【作品#0549】アバター:ウェイ・オブ・ウォーター(2022) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

アバター:ウェイ・オブ・ウォーター(原題:Avatar: The Way of Water)


【Podcast】

作品の概要、裏話、感想などの詳細は音声配信しております。下記リンクよりアクセスください。

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【概要】

2022年のアメリカ映画
上映時間は192分

【あらすじ】

前作から10年以上が経過し、サリーはネイティリとの間に4人の子供をもうけ、平和に暮らしていた。一方、人類は新たな基地も建設し、前作戦死したクオリッチの記憶を植え付けたナヴィの姿もあった。サリーは再び人類から狙われ、森を後にして海の部族メトケイナ族の一員となる。

【スタッフ】

監督/原案/脚本/製作/編集はジェームズ・キャメロン
音楽はサイモン・フラングレン
撮影はラッセル・カーペンター

【キャスト】

サム・ワーシントン(ジェイク・サリー)
ゾーイ・サルダナ(ネイティリ)
シガニー・ウィーヴァー(キリ/グレイス)
クリフ・カーティス(トノワリ)
ケイト・ウィンスレット(ロナル)
スティーヴン・ラング(クオリッチ)
ジョヴァンニ・リビシ(パーカー・セルフリッジ)

【感想】

大ヒットした「アバター(2009)」から13年ぶりの続編。多くのキャストが続投する中、ケイト・ウィンスレットがジェームズ・キャメロン監督作品としては「タイタニック(1997)」以来となる25年ぶりの出演を果たした。

まず、本作の映像はハイ・フレーム・レート(HFR)である。映像には1秒当たり何コマの画像で構成されるかの指標としてfps(frames per second)がある。この関連で近年話題になった作品はアン・リー監督の「ジェミニマン(2019)」である。120fpsで撮影されたが、その条件で上映された日本の映画館はたったの3館だった。「アバター(2009)」も120fpsでの撮影を考えたそうだが、上映環境が整っていないことを理由にその条件での撮影は見送っている。そして、本作では動きの少ない場面では24fps、水の中など動きの多い場面では48fpsを使い分けている。これによってか、前作で動きの速い場面で映像処理が追い付いていないこともあったが、本作ではそれを感じさせないリアルなスピード感が表現されている。前作にはなかった水を使った表現によって、その表現の幅は間違いなく広がっていると感じる。さらにはアクションシーンの迫力は圧巻で、終盤のトゥルクンがスカイ・ピープルの船を襲う場面などは見事である。

では、物語はというと前作以上に中身の薄いものになっており、前作の焼き直し感が非常に強い。新たな部族の仲間入りを果たすまでの展開、ジェイクが狙われたことで仲間が危機に陥る展開などは前作と同じような話である。また、子供が自分の体験した話を周囲に信じてもらえない展開、スパイダーの父親がクオリッチであったという展開なども意外性のないどこかで見たような話になっている(というかグレイスとクオリッチが子供を作ったって前作から考えるとあり得ないんだが…まぁおそらく次回作以降で説明されることになるのだろう)。前作のインタビューで、ジェームズ・キャメロン監督は「映像を優先して物語はあえて単純化した」という趣旨の話をしていた。それで前作あれだけの大成功を収めたのだから、本作もその路線ということなのだろう。万人が見られる物語にしたことで物語としての力強さは感じられない。

映像的にもセルフオマージュとも言える場面が多いのも気にかかる。1作目で死んだキャラクターが次回作で復活するのは「ターミネーター(1984)」から「ターミネーター2(1991)」にかけての展開と同じだし、海の中の映像は「アビス(1989)」を、沈みゆく船は「タイタニック(1997)」を連想しないわけがない。また、ロアクが海で襲われる場面は、「アバター(2009)」でジェイクが襲われる場面を思わせる。せっかく新しい映像を見せようという心意気が感じられるのに、「これはどこかで見たことがあるな」と思わせたら意味がないと思ってしまう。すべて新しい映像を見せろなんて毛頭思わないが、過去の作品の何かではなく、本作ならではのものをもう少し感じさせてほしかった。

また、そもそも前作でナヴィ族を人類が攻撃したのは彼らの住む地下に莫大な資源がありそれが目当てであった。前作で人類をやっつけたナヴィ族が平和に暮らしている様子から、人類が再びあの地下資源を狙いに来ていないことが分かる。その後、クオリッチの記憶を植え付けたアバターの姿で、クオリッチはジェイクの命を狙いにやって来ることになる。また、この記憶を植え付ける話は前作でクオリッチが死ぬ前に仕込んでいた話らしいが、その実現に10年以上かかっているというのも映画の設定を考えると非現実的に見えてしまう(続編製作の遅れがそうさせたのだろうが)。クオリッチは自分が死ぬ前から意地でもジェイクを殺そうとしていたのだが、そこまで拘る理由も見当たらない。あの地下資源などどうでもよく、クオリッチの個人的な復讐の話になっている。ちなみに、資源の話は、トゥルクンの体内にある僅かな液体に入れ替わっている(これはおそらく人類が19世紀にクジラから油を採取していたことが元ネタだろう)。にしても、クオリッチ1人がジェイクに復讐するためだけにあれだけの金と時間をかける意義は全く見当たらない。

再び人類から追われることになったジェイクは家族を連れて海に暮らすメトケイナ族の一員となる。そこからは急に物語は歩みを止め、ジェイクの子供たちが海に慣れる様子をただただ映し、それまで度々挿入されていたスカイ・ピープルの様子も映されなくなる。ここで子供たちが海に適応する様子を描くこと自体に意味はあると思うが、物語が歩みを止めたことで一気に退屈になっていく(ここでトイレ休憩してほかったのかな!?)。

 

その後は、ジェイクの息子ロアクを中心に据えた、はぐれものになった青年の成長譚といった具合に物語は展開していく。そして、クオリッチらスカイ・ピープルの面々は次第にジェイクの目の前まで迫って来ることになる。

ラストの戦いが始まった時は圧巻の映像だったが、いざジェイク対クオリッチの様相を呈してくると、勇敢に戦っていたメトケイナ族の面々は急に姿を消し、後日談まで登場することすらない。個人的な因縁の話に終始したことで、ものすごく自分勝手な物語になっているように見える。家族の物語と製作者側は口を揃えて言っているが、ジェイクは「父親は家族を守るものだ」と度々口にし、家父長制の如く、母親ネイティリに出る幕はない。しかも、ジェイクは何度も家族を守ることに失敗し、長男を死なせてしまう。最後の最後にジェイクは「逃げていてはダメだ。戦わなくてはならない」と言って映画が終わる。「今更そんなことに気付いたのかよ。前作で何を学んだんだ」と言いたくなる。192分かけて描いた本作で主人公が最後に気付いたことは前作で学んだことだったのかよ…。

しかも、殺したはずのクオリッチを生かすというラストになっている。息子のスパイダーが助けはするが見方はしないという具合である。いかにも続編ありきの物語にするのはどうなんだろうか。さすがに次回作でもジェイク対クオリッチだとさすがに飽きるので、クオリッチがジェイクの味方をする展開もあるんだろうな。

登場人物を増やしたことも要因だろうが、どう考えてもこの物語を192分かけて描くというのはどうも理解しがたい。映像が売りの作品で、確かに見応えのある映像だが、割と見たことのある展開が続き、前作と同様に物語に意外性は全くない。意外性はなくとも力強い物語はいくらでも作れると思うが、中盤は完全に間延びし、万人受けを狙った薄く伸ばした話という印象だった。以降の続編もこんな感じなんだろうな。

ここで映画が始まる前の話になるが、以前より予告されていた通り、本作の上映前に「ミッション:インポッシブル/デッドレコニングPART ONE(2023)」のスタント映像が5分程流されていた。本作のようなCGまみれの映画の前に生身の超人トム・クルーズが本気の超絶スタントをする映像を入れるのはある意味残酷だなと思った。

 

大ヒットはするんだろうが、この路線でのシリーズ継続はある意味厳しいのではないか。

【関連作品】


アバター(2009)」…シリーズ1作目
「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター(2022)」…シリーズ2作目



取り上げた作品の一覧はこちら



【予告編】

 

 

【配信関連】

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├オリジナル(英語/ナビ語)

├日本語吹き替え

 

【ソフト関連】

 

<BD2枚(本編1枚+特典1枚)+DVD(本編1枚)>

 

言語

├オリジナル(英語/ナヴィ語)

├日本語吹き替え

映像特典(BD2枚目)

├パンドラの世界
├広がるパンドラの世界
├予告編 & ミュージックビデオ

 

<4K Ultra HD+3DBD(2枚)+BD2枚(本編+特典)>

 

映像特典

├上記BDと同様

 

【音楽関連】

 

<CD(サウンドトラック)>

 

収録内容

├32曲/101分