【タイトル】
ダンス・ウィズ・ウルブズ(原題:Dances with Wolves)
【Podcast】
Podcastでは、作品の概要、感想などについて話しています。
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【概要】
1990年のアメリカ映画
上映時間は181分
※4時間アナザー・バージョンは236分
【あらすじ】
南北戦争の最中。北軍のダンバー中尉は無茶とも取れる行動で北軍の進撃に貢献し、見返りとして勤務地の選択権を与えられた。ダンバーは、誰も望まない「フロンティア」への赴任を希望し、荒野の中にポツンとある砦で自給自足の生活をしながら周囲の偵察を行っていた。するとある日、1人のインディアンが現れる。
【スタッフ】
監督/製作はケヴィン・コスナー
原作/脚本はマイケル・ブレイク
音楽はジョン・バリー
撮影はディーン・セムラー
【キャスト】
ケヴィン・コスナー(ジョン・ダンバー中尉/狼と踊る男)
メアリー・マクドネル(拳を握って立つ女)
グレアム・グリーン(蹴る鳥)
【感想】
チェロキー族の血を引くケヴィン・コスナー初監督にしてアカデミー賞作品賞を受賞した大作西部劇。画面いっぱいに使った大自然の映像は見事で、テント内の狭さと好対照をなしていた。また、名匠ジョン・バリーによる音楽も本作の魅力を最大限に引き立て、本作のサントラは彼の最高傑作とも言える。差別や分断を個のレベルで解消しようとする、そして一度は自殺を考えた主人公(その他登場人物含む)が再び立ち上がる映画として、上記の撮影や音楽のみならず、美術、衣装、小道具、設定、そしてケヴィン・コスナーという人物がよりリアルなものとして仕上げている。ここまでネイティブアメリカン側に立つメジャー映画は初めてで、それを主人公がナレーションで観客を誘導する手法も成功していると言える。
本作の始まりは主人公が足の切断をされるか否かの場面であった。幸いにも切断を免れた主人公は再び靴を履き戦場に戻り、自殺行為とも取れる大胆な行動が功を奏して北軍進撃に貢献する形となった。その後倒れているところを発見されると「足は切らないでくれ」と嘆願している。当然だが、足は切断してしまうと元には戻らない。本作の描くアメリカ内での白人とネイティブアメリカンの分断、差別をすることなく調和したいと考える主人公を思わせる演出であると感じる。
その活躍から勤務地を選択する権利を与えられた主人公は、白人とネイティブアメリカンの戦う最前線「フロンティア」への赴任を希望する。なぜフロンティアを希望するか聞かれると、「それがなくなる前に見ておきたいから」と主人公は答える。アメリカ大陸東海岸に入植した白人がその領土を西へ西へと進めて行き、そのネイティブアメリカンとの境界線が「フロンティア」になったわけだが、その支配が終わると「フロンティア」自体もなくなるのだ。また、映画界では「天国の門(1980)」の失敗を機に大作の西部劇が作りづらくなり、化石と化していた西部劇を残したい、作り続けたいというのはケヴィン・コスナー自身の思いとも重なるところだ。
セジウィック砦へ向かうにつれて主人公は自然に魅せられていく。大きな自然を目の前にすると、白人だろうがネイティブアメリカンだろうが、ちっぽけな1人の人間でしかなくなる。主人公が馬を降りて腰くらいの高さの草を手で感じる場面があるが、それと同じことを後に「蹴る鳥」もやっている。このようなさりげない描写で重ねるところが美しい。シスコと名付けた馬、トゥー・ソックスと名付けた狼とも交流していき、ある日主人公が鞍を持っていつも通りシスコと偵察に行こうとすると、その鞍を砦に投げ捨て裸馬に乗る。人間と自然/動物との間にあるものを取り払っていく過程も描写として丁寧だ。また、そんな彼が初めてスー族と出会う場面で裸だったのも意図的な演出だろう。
スー族との出会いを待っていた主人公は意を決してスー族の拠点へ向かうことにすると、「拳を握って立つ女」が怪我をしており、彼女をスー族の拠点へ連れて行く。この「拳を握って立つ女」は白人女性で、かつてネイティブアメリカンからの襲撃後に連れ去られ、ネイティブアメリカンのもとで育てられたのだ。ネイティブアメリカンはたとえ敵を襲撃しても子供を殺すことはなく、敵の親を殺してもその子供を引き取って育てると言うケースは多々あった。それは西部劇の名作とされるジョン・フォード監督、ジョン・ウェイン主演の「捜索者(1956)」でも描かれていた。
主人公が「拳を握って立つ女」を助けたという意図は相手にも伝わり、そこから物々交換やボディランゲージなどで少しずつ交流を深めていく(コーヒーと砂糖の場面は何度見てもいとおしく感じる名場面だ)。また、主人公の帽子を拾った男が自分の物にしようとして一触即発になると、「風になびく髪」が仲裁に入って、事なきを得る。自分の物と相手の物で対立が起き、仲裁が入り、論理的な説明をし、妥協案を出して解決させるという「話し合い」が描かれる。ネイティブアメリカンの合議制社会も反映した、また主人公と「風になびく髪」が仲を深める名場面とも言える。
主人公がスー族と仲を深めても、いくつもの苦難が立ちはだかる。自分と同じ白人がネイティブアメリカンの土地を荒らしたり、毛皮のためだけにバッファローを大量虐殺したりする場面をスー族の前で目撃し、そしてただ見ていることしかできない。ただ、スー族はそれを主人公がやったことではないと分かっているので、彼に批判的な目を向けることはない。スー族は人を人種ではなく、一個人としてちゃんと見ているのだ。彼に「狼と踊る男」という名前まで付けられたことが顕著だ。
その名前も、ネイティブアメリカンは生後に付けるのではなく、後に付けるもので、周囲がその人の人となりや特徴から名付けるというものらしい。主人公がジョン・ダンバーと言う名前に意味があるのか自問する場面があるが、生後自分の知らないうちに付けられる名前よりも、自分の特徴を周囲が理解して付けてくれた名前の方が主人公にとっては良かったのかもしれない。そうやって認められたことで、新たな自分を認識し、生きる意味を見つけて、仲間と戦っていく姿には感動がある。
そして、本作では主人公と「拳を握って立つ女」を除くと、ネイティブアメリカンへ理解を示す白人は登場しない。バッファローを毛皮のためだけに虐殺し、自分たちの土地や資源のためにネイティブアメリカンも虐殺し、野生の狼がいれば射撃の練習の的にして殺してしまう野蛮な連中だ。ただ、主人公にも「いかにも白人らしい」一面がある。スー族がポーニー族と戦うことになる時に自分も戦うと言って同行を希望するが、「お前にはポーニー族に恨みはないだろう」と断られてしまう。他人の戦争に首を突っ込む辺り、いかにもアメリカ人(白人)らしいと言える場面だ。ただ、ここは主人公に対して皮肉的な視点ではないと感じる。
また、主人公は白人(アメリカ人)としての誇りも持っており、最初にスー族の拠点へ向かうときは軍服をピシッと決めて、アメリカ国旗を掲げていた。そんな彼も、「風になびく髪」の衣装と軍服を交換し、軍服とスー族の衣装の折衷のような格好になる。これぞチェロキーというネイティブアメリカンの血を引くケヴィン・コスナーそのもののように思え、この衣装でそこまで表現されていると考えると素晴らしい。
そんなケヴィン・コスナーがこよなく愛する西部劇を私財を投じてまで完成させた心意気は十分に伝わってきた。どこか抜けているところはあっても、何かに向かって一心に突き進むキャラクターも彼の十八番と言え、本作の前年に出演した「フィールド・オブ・ドリームス(1989)」で演じたキャラクターにも通ずるところがある。
【4時間アナザー・バージョン】
本作は劇場公開から1年後に、約1時間の映像を追加した「4時間アナザー・バージョン」なるものが一部劇場で劇場公開された。1時間も追加されているが、ストーリーに大きな変更の意味合いはなく、各出来事や登場人物の背景が大きく肉付けされている印象。本作にハマった人なら、「4時間アナザー・バージョン」でよりその雰囲気にどっぷりハマれると思う。日本でもDVDやBlu-rayでソフト化されているので視聴可能だ。
【音声解説】※4時間アナザー・バージョンのみ収録
参加者
├ケヴィン・コスナー(監督/製作/ジョン・ダンバー役)
├ジム・ウルソン(製作)
上記2名による対話形式の音声解説。収録されているのは「4時間アナザー・バージョン」のみとなっており、その4時間の間、この2人が饒舌に語ってくれる。本作を作り上げる上で拘ったこと、目指したこと、大事にしていることを真摯に話している印象。長期間にわたるロケでの苦労話(鹿、水、天気、バッファローなど)、共演した俳優の印象、ひいては映画論など、本作に興味を持った人ならぜひ聞いてほしい音声解説。
取り上げた作品の一覧はこちら
【ソフト関連】
2023年4月現在、劇場版と4時間アナザー・バージョンの両方を収録したソフトはDVD4枚組のスペシャル・エディションのみである。BDが発売されると複数バージョンがある場合は1枚に集約されることが多いのだが、本作に限ってはBDに関しても劇場版と4時間アナザー・バージョンは別売となっている。
また、映像特典はこちらもDVD4枚組スペシャル・エディションが最も充実しており、その中の「名作の誕生」:回想形式ドキュメンタリーという約75分の映像特典は4時間アナザー・バージョンのBDにも収録されている。
<DVD>
本編
├劇場公開版
言語
├オリジナル(英語/スー語/ポーニー語)
├日本語吹き替え
映像特典
├予告編集
<DVD4枚組(劇場版/4時間アナザー・バージョン/特典))>※廃盤
本編
├劇場公開版(Disc3)
├4時間アナザー・バージョン(Disc1/2)
言語
├オリジナル(英語/スー語/ポーニー語)
├日本語吹き替え
※4時間アナザー・バージョンには日本語吹替は収録されていません。
音声特典(Disc1/2)
├ケヴィン・コスナー(監督/製作/ジョン・ダンバー役)、ジム・ウルソン(製作)による音声解説※4時間アナザー・バージョンにのみ収録
映像特典(Disc4)
├「名作の誕生」:回想形式ドキュメンタリー
├撮影現場クリップ
├オリジナルメイキング
├ジョン・バリーの音楽によるオリジナル・ミュージック・ビデオ
├ニール・トラヴィス編集版ラッシュ
├フォト・モンタージュ
├オリジナルTVスポット集
├ポスター・ギャラリー
├キャスト&スタッフ紹介
<BD>
本編
├劇場公開版
言語
├オリジナル(英語/スー語/ポーニー語)
├日本語吹き替え
映像特典
├予告編集
<BD>
本編
├4時間アナザー・バージョン
言語
├オリジナル(英語/スー語/ポーニー語)
音声特典
├ケヴィン・コスナー(監督/製作/ジョン・ダンバー役)、ジム・ウルソン(製作)による音声解説※4時間アナザー・バージョンにのみ収録
映像特典
├「名作の誕生」:回想形式ドキュメンタリー
【音楽関連】
<CD(サウンドトラック)>
収録内容
├18曲/53分
【グッズ関連】
<ポスター>
サイズ
├68.5㎝×101.5cm
<ポスター>
サイズ
├68.5㎝×101.5cm