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「企業」、「政府」、「メディア」、「NGO」に対する世界的な信頼度調査から見る最近の傾向

あらゆる企業や団体、個人における活動において、いかに「信頼」を得るかということが大事だと思います。「信頼」とは、日々の「信用」できる行動や実績が積み重なって勝ち取れるものだと思います。「信用」と「信頼」の違いについてはこちらのブログに詳しく書かれていますが、過去からの実績に対する評価が「信用」であり、これまでの信用できる行動や実績をもとに、これからもちゃんとやってくれるだろうという未来への期待や気持ちが「信頼」ということになります。「信頼」は未来に対する期待や気持ちの表れという精神的なものですので、過去長い時間をかけて「信用」を築いてきたとしても、一つの出来事であっという間に「信頼」を失ってしまうことは、最近のニュースなどを見ればよく分かると思います。

私が勤めるエデルマンでは、毎年、世界各国の政府や企業、メディア、NGO(非政府組織)などに対する「信頼度」を調べる「エデルマン・トラストバロメーター」という調査を行っています。本年は、第14回目となり、27カ国で33,000人を対象に実施しました。その中から日本に関連する調査結果を最近発表しましたので紹介したいと思います。

それによると、日本国内における「企業」、「政府」、「メディア」、「NGO(非政府組織)」の組織に対する信頼度は下記のスライド通りの結果でした。昨年と比較して信頼度が最も上昇したのは「政府」でした(昨年の32%から45%にアップ)。「企業」に対する信頼度も上昇傾向にあります。それに対して、「メディア」の信頼度が昨年度より下降しています(昨年の43%から40%にダウン)。「NGO」の信頼度は昨年と同様に低い数値でした。


メディアに対する信頼度が下落したのは、日本だけでなく世界的な傾向です。下記のスライドが示しているように、調査対象国の約8割の国々でメディアに対する信頼度が低下しています。



NGOについては、調査対象国27カ国中20カ国で最も信頼度が高い組織であるのにもかかわらず、日本国内では最も信頼度が低い組織であるということは引き続き大きな課題です。



世界各国から見た日本企業に対する信頼度については、下記のスライドが示すように、26カ国中24カ国で日本企業に対する信頼度が上昇しています。日本企業の海外進出や海外での展開を後押しすることになるのかもしれません。



信頼を得るために企業のCEOがとるべき行動として、日本とグローバルの結果を比較した下記のスライドをご覧ください。最も大きな違いは、「メディアに積極的に登場する」という行動です。日本ではそれほど重視されていないようですが、グローバルではCEOがメディアに積極的に登場することが重要視されています。日本企業が海外での信頼を高めるにはCEOがより積極的にコミュニケーションしていくことが求められていることを示唆しています。



日本の調査結果発表に際して、エデルマンでは「信頼」に関するキーパーソンへのインタビューとして、グロービス経営大学院学長の堀義人さん、アジャイルメディア・ネットワークの徳力基彦さんにインタビューしました。「信頼」ということについて、貴重なご意見を述べられているのでぜひご参考にしてください。

「キーマンが語る「信頼」の形」インタビュー
堀義人さんに聞く
徳力基彦さんに聞く

また、日本の調査結果の発表にあたって、総理官邸・内閣審議官の谷口智彦様、シンクタンク・ソフィアバンク代表の藤沢久美様、グロービス経営大学院学長の堀義人様によるパネルディスカッションを行いました。その時の模様は下記の動画でご覧頂けます。

「信頼とアベノミクス ~トラストバロメーターから見た審判~」

今後ウェブ上で重要視されるコンテンツの指標とは

動画コンテンツがここ最近注目されていますが、YouTubeには動画コンテンツのクオリティを評価する指標として、視聴者が動画をどれだけ長く再生したのかを示す「平均再生時間」があります。どんなに動画のタイトルやサムネイル画像で視聴者を惹きつけて動画をクリックさせたとしても、内容がつまらなければ視聴者はすぐに見るのをやめてしまうため再生時間は短くなります。

下記のブログ記事に書いてありますように、「より長い時間をかけて動画を見るということは、視聴者がその動画の内容に満足しているということを意味します」ので、視聴者の再生時間が長い動画がYouTubeでは重要視されています。短い時間の動画でも、最後まで再生される動画や、長い動画でもある程度最後のほうまで再生される動画が評価の高い動画であると言えます。

つい先日も、米国で人気の動画メディアサイトのUpworthyが、ユーザーの満足度やエンゲージメントを測る指標として「アテンション時間」(attention minutes)を採用することを発表しました。各コンテンツに対して、何人の人が、どれぐらいの時間再生したのかなどの数値をもとにしてユーザーの関心度を測ることを重視していくそうです。



これらの指標のように、ユーザーがサイト上のコンテンツをクリックしてから実際にどれぐらいコンテンツを消費しているのかという指標を複数のメディアサイトが重視し始めています。

これまでウェブ上でのコンテンツを評価する指標として、主にクリック数やアクセス数などが使われてきましたが、これだけでは、コンテンツがクリックされてから実際に読まれたのか、どこまで見られたのか分かりません。今後ウェブ上で重要視されるコンテンツの指標は、クリック数やアクセスだけでなく、実際にコンテンツを消費したアテンション時間、他の人にシェアされた数、コンテンツのコメント数やライク数の組み合わせになっていきそうです。

これらを踏まえると、コンテンツを作る側が常に念頭におかなくてはいけないことは、以下の点だと思います。

・コンテンツのタイトルをクリックしたくなるほど魅力的なものにする
・コンテンツに関連のある魅力的なサムネイル画像を使う
・読者が読み続けたい文章や、視聴者が見続けたいと思うような動画を作る
・他の人にシェアしやすいように、FacebookやTwitterなどのシェアボタンを用意する

これらの全てを考慮するのは大変ですが、このような包括的なアプローチが今後さらに求められていくことになると思います。

なぜ人々がコンテンツをシェアするのかということについて

ネット上でこれだけ多くのコンテンツが量産されるようになると、人々にシェアされるようなコンテンツを作るのはますます難しくなっています。時間と手間をかけてコンテンツを作ったとしても、シェアが少なければそのままコンテンツの海の中に埋もれていってしまいますが、逆にそれほど手間をかけていないのに多くの人々にシェアされて大きな話題となるコンテンツも存在します。なぜ人々がコンテンツをシェアするのか、どんなコンテンツであれば多くの人々にシェアされるのかということについて関心をもっているのですが、そんな問いにひとつのヒントを与える面白い記事に出会いました。

この記事の中で、以下の手書きの図をもとにして、多くの人々に伝わりやすいストーリーには二種類あると述べています。



その一つが左側の黄色で色が塗ってある「MEMES」と書いてある部分で、要は人を笑わせるおもしろネタや自己啓発系のネタ、人の興味をそそるヒューマンインタレスト系のネタなどを指し、例えば、可愛いネコの画像におもしろいコメントを加えたコンテンツや、TED動画のようなコンテンツなどがこの部類に属すると説明しています。そして、なぜこれらのコンテンツが広まるかといえば、それらのおもしろさを解釈する必要がないからであり、なぜあなたがこのコンテンツを友人にシェアしたのか理由がはっきりしているものだからと解説しています。

次にもう一つの人々に伝わりやすいストーリーとして、右側の緑色で塗られている「TRUTH-TELLING」、つまり事実を伝えるストーリーを挙げています。例えば、何らかの事実を伝える調査記事や、複雑な事象を分かりやすく説明する記事、ハウツーガイドなど、何らかの事実を明らかにするコンテンツを例に挙げています。これらのコンテンツが人々に広まりやすい理由は、おもしろネタが広まりやすい理由とまったく同じで、それらの内容を解釈する必要がないからと言われています。なんらかの事実を友人に伝えることは、おもしろネタを友人に伝えるときに感じる心地よさと同じような心地よさを感じるからであると説明しています。

逆に、人々にシェアされにくいストーリーとして、上の図で「谷」の場所に位置する赤色で塗られた「THE VALLEY OF AMBIGUITY」、つまり、「曖昧さの谷」と書かれているように、解釈が難しい内容、例えば解釈が難しい科学的発見のストーリーや、複雑な背景があって何が正しいのか正しくないのかよく分からない政治的な話などを挙げています。別の言い方をすれば、内容が肯定的なものであれ、否定的なものであれ、情報を受け取る側に誤解されたり、いろんな解釈をされる可能性があるコンテンツと言えます。このようなコンテンツは、シェアすると自分の評判を落とすことにつながるリスクがあるのでシェアされにくいと説明しています。

人々にシェアされるコンテンツ作りということに力点を置くと、こうした人々がシェアをする際の心理を踏まえたコンテンツ作りということが大事になってくると思います。BuzzFeedなんかはまさにこのようなモデルに基づいてコンテンツ展開している一例だと思いますが、コンテンツ展開していくあらゆる企業はこのようなモデルを考慮していく必要があることを感じています。