【作品#0674】ミッション:インポッシブル/デッドレコニングPART ONE(2023) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

ミッション:インポッシブル/デッドレコニングPART ONE(原題:Mission Impossible: Dead Reconing Part One)

【Podcast】

Podcastでは、作品の概要、感想などについて話しています。

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【概要】

2023年のアメリカ映画
上映時間は163分

【あらすじ】

世界の秩序を崩壊しかねない二つの鍵を巡り、イーサン・ハントは空港で鍵を盗もうとしたグレースや前作に登場したホワイト・ウィドウらと攻防を繰り広げる。

【スタッフ】

監督はクリストファー・マッカリー
音楽はローン・バルフェ
撮影はフレーザー・タガート

【キャスト】

トム・クルーズ(イーサン・ハント)
ヘイリー・アトウェル(グレース)
イーサイ・モラレス(ガブリエル)
ヴィング・レイムス(ルーサー)
サイモン・ペッグ(ベンジー)
レベッカ・ファーガソン(イルサ)
ポム・クレメンティエフ(パリス)
シェー・ウィガム(ブリッグス)
ヘンリー・ツェニー(キトリッジ)
ケイリー・エルウィス(デリンジャー)

【感想】

「ミッション:インポッシブル」シリーズの7作目。キトリッジを演じたヘンリー・ツェニーは「ミッション:インポッシブル(1996)」以来となる27年ぶりのシリーズ出演となった。また、グレッグ・ターザン・デイヴィス、チャールズ・パーネルは「トップガン マーヴェリック(2022)」にも出演。

究極の結論は完結編となるPART TWOを見てからとなるが、進化し続けるシリーズの最新作ということでその新たな試みも見ることができた。

今回の敵は「AI」である。まさにハリウッドの俳優協会が肖像権の保護を目的にその導入に反対しており、2023年7月から米俳優組合はストライキを敢行している。ちなみに、「トップガン マーヴェリック(2022)」も戦闘機はいずれ無人運転になりパイロットが不要になるであろうという話であり、パイロットが必要であることをトム・クルーズが文字通り体を張って証明してきた。

このストライキを敢行しているタイミングでの公開は意図したものではないにしても、生身の人間だからこそというところを体を張って証明してきたトム・クルーズにとって、あるいは彼の映画製作に携わる多くの映画人にとって非常に重要なことなのだと感じる。

その「AI」を映画製作に利用するのもすべてがダメという訳ではないだろう。場合によっては「AI」に頼る方が製作コストを安くすることができるかもしれないし、環境に良いかもしれない。本作においてもイーサンは感情的になってこの「AI」を潰すとまで言っているが、周囲から落ち着くように言われる場面がある。

人間だからこそ感情的になるわけであり、周囲に仲間や友達がいるからこそその感情をコントロールすることだってできる。特に共にシリーズ皆勤のルーサーからイーサンは諫められることになる。

「今回のミッションは大変だ」と司令テープで聞かされる。それだけ大変なわけだから前後編に分かれたわけだ。また、本シリーズの中で最も主人公に対して厳しく突き放した映画とも言える。

スパイ映画なのだから騙し騙され、時に敵に主導権を握られることはあるだろう。ただ、本作は主人公が主導権を握ることはほとんどない。何ならそのうえで非常に重要なオリエント急行での場面(の前半部分)のほとんどをグレースが担っている。

それもこれも「AI」が敵となり、その「AI」が暴走して自我を持ちコントロール不能の状況になってしまう。そして、主人公は状況をコントロールできずに振り回され、時に蚊帳の外状態にまでなってしまう。それでも突然電車に飛び乗って五分の状況にまで戻すことにはなる。

また、「AI」が主人公たちの行動の先を読んで妨害してくることにより、アナログが必要になってくる。これぞCGで何でもできる時代に生身の人間のスタントを続けるトム・クルーズという存在が効いてくる。本作ももちろん多くの場面で視覚効果は使われているだろうが。そのアナログの象徴として登場するのが本作の冒頭のアクションシーンの馬だろう。ただ、コンピューターはデジタルだけでなくアナログの信号も傍受できるらしい。

その本作において重要になるのが、「2つの鍵」である。この「2つの鍵」は重要ではあるが、それらを使って何ができるかはずっと分からないまま映画は終わる。まさに、ヒッチコックら多くの映画人が利用したマクガフィンとしても取ることができるが、本作の製作スタイルを考えると、何ができるかは決めないまま撮影に入ったのだろうか。

ちなみに、シリーズ5作目「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション(2015)」から、本シリーズは見せたいアクションシーンや見せ場を優先して撮影し、後にキャラクター同士が集まって情報を整理する場面を撮影するという手法をとってきた。前作同様に、イーサンが窮地に立たされると「考えてる」と言う場面が何度かあったのはその要素を引き継いでいるからではないだろうか。

また、本作では中盤にシリーズ5作目「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション(2015)」から出演を続けてきたレベッカ・ファーガソン演じるイルサが死んでしまう。これは前作「ミッション:インポッシブル/フォールアウト(2018)」の冒頭でイーサン・ハントが取った甘い選択への裏返しだろう。

前作「ミッション:インポッシブル/フォールアウト(2018)」の冒頭では、プルトニウムを取るか、友人のルーサーを取るかの二択でイーサンは友人のルーサーを取った。それをハンリーに咎められながらも、「それが君の良いところだ」と言われていた。核爆発を未然に防げたから良かったものの、世界の危機に個人的感情を優先させてしまってはダメだという前作への回答みたいなものとして受け取った。

前作「ミッション:インポッシブル/フォールアウト(2018)」では味方に限ればハンリー(アレック・ボールドウィン)が殺された。本シリーズは作品ごとにどんどん新キャラクターを増やしていき過ぎないところが良い。

ただ、本作で一番のツッコミを入れざるを得ないところは鍵の管理が甘さである。どいつもこいつもポケットに裸で入れているだけである。ガブリエルも気付くのが遅すぎる。ここをもう少し工夫してスパイものらしい緊張感をもたらすことができたのではないかと思う。

本作の始まりはロシアの潜水艦からであり、冒頭のシーンに主人公らが登場しないのは初めてである。また、ロシア語から始まった彼らの会話が徐々に英語に移行していく。これはクリストファー・マッカリーが脚本を担当し、トム・クルーズが主演した「ワルキューレ(2008)」や、同じ潜水艦映画「レッド・オクトーバーを追え(1990)」と同じ手法である。

前作「ミッション:インポッシブル/フォールアウト(2018)」のPodcastで、本シリーズで爆弾解除をクライマックスに持ってくるのは2度目だから次回作は異なる形にしてほしいと言及した。本作のラストでは暴走する列車を止められるかという話になっている。

その「AI」が暴走した状態こそ、ブレーキの効かないオリエント急行の電車である。橋に爆弾が仕掛けられている中、電車は橋に向って突き進んでいく。何とか先頭車両と後続車両の連結を切り離し、先頭車両は川に落ちるが、後続車両は何とか橋の直前で止まりかける。あのスピードで、下り坂を走っていればどう考えても止まるはずがない。

そのうえで本作ならではの箇所も指摘しておきたい。肝心のクライマックスに主人公が途中参加するというのはシリーズで初めてである。また、狭い路地での格闘、小さな車を使ったアクションシーンなどもシリーズで初めてである。そして、後編に期待してとっておいたのだと察するが、敵のせいでチームがなかなか集まれずにバラバラになってしまう。

そして、イーサン・ハントがエージェントになる前の話まで登場する。この手のシリーズものの映画なら主人公の過去をほじくり返していくらでも話を作ることができるのにそれをせずに突き進んできた。そんな本作がついにといって良いのかシリーズ1作目以前の話に着手した。これをどう展開させるかは大変興味深い。

トム・クーパー本人によるアクションシーンの凄さは前作「ミッション:インポッシブル/フォールアウト(2018)」の方が圧倒的に凄い。もちろん本作も凄いのだが。その本作のトム・クルーズによるスタントのハイライトはラストのバイクで崖から落ちてパラシュートを開くというスタントである。このスタント映像は「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター(2022)」の上映前に特別映像として流されていた。このラストのアクションの映像をいち早く見せてしまうなんて何とも太っ腹というか自信があるというか。

また、シリーズ最終章とあってか、シリーズ過去作品へのオマージュ的なものがいくつも見られた。たとえば、鍵を手から手へ移動させる手品は「ミッション:インポッシブル(1996)」でフロッピーディスクを使ってやっていたし、終盤の列車アクションも同じだし、そしてキトリッジが再登場した。また、夜道をイーサン・ハントが走る様子も1作目を思い出す。

それから、ヒロインがただの泥棒というのはシリーズ2作目「M:I-2(2000)」のタンディ・ニュートンが演じたヒロインと同じである。そして、ブリッグスらが見るイーサン・ハントの顔写真はおそらく「M:I-2(2000)」の時のイーサン・ハントの写真であろう(髪の長さ的に)。

また、何に使うのか分からない鍵を奪い合う攻防になるが、まさにこの鍵こそマクガフィンであり、シリーズ3作目「M:i:Ⅲ(2006)」における「ラビットフット」を思わせる。

そして、ガブリエルが空港で映像に残らない「幽霊(ゴースト)」と言っていたが、これはシリーズ4作目のタイトル「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル(2011)」に繋がるし、また本作のヒロインであるグレースを演じたヘイリー・アトウェルはどこかシリーズ4作目に出演したポーラ・パットンを彷彿とさせる容姿と力強さがある。それから、砂嵐の場面が冒頭にあるが、これもこの作品で中盤のブルジュ・ハリファの場面で使われている。

また、マスクを使って誰かに成りすまそうとするが機械の故障でうまくいかない展開はシリーズ4作目から継続している。そして、マスクを使うには使うがそれを担うのが主人公ではないというのは前作「ミッション:インポッシブル/フォールアウト(2018)」のベンジーである。

それに、見せ場となるアクションシーンや緊張感あるシーンの合間に、登場人物たちが集まって情報を整理する場面があるのは、特にシリーズ5作目以降に確立した手法だと思われるが、本作はその情報整理の場面の情報量がかなり多い。字幕で見るのもちょっとしんどいくらいだった。

それから、過去の映画からの影響や思い出した映画を列挙したい。イタリアで黄色いフィアットに乗り換えてのカーチェイスになるが、イタリアで小さい車を使ったカーチェイスといえば「ミニミニ大作戦(1969)」である。ラストでバイクに乗ったイーサン・ハントが列車を追う際にジャンプするところは「大脱走(1966)」を彷彿とさせるし、ラストの列車アクションは、「カサンドラ・クロス(1976)」や「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3(1990)」、「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク(1997)」を思わせる。

キャスト面に関しては新登場のヘイリー・アトウェルは抜群に良く、初登場にしてはシリーズにとても馴染んでいた。イーライ・モラレス、ポム・クレメンティエフも抜群の存在感だった。

ブリッグスとイーサン・ハントに会ったこともないと言っていたが、イタリアのヴェニスで警察車両を挟んだ銃撃戦になった際に車のドアに隠れたイーサンと車の後方に隠れたブリッグスが意味ありげに見つめ合う場面がある。この意味ありげな間合いとブリッグスの年齢設定を考えると、このブリッグスもイーサン・ハントの過去に関連している可能性は高い。

それから次回作にはシリーズ1作目「ミッション:インポッシブル(1996)」でイーサン・ハントが宙吊りになるシーンの前後に部屋を出入りしたロルフ・サクソンが演じたウィリアム・ダンローも再登場する予定である。次回作が完結編となる予定。アッと驚くゲスト出演も期待。それからバラバラになったチームが結集して敵をぎゃふんと言わせる結末を期待。

【関連作品】
 

ミッション:インポッシブル」…シリーズ1作目

M:I-2(2000)」…シリーズ2作目
M:i:Ⅲ(2006)」…シリーズ3作目
ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル(2011)」…シリーズ4作目
ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション(2015)」…シリーズ5作目
ミッション:インポッシブル/フォールアウト(2018)」…シリーズ6作目

「ミッション:インポッシブル/デッドレコニングPART ONE(2023)」…シリーズ7作目



取り上げた作品の一覧はこちら



【予告編】

 

 

【配信関連】

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├オリジナル(英語/フランス語/イタリア語/ロシア語)

├日本語吹き替え

 

【ソフト関連】

 

<BD+DVD>

 

言語

├オリジナル(英語/フランス語/イタリア語/ロシア語)

├日本語吹き替え

音声特典

├クリストファー・マッカリー(監督)、エディ・ハミルトン(編集)による音声解説

映像特典

├アクション・スタントの舞台裏

 

<4K Ultra HD+BD>

 

言語

├上記BD+DVDと同様