【作品#0780】ダイヤモンド・イン・パラダイス(2004) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

ダイヤモンド・イン・パラダイス(原題:After the Sunset)

【概要】

2004年のアメリカ映画
上映時間は97分

【あらすじ】

泥棒のマックスとローラはバハマで引退後の優雅な生活を送っていた。彼らを追っていたFIB捜査官のスタンはマックスの前に現れ、パナマに停泊する豪華客船にダイヤモンドが展示されることをわざわざ知らせに来る。

【スタッフ】

監督はブレット・ラトナー
音楽はラロ・シフリン
撮影はダンテ・スピノッティ

【キャスト】

ピアース・ブロスナン(マックス)
サルマ・ハエック(ローラ)
ウディ・ハレルソン(スタン・ロイド)
ナオミ・ハリス(ソフィー)
ドン・チードル(ヘンリー・ムーア)

【感想】

「007」シリーズで5代目ジェームズ・ボンドを演じていた彼のシリーズ卒業後初出演作品。当時の新鋭ブレット・ラトナー監督に豪華キャストが集結したが、興行的にも批評的にも失敗してしまった。

007/ダイ・アナザー・デイ(2002)」の製作時にピアース・ブロスナンはブレット・ラトナー監督を推薦したが、バーバラ・ブロッコリの反対により実現せず、ピアース・ブロスナンのシリーズ卒業後初作品で彼らはタッグを組むことになった。また、ソフィーを演じたナオミ・ハリスは後に「007/スカイフォール(2012)」から3作品連続でミス・マネーペニー役を演じることになる。

ブレット・ラトナー監督は「ラッシュアワー」シリーズでタッグを組んでいたジャッキー・チェンとクリス・タッカーにカメオ出演してもらおうとしたが断られている(おそらく本作でレックス・リンとミケルティ・ウィリアムソンが演じる警官役だろう)。また、「レッド・ドラゴン(2002)」でタッグを組んだエドワード・ノートンが冒頭のバスケットボールの試合会場の場面でカメオ出演を果たしている。

冒頭の盗みの場面でピアース・ブロスナン演じるマックスは、盗みを成功させるもののFBI捜査官スタンの放った銃弾を肩に喰らってしまう。その後舞台をバハマに移してマックスと盗みの相棒にして恋人のローラとの引退生活の場面となる。ただ成功して引退するわけではない。マックスは一発喰らっている。3つのダイヤモンドのうち2つを盗んで引退したのに目の前に最後のダイヤモンドがあると知れば盗みたくなる。まさにピアース・ブロスナンの「007」シリーズへの未練が見て取れる。

ピアース・ブロスナンはボンド引退作「007/ダイ・アナザー・デイ(2002)」のことを嫌っており、次回作として企画されていた「007/カジノ・ロワイヤル(2006)」への出演も意欲を示していたが、ボンドの年齢設定に合わないとしてシリーズからの引退となってしまった。それでも「007/ダイ・アナザー・デイ(2002)」は大ヒットを記録した。そんなピアース・ブロスナンが引退した泥棒が再び泥棒に手を染める映画に出演することになったのだ。マックスの喰らった一撃はまさに「007/ダイ・アナザー・デイ(2002)」の失敗のことだろう。

ちなみに、この一連のシークエンスでマックスは車をリモコンで操縦しているが、「007/トゥモロー・ネバー・ダイ(1997)」でも同じようなことをするシーンがあるのを思い出す。

その後はバハマの南国気分を味合わせる撮影と音楽でリゾート気分を堪能させつつ、島の重鎮ヘンリー・ムーア、地元警察のソフィー、ダイヤモンドを載せた豪華客船がパナマにやってくると伝えに来るFBI捜査官のスタン・ロイド等の様子も描いていく。

結果的にヘンリー・ムーア関連の場面はあまり必要だったと思えない。彼の手下がダイヤモンドを盗みにやってくることで警備の隙をついたマックスが盗みを成功させるのだが、彼の手下が盗みにやってくる日時までは読めないだろう。10時を過ぎたら老いぼれ警備員になるとマックスはヘンリー・ムーアに伝えていたが10時ピッタリに盗みに来るとも限らない。こんな偶然に頼った筋書きになるくらいなら、マックスが単独で事を運ぶ筋書きに変えるべきだった。

それから、スタン・ロイドがへっぽこFBI捜査官であるなら、地元警察のソフィーこそ映画内では「ちゃんとした」キャラクターであるべきだ。確かにほとんどの場面で彼女は「ちゃんと」しているのだが、スタン・ロイドと関係を持つのは違うな。スタンから惚れられるがプロ意識を維持するか、もしくはこのキャラクター自体を削除しても良かった。

また、スタン・ロイドも良いキャラクターをしているのにオチの場面で首を傾げることになる。彼はFBI捜査官ながらマックスを捕まえられずに精神をきたし職務停止中であるという設定だ。それでも自費でバハマまでやってきたのだから出し抜かれたマックスへの復讐が目的のはずだ。確かにマックスにダイヤモンドを盗まれるのだが、騙されたふりをして隠し場所をこっそり調べていたスタンは逆転に成功する。これはこれでありなのだが、スタンはラストでリムジンに乗って楽しそうにしているのだ。これはマックスを出し抜いたことへの喜びよりも、金持ちになれるという喜びに溢れているように見える。ここはあくまでマックスへの復讐を完了させ、停職中だったFBI捜査官に戻れるという喜びに徹するべきだろう。

 

それから、マックスとローラのドラマもキチンとオチが付いたとは思えない。ローラはマックスが再び盗みの仕事をやることに反対して彼の元を去ろうとした。そしてマックスはローラを騙して再び盗みの仕事をしてしまった。それでも誓いの言葉をノートに書いたとして甘い言葉を囁やけば二人はあっさり仲直りしてしまう。この二人のドラマとしてはかなり弱い。

かなり弱点のある映画だが、決して嫌いではない一本。セクシーを全面に押し出したサルマ・ハエックも、ポンコツに見せかけて有能だったキャラクターを演じたウディ・ハレルソンも見事にハマっていた。特に盗聴しているシークエンスのオチは笑わせてもらった(ただ、強いて言うならあの場面は終始スタン視点であれば尚のこと良かった)。

【関連作品】

泥棒成金(1955)」…アルフレッド・ヒッチコック監督のサスペンスコメディ。本作の中で主人公がレンタルしたDVDがこの映画である。



取り上げた作品の一覧はこちら



【配信関連】

<Amazon Prime Video>

言語
├オリジナル(英語)


【ソフト関連】

<DVD(2枚組)>

言語
├オリジナル(英語)
├日本語吹き替え
映像特典(Disc2)
├オリジナル劇場予告編
├オリジナルTVスポット6種
├インタビュー(ピアース・ブロスナン、サルマ・ハエック、ブレット・ラトナー監督ほか)
├VFX:特殊効果シーン
├NGシーン
├未公開シーン※オーディオコメンタリー:ブレット・ラトナー(監督))、ボー・フリン(プロデューサー)、マーク・ヘルフリッチ(編集)


<BD>

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├オリジナル(英語)
├日本語吹き替え
映像特典
├オリジナル劇場予告編