【タイトル】
フォーン・ブース(原題:Phone Booth)
【概要】
2002年のアメリカ映画
上映時間は81分
【あらすじ】
やり手の宣伝屋であるスチューは、浮気相手のパムへ公衆電話から連絡するのを習慣にしていた。電話を終えるとすぐにその公衆電話のベルが鳴り、受話器を取ると聞き知らぬ男が自身の事情をすべて知っており、電話ボックスから出るなと指示される。
【スタッフ】
監督はジョエル・シューマカー
脚本はラリー・コーエン
音楽はハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
撮影はマシュー・リバティーク
【キャスト】
コリン・ファレル(スチュー)
キーファー・サザーランド(電話の男)
フォレスト・ウィテカー(レイミー警部)
ラダ・ミッチェル(ケリー)
ケイティ・ホームズ(パム)
【感想】
コリン・ファレルにとってハリウッド初主演作となった「タイガーランド(2000)」でタッグを組んだジョエル・シューマカーとの2度目のタッグ作品。また、キーファー・サザーランドはジョエル・シューマカー監督作品には「ロスト・ボーイ(1987)」「評決のとき(1996)」に続く3度目の出演となった。10日程度で撮影を完了した本作は1,300万ドルの予算に対し、約1億ドルを稼ぎ出すスマッシュヒットを記録した。
脚本を担当したラリー・コーエンは1960年代に本作のアイデアを思いついていたが、男が電話ボックスを離れられない理由を思いつかないでいたところ、1990年代に入ってスナイパーのアイデアを思いつき映画化に至った。また、ラリー・コーエンは本作の2年後に「セルラー(2004)」で同じく電話をモチーフにしたサスペンス映画の脚本を書いている。
本作の悪役キーファー・サザーランドは本作と同時期にリアルタイム進行型のTVシリーズ「24」に出演しており、本作も同様にリアルタイム進行型である。また、分割画面の使用、電話の使用、製作会社が20世紀フォックスであるなど共通点は多い。
ニューヨークでもその数が減りつつあった電話ボックスを使ったアイデア一発もの。21世紀の幕開けに、前時代的な公衆電話とその普及が急激に進んでいった携帯電話。その両者が確実に存在する時代だからこそ作られた作品で、あと10年遅ければリアリティに欠けた内容になってしまっていただろう。
公衆電話にかかってきた電話を取ったことでスチュは電話の男から身ぐるみをはがされ、自分が嘘ばかりついて来たことを周囲の人間、それから取材に来たカメラに向かって話さなければならなくなる。多くの映画で道を外した主人公が改心するという内容は描かれてきた。中には「どうせまた道を踏み外すよ」と思ってしまうものがあるが、さすがにここまでの思いをして、全国に顔が晒されたらもう同じ過ちは繰り返せないだろう。その意味では主人公に対してかなりきつく当たっている映画と言える。また、嘘をついたり自分を大きく見せたりすることは多くの人に思い当たる節があるからこそ主人公に感情移入することもできる。
また一方で、現場に現れた妻のケリーは夫の不貞行為を知っても夫への想いは変わらずに事件解決に向けて懸命に動いてくれる。この事件が解決した後にケリーがスチュに対してどう向き合うかは分からないが、少なくともこのケリーというキャラクターならスチュが嘘つきで見栄っ張りであることは見抜けたはずだと思う。ただのチンピラ程度のスチュに対して、美人で聡明で理解ある妻という設定はちょっと甘い気もする。夫婦関係は冷めているとかそっちの方がリアリティがあったし、サスペンスをより生み出せたのではないかとも思える。
さらに、不倫相手になってしまっていた女優の卵パムも現場に駆け付けると心配そうにスチュをただ見守るしかない。自分は騙されていたというのに怒ることもなくいるのもリアリティに欠けるところである。特にこの2人の女性キャラクターは主人公に対してはっきり言って甘すぎる。スチュは公衆の面前でこの2人から罵詈雑言を浴びせられたって何も言えない立場であるはずなのに、この2人はスチュを全く責めることはない。この辺りは主人公に対して甘いなと思ってしまうところである。
ラストでスチュは警察の撃ったゴム弾に倒れ、スチュを狙っていた電話の男は首を切って自殺を図ったとされる。スチュと妻のケリーはその男の顔を見るが、その男はスチュが公衆電話を使い始めてすぐにピザを届けに来た男であった。この男が事件の犯人として警察は片付けるだろうが、スチュが救急車の中で意識がもうろうとする中、あの電話の男が姿を現し、実は犯人は別にいたことが分かって映画は終わる。
この電話の男がお金でピザを公衆電話まで届けさせ、その後捜査の矛先が自分に向ったところでこの男を殺して逃走したのだろう。それは警察の捜査が自分に及ばないようにするための手段だというのは理解できるが、警察が捜査すれば、電話をしてきた男が彼でないことはすぐに分かるはずだ。それでも電話の男はこの男を生贄の如く殺す必要があったのだろうか。それは射殺されたレオンにも言えることだ。この二人を殺してまでスチュを改心させる必要があったのだろうか。
悪事を働く男を見つけては改心させ、また改心しなければ殺すという必殺仕置人みたいな感じだが、周囲に犠牲者を出してまでやることなのか。深く考える必要はないかもしれないが、この電話の男のモチベーションがやや掴みづらい。もう少しキャラクターに深みがあっても良かったとは思う。
とはいえ、実質75分程度にまとめられた本作は文字通りあっという間に終わる。公衆電話という1か所を舞台にしたスリラーとしては申し分ないだろう。キャストもそれぞれがインパクトを残し、音だけだからこその恐怖もライフルの弾を装填する音でしっかり伝わった。
【音声解説】
参加者
├ジョエル・シューマカー(監督)
監督のジョエル・シューマカーによる単独の音声解説。映画化までの道のり、僅か10日程度の撮影期間、メジャーキャストからマイナーなキャストまでの印象、キーファー・サザーランドとの付き合いとキャスティング、音楽への拘りなどについて話してくれる。
【関連作品】
「ザ・エージェント(1996)」…ケイティ・ホームズ演じる女優志望のパムが稽古でこの映画でレネー・ゼルウィガーが演じたキャラクターを演じていると話している。ちなみに、この映画で主演しているトム・クルーズと本作のケイティ・ホームズは後に結婚している。
取り上げた作品の一覧はこちら
【配信関連】
<Amazon Prime Video>
言語
├オリジナル(英語)
【ソフト関連】
<DVD>
言語
├オリジナル(英語)
├日本語吹き替え
音声特典
├ジョエル・シューマカー(監督)による音声解説
映像特典
├メイキング・オブ・「フォーン・ブース」
├オリジナル劇場予告編
<BD>
言語
├オリジナル(英語)
├日本語吹き替え
音声特典
├ジョエル・シューマカー(監督)による音声解説
映像特典
├予告編集