IT企業のPR -2ページ目

海外PRにおいて大切な動画作りのノウハウ

ある日本のベンチャー企業の海外PRのプロジェクトに携わりましたが、改めて「動画」の大切さを実感しました。その企業はまだ立ち上げたばかりのベンチャー企業で、これまでにない革新的なテクノロジーを世界中に知らせたいという要望をもっていました。革新的なテクノロジーを世界に向けて発表するにはシリコンバレーが最適と判断し、いざシリコンバレーでの発表に向けて準備を開始したわけですが、まったくゼロからの出発で、誰にも知られていない、いままでどこのメディアにも紹介されたこともない、しかも英語でのメッセージング資料が何もないという状況でした。

こういう状況の中で、いかにしてこの日本のベンチャー企業のテクノロジーがもたらすメリットや将来性をシリコンバレーの記者や世界の人々に伝えるか考えたときに一番重要な手段として取り組んだのが「動画」作りでした。この動画があったことで、シリコンバレーの様々な記者の興味を事前に掴むことができたと確信していますし、実際、今回作成した動画は様々な記事中で引用され、数週間で数十万の人々に視聴されました。英語がネイティブでない日本の企業でも字幕やネイティブのナレーターを活用して、シリコンバレーのみならず世界で通用する動画を作りだすことができるということを実感しました。今後のメモとして動画作りにおいて重要だと思う点を書いておきたいと思います。

まず、大切なのはストーリーボード作りです。このストーリーボードとは、各シーンでどのようなセリフやナレーションを入れるのか、どのような展開でストーリーを語るのかというシナリオのようなものであり、全体の設計図のようなものです。これがあることで、各シーンでどのような画を見せたらいいのか、どのような映像や写真、アニメーションなどが必要なのかなどがイメージがしやすくなります。このストーリーボード作りが動画制作の肝だと思います。動画の長さは目的によると思いますが、できるだけ短く3分から4分ぐらいを目安にしました。

このストーリーボードをもとに映像素材の撮影を開始します。海外ローンチ向けの動画なので、英語のネイティブスピーカーでないインタビュイーの方々には基本的に英語のセリフを覚えてもらうか、インタビュアーの後方にプロジェクターでセリフを映し出して読んで頂きました。しかし、あとでネイティブにレビューをしてもらった時に発音が分かりにくいというコメントがありましたので動画の中では英語の字幕もつけました。もちろん、最初からインタビュイーの方々には日本語で回答してもらって、あとで英語の字幕をつけるという方法でもかまいません。また、インタビュアーの質問のシーンは動画の中で使わないようにしたので、編集でカットしやすいように、インタビュイーの方々には質問してからすぐに回答するのではなくて、ひと呼吸間をおいてから回答してもらいました。

また英語のネイティブスピーカーではない人のセリフはなるべく少なくして、ネイティブスピーカーのナレーションが多くなるようにしました。その他に、研究施設や研究員の実験風景などの撮影も行って、動画映像の合間に入れるB-rollと呼ばれる映像素材の撮影もしました。さらに口頭だけではテクノロジーを理解してもらうのが難しいことが想定されたので、アニメーションを使ってそのテクノロジーがどのように機能するのか説明するようにしました。

さらに大事なことは動画のストーリーや雰囲気にあったバックグラウンドミュージック(BGM)の選択です。ロイヤリティーフリーのミュージックサイトから、ストーリー展開に合ったBGMを二種類ほど選択し、BGMでストーリーの展開を視聴者に伝えるようにしました。

こうして出来上がった動画は何度かレビューして微修正を行い、最終版を完成させました。動画は最初のつかみが大切で、最後まで見てもらえるかどうかが重要だと言われていますが、YouTubeでの視聴時間をみる限り、多くの人が最後まで見てくれたようです。





BuzzFeedの編集長が語る今後のニュースを伝えるジャーナリズムとは

日本への進出が報道されたBuzzFeedの編集長を務めるBen Smithが、ニュースを伝えるジャーナリズムが今後どのような方向に向かいつつあるのかについて語っている記事が興味深かったので、気になった点をいくつか紹介したいと思います。


まず、「ニュースを伝える主体が、メディア組織ではなく、ニュースを伝えるライターやレポーター個人に比重がシフトしつつある」というコメントです。

従来からの考えだと、どこどこのメディア媒体の記事だから信頼して読むという考えのほうが普通なのかもしれませんが、ネット上で目にする記事の多くはだんだんと多くの人がシェアするから結果的に目にするという方向に向かいつつあり、わざわざ自分から特定のメディア媒体のサイトに行っておもしろい記事を探すという行動をあまりしなくなりつつあります。時間をできるだけセーブするために、価値のある記事を書いてくれる個人に比重が移っていくことは仕方がないことだと思います。

次に気になったコメントは、先ほどの点に関連することですが、「ソーシャルメディア環境の中で目にする記事は、内容がとても良いから自然と自分の目に入ってくるのであり、その記事を書いたライターの名前を過去に聞いたことがあるかないかはあまり関係ない」というコメントです。

確かに個人的な実感ですが、ソーシャルメディア上で誰かが紹介している記事を読むときにそれを誰が書いたのかあまり気にしていないし、それを誰が書いたのかあえて調べるようなことは基本的にしていません。気にするのは内容のおもしろさであり、それが有名なメディア媒体の記者であろうが、個人ブログのライターであろうが同じ土俵で評価されるものになりつつあります。つまり、Ben Smithが言うように、一つのコンテンツが常にメディア媒体の枠を超えて他のあらゆるコンテンツ一つ一つと競い合っているという状況になっているのだと思います。

最後に気になったコメントは、「ある一つのコンテンツの読者や視聴者がどれぐらいになりそうか想定して、その想定される全ての読者や視聴者に届くようにすることを考えている」というコメントです。あるコンテンツの内容ごとに想定されるオーディエンスを事前に想定して、一つ一つのコンテンツが成功したかどうかを評価しているとのことです。こうしたコンテンツのトピック毎にオーディエンスを想定することによって、それらの全てのオーディンスに届けるにはどのような切り口が一番関心を引くのかというセンスが磨かれていくのだと思います。

ちなみに、以前もこのブログで紹介しましたが、このBen Smithは、BuzzFeedの編集長になる以前は米国の政治報道ニュースサイト「Politico」の人気ライターであり、政治報道というお堅い分野で記事を書いていた人気ライターが、なぜ一見畑違いのBuzzFeedに転身したのかという点が注目されていましたが、今やBuzzFeedはジャーナリズム分野で動向が大きく注目されるメディアとなっています。今後、日本での展開がどのようになるのか楽しみです。

グノシーを始めとするニュースアプリが注目されている背景について考える

実感として感じると思いますが、インターネット上でこれほどコンテンツが増えると、自分が欲しい情報や自分に関連のある情報を見つけるのがますます難しくなってきています。コンテンツで溢れる大海の中から、いかに時間を無駄にせずに、自分にとって価値のある情報を見つけやすくするかということが大きな課題であると共に、大きなビジネスチャンスになりつつあります。

グノシーニューズピックスを始め、様々なニュースアプリが注目されているのは、まさにこうした課題を解決するためであり、今後ますますニーズが高まっていくと思います。

実際、この英文記事に書かれていますように、様々なスタートアップ企業が、利用者がネット上で自分に関連のある情報を見つけやすくすることに取り組んでいます。利用者がコンテンツを読んだり視聴した時の行動をベースにして特定の情報に対する関心度を計り、それらをシグナルとして技術的に取り込むことで利用者に提供する情報の精度を高めようとしています。

例えば、一つの記事を細かいパーツに分けて、どこまでその記事が読まれたかを把握することで、ある特定の話題に対する利用者の関心度を計測して関連記事を推薦したり、利用者がフォローするFacebookやTwitterのタイムラインの中から最も話題になっている記事や最もシェアされている記事のリンクをピックアップして提供したりしています。また、利用者が関心をもつ話題に関する情報をもとに、それらの分野に詳しい情報源となる専門家やインフルエンサーを見つけやすくするサービスなどが展開されています。

多種多様な趣味嗜好をもつ利用者ごとに関連のある情報を提供するには、人間の編集力だけでは手が回らないと思いますので、ニュースを提供するメディアはこうしたテクノロジーを駆使しながら利用者に関連のある情報を提供していく方向に向かいつつあるのだと思います。

こうしたトレンドを踏まえると、Amazonのジェフ・ベゾスがワシントンポストを買収した理由が分かるような気がします。Amazonがこれまで極めてきたレコメンド機能を使って、利用者が欲しいニュースを高い精度で推薦できるメディアを構築しようとしているのではないかと思います。

また、こうした流れが意味することは、企業がターゲット利用者に有益な情報をネット上でシグナルとして提供し続けていかないと、こうしたテクノロジーが情報を拾ってくれず、企業は関心をもつ利用者に情報を届けることができないということになります。

しかも、ネット上でシグナルとなるには、SEO的な小手先の技術は通用せず、あらゆる意味で有益なコンテンツを提供していかないと読まれないし、見られないということになるのだと思います。