【作品#0493】ボーン・レガシー(2012) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

ボーン・レガシー(原題:The Bourne Legacy)


【概要】

2012年のアメリカ映画
上映時間は135分

【あらすじ】

アウトカム計画の参加者であるアーロン・クロスはアラスカで訓練を実施していた。そんな中、CIA内部からの告発で暗殺者養成計画が暴露されようとしていた。国家調査研究所のリックはアウトカム計画を隠匿するため、参加者を次々に殺し始めていた。

【スタッフ】

監督はトニー・ギルロイ
脚本はトニー・ギルロイ/ダン・ギルロイ
音楽はジェームズ・ニュートン・ハワード
撮影はロバート・エルスウィット

【キャスト】

ジェレミ・レナー(アーロン・クロス)
レイチェル・ワイズ(マルタ・シェアリング)
エドワード・ノートン(リック・バイヤー)
ステイシー・キーチ(マーク・ターソ)
オスカー・アイザック(アウトカム計画工作員)

【感想】

ボーンシリーズ3作目「ボーン・アルティメイタム(2007)」の後、4作目の製作も計画されていたが、ポール・グリーングラスが続投しないことを表明。さらに主演していたマット・デイモンも降板を発表したことで4作目の製作は白紙となった。そこで、シリーズで脚本を担当していたトニー・ギルロイが監督/脚本を務め、前作の前後を舞台とした新たな登場人物の物語を作り上げることになった。前作以上の予算がつぎ込まれたが、全世界で2億7千万ドルと、前作より1億5千万ドル以上売り上げを下回った。また、前作まで主演したマット・デイモンは写真のみの出演で、ジョアン・アレン、デヴィッド・ストラザーン、アルバート・フィニー、スコット・グレンらも少ない出番で出演している。

前作「ボーン・アルティメイタム(2007)」でパメラ・ランディが「ボーンは氷山の一角」と言っていたのだから、その裏であらゆる計画が遂行されていたというのは決してリアリティがないわけではないので、前作と同じ時間軸で「こんなことも起こっていました」という展開自体は受け入れられる。ただ、今までのジェイソン・ボーンがデヴィッド・ウェッブという自己を捨てさせられ、ある種の洗脳を受けていたという人の内面をえぐる内容だったことを考えると、本作の薬を使って肉体的にも精神的にも能力が向上するという話はかなり突飛に感じるし、それによる苦悩などはほとんど描かれていないと言って良い。また、薬を求めてフィリピンまで行く展開もかなり強引に映る。

また、状況説明を兼ねた序盤の展開は映画としてなかなかエンジンのかからない感じである。とはいえ、それなりの情報量があるのでうまく処理しきれていない感じもする。アラスカでの訓練や工作員との交流などのシーンもまるで必要性を感じない。結局、回想シーン以外でアーロン・クロスとシェアリング博士が出会うのは映画が始まってから1時間近く経過してからである。

それに、かつてアーロン・クロスを育てたリックは本作では前作で言うところのノア・ヴォーゼンに近しい役割だが、ただ指示を出す展開ばかりで、終盤には尻切れトンボの如く登場しなくなってしまう。それに、前作ボーンの手柄でCIA内部の告発に成功したかに見えた結末だったのに、パメラがFAXした情報は世に出ることなく、パメラが訴えられることになるって前作自体を否定しかねないものになっていないか。前作まで脚本に携わったトニー・ギルロイが前作の功労者といえるキャラクターをを貶めるような展開にするのは納得しがたい。このシーンのためだけに演じたジョアン・アレンが不埒でならない。

アクションシーンについては、確かにそれなりに見応えはある。格闘シーンのスピード感や頭を使ったアクションは前作までの流れを引き継いでいると言える。ただ、前3作品でプロ同士の格闘をそれなりの尺で描いていたのに本作ではそれがないのが不満である。できればラストでアーロン・クロスと工作員での格闘シーンが欲しかったところである。それ以外には屋根伝いのチェイスやバイクチェイスなど前作の焼き直しと取られかねないものもあるが、本作ならではの迫力のあるシーンがあるのも確かではある。

映画全体のルックとしては、前2作品で監督したポール・グリーングラスのように常にカメラが揺れ続けるようなことのないいわゆる「普通」の撮り方をしている。また、前3作品で音楽を担当したジョン・パウエルからジェームズ・ニュートン・ハワードに変わり、それっぽい音楽として前作と同じ世界の出来事である雰囲気は作り出している。さらに、主題歌を担当していたMobyが「Extreme ways」を新たなバージョンとして提供しており、イントロが流れるだけで映画自体がカッコよく締まるんだからそれは凄い。ラストの映像的広がりと美しさ、音楽の鳴り出すタイミングなどは非常に美しい。

映画トータルで考えると、ボーンシリーズの人気にあやかって無理やり作るべきではなかったと感じる作品。ジェイソン・ボーンが登場しないのに「ボーン・レガシー」というタイトルまで付けるなんて事前情報を知らない人からしたら詐欺だと思う。抽出すれば良い場面があるのは確かだが、どう考えても失敗作。

【関連作品】

 

「スナイパー/狙撃者(1988)」…同一原作のテレビ映画。ソフトタイトルは「狙撃者/ボーン・アイデンティティ」

ボーン・アイデンティティー(2002)」…シリーズ1作目

ボーン・スプレマシー(2004)」…シリーズ2作目

ボーン・アルティメイタム(2007)」…シリーズ3作目

「ボーン・レガシー(2012)」…シリーズ4作目

ジェイソン・ボーン(2016)」…シリーズ5作目

 

 

 

取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【配信関連】

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├オリジナル(英語/タガログ語/韓国語/ロシア語)

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├日本語吹き替え

 

【ソフト関連】

 

<BD>

 

言語

├オリジナル(英語/タガログ語/韓国語/ロシア語)

├日本語吹き替え

音声特典

├トニー・ギルロイ(監督/脚本)、ダン・ギルロイ(脚本)、ジョン・ギルロイ(編集)、ロバート・エルスウィット(撮影)、ダン・ブラッドリー(第二班監督)、ケヴィン・トンプソン(美術)

映像特典

├未公開シーン

├メイキング・オブ・「ボーン・レガシー」

├アーロン役への挑戦

├ロケ撮影の裏側

├人間 vs. オオカミ

├オオカミのシーン(テスト映像)

├アーロンとマルタ

├バイクでのチェイスシーン

 

<4K ULTRA HD+BD>

 

収録内容

├上記BDと同様