【タイトル】
泥棒成金(原題:To Catch a Thief)
【概要】
1955年のアメリカ映画
上映時間は106分
【あらすじ】
かつては「キャット」と呼ばれる宝石泥棒だったロビーは、戦争での活躍による恩赦で自由気ままな生活を送っていた。ある日、その「キャット」と同じ手口の宝石泥棒が現れ、ロビーが真っ先に疑われる。
【スタッフ】
監督はアルフレッド・ヒッチコック
音楽はリン・マーレイ
撮影はロバート・バークス
【キャスト】
ケイリー・グラント(ジョン・ロビー)
グレース・ケリー(フランシー)
【感想】
ヒッチコック映画では3度目の出演で、本作公開の翌年にモナコ后妃となるグレース・ケリーは、本作のロケで使われた場所の近くで1982年に事故により亡くなっている。また、アカデミー賞では3部門にノミネートされ、撮影賞(カラー)を受賞している。
あらすじにも記載したように主人公のジョン・ロビーは、かつて宝石泥棒をしていた男だが、戦時中に刑務所を抜け出しながらもレジスタンスとして活動した功績が認められて恩赦が与えられ、自由気ままな生活を送っているという設定だ。さらに、最後に盗むをしたのも15年前ということになっている。そんな中、ロビーと同じ手口の宝石泥棒の事件が多発する。
そして、警察がロビーの住む家にやってくるのだが、ロビーは警察がやってくると着替えると言って部屋に戻り、警官が部屋を開けようとすると銃が発射される細工をして、裏口から車を使って逃走する。ロビーが最後に盗みをしたのは15年前であるし、事件は多発していたのだからいずれかはアリバイくらいあっただろう。にもかかわらず、ロビーは警察に何も言わずに逃走する。これでは警察に「俺は犯人だ」と言っているようにも見えてしまう。また、銃の発射音が聞こえたからと言って5人もいた警官が全員ロビーの家の中に入ってくるなんてまるで無能である。警察が無能であるとかそういう描写はヒッチコック映画では割とお馴染みである。
やっぱり映画の出発点の時点でどうも入り込みづらい。ロビーが警察に協力すらせずに逃げる判断をしたこと、警察が比較的ロビーが犯人だと決めつけていることなどは前段階としてワンシーンくらい入れておいたほうが納得できたと思う。例えば、ロビーが警察からマークされており、警官と折り合いが悪いなど。
警察から逃れたロビーはかつての仕事仲間を訪ねて、真犯人探しを始めることになる。保険屋のヒューソンから高額な宝石所有者のリストをもらい、その筆頭であるスティーヴンス親子に接近する。宝石泥棒として有名なロビーがいくら真犯人を探すためとはいえ、その被害に遭う可能性の高い人物に接触するのはどうも賢いとは思えない。その現場を見られたら真犯人が行動しづらくなるはずだ。しかも、ロビーは警察から追われる身だったわけで、犯行が行われるであろう現場周辺を堂々とうろつくのもなんか違うな。まして、その黒幕はロビーが最初に頼るベルターニであり、彼の経営するレストランの給仕フサールの娘ダニエルが真犯人だったのだから。
さらには、宝石泥棒の事件が多発して警察が警戒している中で、真犯人のダニエルが最後の場面の犯行に及ぶのも理解し難い。犯人がスリルを味わっていたわけでも、追いつめられていたわけでもない。そして、映画の最後にベルターニが画面内に登場しないのも具合が悪い。彼は映画的には罰を受けないといけない人物だろう。
そもそも、保険屋のヒューソンを紹介したのは黒幕ベルターニである。ヒューソンの行動を鑑みるに彼は黒幕がベルターニであることは知らなかった人物である。また、ベルターニはロビーのかつての仕事仲間なわけで、ロビーの実力は当然知っていたはずである。そんな彼がヒューソンを紹介すると、それは自らの首を締めることに繋がると理解できたはずであるが、なぜ彼がヒューソンを紹介するのかも振り返ると合点がいかない。
それから、その合間にロビーとスティーヴンス夫人の娘フランシーとの恋愛も描かれる。ヒッチコック映画で恋愛要素は多々登場するが、そのどれもにほとんど納得感がなく、「主演の男女だから結ばれる」という以外の要素は感じてこなかった。それはまさに本作にも言えることである。ロビーにしてもフランシーにしてもなぜお互いに惚れるのかさっぱり分からなかった。特にフランシーの側の描写は驚くほどに物足らず、「この手の映画だから」で済ますにはあまりにもおざなりだと感じた。
ただ、南フランスの陽気な雰囲気は十二分に表現されており、海外旅行へ容易く行けなかった当時の「観光映画」としての役割は十分に果たしたのではないかと思う。また、ヒッチコック映画最後の出演になったグレース・ケリーだが、映画としても女優の魅力としても「裏窓(1954)」の圧勝だった。
取り上げた作品の一覧はこちら
【配信関連】
<Amazon Prime Video>
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├オリジナル(英語)
【ソフト関連】
<DVD>
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├オリジナル(英語)
├日本語吹き替え
映像特典
├脚本とキャスト
├メイキング
├アルフレッド・ヒッチコックを語る
├フォト&ポスターギャラリー
├イーディス・ヘッド(衣装デザイナー)について
├オリジナル劇場予告編
<BD>
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├オリジナル(英語)
├日本語吹き替え
映像特典
├ヒッチコックという人物:「泥棒成金」の魅力
├製作の裏側:ケーリー・グラントとグレース・ケリー
├劇場用予告編