【作品#0371】ナイト・アンド・ザ・シティ(1992) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

ナイト・アンド・ザ・シティ(原題:Night and the City)


【Podcast】

Podcastでは、作品の概要、感想などについて話しています。


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【概要】

1992年のアメリカ映画
上映時間は105分

【あらすじ】

悪徳弁護士のハリーは、ボクサー同士のもめ事を仲介していたことから、ボクシングのプロモーターに興味を持ち、成功を夢見て動き出す。

【スタッフ】

監督はアーウィン・ウィンクラー
音楽はジェームズ・ニュートン・ハワード
撮影はタク・フジモト

【キャスト】

ロバート・デ・ニーロ(ハリー・ファビアン)
ジェシカ・ラング(ヘレン)
ジャック・ウォーデン(アル)
アラン・キング(ブーンブーン)
マイケル・バダルコ(バーテンダー)

【感想】

前年の「真実の瞬間(1991)」に続けてアーウィン・ウィンクラー監督、ロバート・デ・ニーロ主演となった、イギリス映画「街の野獣(1950)」のリメイク作品。ロバート・デ・ニーロとジェシカ・ラングは前年の「ケープ・フィアー(1991)」でもリメイク作品で共演している。また、アーウィン・ウィンクラーはプロデューサーとしてボクシング映画「ロッキー(1976)」シリーズや「レイジング・ブル(1980)」に携わっており、ロバート・デ・ニーロはボクシング映画「レイジング・ブル(1980)」へ出演している。

かつてのフィルム・ノワールの名作のリメイクとして製作されたが、評判は芳しくない作品である。ただ、本作は映画製作自体と、ロバート・デ・ニーロという映画人を表現したかったのではないかと思う。

本作はボクシング興行に向けて資金集めをする様子が映画製作自体を表していると言える。何といっても本作は主人公が資金集めをする様子がひたすら描かれているだけといっても良いのだ。やっとの思いで金の貸し付けを取り付けたのに土壇場で相手が金を貸してくれなくなったり、会場費を支払おうとすると突然保証金と称して金を吊り上げたり、試合に出場予定のボクサーが尿検査に引っ掛かって出られなくなったり…。映画を作るにしても、資金が必要で、その資金を出させるためにプレゼンをして相手を納得させなければならない。その相手も一度は了承したとしても事情が変われば「やっぱりやめた」と言われるかもしれない。そして、順調に資金が集められたとしても今度は人を集めなければならない。監督やキャスト、ボクシングの試合に医師が必要なように、映画撮影現場には医療関係者も呼んでおかなければならない。そういった苦労がボクシング興行に置き換えられて描かれているとして見れば腹に落ちるものはある。

また、弁護士として仕事をしている主人公がボクシング興行のプロデュースという全く別の仕事を始めようとする。これは当時、俳優として確かな実績を確立して、1989年に「トライベッカ・プロダクション」という製作会社を作ったロバート・デ・ニーロ自体を表しているとも言える。俳優でありながら、映画のプロデュースに乗り出す上での苦労と考えると、こちらも腹落ちする者がある。

ただ、本作は面白いかと言えば微妙なところである。本作の迎える結末を考えると、ニューシネマ期の俳優を主演に据えたかったのだろうと思う(にしても結末はオリジナルに比べると遥かに甘っちょろい)。ではそれがデ・ニーロかというと本当に微妙なところである。40を過ぎた男が叶わぬ夢の実現のために奔走する様子にはあまりリアリティを感じないし、オリジナルのリチャード・ウィドマークには女性が守ってあげたいと思うような危険な感じを孕んでいたことを考えると、ロバート・デ・ニーロはやはり少し違う気がする。ニューシネマ期の俳優であれば、若い頃のアル・パチーノとかポール・ニューマンとかのほうがしっくり来た印象はある。もちろん酷評するほどデ・ニーロが悪かったわけではないのだが。

また、本作の製作された90年代を考えると、ボクシング興行で当てようとするというお話自体が古臭く、まるで時代に合っていない。このテーマで描くならニューシネマ期の70年代から、せめて80年代初頭までの作品であろう。作られた時代もややズレていたのではないかと感じてしまう。

結局、オリジナルと同様にボクシングの試合なんかはできることなく映画は終わっていく。これは本作の監督アーウィン・ウィンクラーがプロデューサーとして携わった「ロッキー5(1990)」を思わせるところもある。

かの名作「街の野獣(1950)」のリメイクとして見れば物足りなさもあるし、ヘレンというキャラクターの不自然さなど粗も目立つ。ただ、映画制作とそれに乗り出した俳優ロバート・デ・ニーロをボクシング興行に手を出す弁護士として描くこと自体は面白かった。脚本、演出などにもっと磨きがかかれば良作になったのではないかと感じる。

【関連作品】


街の野獣(1950)」…オリジナル
「ナイト・アンド・ザ・シティ(1992)」…上記作品のハリウッドリメイク



取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【ソフト関連】

 

 

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