるからです。しかし、この事例を入手するのが、至難の業です。導入企業にとっては競合会社などに自社が構築した仕組みやノウハウを知られたくないため、事例の情報提供を拒む傾向にあります。営業パンフ向けの事例取材を受けても、メディア向けの取材は受けたくないという会社さんも結構あります。


しかし、中には自社のPRになるからといって、メディアによる事例取材に協力してくれる導入企業があります。そのような企業が見つかれば大変ラッキーです。このチャンスを絶対に逃してはいけません。もちろん取材をしてもらったからといって記事になるかどうかはメディアの判断なので保障できないのですが、最善をつくさなければなりません。


基本的に事例取材において記者は「課題とその解決」というスタンスで取材されます。例えばシステムの導入事例に関しては、下記の項目が考えられます。


1.システム概要
2.開発スケジュールと開発体制
3.システム開発に着手した理由
4.製品を選んだ理由と競合製品の評価
5.構築での苦労と工夫
6.完成後の評価


そのため、事例取材を成功させるためには、事前に上記のような項目に対する資料を準備する必要があります。導入企業側の担当者とシステム構築側の担当者からヒアリングもしくは書面で回答して頂き、記者の取材前に資料を準備します。


そして、記者に導入企業に訪問して頂き、導入企業側の担当者に取材をして頂きます。そのときに、システム構築に実際に携わった人に同席してもらうことも重要です。取材時には、作成した資料をもとにして、情報を捕捉しながら、導入事例の「課題とその解決」について記者に理解を深めて頂きます。


大変手間のかかる作業ですが、こうした作業をもとにして出来上がった事例は大変効果があり、実際にお客様の事例がのったことにより大きな商談に結びついたという嬉しい報告も頂きました。




ブリーフィング資料の重要性

報道関係者の方々に記事を書いて頂くために、記者発表会や個別のインタビューなどを行います。忙しい時間をやりくりして記者に来て頂くからには、開催者側は万全の準備を整えて、記者が関心をもってくれる情報を発表会で提供しなければなりません。


自分が広報を担当しているお客様は外資系企業が多いため、スポークスパーソンが海外の本社から来て英語で発表するケースが多いです。つまり、日本の記者がどのような話題に関心をもっているか、あまり知らない人が海外から来て発表するわけですから、事前に日本でどのようなことが話題になっているか、どういった内容に関心をもっているかブリーフィングをすることが重要です。そこで大事になるのが、ブリーフィング資料の作成です。通常、発表会の一週間ぐらい前にスポークスパーソンに提出します。ブリーフィング資料は、以下のような内容で構成されています。


-表紙

-目次

-市場動向: ターゲット市場の中でどのようなことが話題もしくは課題になっているか、競合状況など

-コミュニケーションの背景: お客様がこれまでメディアでどのような取り上げられているか。それをふまえてメディアがどのような内容に関心をもっているか

-目的・戦略

-キーメッセージ

-アジェンダ: 日時、会場、スケジュールなど

-参加予定メディアリスト

-メディアプロファイル:どのような特徴を持ったメディアか。発表会に来る記者がどの程度知っているかなど

-想定質問:記者からどのような質問がありそうか想定する。

-注意事項:発表会を行う上で注意しなくてはいけないことを確認

-連絡先

-参考資料


だいたいページ数にして10ページ~15ページぐらいになりますが、このブリーフィング資料があるのとないのとでは、大きな差が生まれると思います。こうした事前の準備なしで、直前でブリーフィングをしたとしても、記者が求める情報を提供するのは難しいです。時間のかかる作業ですが、事前の準備で勝負が決まると思います。これまで、ブリーフィング資料のおかげで日本で何を伝えればいいのか良く分かったというお褒めの言葉も何度か頂きました。


PRプランを立てるためのリサーチの仕方

お客様のPRプランをたてる上でお客様がこれまでメディアにどのように報道されてきたのか調べる必要があります。私たちがよく使うデータベースは日経テレコンです。日経テレコンには主要な新聞・雑誌をはじめ、最近ではCNET Japanなどのオンライン記事の検索まで行うことができます。記事の閲覧は有料なので、キーワードを絞り込んで余計な記事を検索しないように気をつけないといけませんが、お客様やお客様のビジネスに関連する業界・サービスがどのように報道されているか傾向性をつかむ上で大変役に立つツールです。また、これ以外に、主要なオンラインメディアを使って、同様にお客様や競合会社がどのように報道されているか検索して調べます。


こうして徹底的にお客様に関連する情報を調べることによって、どのような切り口からメッセージを伝えていくべきか明らかになってきます。一番大事なことは、市場の動向や競合製品などを把握したうえで、このようなメッセージを伝えれば報道関係者の方が関心をもってくれるのではないかという仮説を立てることです。その仮説にもとづいて、PRの目的、戦略、戦術をたてていきます。


この最初の段階でのリサーチの精度をどれだけ高めるかによって、その後の成功が決まると思います。これまで広報代理店など外部のスタッフを使わずに自社だけで広報をやっている会社によくあるケースですが、こうした仮説をたてずにひとりよがりのPRをしているところがあります。社内のポリティックスなどが優先されてしまうのでしょうがないといえますが、どこまでも広報は中立的な立場で、片足を社内に突っ込んで、もう一つの片足を外の社会に突っ込んだ形で、PRを展開していく必要があります。その中立的な立場を明らかにするために、この事前のリサーチが重要なのです。