【作品#0895】デンジャラス・ラン(2012) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

デンジャラス・ラン(原題:Safe House)

 

【概要】

 

2012年のアメリカ/日本合作映画

上映時間は115分

 

【あらすじ】

 

元CIAのトビン・フロストは南アフリカで謎の組織から命を狙われたためにアメリカ大使館に逃げ込む。彼を追っていたCIAは隠れ家「セーフハウス」で尋問することにし、そこの管理を任されているマットは彼らの尋問に立ち会うが…。

 

【スタッフ】

 

監督はダニエル・エスピノーサ

音楽はラミン・ジャヴァディ

撮影はオリヴァー・ウッド

 

【キャスト】

 

デンゼル・ワシントン(トビン・フロスト)

ライアン・レイノルズ(マット・ウェストン)

ヴェラ・ファーミガ(キャサリン・リンクレイター)

ブレンダン・グリーソン(デヴィッド・バーロー)

サム・シェパード(ハーラン・ホイットフォード)

ロバート・パトリック(キーファー)

 

【感想】

 

スウェーデン人監督ダニエル・エスピノーサにとって初の英語の映画となった。

 

どう見てもマット・デイモンが主演した「ボーン・シリーズ」丸パクリともいえる模造品。「ボーン・シリーズ」の影響は絶大なものであったが、ここまでやると潔ささえ感じる。何といっても「ボーン・スプレマシー(2004)」と「ボーン・アルティメイタム(2007)」で撮影監督を担ったオリヴァー・ウッドを本作の撮影監督に招聘しているのだ。あと配給会社がユニバーサル・ピクチャーズであることも同じである。ライアン・レイノルズの役名がマットなのもマット・デイモンから、ブレンダン・グリーソンの役名がデヴィッドなのはデヴィッド・ストラザーンから取っているのだろうな。

 

アメリカ大使館に逃げ込む展開、立体駐車場に逃げ込む展開、主人公とその恋人がラストで再会する展開は「ボーン・アイデンティティー(2002)」を、CIAの男女コンビが現地に派遣される展開は「ボーン・スプレマシー(2004)」を、屋根伝いのチェイスシーン、諜報機関の汚職を暴くオチは「ボーン・アルティメイタム(2007)」を、他にも雑踏を利用した追跡劇、主人公がネットカフェで情報収集する場面、細かいカット割り、揺れるカメラ、アクションシーンや格闘シーンの演出は特にポール・グリーングラスが監督した「ボーン・スプレマシー(2004)」と「ボーン・アルティメイタム(2007)」を思わせる。まぁ他にも探せばいくらでも見つかると思うが。

 

一応は大した実績もなく退屈な南アフリカの任務で急に大きな仕事を担うことになった主人公が組織を裏切ったと思われている男から成長を促されるという物語になっている。そのドラマ面は割と平凡なものであった。というか、この物語にマットの恋人なんて出てくる必要あるかね。

 

あと、誰がセーフハウスの場所を外部に漏らしたのかというミステリー仕立てでもある。登場人物からしてヴェラ・ファーミガ、ブレンダン・グリーソン、サム・シェパードのうちの誰かになる。ヴェラ・ファーミガはマットが裏切ったと思っており、ブレンダン・グリーソンはマットを擁護するので、ヴェラ・ファーミガが裏切者ではないかというミスリードがあるのだが、ブレンダン・グリーソンが怪しいですよというカットもちらほらあるので薄々気付いてしまう。別に伏線らしいものは何もなく、ある場面で突然ブレンダン・グリーソンが犯人ですよと観客に教えてくれる。だったら最初から裏切者が誰かを示したうえで進めても問題なかったと思う。

 

クライマックスはブレンダン・グリーソンが死んだと見誤ったトビン・フロストが撃たれて死亡し、マットがブレンダン・グリーソンを撃ち殺す。ここでトビン・フロストが撃たれて死んでしまうと、ブレンダン・グリーソンが死んだかどうかちゃんと確認しなかったうっかりさんという感じに見えてしまう。本作のキャラクター設定を考えると一番ダメなオチじゃないか。クライマックスなんだし、もう少し納得感は欲しかったな。

 

ラストはトビン・フロストから預かった諜報機関の不正情報をマットがマスコミにリークし、不正を働いた奴らは処分されますよというオチになっている。マットは別に正義感がなかったわけでもないだろうし、組織に染まって汚職を見逃していたわけでもない。だから「ボーン・シリーズ」みたいに洗脳されていた主人公が目を覚まして汚職をリークするところにカタルシスはあったのと違い、本作だと映画的にごくごく普通の終わり方になってしまっている。中途半端に真似事をするからなんかしっくりこないことになるんだろうな。

 

そのしっくりしない最大の要因はキャスティング。どう見てもライアン・レイノルズがミスキャスト。今までろくな経験も積めないまま退屈な任務をしているCIAの職員という意味ではなしではないが、やはり彼はコメディ演技で魅力が最大限に発揮される俳優だ。「グリーン・ランタン(2011)」という大失敗の後なので、彼なりに模索していたころなのだろうか。当時の多くの若手俳優が候補に挙がっているのだが、ライアン・レイノルズより適任の俳優はいたように思う。

 

結局、「ボーン・シリーズ」はマット・デイモンが主演したからこそ成功したのであって、ジェレミ・レナーが主演した「ボーン・レガシー(2012)」が失敗したのはマット・デイモンが主演じゃないからだ。「ボーン・シリーズ」もどきをマット・デイモン以外の俳優で作ったって二番煎じ以外の何物でもないよ。

 

 

 

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【配信関連】

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├オリジナル(英語/アフリカーンス語)

 

【ソフト関連】

 

<BD>

 

言語

├オリジナル(英語/アフリカーンス語)

├日本語吹き替え

映像特典

├アクションシーンの制作

├メイキング

├格闘シーンの制作

├撮影の舞台裏

├CIAについて

├ケープタウンでの撮影