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消費者が求めるのは購買の意思決定をシンプルに行えること

Harvard Business Reviewの記事で興味深いリサーチ結果が紹介されていました。それによると、現在の多くのマーケターは、消費者にできるだけ多くの情報を届けるためにメッセージの量を増やすことが大切と考えているが、実際の消費者は現在のメッセージ量の多さに圧倒されて逆効果になってしまっているとのことでした。そして、消費者がマーケターに最も求めているのは、メッセージの量をやみくもに増やすことではなく、「消費者の購買の意思決定をシンプルに行わせること」であると結論づけています。

つまり、消費者がある製品を購入しようとする購買動機や購買用途をよく理解し、購入の意思決定を手助けする適切な情報を消費者の購買動機における様々なステージに合わせて提供することで、消費者の意思決定を容易にすることが最も求められているとのことでした。そして、これを実現するには、具体的に以下の3つのプロセスが大切と解説しています。

まず、一つ目が「情報を絞り込む」です。前述したように多くのマーケターができるだけ多くの情報を提供しようとするあまり、不必要な情報を提供し、消費者の購入における意思決定プロセスに混乱を与えている場合があるので、ビッグデータ分析や検索キーワードの分析などを行うことで消費者が触れる情報の中で、購買の意思決定に最も大きな影響を与える情報源に絞りこむことが大切とのことです。

二つ目が「消費者が信頼できる情報を集める」です。製品の機能やスペック情報のようなものではなく、実際に製品を購入した人がなぜその製品を購入したのか、どのような用途で使っているのかなど、できるだけ企業のバイアスが入っていない透明性のある情報を提供することによって、消費者が自分たちの状況にあてはめて検討できるようにすることが大切とのことです。

最後に三つ目が、「製品の選択肢の比較検討を容易にさせる」です。消費者は通常、製品の比較検討を行うためのリサーチに多くの時間を費やします。特に提供する製品の種類が多い場合は、消費者の特性や用途に応じて適切な製品の選択を容易にさせる情報やツールを提供することが大切とのことです。

この記事を読んで、消費者が求める情報と、企業のマーケターが消費者に提供する情報に「ずれ」があることが往々にしてあることを思い知らされました。





コンテンツを主体とした企業広報体制へのシフト

企業の広報活動を支援するなかで、ますます大事になってきていると実感することは、企業自らがコンテンツを生み出す体制を強化していくことです。企業自身がコンテンツを生み出す「編集部」として、企業が専門とする分野の市場動向、企業が扱っている製品のユニークな使い方、他社製品と比較した場合の優位性などを、読者となるユーザーが関心をもってくれるようにコンテンツを積極的に企画して、適切なチャンネルを用いてコンテンツをユーザーに届ける体制を整えていくことが、今後企業にとってますます避けられない取り組みだと思います。

実際、各企業でどのようなコンテンツマーケティングを行っているかを調べたAltimeter Groupのレポートを読むと、マスメディアだけに頼るのではなく、自社のウェブサイト、ブログ、ソーシャルメディア、動画、広告媒体、モバイルアプリなど様々なチャンネルを使って、社内の各部門を超えた全社規模の体制で従業員自らが価値のあるコンテンツを生み出していく体制を作る方向に向かっているようです。

同レポートでは、その体制をつくるためにやらなくてはいけないこととして、コンテンツ作りを広報部やマーケティング部だけが担当するのではなく、部門を超えた全社規模でコンテンツを生み出していく体制を構築していく必要があると述べています。そのために、コンテンツ作りに取り組む従業員に報償を与えるインセンティブ作りなどを、企業トップ層の理解を得ながら取り組んでいくことを薦めています。レポートの中で例に出ていたあるヨーロッパ企業では、企業トップの理解を早急に得るために経営陣をFacebook社などに訪問させて、コンテンツがリアルタイムでシェアされている現状を実際に見てもらうことで、コンテンツを主体とした組織に転換していかなくてはいけないことを理解してもらったようです。

またコンテンツのチャンネルとして、ますます重視されているのは、以下のグラフが示しているように動画やソーシャルメディア、モバイルのようです。

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今後企業が自らコンテンツを積極的に作りだしていくにつれて、私達のようなPRエージェンシーが行う仕事もコンテンツ作りのコンサルティングを主体としたビジネスに変化していかざるを得ないでしょう。Altimeter Groupのレポートの中でも言われていますが、コンテンツを一から作ることは大変なことなので、一つのコンテンツがあったら、それを様々な形で再利用していくことが大切になります。例えば、あるカンファレンスでのCEOのスピーチがあったら、長いバージョンや短いバージョンの動画を作ったり、CEOがカンファレンスで使ったプレゼンをSlideshareにアップしたり、ブログのコンテンツにしたりすることなどがあげられます。






米国のテック系メディアにアプローチする方法

今回、私が現在勤めるEdelmanの米国シリコンバレーオフィスに勤務するBrian Kempに頼んで、米国のテック系メディアにアプローチする方法についてブログ記事を寄稿してもらいました。ご参考になれば幸いです。

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日本で開発した製品・サービスを日本国内のメディアだけでなく、海外のメディアにも発表したいと考えている方が増えつつあると思います。ここでは、米国のテック系メディアにアプローチしたいと考えている方々のために、米国の最近のメディアリレーションの傾向と、米国のテック系メディアにアプローチするにはどのような方法があるのかいくつかご紹介したいと思います。

まず初めに、米国のメディアリレーションの最近の傾向について大きく3点に分けてご説明します。

1つ目が、プリントメディアからオンラインメディアへのシフトです。

多くの人々からのアテンションを得るための手段は、もはや主要メディアでの記事掲載を獲得することだけではありません。小さなブログで掲載されたストーリーが、TwitterやFacebook、YouTube、LinkedIn、Google+などのプラットフォームを通じて、多くの人々に伝えることもできます。

また、企業のウェブサイトで自ら発信するコンテンツや、企業のTwitterアカウントでTweetする内容が、これまでコンタクトできなかった記者の目にとまり、記事につながることもあります。Wall Street JournalやNew York Timesのような従来からある新聞のプリントメディアは、厳選されたニュースのみを掲載するようになり、ますます記事掲載のスペースを確保することが難しくなっています。

その一方でオンラインメディアでは、ニュースを掲載するスペースに制限がなく、寿命が短い新聞記事とは違って、ソーシャルメディアやEメールなどで多くの人々に共有されますし、検索によっていつでも読まれる可能性があります。そのため、プリント記事よりオンラインメディアの記事を獲得することのほうが重視されるようになってきています。

また、オンラインメディアの記事中では、ますますインフォグラフィックや画像、スライドショー、動画などのデジタルコンテンツが数多く用いられるようになっているため、これらのコンテンツを企業自らが積極的に作り出していくことが大切になっています。

これらの傾向については以下のスライドをご参照ください。
Authority in the Age of Overload
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2つ目が、信頼できるスポークスパーソンが、企業のトップエグゼクティブから一般社員にシフトしていることです。

これまでのメディアリレーションズでは会社のトップが信頼できるスポークスパーソンとして重要な役割を果たしてきましたが、最近では役職よりも「記者が知りたいことをよく知っているスポークスパーソン」がより重要な役割を果たすようになっています。どんなに役職が上でも記者が知りたいことが話せなければ記事化につながりません。

3つ目が、米国の記者は、より信頼性があり透明性がある真実のストーリーを求めているということです。

米国の記者は、トップエグゼクティブを取材するよりも現場に詳しい一般社員や技術者に聞いたほうが、より透明性がある真実のストーリーを取材できると考えるようになってきています。順調な時の話だけでなく、逆境の中でどのように対処したのか、それらの経験をふまえてどのように製品を改良したのかといった赤裸々なストーリーを求めています。

以上3つの点が米国におけるメディアリレーションの最近の傾向となります。

それでは、ここから具体的に米国のテック系メディアにアプローチする方法にどのようなものがあるのかご紹介したいと思います。

新製品ローンチを行う方法

米国で新製品ローンチを行う際、リーチしたいカスタマーや、記事掲載を獲得したいメディアのタイプによって様々な方法があります。日本と同じように記者発表会、ディナーミーティング、個別ブリーフィングなどを行う場合もあれば、一本のブログ記事だけで発表することもあります。最近の米国の記者は、一人でこなさなければいけない仕事量が増えており、基本的に他のメディアがカバーしないような独占的なストーリーを求めているので、多くの記者を一つの場所に集めて発表するような記者発表会は以前ほど行われなくなりつつあります。

Apple、Samsungのような大企業は、新製品の発売を開始する数週間前や、新製品の先行予約が始まるタイミングにあわせてメディア向けの記者発表会を行います。これは、消費者が新製品の発表で興奮覚めやらないタイミングで最初の売上を得るためです。製品ローンチでのプレゼンの秘訣については以下のスライドを参照してください。
記者発表会を開催する場合でも、重要なメディアの記者との個別インタビューを設定し、独占的な記事を書けるようにすることも大切です。

製品の正式発表前に、エンバーゴ(情報解禁日時)を設けて、何社かのメディアを事前に集めて解説することも行われます。エンバーゴによる情報の扱いについては、各メディアによって違いがあり、エンバーゴを記者に遵守してもらうには記者との親密な関係が重要になります。また、メディアがエンバーゴに同意する書類にサインをしたのにもかかわらず、時差の計算間違いなどで解禁時間前に記事がでてしまうこともあります。そのため、エンバーゴがどこの国のタイムゾーンで何日の何時何分に解除になるということを、できるかぎり明確に記述して時差の計算で間違えないようにすることが大切です。万が一、1人の記者がエンバーゴを破って記事を解禁時間前に公開してしまった場合は、他のメディアも同様にエンバーゴの解禁前に記事を公開してしまうことを覚悟しなければなりません。エンバーゴによる事前発表のメリットとしては、製品・サービスの正式な発表日当日に内容の濃い記事が公開されることですが、デメリットとしてはエンバーゴのサインをしてもらうのに手間がかかり、たった1社のメディアがエンバーゴを破ってしまうことで全ての努力が台無しになってしまうことです。

ベンチャー企業が革新的なテクノロジーを発表する場合

ベンチャー企業が新製品などを発表する場合は、どんなに革新的なテクノロジーであっても、従来からの長期的な記者との関係がないと、New York TimesやWall Street Journalなどの記者との取材を設定することが難しいです。そのため、ベンチャー企業が革新的なテクノロジーを発表する場合は、スタートアップ企業向けのトレードショーやプロダクトショーケースに出展するのが効果的です。例えば、「DEMO」や、「TechCrunch Distrupt」、「AllThingsD conferences」、もしくはPepcomShowstoppersが開催するイベントなどがあげられます。こうしたイベントは、イノベーティブなベンチャー企業の製品・サービスを見つけることにフォーカスしているので、これらのイベントを取材するために訪れた有力メディアの記者やキーパーソンとの関係を会場で結ぶことができます。

米国のテック系記者との個別取材

米国のテック系記者は非常に忙しく、常に速報ニュースを書ける臨戦体制を備えていなければならないため、個別取材を設定することはハードルが高いといえます。最初のステップとして、記者にストーリーを簡潔に伝えるピッチレターを書きます。記者が対象とする読者の立場にたって最も価値のある情報を短い文章で伝えなければなりません。記者が関心を持ち、取材に結びついた場合、記者はオフサイトミーティングにでかけるほど時間に余裕がないので、基本的に記者の編集局もしくは、記者のオフィス近くのレストランなどで行うことをお勧めします。また、アポの直前や取材中に速報ニュースが入った場合は緊急に対応しなくてはいけないため、アポが突然キャンセルになることもありえます。そのような場合に備えたバックアッププランを用意しておくことも大切です。

他にも細かい点で様々な方法や注意すべき点がありますが、以上が米国のテック系メディアにアプローチする方法の概要になります。米国のテック系メディアにアプローチを考えている方に少しでもお役にたてれば幸いです。

Brian Kempの略歴
Brian Kempは、Edelmanのテクノロジー企業担当バイスプレジデントで、現在シリコンバレーに在住しています。これまで様々な分野のテクノロジー企業のPRを担当してきました。シンガポールやタイ、マレーシア、インドネシア、カンボジアなどにも在住した経験があるため、各国の特性や文化を考慮したPRの大切さを理解しています。


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