【作品#0503】アバター(2009) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

アバター(原題:Avatar)


【Podcast】


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【概要】

2009年のアメリカ映画
上映時間は162分
※特別編は171分

※エクステンデッド・エディションは178分

※ジェームズ・キャメロン 3Dリマスターは166分

【あらすじ】

アルファ・ケンタウリ系惑星ポリフェマス最大の衛星パンドラには、ナヴィという先住民が暮らしていた。彼らの住む場所の地下に眠る資源を狙う人間は、人間とナヴィのDNAを掛け合わせた生命体を作り、神経を接続する捜査員を使ってナヴィと接触を図る計画をスタートさせる。元海兵隊員のジェイク・サリーは、その捜査員だった兄の急死を受け、急遽その捜査員としてパンドラに送り込まれることになる。

【スタッフ】

監督/脚本/製作はジェームズ・キャメロン
音楽はジェームズ・ホーナー
撮影はマウロ・フィオーレ

【キャスト】

サム・ワーシントン(ジェイク・サリー)
ゾーイ・サルダナ(ネイティリ)
シガニー・ウィーヴァー(グレース・オーガスティン)
スティーヴン・ラング(マイルズ・クオリッチ)
ミシェル・ロドリゲス(トゥルーディ・チャコン)
ジョヴァンニ・リビシ(パーカー・セルフリッジ)

【感想】

ドキュメンタリー映画を除けば、ジェームズ・キャメロン監督にとって「タイタニック(1997)」以来、12年ぶりとなる新作。2億3千万ドル以上の超大型予算が投入された本作は、全世界で27億ドル以上を売り上げ、当時の世界興行成績記録を打ち立てた(後に「アベンジャーズ/エンドゲーム(2019)に抜かれるが、2021年の中国での再公開で再び1位に返り咲いている)。また、アカデミー賞では計9部門でノミネートされ3部門こそ受賞したが、作品賞や監督賞は、監督の元妻キャスリン・ビグローの「ハート・ロッカー(2009)」に敗れた。

3D映画自体の歴史は古くから存在していたが、デジタル上映での3D映画が登場したのは21世紀に入ってからである。本作の大ヒットを受けて3D映画が主流になるかとも思われたが、3D映画自体は製作本数も増えてはいないし、本作以降で3D映画の代表と言える作品が思い浮かばないのが現実であろう。また、2022年の3Dリマスター版を改めて鑑賞して思ったのは、少し角度がずれると字幕がボケてしまう点と速いスピードの動きに映像の処理が追い付かない点だろう。特にジェイクが凶暴な動物から逃げ惑うシーンでは残像のあるボヤケタ映像になっている。こういったノイズがあること自体が映画や映像への没入感を薄める材料になっているのは間違いない。ただ、奥行きを感じさせる細部への拘りは見事で、草木の僅かな揺れや小さな動物や昆虫の動きまで再現されているのは素晴らしい。

ただ、人間の脳はすぐに慣れてしまうもので、最初に「凄い!」と思ったものでも数十分もすれば当たり前のものになってしまう。ジェイクがアバターに慣れるように、それからナヴィが徐々に人間らしく見えるように、そして、CG表現で誰も驚かなくなったように。これはジェームズ・キャメロンが悪いでもなく、観客が悪いわけでもない。そうなってしまうものなのだ。ただ、ジェームズ・キャメロン監督は新たな映像表現を優先して、物語はあえて単純化したと語っているのだが、物語への拘りも両立させることはできたのではないかと改めて感じる。

影響を受けた作品として公言されているように「ダンス・ウィズ・ウルブズ(1990)」からの影響は顕著だろう。ナヴィはネイティブアメリカンの如く描かれ、エイトゥカンを演じたウェス・ステューディはネイティブアメリカンであり、「ダンス・ウィズ・イルブズ(1990)」にも出演している俳優である。さらに、足に関する話も似ているし、ジェイクはそこで出会ったナヴィ族のネイティリと恋に落ちる。また、自分の仲間がここへ攻めに来ることを知りながらなかなか伝えられずにいるところや、記録を残しながらナレーション形式で物語っていくところ、髭を貯えた主人公が髭を剃るシーンや、手で自然を感じるところ、特別編やエクステンデッド・エディションに限るが動物を狩るシーンも似たような設定や展開である。他にも「ターザン」「攻殻機動隊(1995)」「もののけ姫(1998)」「マトリックス(1999)」「ロード・オブ・ザ・リング(2001)」など似た作品については多数指摘されている。

また、物語自体も非常にオーソドックスで意外性などは全くない。最初は任務でやってきた男が次第に自然に、そしてナヴィに魅せられてその任務を放棄してしまう。これはスパイ映画などでは山ほど見てきた光景である。また、企業が資源や金のために自然を破壊してしまうこと、筋肉隆々の男が武力に物を言わせて何も考えずに突き進んでいくところもステレオタイプである。

本作で一番惜しいと感じるのは、ナヴィを事実上裏切る形となったジェイクが失った信頼を取り戻すためにトルーク・マクトに乗る場面である。トルーク・マクトを乗りこなすことはナヴィにとって伝説になることであり、今までに5人しかいないなどの説明は入る。ジェイクがイクランよりも遥かに大きな体を持つトルーク・マクトをいとも簡単に乗りこなしてしまえて、かつそれを見たナヴィがあっさりジェイクを許してしまうのは尚早に感じてしまう。長い上映時間の中でもここにこそもっと時間を割くべきだったと思う。さらに、特別編やエクステンデッド・エディションでもこれに関する場面は追加が一切ない。ジェイクが動物を乗りこなす場面は鳥だけで十分で、削ることのできる場面はあったように感じる。

また、ジェイクやグレースがナヴィ族に魅せられて彼らを守りたいと思い行動するのは理解できるとして、特にトゥルーディはなぜ彼らと共に戦うことになったのかはやや理解しがたい。そもそも本作はキャラクターの色分けがはっきりし過ぎで、人間側に立つのか、ナヴィ族側に立つのかで苦悩するキャラクターはいても良かったはず。そのキャラクターはこのトゥルーディに担わせて、物語として掘り下げられたのではないかと思う。

兄の代わりで来た何もない人間が自分を取り戻していく物語。ナヴィ族から何者か尋ねられ「海兵隊員」であると答えている。しかも下半身不随となり事実上元海兵隊員であり、それでしか自分を表せない人間である。そんなジェイクがナヴィ族と関わる中で真の自分を発見する物語となっている。地球では戦争を繰り返し、環境は破壊され、自身も戦闘による負傷で下半身不随となってしまった。自分には何もなく、半人前扱いされてきた男が兄の代わりにやってきた。「馬鹿だけど心は強い」としてネイティリに、そしてナヴィ族に受け入れられる展開もやや尚早な印象は拭えない。ここでいうところの「心が強い」とは何なのか、心が強ければそれで良いのか、などどうも上辺をなぞった描写に見える。

映画的なセリフの回収としては見事で、この映画では「I love you」の代わりに「I see you」という言葉が使われている。「see」には「見る」という意味以外に、本作でも言及される「分かる」「理解する」という意味がある。最初に使われる場面ではネイティリが部外者のジェイクのことを理解した場面でネイティリが「I see you」と言って、ジェイクも「I see you」と返している。そして、ラストでネイティリに助けられたジェイクがネイティリの腕の中で目覚め、「I see you」と言って、ネイティリも「I see you」と返している。ジェイクからすれば「目が覚めて大丈夫である」という意味合い、ネイティリからすれば「これが本当のジェイクの姿だったのね。理解したわ。」という意味合いになり、命がけで助け合う絆こそ「理解」し合った者同士だからこそできるものである。

上映時間が長い割には、ご都合主義的にテンポよくすっ飛ばすところも結構ある。この映画の世界を観客に説明して理解してもらったうえでの戦いとなると長い上映時間になるのは理解できるが、その割には掘り下げが物足らないところもある。また、ナヴィ族の描写も何を食べてどんな1日を送っているのかをもう少し見せてくれても良かったのではないかと思う。

分かりやすい物語というのもジェームズ・キャメロン監督作品ではお馴染みではあるが、3DCG映画として世界興行収入記録を打ち立てた作品の割には、またアバターの特殊で絶対に忘れられない見た目の生物を描いた映画の割には、やや印象の薄い部類の作品になったのは否めない。物語の部分でもっと冒険しても良かったとは思う。

【特別編】

劇場版に9分追加した171分のバージョンで、2010年には一部劇場で公開された。「エクステンデッド・エディション」と記載のあるDVDやBlu-rayにて鑑賞可能。グレースが始めた学校の跡地に行く場面、狩りをする場面、ジェイクとネイティリのラブシーンが劇場公開版より長くなり、ツーテイの最期を看取る場面が追加されている。重要なキャラクターだったツーテイがどうなったかを明かさずに終わった劇場公開版はやはり不親切だったと感じる。

【エクステンデッド・エディション】

上記の特別編からさらに7分追加した178分のバージョン。「エクステンデッド・エディション」と記載のあるDVDやBlu-rayにて鑑賞可能。ジェイクの語りから始まるのは同じだが、すぐに地球にカットが切り替わり、車いすに乗るジェイクが酒場で喧嘩して裏口から放り出されたところでやってきた男たちから兄の死を知らされる場面が追加され、兄の遺体を確認して火葬する場面はナレーションやカットが若干異なっている。また、グレースの学校の跡地について何があったのかを語る場面が追加されている。

【アバター:ジェームズ・キャメロン 3Dリマスター】

本作の続編「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター(2022)」公開前に、映像と音響がリマスターされ、エンドクレジットに入るタイミングで次回作の映像が追加されたバージョン。上映時間は166分とあるが、劇場公開版のラストのワンカットと、次回作の4分間の映像が追加されたものである。ナヴィ族に敗れた人間が地球に帰る宇宙船に向かう列にいるパーマーが、その列からナヴィ族に向かって歩いて来て「まだ終わっていないぞ」という場面が追加されている。また、次回作の映像は3パターン用意されており、どの劇場でどの映像が流れるかは事前に明らかにはされていない。

【次回作】

前作から13年ぶりのシリーズ2作目「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」が2022年12月16日に、アメリカや日本など世界同時公開が予定されている。多くのキャストが続投し、今作で亡くなったグレースを演じたシガニー・ウィーバーも出演予定。前作並みの2億5千万ドルの予算がつぎ込まれている。上映時間は発表されていないが、以前のインタビューで3時間くらいになるとジェームズ・キャメロン監督は述べている。さらに、「アバター3」が2024年12月20日、「アバター4」が2026年12月18日、「アバター5」が2028年12月22日に公開予定となっている。「アバター3」については「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」と同時に撮影が開始され、2020年のうちに撮影はほぼ完了したとニュースになっている。さらに2022年9月には「アバター4」の撮影も開始されたことがニュースになった。

【関連作品】


「アバター(2009)」…シリーズ1作目
アバター:ウェイ・オブ・ウォーター(2022)」…シリーズ2作目



取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【予告編】

 

 

【配信関連】

 

<Amazon Prime Video>

 

本編

├劇場公開版(2D)

言語

├オリジナル(英語)

 

<Amazon Prime Video>

 

本編

├劇場公開版(2D)

言語

├日本語吹き替え

 

【ソフト関連】


<DVD>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

音声/映像特典

├なし

 

<BD>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

音声/映像特典

├なし

 

<DVD(3枚組/エクステンデッド・エディション)>

 

本編(3種)

├劇場公開版

├特別編

├エクステンデッド・エディション

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

映像特典(Disc2)

├パンドラからのメッセージ

映像特典(Disc3)

├未公開シーン集

├ドキュメンタリー:「アバター」大解剖

 

<BD(3枚組/エクステンデッド・エディション)>

 

本編(3種)

├劇場公開版

├特別編

├エクステンデッド・エディション

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

映像特典(Disc2)

├未公開シーン集

├ドキュメンタリー:「アバター」大解剖/パンドラからのメッセージ

プリ・プロダクション:メイキング映像集

映像特典(Disc3)

階層別にみるモーションキャプチャー

製作の舞台裏

アバター・アーカイブ

BD-LIVE特典

  ※下線部は上記DVD(3枚組/エクステンデッド・エディション)に収録されていないもの

 

<BD(3D)+DVD(2D)>

 

本編

├3D

├2D

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

 

【音楽関連】

 

<主題歌:Leona Lewis「I See You」>

 

 

<CD(サウンドトラック)>

 

収録内容

├14曲/79分

 

【書籍関連】

 

<The ART of AVATAR ジェームズ・キャメロン『アバター』の世界 (ShoPro Books)>

 

形態

├紙のみ

著者

├リサ・フィッツ・パトリック

翻訳者

├菊池由美/ないとうふみこ

出版社

├小学館集英社プロダクション

長さ

├108ページ