【作品#0682】危険な情事(1987) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

危険な情事(原題:Fatal Attraction)

【概要】

1987年のアメリカ映画
上映時間は119分

【あらすじ】

妻子ある弁護士のダンはある日知り合った女性アレックスと関係を持ってしまう。ダンは一夜限りの関係だと思っていたが、アレックスはダンに惚れてしまい執拗に付きまとうようになる。

【スタッフ】

監督はエイドリアン・ライン
音楽はモーリス・ジャール
撮影はハワード・アザートン

【キャスト】

マイケル・ダグラス(ダン)
グレン・クローズ(アレックス)
アン・アーチャー(ベス)

【感想】

1,400万ドルの予算に対し、全世界で3億2千万ドルの大ヒットを記録した。また、受賞こそならなかったがアカデミー賞では作品賞含む計6部門でノミネートされた。

女性のストーカーに付きまとわれる映画といえば、クリント・イーストウッドの監督デビュー作にして主演も兼任した「恐怖のメロディ(1971)」を思い出す。本作に登場するカセットテープに「Play Me」と書かれているが、「恐怖のメロディ(1971)」の原題は「Play Misty For Me」である。

幸せな家庭を持つダンがアレックスと関係を持ってから事態は急転していく。アレックスの執拗な誘いについダンは連日アレックスと遊んでしまう。ベッドシーンのみならず、飼い犬と二人で戯れるシーンまでまるでラブシーンのごとくエネルギッシュに描かれている。

ダンはアレックスとはそれきりと考えていたが、アレックスの方がどんどん燃え上がっていく。家に電話をかけたり、職場に現れたりとその行為はどんどんエスカレートしていき、手首を切ったり、車を故障させたり、そしてついにはアレックスが妊娠したことが発覚する(というか避妊していなかったんかい!?)。どう考えてもダンが悪いのだが、アレックスの行為がエスカレートしていく様と、それに合わせたグレン・クローズの演技が見事でどんどん目が離せなくなる。

そのアレックスの素性はちょっとだけ明かされるのだが、これくらいなら何も分からぬ存在のほうが良かった気はする。アレックスはそれなりにいい暮らしをしてそうだし、学もあるようだ。美人だし、社交性もある彼女がなぜダンにあそこまで惚れ込んでしまったのか。同じように男性に惚れ込んでは、いわゆる「重い」付き合いをして、その度に壮絶な別れを繰り返していたのだろうか。そういう思いを巡らせるのは楽しい。

なかなか証拠の残らぬアレックスの犯行に痺れを切らしたダンは警察に相談するが、相手が手を出してくる現場を押さえなければならないと言われてしまう。これは「恐怖の岬(1961)」やそのリメイク「ケープ・フィアー(1991)」あたりを思わせる。

最後には正当防衛とはいえ自分の妻を殺人者に仕立て上げてしまった。ラストには3人が笑顔の家族写真が映るのだが徐々にフェードアウトしていく。もうあの頃の笑顔をこの家族が取り戻すことは不可能だろう。

こういった「魔が差した」というやつには当時の多くの男性(もしくは女性)にとって思い当たる節があったであろうから、ここまでヒットもしたのだと思う。これほどまでの恐怖を描いた作品が大ヒットしても、人々は「自分は大丈夫だ」とか「人生一度きりだ」とか考えて浮気したり不倫したりを続けている。当時の人々への「劇薬」にはなったかもしれないが、「治療薬」にはならなかったのだろう。とはいえ、今でも浮気や不倫が当たり前に存在するからそこまで古びてもいないという、非常に心苦しいところ。

男女関係を描くことの多いエイドリアン・ラインにとっては、割とオーソドックスな物語にも見えるが、グレン・クローズというとんでもない役者を起用できた時点で映画としては勝利と言えよう。もちろん、マイケル・ダグラスもアン・アーチャーも良かったが。

ただ、マイケル・ダグラスのキャスティングは別でも良かった気はする。主導権を握っていたと思えば実は握られていたみたいな役をマイケル・ダグラスが演じることは多い。いわゆる男性的なキャラクターばかり演じてきた彼の父親カーク・ダグラスというところも影響していると思うが、本作に限ればかなりありきたりなキャスティングにも見える。もっと遊び慣れしてなさそうな見た目の俳優の方がもっともっと恐怖表現を煽ることに成功したとは思う。もちろんマイケル・ダグラスがそこまで悪いこともないのだが。

【別エンディング】

本作のDVDやBDには別エンディングが収録されている。ダンが家族と一緒にいるところへ警察がやって来て、ダンがアレックスを訪れた後にアレックスが死んでおり、ダンは殺人容疑で逮捕されてしまう。その後、ベスが発見したカセットテープを聞くと、アレックスが自殺をほのめかす発言をしており、ベスが警察署に向かうところで映画が終わるというものである。この別エンディングが始まる前にエイドリアン・ライン監督がイントロダクションを担っている。

オリジナルのエンディングにしても本作のエンディングにしても、妻子がありながら一度限りの関係だと思って関係を持った女性のアレックスを身籠らせ、そのアレックスが死ぬという結末になっている。オリジナルのエンディングは正当防衛が成立するだろう。また、別エンディングに関しても、あのテープのお陰でダンは起訴されずに済むだろう。

もちろんアレックスはどう考えてもやり過ぎなのだが、アレックスだけ死ぬ結末はちょっと男性寄りにも見えてしまう結末だ。ダンは確かに怪我もしたし、社会的信用も失った。仮に離婚せずに生きていくにしてももう以前のような結婚生活を送ることは不可能だ。ある意味生地獄ではあるが、ダンが生き残る結末にするのなら、ベスがカセットテープを見つける別エンディングではなく、ベスがカセットテープを見つけることの出来ないエンディングの方が良かった気はする。

【音声解説】

参加者
├エイドリアン・ライン(監督)

監督のエイドリアン・ラインによる単独の音声解説。主人公の住むアパートは監督にとっての前作「ナインハーフ(1985)」でも使用していたという話、子役のキャスティング、悪女役のイメージのなかったグレン・クローズは本作に合わないだろうと当初考えていた話、ラブシーンでの工夫、前後の繋がりが不自然になってでも役者の演技を優先させたカット、予算とスケジュールの関係で断念した場面の話、誰が物語の決着をつけるか、グレン・クローズが風呂場で沈められる場面のために訓練を受けた話とその場面で白いコンタクトレンズを使ったことを後悔した話などしてくれる。



取り上げた作品の一覧はこちら



【配信関連】

 

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├オリジナル(英語)

 

【ソフト関連】

 

<DVD>

 

言語

├オリジナル(英語)

音声特典

├エイドリアン・ライン(監督)による音声解説

映像特典

├フォーエバー「危険な情事」
├リハーサル風景
├「危険な情事」現象
├エイドリアン・ライン監督が紹介するもうひとつのエンディング
├製作の舞台裏
├劇場予告編

 

<BD>

 

収録内容

├上記DVDと同様

 

<4K Ultra HD+BD>

 

収録内容

├上記DVDと同様