【作品#0548】グッドフェローズ(1990) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

グッドフェローズ(原題:Goodfellas)


【Podcast】


Apple Podcastsはこちら
Google Podcastsはこちら
Spotifyはこちら
Anchorはこちら
Stand FMはこちら

【概要】

1990年のアメリカ映画
上映時間は145分

【あらすじ】

少年ヘンリー・ヒルがマフィアに憧れ、その一味になって落ちぶれるまでの25年間を描く。

【スタッフ】

監督はマーティン・スコセッシ
脚本はニコラス・ピレッジ/マーティン・スコセッシ
撮影はミヒャエル・バルハウス

【キャスト】

レイ・リオッタ(ヘンリー・ヒル)
ロバート・デ・ニーロ(ジミー・コンウェイ)
ジョー・ペシ(トミー)
ロレイン・ブラッコ(カレン・ヒル)
ポール・ソルヴィノ(ポーリー)
フランク・ヴィンセント(バッツ)
サミュエル・L・ジャクソン(スタックス)

【感想】

ニコラス・ピレッジの「グッドフェローズ」の映画化作品。いまや「ゴッドファーザー(1972)」と双璧をなす評価の本作だが、2,500万ドルの予算に対し、全世界で4,600万ドル程度の売上だったので決して大ヒットしたわけではない。アカデミー賞では作品賞含む計6部門でノミネートされ、ジョー・ペシが助演男優賞を受賞した。

マフィア映画と言えば、「ゴッドファーザー(1972)」と共に名前が挙がる本作は、「ゴッドファーザー(1972)」と同様にドアが閉まって映画が終わる。また、「ゴッドファーザー(1972)」と同じく料理の場面が出てくる。「ゴッドファーザー(1972)」では、パスタを作る場面があったが、本作は料理をする場面が結構たくさん出てくる。中でも、刑務所で仲間と一緒に料理を作る場面は印象的で、強面で大柄のポーリーが、カミソリでニンニクのスライスをただただ作っているところは忘れ難い。ちなみに、1970年代までは面識のある犯罪者同士を同じ刑務所に入れることは普通だったらしい。

スコセッシの過去作では「ニューヨーク・ニューヨーク(1977)」と連想する場面があった。少年時代のヘンリーが服や靴を新調して母親に見せる場面で靴から見上げるようなショットであり、大人になったヘンリーを映す時も靴から見上げるようなショットであった。「ニューヨーク・ニューヨーク(1977)」では、派手な靴で始まった映画が、地味な靴のアップで終わる。本作では派手な靴を履いていた主人公が、裸足という履くものすら何もない状態で映画が終わることになるところは演出として効果的である。

アカデミー賞助演男優賞を受賞したジョー・ペシのマフィアっぷりを堪能できる一本。小柄なジョー・ペシが画面いっぱいを使って大暴れする様子は見ていてハラハラすると同時にどこか「もっとやれ」と思わせるものを持っている。ジョー・ペシがマーティン・スコセッシ監督と組むのは「レイジング・ブル(1980)」以来となるが、「レイジング・ブル(1980)」でもジョー・ペシが演じた主人公の兄は中盤に一度だけ酒場で大暴れするシーンがある。ちなみに、そこで喧嘩する相手は本作でジョー・ペシが演じるトニーが殺すことになるバッツを演じたフランク・ヴィンセントである。さらに、この2人は因縁があり、マーティン・スコセッシ監督が後に本作と同じニコラス・ピレッジの原作を映画化した「カジノ(1995)」でも共演しており、そこではフランク・ヴィンセントがジョー・ペシを殺すという形になっている。ちなみに、ジョー・ペシとフランク・ヴィンセントは他にも共演経験が多数ある(日本劇場未公開作品含む)。

また、本作でも白眉と言えるのが、飲み屋でトニーが笑い話をして、ヘンリーが「おかしなやつだ」と言うと、トニーは「どこがおかしんだ?」と言って問い詰め始める場面である。これはジョー・ペシによるアドリブで、それにレイ・リオッタがたじろいでいる。この場面はジョー・ペシとレイ・リオッタを2つのカメラで同時に収めている。

さらに、出所してきたバッツがいることろに出くわしたトニーは、バッツから靴磨きをしていたことを弄られる。ヒートアップしそうなところでお互いが謝って沈静化するのだが、バッツが「靴磨きの準備をしろ」と言ったことで、トニーがブチ切れる。この時の間の取り方が完璧で、毎回笑ってしまう。その後、メンツを潰されたトニーは後で店に戻って来てバッツをボコボコにして最終的に殺してしまう。大切な仲間が侮辱されたとしてジミーも同じようにボコボコにしている。

そして、溜まり場でカードをしている時に、スパイダーという若者の脚を撃っている。さらにその後脚に包帯を巻いたスパイダーがトニーに対してついに「クソ野郎」と言ってしまい、驚いたジミーが「あんなことを言われて黙っているのか」と嗾けると、トニーはスパイダーを撃ち殺してしまう。このシーンはジョー・ペシも演じるのが相当難しかったと語っている。

そして、主人公と言えるのがレイ・リオッタ演じるヘンリー・ヒルである。殺しまではできないが、強奪やドラッグに手を出す小悪党というのがぴったりの配役。役どころとしてはジョー・ペシの方が完全においしいが、本作の主人公を演じるのには申し分ないキャスティングだった。

また、彼らの兄貴的存在ジミーを演じたのがロバート・デ・ニーロである。今までのスコセッシ映画ではすべて主役を演じてきたが、本作では初めて脇のポジションを務めている。あまりおいしい役回りではないが、彼がこのポジションにいることでうまく回っている。

また、本作はキャラクター映画でもあろう。何度か鑑賞していると、脇役のキャラクターもしっかり作り込まれているのが分かる。それが集約されているのは、ルフトハンザでの仕事を終えた後の酒場の場面だろう。ジミーは犯罪がバレないようにするために、関係者には派手に金を使わないように周知していたらしいのだが、祝杯の席にやってくる連中がこぞって派手な買い物をしているのだ。ジョニーという男は買ったキャデラックをジミーに見せびらかし、ジミーから雷を落とされる。「おふくろの名義で買ったから大丈夫だ」とジョニーは何度も言うが、ジミーには相手にしてもらえない。かなり怒られたのに、最後にまだ「おふくろの名義で…」と言いかけている。この時のジョニーの無能感、何で怒られているのかを理解できていない感じは素晴らしい。

それから、カーボーンという男がジョニーに続いて店に入って来ると、連れの女性にミンクのコートをプレゼントしており、それに気付いたジミーは女性からミンクのコートを無理やり脱がせて、「買った店に突き返してこい」とカーボーンこれまた雷を落としている。このカーボーンは直前にジミーがジョニーに怒っているのを知らないからまるで悪気がない。

そして、その後にジミーに話しかけてくるのはこのルフトハンザでの強奪を計画したと主張するモーリーという男である。このモーリーは計画実行前からジミーに対して計画を立てた自分に前金を支払うように執拗に食い下がっていた。悪気はないのだろうが、自分の権利はしっかりと主張するタイプの面倒な男である。ジミーは派手な買い物をしないように言っていたのに、男たちはキャデラックにミンクのコートと高級な買い物ばかりして完全にイライラしている。そこへモーリーをぶつけるというある意味意地悪な脚本。さすがにこの状況はまずいと察したヘンリーがモーリーを何とかたしなめるシーンは笑える。

また、モーリーというキャラクターは序盤くらいにカツラのCMの場面で登場する。いかにも胡散臭いキャラクターとして登場し、ジミーがこのカツラのCMを鬼の形相で眺めるところもおかしい。

さらに、この場面がひと段落すると、次の場面でヘンリーが家に巨大なクリスマスツリーを買って帰って来るところになるのも笑える。しかも、色が白という、まるで悪意はないですよと言わんばかりの色使いも気が利いている。

また、カーボーンは、トニーがスタックスを彼の自宅まで殺しに行く場面で、トニーが平静を装うためにカーボーンにコーヒーを淹れろと言う。その後すぐにトニーはスタックスを殺すが、カーボーンはコーヒーを入れようとしていると、トニーから「なに本当にコーヒーを入れようとしてんだ」と怒鳴られる。完全にコント状態になっている。最終的にカーボーンは冷凍肉を運ぶ車の中で発見されることになる。

特にジョニーとカーボーンというキャラクターは、「やれ」と言われたことを額面通り受け取って「やる」こともあれば、「やるな」と言われたことを「やる」こともあるという思考回路が全く理解できないキャラクターである。

それから、ボスのポーリー。演じたポール・ソルヴィノの抜群の存在感と納得感のある容姿。ヘンリーは、バッツが行方不明になった時と、ドラッグに手を出すなと忠告される時に計2回ポーリーに至近距離で睨まれながら警告を受けている。あんな強面の男から警告されたらボロが出てもおかしくない。そんな状況をくぐり抜けられるだけのものを持っていたからあの世界で生き残っていけたのだろう。

結局、人殺しはしなかったヘンリーが追いつめられた時に取る行動はかつての仲間を売ることだった。一生刑務所暮らしになるか、証人保護プログラムの保護下に入り、かつての仲間の悪行を白状し、その対価として今までの名前も家もすべて捨てて全く別の場所で別人として生きていくのかの二択で後者を選ぶことになる。ちなみに、その説明をする男は実際にヘンリー・ヒルを担当していたFBI捜査官のエド・マクドナルド本人が演じている。

また、靴の話に戻るが、本作のラストでヘンリー・ヒルは裸足である。転売や強奪などで大金持ちになって高いスーツを着て、高級靴を履いていた彼が、証人保護プログラムの元、文字通り裸一貫になってしまったわけである。ただ、この時のヘンリー・ヒルは、「あの頃は良かったな」といった感じである。結局、映画の始まった時からそれほど変わっていないのだ。これに関しては、後のスコセッシ映画でいうと「アビエイター(2004)」「ウルフ・オブ・ウォールストリート(2013)」「沈黙~サイレンス~(2016)」辺りを連想する。

生れた環境、血筋の影響でマフィアの世界に入った男が、ジミーやトミーに翻弄されつつドラッグに手を出し、自滅するような形で最後は自分と言う人間を捨てて、かつての仕事仲間を国に売ることになった。

25年と言う時代を145分という上映時間で描いている。と言っても飛ばすところはばっさりカットして飛ばしている。肝心のルフトハンザでの強奪事件に関しては一切描いていない。娘の結婚を描く映画で肝心の結婚式のシーンをジャンプカットする小津映画のよう。

本作は色使いが特徴的であった。特に赤と緑がかなり画面内に意識的に配置されていたように思う。血や暴力を予感させる場面では赤を先に見せる場面もある。たとえば、冒頭のトランクを開ける場面では、テールライトの赤色に3人が照らされている。また、カレンが隣人からレイプされかけたとヘンリーに言うと、ヘンリーが隣人の家まで歩いていく。そこには隣人の所有する赤い車と、庭に植えられた赤い花が見える。また、ヘンリーがカレンを連れて、コパカバーナの裏口から入っていく長回しの場面は、彼らの通る両側の壁が緑色で、店員の上着が赤色である。終盤に証人保護プログラムの説明を受ける場面でFBI捜査官の男の横にある椅子の色は緑色である。画面内の情報量は多いと思うが、色使いの観点から映画を見ても面白いと思う。

それから音楽の使い方も評価を受けた作品。私はこの当時の音楽を聞いてすぐにわかるほど詳しくないのだが、描かれている年代当時のヒット曲が流れており、本作のために劇伴は製作されてすらいない。

 

とにかく25年という時代を駆け抜けるマフィア映画の傑作。ぜひ、マーティン・スコセッシ監督、ニコラス・ピレッジ原作で作った「カジノ(1995)」とセットで見ていただきたい。

【音声解説1】

参加者

├マーティン・スコセッシ(監督)

├ニコラス・ピレッジ(原作/脚本)

├アーウィン・ウィンクラー(製作)

├バーバラ・デ・フィーナ(製作)

├ミハエル・バルハウス(撮影)

├レイ・リオッタ(ヘンリー・ヒル役)

├セルマ・スクーンメイカー(編集)

├ポール・ソルヴィノ(ポーリー役)

├ロレイン・ブラッコ(カレン役)

├ジョー・ペシ(トニー役)

├フランク・ヴィンセント(バッツ役)

├ロバート・デ・ニーロ(ジミー役)

├ヘンリー・ヒル(主人公のモデル)


上記13人による音声解説だが、別撮りの音源を繋ぎ合わせたものである。映像を見ながら話しているのは、おそらくマーティン・スコセッシ監督だけであろう。85年段階から製作が始まっていた、ポール・ソルヴィノはギャング役が合わないと考えていたこと、レイ・リオッタが役を得るために自ら売り込んだこと、スパイダーを殺すシーンはワーナーから削除するように要求されていたこと、試写では点数が低かったこと、その試写で音が出ずに観客が技師に暴力を振るった話、ポール・ソルヴィノは試写で映画に圧倒されて当初は酷い映画だと感じてしまった話など、各人がそれぞれエピソードを話してくれる。

 

本編半分過ぎぐらいから20分以上誰も話さない時間があるなど、やはり継ぎ接ぎの音声解説は満足度が落ちる。

【音声解説2】

参加者

├ヘンリー・ヒル(本作のモデル)

├エド・マクドナルド(連邦組織犯罪撲滅班)


上記2名による対話形式の音声解説。本作のモデルであるヘンリー・ヒルと彼を担当したFBIの当時の捜査官によるかなり稀有なタイプの音声解説。互いに信頼関係のある2人が、当時を振り返りながら様々な話を繰り広げてくれる。エド・マクドナルドがヘンリー・ヒルに質問して、ヘンリー・ヒルが答えるという形式になっている。

 

小さい頃から間近にマフィアが当たり前にいる世界で育ち、それが普通ではないことに気付いたのは逮捕される直前であったこと、証人保護プログラムによって第二の人生を歩むことが出来てアメリカという国に感謝していること、傍から見るとマフィアもカッコいいと思うことがあるかもしれないが本当にみっともないからなっちゃいけないとか、本作のモデル本人だから話せることが盛りだくさんである。

 

 


取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【配信関連】

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├オリジナル(英語/イタリア語)

 

【ソフト関連】

 

<BD>

 

言語

├オリジナル(英語/イタリア語)

├日本語吹き替え

音声特典

├キャストとスタッフによる音声解説

├ 「警官」と「悪党」による音声解説

映像特典

├ メイキング・オブ・グッドフェローズ

├グッドフェローズの伝説

├ストーリーボードから映画へ

├ギャングの日常

├オリジナル劇場予告編

 

<BD(製作25周年記念コレクターズ・エディション/2枚組)>

 

言語

├オリジナル(英語/イタリア語)

├日本語吹き替え

音声特典

├キャストとスタッフによる音声解説

├ 「警官」と「悪党」による音声解説

映像特典

├スコセッシ作品の悪党たち

メイキング・オブ・グッドフェローズ

グッドフェローズの伝説

ギャングの日常

ストーリーボードから映画へ

├民衆の敵:ギャング映画の全盛期

├アイ・ライク・マウンテン・ミュージック

├シ・ワズ・アン・アクロバッツ・ドーター

├ラケッティアー・ラビット

├バニーよ、銃をとれ

予告編集

  ※下線部は上記BDに収録されていないものです。

封入特典

マーティン・スコセッシ監督からの手紙

この映画が及ぼした広範な影響力を探る44ページのフォトブックレット

 

<4K ULTRA HD+BD>

 

言語

├オリジナル(英語/イタリア語)

├日本語吹き替え

音声特典

├キャストとスタッフによる音声解説

├ 「警官」と「悪党」による音声解説

映像特典

├なし